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工学系統(商船系統含む)

材料工学の分野

材料工学の分野

化学や物理学の手法を工学技術に応用し、優れた機能をもつ物質(新素材)を開発する分野。一見、地味なジャンルに思われがちだが、技術は材料の歴史といわれるほど重要な研究分野

分野の特徴

自然界の物質の加工と人工物質の開発がテーマ

 材料工学は、工業製品の材料となる物質を開発するための工学ジャンルです。
 自然界にある物質は人の手を加えること(加工)で、あらゆる用途に使える“材料”となります。現代社会では、小型で軽量、硬くて丈夫、成型しやすいなど、いろいろな性質をもつ“材料”が人工的に創り出され、利用されています。たとえばプラスチックは、20世紀に発明された材料で、安価に大量生産ができ、軽くて加工しやすいという性質をもつことから、現代生活に欠かせなくなっています。
 こうした材料となる物質の特性を解明するとともに、新しい材料を開発すること、材料の大量生産を可能にすることが、材料工学の役割です。
 具体的には、鉱物などの原材料の加工、物質の反応に化学的に手を加えて物質がもつ機能を変える技術、物質の分子や電子を操作することによる物質の化学合成、といった研究テーマがあります。

材料の開発から、処理・加工技術まで幅広く研究

 工業で用いられる材料は、元の原料によって大きく次の3つに分けられます。
1. 「金属材料」:鉄鋼やアルミニウム、ステンレスなどの金属
2. 「無機材料」:セラミックスやガラスなど
3. 「有機材料」:プラスチックを中心とした高分子物質
 また、重視される性質によって「構造材料」「機能材料」に分けられます。たとえば、主に建物などの外形に用いられる「構造材料」では、強度や堅牢性(力学的特性といいます)が大事になります。一方、力学的特性以外の要素(電気を通す/通さないや光耐性など)が重視されるのが「機能材料」で、特殊な機能を活かした場面で使われます。
 研究テーマは、実験室で新しい材料を創造する開発プロセスから、生産工場における製造プロセスまで、幅広い領域に広がっています。たとえば、加圧や加熱、メッキなど、材料を処理・加工する技術、固体・液体・気体・粉体など、物質の状態を変換する技術、複雑な化学反応を正確にコントロールする技術といった研究テーマがあります。

何を学ぶ

あらゆる材料の特性を理解し、作り方と使い方を学ぶ

 材料工学では、まず物質をつくっている《原子、分子、電子》の精密な構造やはたらきを理解するため、化学と物理学を基礎からじっくり学びます。化学は無機化学、有機化学、物理化学の基本領域をバランスよく履修します。また物理学では、量子力学と熱・統計力学を基礎にした物性物理や、電磁気学などの科目が重要になります。
 基礎レベルでの焦点は、強さ、硬さ、重さといった基本的な性能、利用しやすさに関わる熱・電気の通し方や腐食性、さらに人体にどんな影響があるかといった、さまざまな物質の特性です。「材料工学概論」などの講義科目で、こうした概念や理論を学び、演習や実験科目によってその理論を確認しながら、材料を扱うための基礎固めをします。また、分析化学の基礎から、材料の化学的分析電気的計測など、材料の性能や機能を評価するために必要な基本技法を学びます。

「生み出す」「使う」の両面からあらゆる材料技術を学習

 専門段階では、金属材料、無機材料、有機材料の特性をふまえながら、材料の類型にはとらわれず、いろいろな材料の理論と実践技術を横断的に学んでいくのが、一般的な履修スタイルです。
 研究項目は、材料を生み出すための技術(開発)、材料を使う技術(製造・加工・利用)の2つに大きく分かれており、材料の構造と機能に関する知識から製造する技法までを体系的に学びます。「生み出す」技術では、三大材料と呼ばれる金属材料、高分子材料(プラスチックなど)、セラミック材料を中心に、半導体や磁性体などの「電気電子材料」、電気抵抗のない「超伝導材料」、さらに自らを検知・判断して、反応できる「知能材料」まで、材料を開発するためのさまざまな技術を学びます。
 「使う」技術では、材料を設計するための力学、強度の知識、材料を加工するための《結晶》《表面改質》《薄膜》の技術、材料を計測するための構造解析などを扱います。