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系統別学問内容リサーチ

工学系統(商船系統含む)

工芸学・工業デザインの分野

工芸学・工業デザインの分野

製品や印刷物、家や店舗、公園や道路などを対象に、人間の感性や感覚に訴える「美しさ」を創造するデザイン表現を追究する分野。機能性やコストと「美」の調和が求められるのが特質

分野の特徴

美しさ・機能性・使いやすさが調和するデザインを追求

 工業製品や広告デザイン、店舗の内装など、社会や産業のいろいろな場面で“役立つ”デザインを生み出す分野です。
 主に工業や商業の世界で、製品として生み出されるデザイン、商品のイメージを伝える目的でつくられるデザインには、芸術で求められる「美しさ」だけではなく、製品の機能と調和し、使いやすさ、耐久性といった要素も大切です。
 工業製品、広告・出版物、店舗などの空間を扱う「工業デザイン」と、日用品や食器、雑貨、アクセサリーなどを作る「工芸学」の2つを合わせた研究領域です。
 このうち、工芸学には、使用する素材によって、木工芸、金属工芸、陶芸、染織(染め物)、ガラス工芸などの分野があります。さらに最近は、プラスチックなどの樹脂素材も盛んに利用されています。いずれも、生活の中で「使う」モノなので、技術的美しさ、芸術的要素に加え、機能的な側面(肌触りや使いやすさ、丈夫さなど)が重視されます。

工業製品のほか、印刷・立体物など多様な造形をつくる

 工業デザインは、幅広い研究領域を含んでいますが、大きく整理すると、主に作り出すモノによって、次の5つに分類できます。
1. 「プロダクトデザイン」…製品のデザインを研究する領域。工場で生産されるモノのデザインで、この分野で基本のジャンルといえます。
2. 「視覚デザイン」…主に印刷物として制作される《エディトリアル》《グラフィック》をはじめ、《写真》《映像》などを扱う領域。
3. 「ファッションデザイン」…衣服や服飾製品を扱う《アパレル》、布地を扱う《テキスタイル》が含まれます。家政系統の被服学の分野と近い領域です。
4. 「環境・空間デザイン」…家庭・店舗・オフィスの内装を扱う《インテリア》と、イベントや広告スペースの装飾を扱う《ディスプレイ》があります。
5. 「福祉デザイン」…高齢者や障害者に向けた使いやすい製品、見やすいデザインをつくる新しい研究領域で、「ユニーバーサルデザイン」とも呼ばれます。

何を学ぶ

造形の「美しさ」を創造するセンスと文化を広く学ぶ

 この学問分野では、《プロダクト》《環境・空間》《視覚・情報》といったデザインの領域ごとにカリキュラムが編成されているのがふつうです。ただし、基礎領域であるデザイン理論やデザイン技法に関しては、学習する内容はほぼ共通しています。また、デザインについての視野を広げ、新しいデザインの創造、企画のための総合力を養う《デザイン文化》の領域、たとえば「デザイン社会学」「デザイン文化史」「美学・美術史」などの理論分野についても、大半の履修科目が共通しています。
 デザインの基本技法を学ぶ科目には、デザインの立体イメージを伝達するための技法を学ぶ「図学」「製図法」、素材の化学的知識と加工技法について学ぶ「デザイン材料学」、さらにはデザインを構成する色と形についての概念、基本原理を講義と実習を通して理解する「造形理論」「造形計画」「色彩計画」などがあります。

アピールの対象である「人間」の知覚・記憶について学ぶ

 専門では、各領域ごとの高度なデザイン技法が中心となりますが、理論分野として、人間の身体のサイズや動作、姿勢など、デザイン設計のなかでの《人間》の要素を扱う「人間工学」、知覚や思考、記憶のしくみを学ぶ「認知工学」、さらに、高齢者、障害者、子供などの安全と利便性に配慮したモノづくりを考える「ユニバーサルデザイン」といった科目を履修します。
 各領域のために設置した科目もあります。プロダクトデザインでは、物理学の力学分野を基礎として、メカを造形するための運動理論を学ぶ「機構学」、商品企画の土台となる消費者ニーズを探る「マーケティング論」などがそれです。また、視覚デザインでは、色彩と印刷の知識と技法、デジタル技術による画像処理技法などを履修します。環境・空間デザインでは、「構造・材料」「設備」といった建築学の基本理論を修得し、建築デザインのほか、インテリアや店舗・展示デザイン、造園についても学びます。