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理学系統

物理学の分野

物理学の分野

自然界に生起する興味深い諸現象を実験と観察とデータ分析によって実証的に捉え、その運動や物質の構造や重さといったものの、基本原理と法則性を解明する科学のなかの科学

分野の特徴

自然への好奇心から生まれた真理探究の学問

 物理学は、自然界に起きているいろいろな現象を解明する学問です。
 身近な物の重さや動き、月や星、太陽などの天体運動、あるいは熱、光、音、波など、人間の五感によって体験できる現象は、古くから人間の知的探求心の対象でした。たとえば「なぜ太陽や月は空に浮かんでいるのか」とか「熱はどうして伝わるのか」といった人間の素朴な疑問に端を発し、科学者あるいは哲学者(近代以前は両方に区別はありませんでした)が洞察と思考を巡らせて、その真理を追究しようとしてきました。
 近代になって、実験と観察、データ分析によって仮説を実証していく科学的な手法が確立したことにより、物理学の分野は急速な発展を遂げ、今では精緻で合理的な理論体系が構築されています。
 自然を構成する個別の要素から一つの法則性を導き出したり、観測データを積み上げ、理論と計算によって宇宙の構造を明らかにすることが、物理学の研究スタイルです。

ミクロから宇宙の世界まで統一的な説明理論をつくる

 物理学の研究領域は、その対象や手法によって次の3つに大きく分けられます。
1. 物質の微細な構造に注目し、これ以上分けられない究極の物質を解明する分野:「素粒子物理」「原子核物理」など
2. 物質の特性を解明する分野:「物性物理」など
3. 宇宙の起源や構造を解明する分野:「宇宙物理」「プラズマ物理」など
 物理学の対象は、直接手に取れる物や目に見える現象から次第に範囲が拡大し、今では、地球から何十億光年という距離のある宇宙や、何十億分の1から1兆分の1という目に見えないミクロの世界までを扱うように発展してきました。
 このように人間が体験や操作を行うことが難しい物や現象についても、論理思考の積み上げや、モデルを用いたシミュレーションによって原理の解明を試みるのが物理学の手法です。それにより、ミクロからマクロ(全宇宙)までの現象を統一的に説明できる理論体系を構築することが究極の目標となります。

何を学ぶ

物理現象研究の基礎を固める4つの基礎理論と物理数学

 大学においてはまず、物理学でもっとも基本的となる「(古典)力学」「電磁気学」そして、この2分野とともに現代物理学の体系を形作る「量子力学」「熱・統計力学」「物理数学」を学びます。
 “力学”では、人間が知覚できる「マクロ世界」で働く運動法則ついて学びます。“電磁気学”では、電場や磁場という、私たちの周りに存在しながら目には見えない概念を扱います。“量子力学”では、電子や原子をはじめ人間の直感で捉えられない「ミクロ世界」の運動法則を学びます。“熱・統計力学”は、「熱」という現象の古典的な理解と、量子力学が融合されて生まれた新しい領域です。また“物理数学”では、物理の法則の数学的な記述法と計算法を学びます。
 授業は、教員の指導により基本概念と理論を学ぶ「講義」、講義の内容を計算やモデル解析によって理解する「演習」、さらに物理的現象を実証的に観察し、実験技術を修得する「実験」の3種類の形態で行われます。

自然界の現象ごとに特化して詳しく学ぶ専門過程

 物理の学習では、上記の学習の積み重ね、つまり、何よりも基礎となる概念や考え方をしっかりと体得することが先決です。そのうえで、自然界を取り巻く個別の現象を扱う専門課程(○○物理学と呼ばれる)に分かれて、より深く学んでいくのが手順になります。
 専門科目としては、物質の微細な構造や性質を物理学の手法で解明する「物性物理学」、ミクロな世界の現象を、素粒子や核という概念を用いて解明する「素粒子物理学」、磁気やプラズマ現象、核融合など、宇宙で起きている現象を捉えて、宇宙のしくみを解明する「宇宙物理学」、さらに、生物の身体を構成する分子の構造やはたらきを、物理学の手法で解明する「生物物理学」などがあります。
 最近の物理学では、宇宙やミクロの世界など、操作や実験が行えない研究対象を扱うため、数理モデルを作って、シミュレーションによって検証や分析を行いますのでコンピュータ利用法を身につけることも大切な学習です。