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家政系統

家政学の分野

家政学の分野

衣食住や育児など、家庭生活に関わるさまざまな知識や技術を科学的に研究する分野。伝統的な“生活の知恵”を科学的に検証する一方、家庭に密着した地域社会のあり方も研究テーマに

分野の特徴

伝統的な生活の知恵やコツを科学的に研究する

 家政学は、衣食住や育児など、家庭での日常的な生活に関する技術を研究する学問です。
 家庭を営んでいくための、料理・掃除・洗濯・裁縫といった仕事は、日本では旧来「主婦」の役割とされたため、家政学の研究も女性向けの実用学として位置づけられてきました。しかし、第二次大戦後には男女の役割の平等が広く社会に認められ、また、高度成長期を経て女性の社会進出が進むなど、「家庭」の実態は時代とともに大きく変貌しています。そこで、この分野は現在、生活のあらゆる事柄を科学的に分析する実証的な学問として体系化され、「生活科学」とも呼ばれています。
 また、人間を育み安らぎをもたらす《家庭》の視点で、世の中のいろいろな問題を研究することも家政学の役割です。本当に使いやすい家電の企画、自分の町の暮らしやすさの検証、子どもを育む理想的な環境づくり、余暇を有意義に過ごす工夫といったテーマがあります。

生活に密着したさまざまな社会的なテーマに挑む

 家政学には、広範な研究領域があり、「食物学」「被服学」「住居学」「児童学」という4つに大別できます。
 これらを統合する狭義の「家政学」では、主に家計や将来設計といった家庭運営に関する研究が中心となります。また、4つの領域の基本知識を土台に《家庭》に根ざした視点に立ち、地域社会から国際問題まで、あらゆるテーマに取り組みます。
 たとえば、家計と将来設計、地域の環境と治安、学校教育と家庭の役割、高齢者の福祉や介護、世界的不況の家計への影響、ゴミ減量とリサイクルなど、暮らしに関わる多様なテーマが含まれます。これらの大半では、経営学、経済学、社会学など、社会科学のアプローチに近くなります。
 また、生活家電や日用品について、機能や操作性、効率性やコストなどあらゆる側面から検証します。このうち、電気製品や生活道具については工学的な手法、また、家庭用洗剤や殺虫剤の成分については、化学的な手法も必要になります。

何を学ぶ

衣・食・住の広範な知識を習得し、家庭生活を検証

 家政学では、はじめに衣・食・住の要素を科学的に検証するために必要な基礎知識を、幅広く学習します。衣料や食べ物を分析・検証するための基本知識と技術を学ぶ「化学」「生物学」、住居と環境について検証するための基本理論を学ぶ「建築学」「環境工学」「デザイン」といった科目がそれにあたります。
 それと共に、家庭生活を金銭面で支えるための《家計》の理論的な基礎をなす「経済学」「経営学」、《家族》の人間関係を本質的に捉えるために、家族とはなにか、を理解するための「教育学」「心理学」「人間関係学」といった人文・社会科学系の科目を修得します。
 生活実態、意識調査の手法について学ぶ「統計学」「生活統計学」という科目もあります。
 これらの、生活科学を構成する幅広い領域の基本理論と分析手法を学ぶことにより、家庭生活と地域社会に根ざした「生活者」としての視点を体得します。

重要なのは、家庭人としての豊かな「人格」や「知性」

 専門課程で学ぶ内容は、次の4つに大きく分かれます。
1. 家計の管理運営や人生設計など、生活の根幹となる要素を扱う「家政学原論」「家政経済学」「生活経営学」「生活環境学」
2. 家庭における文化や娯楽など、生活に潤いを与える要素を扱う「生活文化学」「生活美術学」、
3. 家庭教育や在宅介護など家族の助け合いに関する要素を扱う「家族関係学」「生活福祉学」「育児学」
4. 現代の家庭生活に不可欠の科学知識や情報スキルを学ぶ「家庭電気・機械論」「生活情報処理」
 これらの領域をバランスよく学ぶとともに、教育、健康、労働、消費、環境など、生活者である私たちにとって身近で重要な課題にアプローチするのが、一般的なカリキュラムとなっています。こうした学習を通じ、一人ひとりが家庭人としての自覚をもち、夫婦や親子が健全な人間関係を育むことができるような、豊かな人格や知性を養います。