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理学系統

数学の分野

数学の分野

論理的思考によって、数・形・集合などの抽象的な概念の構造と原理(性質)を解明する理系の「哲学」。近代科学の土台となる基本的概念や定義、論理、推論の方法を研究する

分野の特徴

現代の科学で用いる理論や基礎概念、計算法を研究

 数学は、数や図形、集合といった抽象的な概念を取り上げ、それぞれの構造と原理、関係性などを論理的に追究していく学問です。
 測量や金銭の計算、暦などの日常的な知識として生まれ、人間がもつ知的好奇心を原動力として近代に大きく発達した領域であり、観察や実験よりも、専ら人間の思考によって組み立てていく独特な手法を採ります。
 数学によって構築された図形の公式、あるいは計算方法、確率の概念などは、現代において、自然科学の理論を検証するための重要なツール(道具)として、現代の科学技術を支えています。
 数学の研究領域は、大きく《純粋数学》《応用数学》という2つに分かれています。
純粋数学は、代数・幾何・解析という数学の3つの基礎体系を形作る分野です。また、応用数学は、確率論、統計学、情報数学など数学理論を他の科学へ応用する分野で、工学や経済学といった学問の中での、数学的な問題も研究対象となります。

計算機理論の発展により新たな数学領域も広がる

 数学の世界は、20世紀のコンピュータの登場で大きく姿を変えました。
 コンピュータが得意とするのは「高速演算」です。きわめて高い演算スピードにより、大量のデータ処理や複雑な計算が短時間でできるようになりました。また、複雑な演算を組み合わせた高度なグラフィック技術により、それまで研究者の頭の中だけにあった数学の概念を、目に見えるカタチとしてイメージできるようになりました。
 数学は論理だけの世界であり、実社会と関係がないように考えられていますが、たとえば、個々の要素の数的分布を調べることで、集団全体の傾向や性質を導き出す「統計論」、コンピュータ理論の基礎となる「離散数学」など、実際に世の中の役に立っている応用分野はいくつもあります。
 また、近年は難解な数学的命題の解決がニュースになっていますが、人間の知的好奇心によって、難解な命題を解決し、知の枠組みを変えていく、スリリングな学問といえます。

何を学ぶ

論理思考力を磨き、新しい定義や法則を導き出す

数学の大きな柱は、代数学、幾何学、解析学という純粋数学の理論体系です。
 基礎課程では、これらの体系を、次のように基礎から学んでいきます。
・ 代数学:数の性質を(数の概念を拡張した集合も含めて)文字記号に置き換えて考えます。
・ 幾何学:曲線や曲面などの図形を対象とし、「位相」という概念により、図形の性質を精密に調べます。
・ 解析学:連続して変化する量を分析対象とする微分・積分を中心に、「極限」の概念によって高度な方程式の定義、解法を研究します。
 大学での授業では、高校までに学習してきたような法則や理論を「学ぶ」のではなく、自明と思われる定義・法則を検証し、より厳密に再定義したり、原理や法則から新しい定理を「導き出していく」過程が重視されます。いわば、道具としての数学の基礎を修得するとともに、数学的な論理思考力を身につけ、その概念や定理を自由に使いこなせることが勉強の目標となります。

数学理論を当てはめて、自然現象や社会現象を解析

 一方、応用課程では、実社会で起きる現象や、学問の世界が抱える数学的な問題にアプローチするのが課題で、いわゆる「社会の役に立つ」数学を指します。
 たとえば、人間の感覚では不確定のようでも、回数を重ねたり要素を増やしたりすることで明らかな法則性が発見できる「確率論」、個々の要素の分布を調べることで、集団の傾向や性質を導き出す「統計論」、整数のように“離散的”(連続しない、数えられる)な数値を扱う「離散数学」などの科目があります。とくに離散数学は、数学の問題を解決するためのアルゴリズム(計算法)、暗号や符号理論など、コンピュータ科学の基礎分野として、非常に重要視されています。
 数学の授業は、簡単な問題を解きながら基本的な定義と解法を修得する「演習」、学生代表による発表と質疑応答、討議により理解を深めていく「ゼミ」、外国語の文献を輪読する「原書講読」など、少人数スタイルで行われるのが中心です。