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理学系統

広域科学の分野

広域科学の分野

呼び名のとおり“幅広い自然科学の手法を総動員”して、長期的研究テーマ、将来の開発につながる科学研究のシーズを育てる先進的理学分野。個別科学を横断するシステム学の色彩も

分野の特徴

広い視野に立ち、新しい理学の学問領域を開拓する

 広域科学は、自然科学の研究に残された大きなテーマに取り組む学問です。
 近代的な科学の方法論が確立して以来、自然科学の研究は、数学・物理学・化学・生物学・地学という研究手法を異にする5つのジャンルで進められてきました。これら伝統的な理学の分野では、それぞれの領域を深く掘り進むことで真理に近づくとともに、各分野の理論を体系化してきました。
 しかし、研究ジャンルを分担することは効率的である反面、専攻の細分化は「タコつぼ化」ともいわれる弊害を生んでいます。それぞれの研究者が自分の研究に閉じこもって他人の研究に関心をもたない、複数の専攻にまたがる領域の連携研究が進まないといった問題です。
 広域科学は、文字どおり“広域”の(幅広い)理学領域を融合させる学問分野で、いろいろな理学研究者が専門知識や技術をもち寄り、長期的な展望をもって基礎的な理学をじっくり研究する、というまったく新しい学問手法をとります。

長期的な視点から、将来への科学研究のシーズを育てる

 この分野の研究内容は、専門研究の相互連携、長期的な視点による研究という点で共通しています。テーマは複数領域にまたがるものが多く、また、工学技術への応用や新物質の開発など、一定のめどをもって行う研究が中心ですが、“研究の到達点が見えない”ような、いわゆる研究のシーズ(種)を扱うこともあります。将来に何か役立てたい、というビジョンのもとに進められる研究は、数年先から長いものでは数十年先というロングスパンのものもあります。
 大学によって、いろいろなバリエーションがあります。たとえば、“緩やかな専門化”を掲げ、多くのジャンルから専門研究者を集めて、専攻に偏らない横断的な研究を行うもの、あるいは、自然現象(宇宙、生命、生態系など)だけでなく、社会現象から人工的なシステム(情報システムなど)まで、あらゆる研究対象を《システム》という一つの視点から捉える研究もあります。

何を学ぶ

複数の理学を横断的に学習し、柔軟なセンスを獲得

 学ぶ内容や教育目標は大学によってさまざまですが、基礎課程で、数学・物理学・化学・生物学・地学という理学5分野の概論を並行して学び、各分野の基本的概念と総合的な思考力を倍養する点では、多くの大学に共通した部分です。
 全理学が対象だけに、専門課程でも、多様なバリエーションがあります。たとえば、国立大学の理学部に多い「理学科」「自然システム学類」では、1つまたは2つの理学分野をベースとし、いくつかのコースが用意されています。一般にコース間の垣根は低く、また、他コースの科目も幅広く学べるなど、双方向的な履修スタイルが採用されています。専攻分野に閉じこもらない柔軟な思考力、応用力を養うことが可能です。具体的には、数学の応用分野である《数理》、化学・物理学を基礎にした《物質》、生物学にウェイトを置いた《生命環境》、化学・生物学・地学を融合した《地球環境》などのコースがあります。

基礎から応用まで一貫学習し、新機軸の大テーマに挑戦

 広域科学を学べる大学のなかには、教育と研究の緊密な連携を図り、壮大なテーマに立ち向かう体制を整えているケースが増えています。
 大学の学生と教員、大学院の院生と研究者たちが集合してチームを築き、学部から大学院・研究機関まで一貫して学んでいけるスタイルで、「長期的なスパンで、基礎的な研究を行う」「新しいフロンティア分野に挑戦する」「理学から工学への橋渡しをする」といった新機軸の教育を行っています。
 たとえば、工学部に設置されている「応用自然科学科」は、このうちの“橋渡し”型の代表といえます。工学系に近い学問名を冠した「応用化学」「応用生物工学」「精密科学」「応用物理学」の各コースが設けられ、自然現象のしくみをミクロの視点で解明し、その背景にあるメカニズムを工学技術に応用するための基礎を築くことを目標としています。