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芸術系統

音楽の分野

音楽の分野

楽器や人の声を用いて、形や色彩のない「音」による表現芸術。単独もしくは複数による演奏や歌唱の技法を研究し、自らの感性で心の奥深くに響く美しい音楽をつくることがテーマ

分野の特徴

形のない「音」の芸術で、人間の感情を揺さぶる

 音楽は、音の高低や音色、音の響きやリズムの組み合わせによって楽曲を作ったり、楽曲を奏でることで人に心地よさを与える表現芸術です。形がない「音」による表現であり、絵や映像、デザインなどの表現方法に比べて、感性や感覚の作用が大きく影響します。たとえば、人の心を落ち着かせて安心させる静かな音楽、リズムとビートで元気を奮い起こすパワフルな音楽など、人間は音楽を聴くことで、感情や意志を動かされます。
 また、仕事をしながら、電車の中でなど、音楽はどこでも聴くことができます。音楽は人間にとって、最も身近な芸術といえるでしょう。
 音楽には、クラシック、ロック、ポピュラー、そして日本の伝統音楽である「邦楽」など、いろいろなジャンルがあります。どんな音楽でも、その基本部分には共通点があります。演奏のテクニックを磨くとともに、作曲者の主張や詩の世界を理解し、自分の表現をつくることが、いちばんの目標となります。

表現法ごとのジャンルのほか、理論研究の分野も

 音楽の基本を学ぶクラシック分野での専攻領域は、次の4つに分かれます。
1. 「演奏」:主に器楽の演奏による音楽表現を追究する領域で、ピアノやオルガンの鍵盤楽器、バイオリンなどの弦楽器、フルートなどの管楽器、それに打楽器があります。独奏のほか複数による合奏も行います。
2. 「指揮」:オーケストラや楽団を指揮することで表現する領域です。楽曲への深い理解と、大勢の演奏家に意志を伝えて共に表現する強い指導力が必要です。
3. 「作曲」:楽器や声楽など、個々の特徴を活かして、楽曲を創作する領域です。
4. 「声楽」:肉声を使って、音楽を表現する領域です。
 また、音の響きや高さの理論、楽曲の構成などを研究する「楽理」や、音楽の歴史的変遷や社会との関係を研究する「音楽史」という理論的領域、そのほか、三味線や箏(琴)、笛、鼓などの和楽器の技法を学び、雅楽や能楽といった日本の伝統芸能を研究する「邦楽」のジャンルもあります。

何を学ぶ

演奏技術の向上、音感センスを磨くことも大切

 大学では、音楽の知識や理論的分野を扱う「理論」、演奏や創作の技法を学ぶ「実技」を並行して学びます。クラシック音楽とポピュラー音楽でも、扱う楽曲の素材は異なりますが、学びの課程はほぼ共通しています。
 まず、理論では、さまざまな実例によって音楽の構造を分析し、優れた音楽性の本質を科学的に検証します。また、音楽で用いる楽器(ピアノ、弦楽器、ドラムなど)の基本知識を学びます。またポピュラー音楽や邦楽、民族音楽まで幅広い音楽の美に触れて、自分の感性を養う科目もあります。
 実技では、専攻ごとに分かれて基礎訓練と実技指導の科目を履修します。たとえば、クラシックの基礎訓練では、楽器や音を演奏することで《音程・リズム・調和》を体得する「ソルフェージュ」を学びます。
 また、ポピュラー音楽では、楽器演奏、楽曲の創作やアレンジ、楽曲データのソフトウェア処理など、音楽の演奏や制作について幅広く学びます。

理論では《楽曲論》《楽器論》の学習が中心に置かれる

 音楽は、クラシック音楽とポピュラー音楽に大きく分かれますが、いずれを学ぶ場合にも、大学の履修科目は、音楽を深く理解するための《理論》と、演奏や創作の技法を学ぶ《実技》で構成されます。
 理論分野としては、楽曲、楽器についての基礎を学びます。まず「楽式論」「楽曲分析」で、さまざまな実例を用いて楽曲の構造を分析し、優れた楽曲の内容を科学的に検証します。また、「楽器論」でピアノや弦・管楽器などの基本的な知識を学びます。ポピュラー音楽では、電子楽器やコンピュータ楽器も含まれます。
 また、音楽の《美》の本質を理解し、音楽が人間に与える影響を検証する「音楽美学」「音楽心理学」「音楽生理学」、音楽の教育や心理療法について学ぶ「音楽教育論」「音楽療法」、音楽の歴史を学び、世界にある幅広い音楽のスタイルを知るための「民族音楽学」「音楽文化論」「西洋音楽史」「日本音楽史」といった科目もあります。