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農学系統

農業工学の分野

農業工学の分野

農業生産に関する工学的テーマを扱う学問で、農業用地の開発や管理、農機具に関する研究が中心。農業の生産環境と農村社会そのものについて研究し、農業の未来の姿を構想する分野

分野の特徴

農地と農村をつくる技術、里山の環境保護を研究する

 農業工学は、土木工学、機械工学の研究成果を、農業に応用する学問分野です。
 主に、農地の開発や管理、農村の環境保護に関する研究と、農業に用いる機械や器具(農機具)の研究が中心であり、農業生産の現場での技術的な課題に、工学的なアプローチで取り組むことが大きな役割です。
 農地や農機具に関する技術は、バイオテクノロジーなどと異なり、一般にあまり知られていませんが、生産の効率化や農産物の品質向上という点から、農業を支える大切なジャンルです。
 高齢化、過疎化などの影響で、長い間日本を代表する風景だった農村の姿が大きく変わりつつあります。その一方、農耕地が広がる農村や里山の住みやすさに注目し、環境と共存する人間社会のモデルとして見直す動きも広がっています。こうした農村の環境、農村社会のあり方を研究し、将来の農業と農村のビジョンを描くことも、農業工学の重要なテーマとなります。

土木工学と機械工学の手法で農地や農業技術を開発

 農業工学には、幅広いテーマが含まれますが、基盤となる工学分野によって、大きく2つの研究領域に分けることができます。
1. 「農業土木学」…農業の生産基盤となる農地の開拓、灌漑や排水、干拓など、農地に関する技術を、土木工学のアプローチで研究します。
 山林の開墾、沼や湖沼の干拓、土地の改良といった手段により、農業に適した環境をつくるための「土木技術」、灌漑や農業用水路の開削で水資源を確保するための「水利技術」などが主なテーマです。
2. 「農業機械学」…農業で活用する農機具や車両、農作物の集荷や加工に用いる農業機械、施設を、主に機械工学のアプローチで研究します。
 農機具や農業機械のしくみと、新しい農具の開発、農産物の集荷工場や加工場で用いられる大型機械などを研究します。最近では、農作業の一部分を補助する農業ロボットや、農業工場のオートメーションなど、さまざまな自動化の技術開発も進められています。

何を学ぶ

農地と農機具の開発を大きな柱に多角的な科目履修

 農機具や農地の開発を目的とする学問の基本科目として、数学と物理学(熱力学、構造力学など)の基礎理論と研究手法をまず身につけます。とくに力学(機械)系と土木系が重視され、機械の基本的な構造と作用を理解するための「機械力学」、土地や水の性質、流れの作用について学ぶ「土質力学」「流体力学」「水理学」、農地の計測のための「測量学」、土壌や水質を調べるための「分析化学」を履修し、農業の基盤となる生産環境(土地)と、施設・器具(機械)についての幅広い基本知識を身につけます。
 応用系の学科目は、大きく分けて、農業生産に必要な土地および水の資源、用水路やため池、パイプラインといった「農業施設」を有効活用するための《土木工学系》の科目と、農地で用いる耕運機、コンバイン、トラクターなどの「農耕用車両」、農地の整備、農産物の収穫や運搬を自動化したり、省力化する「農業ロボット」を扱う《機械工学系》の科目があります。

注目される「農村計画学」「農村環境整備学」の学科目

 まず《土木工学系》では、土地の開拓、土壌活用およびその保全と再生、水利開発といった農地の整備についての土木的なアプローチと、環境分析や保全の技術などの環境(化学)工学のアプローチについてよく学びます。具体的には、農業施設の土木工法について学ぶ「環境土木学」「土木施工法」「水利施設工学」、農地の開発と農村環境について総合的に考える「農村計画学」「農地保全学」「農村環境整備学」などの科目があります。
 農業で用いる機械は、農作業そのもので使う機械や車両に加えて、収穫した農産物の選別や品質判定、食品の製造・加工の機械などもあります。そのため、《機械工学系》では、こうした幅広い農業用生産機械とその制御、工場における安全と衛生、品質の管理なども重要な学習項目としています。そのほか、農業生産の計画、農地での準備から収穫までの作業管理、生産に関する情報処理を扱う《経営工学系》の科目もあります。