持続可能な開発目標

14 海の豊かさを守ろう

海の豊かさを守ろう

あらゆる海洋汚染を防止し減少させると同時に、違法な漁業や乱獲をなくして水産資源が持続的に利用できるようにします。また、途上国や小さな島国も海洋資源を保全し管理できるように資金や技術の支援を行います。

15 陸の豊かさも守ろう

陸の豊かさも守ろう

森林や山地、湿地、乾燥地などあらゆる陸域の生態系を守り、持続的に利用できるようにします。保護の対象となる生物の生息地を守り、違法な取引をなくします。生態系と生物多様性の価値を認め開発計画や会計にも反映します。

国際連合広報センター:持続可能な開発目標(SDGs)特集ページ

テーマ

主権国家のない南極や深海底は、誰が守るのか

地球環境や持続可能な開発の問題を研究しています。地球環境は、大きく気圏・水圏・地圏に分けられます。国際関係の視点で見れば、南極大陸などを除く地圏は領土国家に支配されています。水圏は「領海」や「排他的経済水域」や「公海」に分けられ、気圏も地圏や水圏と同じような境界を持ちえます。深海底にある資源は国連によって“人類の共通財産”と定められています。

SDGsは“誰も取り残さない”持続可能な開発目標です。「人間(社会)」「開発(経済)」「環境」という3つのテーマの課題と、それを持続可能な社会に導く「ガバナンス(統治)」のあり方について17のゴールを決めています。
世界の国々が、その達成をめざして取り組みを始めていますが、領有権のない南極や公海、深海底に関するSDGsは誰が責任を持つのでしょうか。さらにSDGsは、その前文で“母なる大地の権利”を謳っていますが、人間以外の生き物に対する責任はどう考えればいいのでしょうか。このような問題も、国際関係やグローバル研究の視点で見ると解決の糸口が見えてきます。

国内問題から国際問題へ変化した環境問題

ためしに、環境問題を国際関係的視点から見てみましょう。
まず、1960年代に社会問題となった公害は、国(領土、領空、領海)の中の問題です。日本でも公害対策基本法が作られました。しかし、たとえば大気汚染を安く早急に解決するには、煙突を高くして遠くに排煙を飛ばしてしまえば、とりあえず自国の環境基準をクリアできます。
しかし、その結果、他国に影響が出たとします。欧州の工場排煙によるスウェーデンの酸性雨や中国からのPM2.5 による韓国や日本への大気汚染といった問題です。これは国際問題になります。1972年にはストックホルムで初めて「国連人間環境会議」が開かれ、地球環境問題をどうすべきか議論しましたが、開発を優先する途上国と先進国の主張はかみあいませんでした。

80年代に入ると環境問題の世界化が始まります。先進国は国内の環境基準が厳しくなるにつれ廃棄物を国外に出し始めます。途上国は利益を得るためにその受け皿になりました。その結果、途上国の環境汚染や健康被害が問題となります。1982年には「国連環境計画」の特別管理理事会がアフリカ・ナイロビで開かれ、途上国の環境問題が注目されることになりました。

1992年にはブラジルのリオ・デ・ジャネイロで「国連環境開発会議(地球サミット)」が開かれます。気候変動や生物多様性などの地球環境問題がグローバルな課題として取り上げられ国際的な行動計画が採択されました。しかし、それらの課題の解決は国ごとの責任とされました。一方、公海やオゾンホールなど国の主権の及ばない地域については、まさにグローバルな問題として議論されています。

こうしてみると、自国のことであった環境問題が国際化し、さらにグローバル化するにつれて、そこに関わる関係者も課題も変化してきたことがよく分かります。

環境と開発に関わる関係者のイメージ

環境と開発に関わる関係者のイメージ
市民社会と市場経済と国家が互いに関係しながら開発を行う

SDGsの持続可能な開発のイメージ

SDGsの持続可能な開発のイメージ
守られた持続可能な地球システム(環境)のなかで、
社会と経済が開発を行う

規則やコストだけでなく、たがいの関係性から問題を解く

では、具体的な事例を使ってさらに問題の関係性を考えてみましょう。
ある国で大規模な海洋汚染が起きて魚が大量死し、漁業はもちろん観光にも大きな被害が出ました。政府は当初、これは赤潮による自然災害だと発表しました。しかし、調べていくと、汚染は工場からの排水が原因だと分かりました。しかも、その工場は先進国の企業がその国を支援するために建設したもので、技術支援や雇用拡大、将来の産業振興までが期待された国家プロジェクトによるものだったのです。

この事例では、企業がコストを優先して廃棄物処理や施設の施工を安く上げたために問題が生じたと見られています。つまり、環境を守るための規則や基準を整備しても、一方でそれを達成するしくみや監視も必要ですし、そのためには人や設備の投資も必要です。さらには社員の意識や雇用環境も関係してくるかもしれません。それらを1つずつ解きほぐし、解決策を考えていくのです。

また、私たちの身近なところにも国際関係を考える素材はあります。ICUの大学食堂やカフェテリアでは3種類のコーヒーが売られています。普通のコーヒー、適正な取引で仕入れて途上国に貢献するフェアトレードコーヒー、熱帯雨林を破壊せずに生産するレインフォレスト・アライアンスコーヒーです。環境保全や持続可能な開発に貢献しようと、学生たちが主導して交渉を行い販売を始めました。 しかし、実際にそのコーヒーを学生たちが買わなければ事業は成り立ちません。そこには、経営の視点や消費者のニーズの視点も必要です。学食では普通のコーヒーを100円、フェアトレードコーヒーを130円、レインフォレスト・コーヒーを150円で売っています。ある学生は、その活動を取り上げて、環境や途上国に配慮した商品の価格が、どのくらいであれば消費者に受け入れられるのかを経営学的に考察しています。

環境や生態系を守ることには誰もが同意するでしょう。しかし、それを達成するには、そこにどんな関係性があり、どうしたら効率よく機能するかを考えることも重要です。

学食のフェアトレードコーヒーと、カフェテリアのレインフォレスト・コーヒー販売

学食のフェアトレードコーヒーと、カフェテリアのレインフォレスト・コーヒー販売

学食のフェアトレードコーヒーと、カフェテリアのレインフォレスト・コーヒー販売

平和と開発の関係に気づかされたパラオの非核憲法

私が国際関係に関心を持った原点は、小学生の時に行った大阪の万国博覧会です。広い会場内で迷子になって、ハワイ館の人に助けてもらいました。そのとき「世界っていいな」と思いました。小さな出来事ですが体験としてはとても大きかったんです。

でも、そのころから世界は冷戦時代に入り、核の問題などが議論され、私も高校生のころには平和と安全保障に関心を持つようになっていました。
大学では国際関係論を学び、世界で初めて作られた「非核憲法」について調べようと、ミクロネシアのパラオ共和国に行きました。そこで目にしたのは、アメリカの援助漬けになったパラオの姿でした。第1次世界大戦後から日本の統治下にあったパラオは、日本の敗戦後はアメリカに信託統治され、軍事的な要地として利用され援助漬けになっていたのです。

非核憲法を作っても経済的な自立がなければ平和にはならないと思い知り、松下政経塾で政治を学んだり、国際大学大学院で外交問題を研究したり、さらにJICAでODAの現場も経験しました。
そして、日本のODA大綱のモデルとなったカナダの開発援助政策を学ぼうとカナダの大学に入ったところ、カナダ人で地球サミットの事務局長も務めたモーリス・ストロング氏に出会ったんです。そこで、これからは環境だと感じ、環境問題や持続可能な開発について研究を始めました。振り返れば、まさにSDGsのテーマを渡り歩いてきたわけです。

人、国、自然、社会、経済のつながりを忘れずに

私は神奈川の湘南の海を見て育ちました。子どものころは、この広い海の向こうにはどんな世界があるのだろうと、いつも思っていました。私たちが立っているのは“地球”ですが、宇宙から地球を眺めれば、それは“水球”かもしれません。

先日、大学入学前の高校生たちと、ICUの31の専修分野とSDGsがどう結びつくかを考えるワークショップを行いました。あわせて、SDGsを他人事ではなく“自分ごと化”するためのキャッチフレーズも作りました。高校生らしいフレッシュな感性で、すばらしいキャッチフレーズがたくさん生まれました。
SDGs達成の目標は2030年です。そして、その世界で活躍する主役は皆さんです。常に視界を広くして、いろいろな人、国、自然、社会や経済がつながり合っていることを忘れずに、持続可能な世界を創造し、実現していきましょう。

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毛利 勝彦 教授

国際基督教大学 教養学部長

毛利 勝彦 教授

私の専門は、国際関係学とグローバル研究です。国際関係学は国ごとに色分けした世界地図の視点から、グローバル研究は国境のない地球儀の視点で世界を考える学問です。授業では、おもにグローバルガバナンス論を担当しています。現在の国際関係は、紛争、人権侵害、貧困や環境破壊など、多くの課題を抱えています。それらを解決するためには何をすべきか、どのような制度や組織、政策が必要か、広い視点で考察しています。 近年は、地球環境と持続可能な開発について、とくに気候変動や生物多様性保全、森林、淡水や海洋をめぐる関係に注目しています。

推薦図書

『Big World, Small Planet』 J.ロックストローム他共著(Yale University Press)

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