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教育系統

教育学の分野

教育学の分野

教育の本質を捉え、学校や職場、地域社会において人間の可能性を伸ばすシステムと技法を研究する学問分野。老若男女すべての「学ぶ人」に理想的な教育の環境を提供することが大目標

分野の特徴

人間の能力向上を図る「教育」のあり方を考える

 教育学は、人間に知識や教養を与えたり、能力の向上を促す行為である「教育」を、総合的に研究する学問です。
 たとえば、学校で教科の知識や集団行動を教える「学校教育」を中心に、社会人になるための職業能力をつけるキャリア教育、働く人を対象にした企業内教育、カルチャー教育なども、教育学の研究対象となります。
 学校教育では、授業や集団行動を通して社会の一員としての教養や見識を身につけさせ、心と身体の健全な成長を促すことが大切です。
 一方、社会人に向けた職能教育(離職者やフリーターへの再就職支援など)においては、学習者の意欲を高めて、業務能力や交渉力などのスキルを自発的に体得できるよう、カリキュラムや教え方を工夫する必要があります。
 そこで、教育の本質を捉え、家庭、学校、企業などの実態や制度面を検証すること、場面に応じた教育の理念や方針、教育の理想像を描くことが、教育学の大きな役割です。

教育のシステムや環境についても多角的に検証・改善する

 教育学は、教育系統のうちでも、理念や原理的な研究を中心とした領域であり、専ら学校現場での「教え方」の実践技法を研究する「教員養成系」とは手法が異なります。たとえば、教育の本質や理念、教師の使命と心得、教育の実態調査と歴史的変遷、親や子供の教育へのニーズの動向、教育制度や法制の整備などの研究テーマがあります。
 いじめや学力低下、若者の就職難など、今世の中で広がっている教育への不満や不安は、転換期を迎えた日本社会の縮図ともいえます。教育を巡る議論は、いろいろな意見の対立を生んで混沌としがちですが、目先の問題解決ではなく、教育本来の理念に立ち返って長期的なプランを立てることが重要です。
 教育学では、抜本的な教育制度や法体系の研究により、家庭や地域社会も含めて子どもを育てていく体制づくりをめざします。同時に、どんな年齢の人でも人間的な成長のために学べる社会環境を育てることも大きな目標です。

何を学ぶ

発達、文化、政策などあらゆる面から教育を検証

 基礎課程では、教育学の理論的な基礎を形成している幅広い学問、たとえば、人間の発達過程や社会人としての成長を理解するための「心理学」「社会学」「人間関係学」、幅広い人間的素養と人格形成の基礎となる「文化学」「人間科学」「倫理学」といった人間や文化、社会に関する学問領域を、詳しく履修します。
 専門課程で中心となるのが、教育の本質的な理念、教育対象や場面に応じた教育のあり方について学ぶ《教育原論》の領域です。人間が生きていくうえで大切な「学び」という営みの本質を捉えるとともに、いろいろな教育の場における「基本理念」を理解すること、《目標の設定→学習の動機付けと意欲の促進→達成状況の管理→目標到達度の評価》といった「教育過程」を検証できる能力を身につけることをめざします。「学校教育論」「生涯教育論」「国際教育論」「社会教育論」「企業内教育論」といった科目がそれにあたります。

教育を「発達」「文化」「政策」などの総合的視点から考究

 専門課程は、次の4つのジャンルで形成されます。
 まず、人間の心や知能の成長段階を理解し、年齢ごとの健やかな発達を促すための方法を学ぶ《発達科学》の領域には「教育心理学」「青年心理学」「社会心理学」「発達社会学」「学校カウンセリング論」などがあります。つぎに、教育の歴史的な変遷や、地域による教育の多様性を理解する《教育文化》の領域で、「教育史」「教育思想史」「教育社会学」「比較教育学」などの科目があります。
 教育と学校の制度を検証し、教育が果たすべき社会的な役割、教育問題の解決策を考える《政策》の領域もあります。「教育行政学」「教育制度論」「教育法」など、法や制度を扱う科目と、「子供論」「大学論」「ジェンダー教育論」といった教育現場の課題に取り組む科目に分かれます。さらに、授業の実践法を学ぶ「教育工学」「教育方法論」、それに各教科目ごとの「概説」や「授業研究」なども大切な履修科目です。