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芸術系統

芸術系学際の分野

芸術系学際の分野

美術、デザイン、音楽という3つの芸術ジャンルの枠を超えた研究領域。「枠を超えた」というよりは総合した要素も。芸術への深い造詣をもとに、新しい芸術文化の創造や普及に貢献する

分野の特徴

豊かな芸術的センスで、美術展やイベントを企画

 芸術系学際の分野は、芸術系統の中で、美術、デザイン、音楽というジャンルの枠を超えた、学際的な芸術研究を行う分野です。
 同じ学際分野にも、多彩な研究がありますが、目的と研究手法・アプローチにより、次の2つのタイプに分類できます。
1. 芸術活動を支援したり、芸術文化を普及させることを目的とする研究領域
2. 新しい表現手段や、複数の芸術分野を統合することで生まれた新しいアートの領域
 1のタイプには、たとえば美術館の学芸員やキュレーターをめざす研究があります。美術からデザイン、映像まで幅広い芸術的な素養、そして芸術の理論的分析や歴史的変遷などの広範な知識を土台として、美術館の展示企画、イベントの運営について専門的に研究します。
 そのほか、造形・音楽・映像などの各種ジャンルから新しい表現(表現者)を発見し、世の中に送り出すための専門的な手法を研究し、音楽や出版などのアートプロデューサーをめざす領域もあります。

AVやデジタル技術による新しいアートの領域を開拓

 映画や音楽、アニメーションやコンピュータゲームなど、エンターテイメントの世界では、コンピュータやデジタルAV(音響・映像)を利用した表現方法が一般的になっています。2のタイプの中核を占めるのが、このデジタルアートの領域です。
 3D映像と多チャンネルスピーカーを使って、現実に近い視覚・聴覚空間を作り出す「バーチャルリアリティ」、ポリゴンによる独特の質感をもった「3Dキャラクター」、実写映像とコンピュータグラフィック、デジタル音楽の組み合わせにより、新たな映像世界をつくりだす「ミュージッククリップ」など、さまざまな表現スタイルが生まれています。
 表現法だけでなく、技術の領域でも進歩のスピードがきわめて速く、こうした分野で“デジタルアーティスト”をめざすには、映像・音声などデジタルデータの処理技術、圧縮や通信方式などについて、高いレベルの専門知識が必要になります。

何を学ぶ

芸術表現(作品)を見る眼を養い、芸術文化を普及

 この分野では、芸術で表現する多様な形態の「美」の本質を理解し、芸術作品や作家に対する深い洞察力を養うことが第一歩となります。幅広い芸術を総体として捉えるため、まず「美学概論」「芸術学入門」「美術史」などの科目で、美や芸術などの表現文化について専門的に学んでいくための基本的な概念や用語を理解し、実践的な研究手法を身につけます。さらに、絵画や立体造形、デザインなどの基本技法を学んだり、美術館、博物館での芸術を鑑賞する実習科目により、学んだ理論を裏付けします。
 芸術文化の支援と普及を目的とする専攻やコースに進む場合には、そのうえで、芸術文化事業、アートプロデュースに関する実践的な知識と技術を履修します。美術館や美術展開催について学ぶ「展示計画」、資料整理のための「デジタルアーカイブ」といった科目があります。

デジタルアートの技法とコンテンツビジネスの実態学ぶ

 一方、デジタル技術による芸術創造を目的とする専攻では、画像・音楽・映像を用いて芸術表現を創造するための基本概念と知識を学んだうえで、デジタルデータの処理・編集・加工、ネットによる配信までの、高度なデジタル技法をマスターします。
 専門課程は、デジタルによる芸術表現の技法を学ぶ「デジタルアート」と、これらのアートを広告や展示物として商業で利用したり、社会に提示する「デジタルコンテンツ・ビジネス」の2領域に分かれます。
 前者では、CGやデジタル音楽、映像などのデザイン表現、コンピュータによるイラストやアニメーションなどの実践技法を、後者では、Webサイト制作、DTP(電子編集・出版)、映像配信や音楽出版など、コンテンツビジネスの概要を学びます。デザインや広告制作の現場でクリエーターとして活躍するために、企画からデザイン・編集、販売、ネット流通までの制作過程を実習を交えて修得します。