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系統別学問内容リサーチ

工学系統(商船系統含む)

商船学の分野

商船学の分野

船舶の安全な航行術と効率的な海運システムのために、それを支える機械やエネルギー機関、電気技術と物流を総合したユニークな研究ジャンル。商船による物資輸送を支える実践的学問

分野の特徴

安全な航海術と、効率的な海運システムを研究する

 商船学は、船の運航および海運(船による物資輸送)の技術を研究する学問分野です。
 遠隔地へモノを運ぶ「物流」は、経済や産業を支える動脈ともいえます。日本では、20世紀の後半から高速道路網と空港の整備が進み、商品や郵便物などは陸送や空輸が中心になっていますが、石油や鉄鋼など、産業で使われる大型物資の運搬では、今も海運が重要な役割を占めています。
 商船学は、船の運航術と物流の管理法、それを支える機械やエネルギー機関、電気システムなどの技術を総合したユニークな研究ジャンルです。
 研究テーマは「船舶」「操船」を中心に、機械・電気・エネルギー系の「機関(エンジン)」「電気系統」、情報・システム系の「流通管理」「情報通信」など、工学系統のかなり幅広い領域にわたっていますが、これらの技術を統合して、安全な航行を実現し、安定した物流システムを支えることをめざす、きわめて実践的な学問といえます。

メカやエレクトロニクス、物流管理の分野を研究する

 この分野では、「航海学」「機関学」「物流システム」という3つのジャンルが理論的な柱となります。
 航海学では、船の動作の基本的しくみと操舵技術を扱います。船を航行するための海図、レーダーや衛星によるナビゲーションの知識も重要になります。
 機関学では、船の動力部と、その制御・管理技術を扱います。たとえば、船のエンジンやモーター、動力を供給するエネルギー機関などの要素があります。
 また、物流システムはロジスティクスとも呼ばれる分野です。最近の物流ではコンピュータによる輸送管理システムが中心になっており、プログラムの基礎知識も必要になります。
 この構成から分かるように、商船学は「メカ・エネルギー・エレクトロニクス」という《機械工学・電気工学》的な側面と、「経営管理や流通システムの技法」という《経営工学・商学的》な側面の、2つの要素を兼ね備えていることが大きな特徴です。

何を学ぶ

船のしくみと操作、海洋科学、物流システムまでカバー

 商船学の分野では、航海システム(航海学、機関学)および物流システム(海運・物流)の両面を、基礎から実践技法まで幅広く学ぶのが一般的なカリキュラムです。
 航海システムについて、海流や海底の地形、大気の現象を理解する《海洋科学》、およびメカ・エレクトロニクス、エネルギーの専門科目を学びます。また、物流システムでは、効率的なシステムの構築と、円滑な運営がテーマとなります。物流のモデルを作り、“どれだけの量をどういう経路で、いつ輸送するか”“そのために、どれだけの資源と手段(船舶、倉庫、人員、コスト)が必要となるか”などを計算や推論で求めます。
 授業には、講義科目、メカや機材のしくみを理解する実験、実習のほか、練習船に乗り組んでの乗船実習授業もあります。こうして、自然環境としての「海洋」と、巨大な輸送機械である「船舶」、さらに「海運・物流」について、理論と実践の両面から幅広く学んでいきます。

船の航海と操作、海洋科学、物流システムを含む総合学

 航海システム(航海学・機関学)についての学習には、《海洋科学》《メカ》《エネルギー》《エレクトロニクス》の幅広い領域が含まれます。
 海洋科学では、地学、自然地理学を土台に、海流や海底地形、大気の現象などについて学びます。またメカの領域では、機械工学を基礎に、船の構造としくみ、操舵・航海の実践技術を、エネルギー領域では、エネルギー工学を基礎に、動力エンジンやモーターなどエネルギー機関のしくみを学びます。さらに、エレクトロニクス領域では、電気通信工学を基礎に、レーダーや気象観測器、計測器など各種電子機器のしくみと操作法を扱います。
 講義科目や実験、実習のほか、練習船に乗り組んでの乗船実習授業も含まれます。こうして、自然環境としての「海洋」と、巨大な輸送機械である「船舶」、さらに「海運・物流」について、理論と実践の両面から幅広く学んでいきます。

海運物流を支える「情報・ネットワーク関連」の知識

 海運・物流に関しては、《海上交通》《海運システム》《情報システム》などの領域があります。
 海上交通は、海の輸送路についての基礎知識をもとに、安全な運航術や海難事故の処理を学ぶ領域で、「海上交通工学」「安全運航論」「運航計画論」といった科目があります。海運システムでは、「海運経済論」「海運実務論」「海事法規」など、海運に関する経営学、経済学、法学的な専門知識を学びます。
 また、これらの海運物流を支える情報システムの領域では、運航中の船舶の位置や状況を確認し、安全な海上輸送を確保するための技術を学ぶ「運航支援システム」「移動体運動解析」などの科目、さらには、運航中の船舶とそれを支援する陸上施設を結びつける「海事情報ネットワーク」などの学習項目があります。
 そのほか、港湾や海岸に関する知識を土台に、港湾建設や護岸工事、さらに巨大な海上プラントの建設について学ぶ土木工学系の科目もあります。