変貌する教師像、変わる教員採用の規模・内容
日本は国土も狭く天然資源が乏しいため、人間の知力や体力が立国の基盤といわれますので、世の中が変わろうとする時、イの一番に手が付けられるのは「教育」です。その担い手たる学校の教員にも私企業並みの競争原理が導入される一方、要求意識の強いいわゆる“モンスターペアレンツ”の登場などがあり、教員の仕事もやや変貌しつつあります。教員採用の規模や動向にも新しい要素が生まれています。どんな現状にあるのでしょうか?
伸び続ける教員志望者&採用者数
授業や教室運営に関わる難しい問題が山積しているうえに、昼と夜、平日と休日を分かたず仕事(地区の活動、苦情や相談など)が舞い込み、想像以上に多忙を極めるのが今日の学校教育の現場だといわれます。
それでも、小中高で出会った○○先生の授業に感動し、「私も将来は学校の先生になりたい」という志望理由が相変わらず大きな比重を占めるとおり、教員志望の学生はまだまだ数多く存在します。その数は、1999年に13万人台の志願者数を記録して以来伸び続けており、小中高あわせると、2007年度には15万人規模にのぼっています。
採用者数も、2000年度に9千人台まで落ち込みましたが、2001年度から上昇に転じ、2007年度には小中高あわせ、当時の倍に当たる約2万人となりました。07年度の採用規模は、高校が2500人台でほぼ横ばいですが、小学校は1万数千人台、中学校が6000人台に達しており、最も少なかった00年度に比べて2〜3倍の数が採用されている勘定になります。団塊世代教員の大量退職を見越したこと、小人数制教育を実現するために採られた「教職員定数改善計画」などが、採用者数を増やした理由とみられます。
都市部と地方の採用倍率格差
また、教員採用をめぐる倍率は、採用主体が各都道府県や各政令指定都市であるため格差が生じることも、教員を目指す際に念頭におかなければならない項目です。
07年の場合、全国の平均倍率は7.30倍でしたが、2000〜1000人規模の大量採用を行なう首都圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)や関西圏(大阪・京都・兵庫)、愛知県などでは5〜6倍が相場となっています。この地区では4倍台のの政令都市も少なくなく、なかには地方県からの受験をピーアールしている都府県や政令都市もあるほどでです。
逆に、高知県や岩手県、秋田県、鳥取県といった、100人未満もしくは100人程度の少数採用県においては20倍前後の高倍率(難関)が記録されるケースが目白押しです。
高校教員には出身学部による有利・不利はない
一方、教員採用者を出身学部(新卒者)別に見ると、各都道府県に存在したかつての師範学校の流れをくむ国立大学の「教育学部」が強いこともあって、全体では、例年教育学部出身者が60%以上を占めています。とくに小学校教員の採用数の拡大とともに、年々教育学部出身者が増加傾向にあるのが実情です。ちなみに07年度は教育学部出身者が64%を占めました。
一人が全教科を担当する小学校教員では、教育学部はそれ用の課程(カリキュラム)が設置されていることもあって、とくに強さを発揮。つねに約90%をキープしているほどです。07年度は全国の採用者=約5800人のうちの9割にあたる5200人ほどが教育学部出身者でした。
中学校では、教科ごとの採用が中心となるため、小学校のような圧倒的なアドバンテージがありませんが、それでも03年度までは教育学部が60%台の高水準を維持してきました。しかし、05年度に50%を割り込んで以降、教育学部出身者は50%前後の占有率で推移しています。その分、人文・社会科学系学部の出身者が前年より60?70人規模の増加を記録しているのが特徴です。
また、高校教員は全体的に採用者数が減少傾向にあることも手伝い、中学校以上に教育学部出身者は漸減傾向にあるといえます。02年度に35%だった教育学部出身者が07年度は28%に低下しているといったぐあいです。加えて、深刻な理科離れ対策として、新たに理工系学部出身の「スーパー・サイエンス・ティーチャー」構想もスタートすることが決まっていますから、ますます教育学部以外の比率が拡大する雲行きです。したがって、高校教員にかぎっては出身学部による有利・不利はないと考えて間違いはないでしょう。
【文章 大学教育研究所】