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歴史学・地理学の分野

歴史学・地理学の分野

人間の文化や社会を「時間」で切り取る歴史学、「空間」から捉える地理学。最近のブームの“文化学”との関連性のなかで考えると捉えやすい。が、地理学は理系色もあり、やや異質

分野の特徴

現代に生きる視点から人類の歩みを振り返る「歴史学」

 歴史学は、人類が刻んできた“足跡”をあらゆる角度から検証する学問です。
 人類の転換点となる大きな出来事(戦争や革命、発見・発明)、国々の興亡をはじめ、昔の人々の生活、社会状況などを分析し、個々の事柄にどんな関連があるのか、現在から振り返ってどんな意味をもつのかなどを考察します。いわば、人間の文化や社会を「時間」という軸で切り取って分析する学問といえます。
 ギリシア時代にまでさかのぼる古い学問なので、しっかりした理論的枠組み、研究手法が確立しています。そこで、先人が残した研究の土台の上に新しい視点を導入し、独自の歴史像を描くことが目標となります。
 各時代の政治権力や経済など大きな要素を扱う「政治史」「経済史」と、民衆の生活文化などにスポットを当てた「文化史」に大きく分かれており、古代・中世・近現代という時代区分、あるいは国や地域の区分により「西欧近代政治史」「日本中世文化史」などに細分化されます。

自然や社会条件から地域文化の多様性に迫る「地理学」

 地理学は、世界の国や地域に暮らす人々の生活、文化、社会、経済といった要素を、その地域と関連づけて研究する学問です。いわば、人間の文化や社会を「空間」の視点から分析する学問です。
 一口に地理学といっても、研究手法はさまざまで、自然地理学、人文地理学(この両者は合わせて系統地理学と呼ばれます)、地誌学という3つの分野に大きく分かれています。
 日本では伝統的に「地誌学」が主流で、全国の土地ごとの風土や生活文化を《地域性》との関連で記録していく研究が中心でした。近年では、地形や気候、人口や産業、経済などあらゆる要素を総合して体系的に分析する「系統地理学」の分野が大きな発展を遂げています。これは、地形や気象の観測、統計データの分析など、理学的な手法を駆使する学問領域です。さらに、地域文化を守るためには、あるいは街を活性化するためにはどうすればいいか、という実践的なテーマを扱う研究もあります。

何を学ぶ

人間の未来ために、人類の足跡を資料や調査で検証する

 大学の「歴史学」は、歴史上の出来事や人物、年代など知識を覚えて、時代の流れをつかむ高校までの歴史の学習と異なり、自らの足と手を使って史料を集め、各時代の社会状況を新たに捉えなおすことが中心課題となります。
 そのために、基礎課程では、文献資料の検索法や古文書の解読法、遺構や建築物などの史跡調査の方法(測量や発掘)といった実践手法を身につけます。そのうえで、政治体制の変化、経済や産業の変転などその時代の大局を捉える科目、生活実態と社会風潮、事件や災害、文化と風俗といった歴史の細部に関する科目を学び、そのうえで、時代区分(古代・中世・近代・現代)ごと、あるいは国や地域ごとに研究領域の中から特定の専攻テーマを選びます。大学では、単に「過去を知る」だけでなく「過去から学ぶ」こと、つまり、人類の現在・未来を考えるための指針と発見するという、目的意識をもって取り組むことが大切です。

衛星画像の分析と測量などの野外調査が同居

 大学の地理学では、高校で習う各国(地域)の多様な暮らしや文化を理解することに留まらず、それらの文化や暮らしの背景にある要素が何か、つまり各地域の社会や生活が「なぜそうなったのか」という理由を解明することが大きな課題となります。
 そのため授業では、「人文地理学」「自然地理学」の概論を学ぶ一方で、野外観察や地形測定、地図製作などの調査や実験に関する実践的な技法も学びます。最近は、地形データや衛星画像などを用いたコンピュータによる分析手法が主流になっていますが、現地に出向いての調査や測量などを行うフィールドワークも重視されます。.
 専門課程では「文化系(≒人文地理)」あるいは「環境系(≒自然地理)」のいずれかの分野を選んで基幹領域を学ぶケースが多いですが、具体的なテーマを決めて実際に現地に赴き、調査、測定、聞き取りをしてレポートを作成するのが、一般的な学習のスタイルです。