持続可能な開発目標

3 すべての人に健康と福祉を

すべての人に健康と福祉を

出産時に死亡する女性の数を減らし、新生児や5歳未満の子どもの予防可能な死亡をなくします。伝染病や肝炎や水による感染症、薬物やアルコールの乱用を防ぎ、人々が安価で質の高い医療や薬を得られるようにします。

14 海の豊かさを守ろう

海の豊かさを守ろう

あらゆる海洋汚染を防止し減少させると同時に、違法な漁業や乱獲をなくして水産資源が持続的に利用できるようにします。また、途上国や小さな島国も海洋資源を保全し管理できるように資金や技術の支援を行います。

国際連合広報センター:持続可能な開発目標(SDGs)特集ページ

テーマ

創業の志は、日本人の栄養改善

味の素は、1908年に池田菊苗博士が昆布だしのうま味成分「グルタミン酸」を発見し、それを鈴木三郎助が「味の素®」として発売したことが始まりです。当時の日本人の平均身長は160㎝に満たないほど。そこで「うま味成分を使って日本人の食事をおいしくし、栄養状態も改善しよう」という強い思いから事業を興したのです。これは、「生きとし生けるものの栄養改善をすることで社会貢献していこう」という現社長の言葉にも引き継がれています。

事業を通して3つの社会課題に貢献を

創業100年を機に、味の素グループは企業理念体系を見直して「地球持続性」「食資源」「健康な生活」の3つの社会課題を経営の中心に据え、事業を通して貢献していこうと決めました。食品メーカーとして、健康な生活をめざし、食資源を守り、それを支える地球の健康を維持していくことは何より大事だからです。
そして、味の素と社会との共通価値を認識し拡げていく取り組みを「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)」と呼び、そのなかで3つの社会課題にどう貢献していくかを具体的に示して取り組みを進めています。本業はもちろん、SDGs(持続可能な開発目標)に対する取り組みも、ASVの推進によって実現につながると考えています。

また、メーカーにとってSDGsの12にある「つくる責任」は重要な目標です。それについて社内で議論した際に“おいしい”というキーワードが生まれました。食品科学の技術を使っておいしく、食べやすくする。捨てていた部分を食べられるものに変える。2050年には地球の人口が100億になると言われています。圧倒的な食料不足が心配されていますが、“おいしく”することで世界に貢献できればと考えています。

では、わが社の多様なSDGsの取り組みのなかから、2つの事例をご紹介します。

ASVを推進し社会価値を実現することが、経済価値を創出する

ASVを推進し社会価値を実現することが、経済価値を創出する

取り組み1 アミノ酸でマラウイの子どもたちの栄養改善

社名でもある、うま味調味料「味の素」はアミノ酸からできています。このアミノ酸技術を使って、2009年からガーナ共和国で離乳食の栄養バランスを強化するアミノ酸入りサプリメント「Koko Plus」の開発・製造・販売を行い、離乳期の子どもの栄養改善を進めています。ガーナでは、伝統的な離乳食としてトウモロコシを発酵させたお粥「Koko」が食べられています。しかし、WHOの栄養必要量の基準と照らすとタンパク質や必須アミノ酸のリジンが非常に不足しているのです。

プロジェクトは、現地のさまざまなセクターとパートナーシップを組んで進めました。サプリメントは味の素の食品加工技術とアミノ酸の技術を使って現地企業が生産し、販売は女性自立支援のNGOと協力して地域の女性たちが行います。2016年から本格的な生産・販売を開始し、同時に政府の保健機関と母親たちの栄養教育も始めました。お母さんたちからも「これを使い始めて子どもたちが元気になった」と喜ばれています*。

一方、2015年からは、マラウイ共和国で重度の栄養失調で死に直面する子どもたちのために、栄養治療食を生産する取り組みを始めています。NGOと協働してアフリカ産の穀物にアミノ酸を加えたシリアルバーを開発し、2015年から栄養効果の試験を行っています。これまでも外国の栄養食品を配る支援はありました。しかし、私たちはガーナの取り組みと同様に、その地域にある原料で国内生産し、商品として販売するしくみが作れないかと考えています。そうすれば、現地の人たちの力で活動を持続させていくことができるからです。
現在、世界では約20億人が栄養不足で、途上国では5歳未満の子どもが毎年310万人も命を落としています。私たちの技術でできることは、まだまだあると思います。

*「Koko Plus」の事業は、2017年より味の素ファンデーションに移管

▼子どもの発育を決める「最初の1,000日」の栄養

子どもの発育を決める「最初の1,000日」の栄養

ガーナでは、主に生後6か月以降の離乳期の栄養不足が原因で、2歳児の約30%が低身長に

▼ガーナの離乳食「Koko」を作る母親

ガーナの離乳食「Koko」を作る母親

ガーナの離乳食「Koko」を作る母親

▼マラウイで試作されたシリアルバーとそれを食べる子ども

マラウイで試作されたシリアルバーとそれを食べる子ども

マラウイで試作されたシリアルバーとそれを食べる子ども

取り組み2 生態調査で持続可能なカツオ漁を

日本の食文化である鰹だし、それを家庭で手軽に味わえるのが「ほんだし®」です。私たちは2006年から鰹節の原料、カツオの持続可能な資源利用のための取り組みを始め、国の機関や研究所、大学などとともに「太平洋沿岸カツオ標識放流共同調査」を行っています。
味の素グループは日本でもっとも鰹節を使っている企業です。日本の鰹文化を守るのは、わが社の使命とも言えるでしょう。「ほんだし®」を作り続けるためにも、カツオの調査は事業として率先して取り組んでいます。

じつは、カツオの漁獲量は1990年代から今日まで約10倍にも増えています。その理由は安くて便利なツナ缶。その消費が世界的に伸びているんです。ただ、日本近海のカツオ漁獲量は減少していて、その原因を考えたときにカツオの生態調査がきちんと行われていなかったことに気づきました。そこで、カツオの生態を科学的に調査し、それを国際的な資源保護の枠組み作りにも活用していこうと考えたのです。カツオは再生産性が非常に高く、きちんと管理・利用すれば今後も優良な食資源になります。そのためにも調査が大事なのです。

生態調査はカツオの体に小さな記録型電子標識をつける「バイオロギング」という方法で行います。標識をつけたカツオを放流し、回遊や摂食行動の詳細なデータを採るのです。カツオは体が小さいため既存のマグロ用標識は使えませんでしたが、最近になって小型の電子標識が開発され調査が実現しました。
標識をつけたカツオの回収には、「網にかかったよ」と知らせてくれる漁師さんの協力も欠かせません。先日も沖縄県与那国で調査をしましたが、ハーリーという与那国の舟のレースに参加するなど、全国の漁師さんに「味の素の仕事なら協力するよ」と言っていただけるよう信頼関係を育んでいます。

調査の結果、いろいろなことが分かってきました。たとえば、初鰹。これは昔から黒潮にのって泳いでくるというのが定説です。しかし、データを見ると太平洋から何群かが並行して北上している。いずれも、カツオが好む25℃くらいの海流に沿って泳いできて黒潮と合流するんですね。それが、あたかも黒潮に沿って泳いでくるように見えていた。こうした調査を積み重ねれば、どの時期どの地域で漁をするのが資源管理上、最適かも分かってくるはずです。

カツオに手のひらサイズの記録型電子標識をつけて放流し、データを採る

カツオに手のひらサイズの記録型電子標識をつけて放流し、データを採る

カツオに手のひらサイズの記録型電子標識をつけて放流し、データを採る

カツオの北上ルート(推定)

黄色いルートで北上したカツオが、黒潮(赤)の流れに合流してから捕られていたため、
あたかも“黒潮にのってきた”ように見えていたのかもしれない

SDGsも社会貢献も、志があればどこでもできる

SDGsは人類共通の目標です。だから、基本的にはどこにいても関わることができます。与えられた仕事がSDGsとどうつながっているか、自分で考えればきっと見えてくるし、それはNPOだろうが政府機関だろうが企業だろうが関係ありません。
また、社会貢献=NPOと決めつけることもない。むしろ、企業でビジネスや組織の経験を積んでからNPOに入った方が、視野は広がるのではないでしょうか。実際、海外では自分の専門性を軸に、NPOや企業を渡り歩いている人が多いと感じます。最初から枠を作らずに、志を大事にして楽しく仕事できる場をつくって欲しいと思います。

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長谷川 泰伸 さん

味の素株式会社 グローバルコミュニケーション部CSRグループ長

長谷川 泰伸 さん

私は1986年に味の素(株)に入社しました。受験生のころ、人間にとって大事なものは何だろうと考えて、やはり食と生殖と教育じゃないか、それなら食に関わることをやろうと大学は農学部に進み、食品化学を学びました。仕事も食に関わりたいと考えて味の素に入り、しばらくは基礎研究所で有機合成や油脂の研究に従事し、その後いくつかの業務を経験し現在に至ります。今の部署ではCSR・環境報告書や環境イベントの制作をはじめ、環境や生物多様性、次世代教育、SDGsなどの取り組みに関する情報を社内外に発信し、コミュニケーションの場を作る仕事をしています。

教授Profile

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