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農学系統

森林科学の分野

森林科学の分野

木材など森林資源の利用と森林環境の保護を研究する分野。森林の管理のみならず、森林の景観づくり、水資源の管理と有効利用、土砂崩れや山火事など山林災害の防止対策等がテーマ

分野の特徴

日本が誇る木材の文化と山林の環境を守る

 森林科学は、山林で収穫される木材など「森林資源」の利用と、山林の環境を、総合的に研究する学問です。
 木材は伝統的に、日本人の生活や文化と密接なつながりがある材料で、家屋の建築資材をはじめ、家具や生活道具、薪や木炭などの燃料といった、非常に幅広い目的に利用されてきました。また、山地に囲まれた日本では、人間の手をかけることによって、豊かな森林環境を築いてました。
 しかし、日本の森林は、ほとんどが急峻(きゅうしゅん)な地形にあるために管理維持のコストが高いのが特徴であり、今や管理のゆきとどかない荒れた山林が日本各地で広がっています。日本の豊かな森林は「自然」な(手つかずの)環境ではなく、人間が管理を怠ると荒廃してしまうのです。
 このように、環境保護と木材の有効利用という2つの面から捉える視点で、山と森林を「保護・育成しながら有効に活用する」ことが、森林科学の目的となります。

森林資源・環境の保護と、木材の利用法を研究する

 森林科学の分野は元来、木材原料しての森林の育成と、樹木から木材を生産し、流通するまでの過程を扱う「林産学」と呼ばれており、主に木材の供給と利用に重点を置いた学問でした。現在では、森林環境と山林にある水源の管理、国際的な林産資源の流通など、幅広い領域を扱う「森と木材の総合実践学」となっています。
 この分野は、森林資源科学と、森林環境科学という2つの研究領域に分かれます。
 森林資源科学では、植林から伐採、木材の加工と流通など、木材の利用の側面など、元の林産業の領域が主なテーマになります。森林環境科学では、森林と山地の管理をはじめ、森林の景観づくり、森林によって守られる水資源の管理と有効利用、さらに土砂崩れや山火事など山林災害の防止対策、といったテーマを扱います。
 どちらの分野でも、森林の現状を分析するための山林や里山での測量や生態調査、植林の実習など、現地に出掛けての作業が重視されます。

何を学ぶ

森林に生息する樹木や草花、菌類、動物の生態

 この分野では、まず生物学、化学、物理学といった理学知識を幅広く学ぶことが基礎となります。森林科学で主な対象となるのは、森林や山地に生育する樹木や草花、菌類(きのこ)などの植物と動物です。「植物学」「植物生理学」「樹木生理学」「森林生態学」で、植物の基本的な性質を理解したうえで、樹木を《植える・育てる・殖やす》ための方法、樹木を中心とする植物の分布、森林に生息する動植物を含めた環境の調査方法など、樹木と森林を研究するためのさまざまな専門知識や技法を学びます。
 また、水質や土壌を検査するための「分析化学」、森林の面積や樹木の高さ、生育状況を調査するための「測量学」「森林測定学」「リモートセンシング技術」など、化学や地理学の専門手法も学びます。そのほか、林業の歴史、山村の生活や森林の文化的役割を知るための社会科学系統の科目で、森林環境と人間の密接な関係を理解することも、大事な基礎学習となります。

森林の育成・管理から、山の環境保全まで幅広く

 専門課程では、森林から木材を製造する過程を扱う「林業工学」「林産化学」、森林を育成・管理するための「造林学」「森林保全学」「森林経営学」などを幅広く学んだのち、「木材(資源)の利用」と「環境の保護」に特化した専攻テーマに進むのが一般的です。
 森林を「資源利用」するための領域には、木材の物理的・化学的性質と利用の方法を学ぶ「木材化学」「木材工学」「木質材料学」、木材以外の資源(バイオマス)の利用法を学ぶ「木質バイオマス利用学」、木材への伐採から加工・処理の工程を学ぶ「林業工学」「木材加工学」などの科目があります。
 また、森林を「環境」の視点でみる領域には、森林に住む小動物や昆虫を扱う「森林動物学」「森林昆虫学」、廃れた森林の再生、山地の管理と災害対策を学ぶ「森林土木学」「治山工学」「緑化工学」「森林災害論」などの科目があります。