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精神保健福祉士 池田 晃子さん 活躍している人、頑張っている人

精神保健福祉士の仕事

精神保健福祉士 池田 晃子さん(30) PROFILE 1977年9月16日、京都市に生まれる。
 大淀中学校、桃山高校時代はバスケ部で活躍し、花園大学ではタッチフットボールサークルに所属。社会人クラブチームにも4年間参加した。大学卒業後、一般企業でアルバイトとして数カ月間働くが、理想の職場を求めて福祉施設への就職活動を開始し、共同作業所「すぎなハウス」と出会う。
 精神保健福祉という大学ではほとんど学ばなかったその現場に、アルバイトスタッフとして飛び込んだ池田さん。仕事への熱意が認められ、数年後には正職員となった。「メンバーさんの悩みに本気で応えるために、専門知識を学びたい」と、働きながら精神保健福祉士の資格を取得する。だが、それがゴールではない。メンバーさんの意欲を引き出すために、池田さんの努力は続く……

はじめての現場が、理想の職場に−ぬくもりある下町の共同作業所「すぎなハウス」


精神保健福祉士の仕事

 かつて平安京の一部として、羅城門を中心に栄えた京都・洛南地区。宅地化や工場建設など開発の波にさらされながらも、“弘法大師の寺”として名高い東寺をはじめ、いくつもの寺社や史跡が点在する、どこか懐かしい空気が漂う下町だ。その住宅地の一角に、共同作業所「すぎなハウス」はある。
 一見すると、ごく普通の民家。だが扉を開けた瞬間に、甘く香ばしい匂いが漂ってくる。
 全員がリラックスできる広い居間に、数人が並べる縦長の台所。奥の厨房には、大きな作業机、オーブン、冷蔵庫などが並び、壁には数種類のクッキーのレシピが貼ってある。主な作業はクッキーの製造と販売だが、お昼時は買い物や調理を分担し、スタッフとメンバー(利用者)さんが一緒に食事をするアットホームな作業所だ。
「大学生のときは、障害のある人たちと一緒にご飯を作ったり食べたりする入所施設で働きたいと思っていました。ここは通所施設ですが、予期せず希望が叶えられました」 


友人との再会から、福祉の道へ


精神保健福祉士の仕事

 中学・高校時代はバスケ部に所属し、授業が終われば部活をして帰宅するという、ごく平凡な日常を送っていた池田さん。
「スポーツが得意というわけではありませんが、同じ目標を持つ仲間ができることや、その仲間と一緒にがんばれることが嬉しくて、続けていました」
 福祉やボランティアに興味はなかった。だが高校3年生の秋に、友人に誘われて公立の養護学校を訪問したことで、人生行路が大きく変わる。
「軽い気持ちで行ってみたら、小・中学生のときの同級生が、生徒としてその施設にいたのです。久しぶりに会えて、お喋りにも花が咲いて、障害をもつ人との交流が身近で楽しいものになりました」
 こんな楽しい活動なら、本腰を入れて勉強してみたい──福祉の世界に惹かれて、花園大学の社会福祉学部に進学。障害者福祉を専攻し、障害者と職員が家族のように生活するスタイルの入所施設があることを知った。
 卒業後、一度は時給が高い工場のアルバイトをやってみたが、自分の“やりたいこと”を見つめ直し、数カ月後に退職。障害者の福祉施設に絞り、就職活動を再開する。
「募集されていたのは、老人福祉施設の介護職員ばかりでした。そのなかで一件だけ、精神障害者共同作業所のアルバイト求人があったのです。精神保健の分野はほとんど勉強していなかったのですが、不思議と興味が湧きました」
 こうして、予備知識のない精神保健の世界に、池田さんは飛び込んだのだ。


精神保健福祉士を取得し、さらに専門的な援助へ−メンバーさんのために磨き続けた、知識と技術


 正職員としてメンバーさんから寄せられる相談と向き合ったとき、自分の知識不足を痛感したという。
「日常生活や人間関係などの悩みには、その人の病気や障害を理解して、慎重に解決方法を探さなければなりません。ですが、私にはその専門知識がなかったのです」
 そこで専門学校の通信講座を申し込み、国家試験の勉強を始めた池田さん。働きながら資格をとることは容易ではない。だが、情熱に心を打たれた他のスタッフの協力もあり、めでたく合格。
 作業所は相談業務を主とする施設ではない。それでも、資格を取ることで、池田さんは多くのことを学んだ。
「メンバーさんのなかには、ときどき調子を崩して精神科の病院に入院する人がいます。作業所からは見えないメンバーさんの生活の一端を、病院実習で知ることができて、それまでとは異なる視点でメンバーさんを見守ることができるようになりました」


スタッフの喜びは、みんなの“やりがい”を育てること


精神保健福祉士の仕事

 仕事のやりがいは? と尋ねると、池田さんは少し考えてから、こんな答えを返してくれた。
「クッキーは保健所などいろいろな場所へ販売に行っているのですが、販売担当のメンバーさんが、ミーティングで『新商品をお客さんに喜んでもらえて、嬉しかった』と言ってくれました。『嬉しい』『楽しい』といったポジティブな感情を見せない人だったので、その一言がとても嬉しかったです」
 作業所に通う目的は、メンバーさんによって様々だ。働きたい、生活リズムを作りたい、人間関係を作りたい、家以外の居場所を作りたい……等々。スタッフはその思いを把握し、クッキー製造・販売という作業を通して、メンバーさんの抱える課題を解消していく。だが、その成果は非常に見えにくいため、メンバーさんのちょっとした変化を発見したときが、何よりも嬉しいという。
 精神保健福祉士の専門分野である“相談”は、窓口での業務に限らない。作業をしながら、メンバーさんの言葉にならない思いにそっと手を差し伸べて、社会復帰に向けてともに進んでいく。すぎなハウスにおける、精神保健福祉士の本分は、ここにある。
「メンバーさんの病状や個性は様々ですが、共通しているのは、人との関わりを求めて作業所に来ているということ。病気のせいで上手くコミュニケーションがとれない人もいますが、そんな“自分ではどうしようもないこと”を、しっかりとサポートできるスタッフになることが、今の目標です。この仕事はひじょうに奥深いものがあります。これからも勉強を続けて、いつかメンバーさん全員に、“やりがい”や“楽しさ”を感じてもらえたら、最高ですね」


焦らず、自然体で過ごしていれば、やりたいことは見えてくる


 「すでに将来の夢が決まっている人は、がんばって進んでいけばいいと思います。逆に、やりたいことがない、自分が何に向いているのかわからないという人もいるでしょう。進路を考えなければならない時期に、将来の姿が見えないと、焦ったり、落ち込んだりするかもしれません。ですが、私のように何がキッカケになるかわからないのですから、自然体で毎日を過ごしていればいいと思います。焦って将来の仕事を決めなくてもいい。好きなことや、やりたいと思うことを続けていけば、自然と道は拓けてくるものです」


「精神保健福祉士」の仕事について
「精神保健福祉士」の仕事について

 うつ病や統合失調症など、心の病をもつ人々の社会復帰を助けるスペシャリスト。病院や保健所、精神障害者福祉施設など、精神保健福祉士が配置される機関は多岐に渡り、また求められる役割もそれぞれ異なる。代表的な仕事は、生活改善や金銭管理などの日常生活訓練、簡易作業やイベントを通じての社会参加、就職のためのトレーニング、受け入れ先のない長期入院患者に対する退院後の住居探しなど。心の病をもつ人々の症状や環境は千差万別であり、その援助方法や接し方を決定するには、深い観察力と冷静な判断力が必要になる。日本では精神障害者に対する支援が先進国に比べて著しく遅れていたが、近年になって法律の改正が進み、基盤整備がはかられた。まだ新しい資格のため有資格者は少なく、これからニーズが高まっていくことが予想される。

 

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