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人間科学の分野

人間科学の分野

人間の心と身体のメカニズムをトータルに捉え、多面的な側面や要素をを備えた人間そのものに深く切り込む学問。人間だけが獲得した、動物とは一線を画した能力や要素の秘密を探る

分野の特徴

多様な切り口から、人間のメカニズムの謎に迫る

 人間科学は、人間の身体と心のメカニズムの解明を通して、「人間とは何か」という謎に迫る学際的な学問です。
 私たち一人ひとりの人間の中には、生物としての「ヒト」、社会や組織の中の「人材」、文化をつくりだす「人間」など、さまざまな側面が同居しています。
 こうした多面的な人格をもつことが、動物のなかで人間だけが備えている特徴です。また、この「人格」は、身体とは切り離せない一体のものであり、人間の行動や社会性、文化を考えるときにも、生物としての人類の分析を基本に置くべきであることは間違いありません。
 「人間そのもの」を捉えるため、人間の身体や心の解明を中心におき、生命科学や医学など理学的手法、心理学、哲学、社会学、スポーツ科学、教育など幅広い学問の手法を駆使して、より深い人間理解を目指します。人間を育む家庭、人間が生活を営む社会など、人間を取り巻くあらゆる方向からアプローチするのが、人間科学の最大の特徴です。

人間の心理、健康・スポーツを研究するジャンルも

 この分野は、《人間》へのアプローチによって、次のように分類できます。
1. 人間の身体のしくみと成長(狭義の人間科学):生物学、医学、教育学、児童学からのアプローチ
2. 人間の心理、人間関係と社会(人間関係学):心理学、社会学からのアプローチ
3. 人間の健康と運動能力(健康科学、スポーツ科学):医学、体育学からのアプローチ
 1のタイプでは、たとえば、人間がもつ優れた運動能力(二足歩行、柔軟な手の動きなど)についての研究、言語や知識の習得と人間の発達についての研究、さらに人間の成長と老い、死についての研究などがあります。
 2のタイプには、組織における人間関係とストレスの関係、人間の心理と消費行動の関係など、心理的なテーマが含まれます。
 3のタイプは、健康とスポーツをテーマとする領域です。運動や栄養による健康な身体づくり、スポーツのための効果的なトレーニング方法、競技チームづくりの実践方法などの研究が含まれます。

何を学ぶ

脳神経の研究から、人間にせまる知能ロボット開発も

 この分野の基礎課程では、人間とはなにかという本質的なテーマに迫るための基礎として、人間という存在に《心、身体、社会、文化》という4つの領域から多角的にアプローチできるように、カリキュラムが構成されるのが一般的です。
 《心》の領域では、心理学、行動科学を土台として、人間の心理と身体の発達過程を捉え、心の複雑なしくみを解明します。「発達心理学」「心理療法」「カウンセリング」といった科目があります。《身体》の領域では、生物学や医学、栄養学などを土台として、生物としての人間の身体の基本構造を学びます。
 《社会》の領域では、社会学や文化学を基礎として、社会の中で生きる人間の姿を深く理解するための「社会心理学」「家族社会学」「地域社会学」などを履修します。
 《文化》の領域では、「哲学」「倫理学」「宗教学」「思想史」などの科目で、歴史や文化の担い手としての人間の姿を捉えます。

人間がもつ多彩な《能力》を検証し、人間の神秘を解明

 専門課程では、前記の4領域の中から専攻テーマを選び、高度な内容を学びます。
 人間の身体機能を専攻する場合には、「解剖学」「生理学」といった医学的手法、「系統・進化学」「古人類学」といった生物学的な手法、「人間工学」などの工学的手法を総合的に学びます。複雑な動きが可能な手や指、二足歩行など、人間だけが獲得した身体の機能を解明し、バリアフリー製品など福祉工学の技術、ロボット開発に応用することが目的です。
 他方、人間の脳のしくみを解明する分野では、「大脳生理学」「認知科学」といった科目を学んだうえで、人間の知識獲得や情報処理のメカニズムに迫ります。たとえば、言語や論理思考などの能力の獲得と発達を学ぶ「応用言語学」「学習心理学」などがあります。
 健康科学の分野では、「運動生理学」「栄養学」「バイオメカニクス」など、人間の健康と運動との関係を科学的に検証します。