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被服学の分野

被服学の分野

快適さや機能性に富む衣料をつくり、新たな服飾生活を創造する分野。衣服の作製・保管・手入れの技術から、衣類の生産・消費・流通という産業的な側面まで、幅広い領域を対象とする

分野の特徴

科学的な視点から、人間の「衣服」を検証する

 被服学は、人間の衣服について総合的に研究する学問です。
 衣服や布地を設計・製作するためのデザインの要素、生地から衣服を作る造形の実践技術、衣服の保管や手入れについての科学的な知識、さらに、繊維から糸を、糸から生地を作る繊維の知識や、染織・織物産業の工業技術、生産・流通という商業の要素まで、幅広い領域を扱います。
 衣服といってもさまざまで、今は材料費や製造費をぎりぎりまでカットし、大量生産されたカジュアルな洋服もありますが、材料を吟味し手間暇かけて作られた衣服には、そのコストに見合った高い価値があります。どんな時代になっても、素材選びやデザイン、縫製など、衣服に求められる基本的な技術は変わりません。
 製造技術の研究のほか、服装が着る人(見る人)に与える心理的な影響、社会行動などを分析し、豊かで魅力的なファッションを創り出すことが被服学の大きなテーマです。

「衣服の分析」と「モノづくり」の技術を研究

 研究手法には、2つの方向性があります。衣服の特性(着心地や機能性)の分析・検証という理論面、そして衣服の造形・製作技術というモノづくりの側面です。
 衣服の特性については、たとえば繊維や生地材料についての研究があります。最近は、シワになりにくい素材(形状記憶)、摩擦や熱に強い素材、速乾性や保温性など、いろいろな特性をもつ《機能性素材》が登場しています。こうした素材の化学的な特性を分析し、肌触りなどいわゆる“着心地”との関連性を調べます。
 技術面では、デザインと製作の実践技法が重視されます。デッサンやイラストを用いた“手描き”デザインのほか、コンピュータグラフィックによる絵柄や模様のデザインを研究します。コンピュータ技術は、動きやすさや着心地を追求する立体造形でも用いられます。
 そのほか、衣服の流通と消費の分析、ファッションの歴史的変遷、地域ごとのファッションの特性といった文化的なテーマもあります。

何を学ぶ

「衣」の本質を理解するために、化学や人間工学も学習

 衣服は、衣食住のなかで私たちの身体にもっとも近く、しかも、暑さや寒さ、快適さ、動きやすさなど生理的な感覚と深く関係しています。
 このことから、基礎課程では、衣の素材や質感に関わる「化学」、人体の構造や運動機能を理解するための「生物学」「物理学」「人間工学」、衣服を選び着用する人間の心理を学ぶための「心理学」「人間関係学」など、人間の身体・精神面と関わる幅広い知識の基礎を学び、被服学を専攻するための土台となる、幅広い視野を身につけておく必要があります。
 また、消費行動や販売戦略について考える「商学」「経営学」、人間の生活文化を研究する基礎としての「文化学」「社会学」など、その領域は、社会科学から人文科学まで広がっています。
 さらに、技術的な学習項目として、造形とデザインの基本理論や技法を学ぶ「デッサン」「基礎デザイン学」、さらに化学や物理学の実験・研究技法を身につけます。

衣服を「デザイン性」「機能性」「商品論」の視点から検証

 専門課程の科目を大きく分類すると、衣服をデザインする、衣服を分析する、衣服を商業や文化の視点で捉える、という3つのアプローチがあります。
 デザイン系では、「生活意匠論」「被服造形学」「被服デザイン」といった科目があり、衣服の造形と色、材質とデザイン理論を学んだうえで、創作技法を磨きます。
 分析系では、繊維や布の性質、温度や湿度、光などによる変化を理解し、布の染織法、保存と管理の方法を修得する「被服材料学」「染色加工学」「被服管理学」、着心地、肌触りといった衣服の機能を理解する「被服生理学」「被服衛生学」「被服環境学」があります。
 また、商業・文化系では、衣服に関する人間心理と消費行動を分析し、商品開発法を学ぶ「被服心理学」「被服消費学」「ファッション商品論」、また、絵画や写真、文学を題材として服飾文化を歴史的・社会的に考察する「被服文化論」「服飾社会史」などがあります。