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社会科学系統

経済学の分野

経済学の分野

モノやサービスを交換するしくみ=「生産→流通→消費」の観点から、世の中の人々のより良い暮らしを探求する分野。数理的な要素が強いこと、国際的な視点が重要なことが二大特徴

分野の特徴

現代社会を支える経済原理を、理論的に研究する

 経済学は、モノやサービスを交換するしくみである「経済」を研究する学問です。
私たち現代人の生活は、「生産→流通→消費」という経済の大きなサイクルによって支えられています。
 もともと物資の大半を自分たちで生産し、余った生産物を交換していた人間は、やがてお金を介した「交易」を発展させました。売るためのモノ=商品の生産と流通が、大きく発展したのは、近代以降です。新大陸の発見でたくさんの新しい《モノ》が西洋に持ち込まれ、同時に新大陸に暮らす移民たちが新しい《市場》をつくったわけです。現代日本で暮らす私たちは、衣食住や趣味、学習に使うモノ、交通や各種のサービスなど、日常生活を営むためのすべてを、経済のサイクルを利用して入手しています。
 経済学は、このようにネットワークや交通の発達により地球規模でつながれた現代社会の複雑な経済現象を分析し、新しい理論体系を打ち立てることをめざしたアクティブな学問といえます。

現実経済のダイナミズムを数理モデルによって解明

 市場経済は、近代国家の生成とともに飛躍的に発展し、さらに産業革命や20世紀後半の情報通信革命といった社会変革を通じて、常に規模を拡大してきました。また経済は、常に政治や社会現象から大きな影響を受け、周期的に好況と不況の波を繰り返しています。現在では、世界のどこかで起きた出来事の影響が世界中に波及し、各地で大きな潮流を生み出して、経済危機や大恐慌につながることもまれではありません。
 そこで、複雑な経済現象の解明には、歴史や政治、国際関係など、社会を構成するあらゆる要素を考慮する必要があります。こうした経済現象と個別要素の分析から原理となる「モデル」を導き、これを用いて実体経済の分析を行うのがオーソドックスな経済学の手法です。最近ではコンピュータを用いたシミュレーションもよく用いられます。したがって、社会科学系統の中では数理的な要素が強く、数学、統計学が重要になることも見逃せない特徴です。

何を学ぶ

経済のダイナミズムを二つの基本原理から理解する

 経済学では、最初に《ミクロ経済学》《マクロ経済学》という経済研究の基本領域(原理)を理解する必要があります。ミクロ経済学では、市場におけるモノの価値(価格)を決定する原理、効率的に利潤追求を行う企業の活動、家計と消費活動など、個々の経済活動について主として扱います。マクロ経済学は、景気の調整や公共政策など、政府や行政の市場への介入、国民所得の成り立ち、外国為替や金利の問題など、国の規模での経済活動や現象を分析する分野です。
 この二つ基本原理を土台に、たとえば、貿易や国際金融など国際経済の側面、財政・金融・公共経済など政策の側面、企業の組織や雇用・労働の側面、さらに経済史のジャンルなど、経済活動のさまざまな項目を幅広く学びます。これらの学習を通じ、日本の経済の特徴はなにか、世界の経済社会ではどんな現象が起きているのかといった多角的な視点から経済を捉え、経済はどんなしくみで動くのか、というメカニズムを理解していきます。

《経済》の視点から、現代社会の諸問題解決に取り組む

 経済学の目標は、社会生活の効率を追求しながら、富を公平に分配することであり、経済学ではそのための条件を追究し、未来の社会、産業、人間生活のあるべき姿を予測することを大きな研究課題としています。したがって、経済動向を示す指標やデータを読み解く能力、データを自由に駆使して現実の経済現象を正確に分析し、将来を見通す洞察力が重視されます。そのための強化ツールとして、数学を基礎とした「統計学」「計量経済学」など重要科目であり、必修科目としているケースが大半です。
 これらの学識のうえに立って、現代社会が抱える諸問題に対して、経済学的な視点の分析を行います。具体的な応用例には、景気変動・財政・年金など国の政策に関するもの、住宅や交通、ゴミとリサイクル、年金・医療問題など私たちの生活に関わるもの、さらには先進国と発展途上国の経済格差、環境破壊、人口爆発、食糧危機など国際的なテーマもあります。