被服とは?基本的な意味や衣服との違い、業界や仕事内容について解説
2025.09.02

「被服と衣服の違いは?」
「被服に関する仕事について知りたい!」
被服という言葉を聞いて、このように考えている人もいるでしょう。
被服とは人の体を覆うものを意味し、洋服やアクセサリーなどの総称です。被服分野には多くの仕事があり、人間特有の文化であるため被服に関する研究も多岐にわたります。
この記事では、被服の基本的な意味や被服業界について解説しています。被服に関する研究、被服学で何を学べるかについても触れているので、被服に関心を持った人は参考にしてみてください。
目次
被服とは?

被服という言葉の基本的な意味を解説します。被服とよく似ている「衣服」との違いについても知っておきましょう。
被服の基本的な意味
「被服」という言葉を辞書で調べると、「着物」「衣服」と簡潔に解説されていることが多いです。
学術的には「人の体を覆うものの総称」とされており、服の他に帽子などの被り物や手袋なども被服に含まれています。
被服には、以下の3つの機能があります。
● 防護性:暑さや寒さといった気温の変化、外傷などから人体を守る機能
● 象徴性:身分や階級や職業、性別、時代や生活感情などを表す機能。
● 装身性:自己を表現する機能、心理的、精神的満足を得られる機能
被服と衣服の違い
「衣服」は主に人の胴体を覆うものを指し、下着や上着などが衣服に含まれます。一方「被服」は人の体を覆うもの全般を意味するため、「衣服」は「被服」に含まれています。靴や帽子、手袋などと衣服をまとめて言うときに「被服」という言葉が使われます。
被服学とは

被服学は衣服について総合的に研究する学問です。衣服をつくる繊維素材の開発からデザイン、生産、流通まで幅広い分野を含みます。
被服学の学部でおこなわれている研究
被服学の研究は、大きく分けて「科学」と「文化」の側面があります。
「科学」の側面では服の着心地や機能性に着目し、服を構成する繊維素材の開発・研究から服の縫製技術、デザイン性などを追及します。
主に被服材料学、被服管理学、被服整理学、被服衛生学、被服構成学などに細分化されます。
「文化」の側面では衣服の歴史的変遷や地域ごとの服装の特性に着目し、流通と消費の分析などを研究します。被服学の中では、服飾美学・服飾史、被服意匠学・服飾デザイン、被服消費学などが「文化」側面を持つ被服学です。
被服学の研究が進むことで、人々の生活が改善されることが期待できます。
例えば、大妻女子大学の家政学部被服学科では「抗かゆみ繊維による睡眠時のかゆみ抑制効果-睡眠時のかゆみ発生要因分析-」の研究がおこなわれました。
この研究では、寝巻の素材を弱酸性ポリエステルにすることでかゆみなどのアレルギー症状を抑制し、睡眠の質を改善できることを証明しています。
また衣服は自己表現のひとつでもあるため、今後は社会的、心理的観点からの被服の研究も進むことが予測されています。
大学の被服学で学べる内容
被服学で具体的に学べる内容は大学によって異なりますが、下記の4段階を経て自力で服をつくれるようになるカリキュラムを組んでいることが多いです。
● 被服材料学:繊維や布の性質を学び、服の性能を材料の観点で学ぶ
● 被服管理学:繊維や布、服の保存方法や管理方法を学ぶ
● 被服生理学:服の機能を着心地や肌触りの観点で学ぶ
● 被服構成学:服をつくるための理論と技術を学ぶ
被服学を学べる大学ではこれらの内容を講義で学び、裁断や縫製技術を身につける実習などが用意されていることが大半です。
他にも被服の文化を学べる「服飾社会史」や、商品としての被服の開発方法や売り方を学ぶ「被服心理学」「ファッション商品論」などを学べるところもあります。
被服に関する仕事

被服学の知識を活かせる、被服に関連する業界や仕事について解説します。
被服に関する業界はファッション業界
被服関連の業界は、総じて「ファッション業界」と呼ばれます。
服飾関係の業界では「アパレル業界」を連想する人も多いかもしれませんが、アパレルは「衣服」に限定されます。ファッションは「スタイル」や「流行」を意味するため、衣服を含む暮らしにかかわるもの全般を指します。アパレル業界(アパレル産業)はファッション業界に含まれると考えると良いでしょう。
アパレル業界について詳しく知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。
アパレル業界とは?ファッションとの違いや年収、目指せる大学の学部を解説
ファッション業界は、服をゼロからつくり、消費者のもとに届けるまでの流れを担っています。主に、下記の三段階に分かれています。
● 素材産業:糸をつくる紡績、布を作る製織、生地に整える染色整理など
● アパレル産業など:商社、企画開発、広告宣伝
● 流通産業:量販店、専門店、ECサイトなど
被服に関する企業
被服に関する仕事と代表的な企業を紹介します。
素材産業
企業の種類 | 仕事内容 | 代表的な企業 |
素材メーカー | 糸や布の原材料となる素材を開発・加工し、各種メーカーなどに販売する | 花王、TOTO、三菱ケミカルなど |
繊維メーカー | 綿や絹などの天然繊維、ポリエステルやアクリルなどの合成繊維など、被服商品に使われる繊維を開発・製造する | 東レ、ダイワボウホールディングス、旭化成グループなど |
テキスタイルメーカー | 被服製品に使われる織物やニットなどの生地の企画、生産をおこなう | 丸井織物、米沢繊維協議会、ニッセンプロセスなど |
アパレル関連メーカー
企業の種類 | 仕事内容 | 代表的な企業 |
広告・宣伝企業 | 商品やサービスを消費者に知ってもらうための広告作成や宣伝をおこなう | ザ・ゴール、PA Communication、リデルなど |
アパレル関連商社 | 繊維やアパレル関連の原材料や製品の仕入れ・販売をおこなう | ナイキジャパン、丸紅ファッションリンク、帝人興産など |
流通産業
企業の種類 | 仕事内容 | 代表的な企業 |
小売業 | 実店舗やオンラインショップを通じて消費者に商品を販売する | しまむら、西松屋チェーン、コナカなど |
被服業界特有の職種

被服業界では営業や事務などの一般的な職種も必要とされますが、ここでは被服業界特有の職種を紹介します。
デザイナー
トレンドを調査しながら、新しい服飾製品のデザインを生み出す仕事です。マーケティングや販売担当と連携し、消費者のニーズや市場動向をデザインに反映しつつ、ブランドの世界観やメッセージを具体的な形に落とし込むセンスが求められます。
主な仕事内容はデザイン画の作成や、素材や色の選定、パターン作成の指示などです。アパレル企業やハイブランドの専属デザイナー、フリーランスなど、業務形態も様々です。
パタンナー
デザイナーのアイデアを実際に服の形にする仕事です。デザイナーのスケッチや仕様書をもとに、型紙となるパターンを作成し、生地の裁断方法や縫製方法を指示します。
人体の構造や布地の特性への深い理解、それらを活かした高い技術力や正確さが求められます。近年ではサンプル制作やパターン作成を効率よくおこなうため、コンピュータ支援設計ソフトであるCADを使うことも増えています。デザイナーや縫製職人と連携してファッションを形作る、裏方のスペシャリストです。
縫製技術者
衣服の仕上がりを左右する、ファッション業界の職人です。デザイナーが作成した図面や仕様書をもとに、実際に衣服を縫いあげるのが主な仕事です。素材の特性や裁縫方法のバリエーションなど豊富な知識が求められ、トレンドや顧客のニーズに答える細やかな対応力も必要です。仕事を極めれば、オーダーメイドの高級衣服を手がけるような職人として活躍できるでしょう。
テキスタイルコンバーター
生地の企画開発、供給までを手がける専門職です。トレンドや市場のニーズを分析し、適切な素材や加工技術を選びつつ、独自の生地(テキスタイル)を企画するのが主な仕事です。
服作りの根幹に関わる仕事で、ファッションやデザインの知識に加え、繊維や染色など技術的な知識も求められます。顧客やメーカーとの交渉力、納期とコスト管理能力など、マルチな能力も必要となるでしょう。
バイヤー
ブランドや店舗に並べる商品を選ぶ仕事です。消費者ニーズや市場トレンドを分析し、適切な商品を仕入れて売上やブランドのイメージアップに貢献できます。
仕入れる商品の選定や国内外の展示会出展、各種企業との商談や価格交渉などが主な仕事です。商品の魅力を最大限に引き出し、売り場全体の価値を高める役割を担っています。
MD(マーチャンダイザー)
売れる商品を企画展開するための戦略の要となる職種です。商品ラインナップの決定や価格設定、販売時期や数量の見極めが主な仕事内容です。市場調査やトレンド分析をおこないながら、デザイナーやバイヤーと連携して顧客に合わせた商品企画を進めます。ブランドの売上を左右する責任ある職種といえるでしょう。
マーチャンダイザーについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。
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VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)
商品の魅力を視覚的に演出し、顧客の購買意欲を高めるのが主な仕事内容です。ブランドイメージを顧客に伝えるため、ショーウィンドウのデザインや商品の陳列方法、季節に合わせた装飾や店舗レイアウトの提案などをおこないます。
売上に繋がるように商品を美しく魅力的に見せるための手腕が求められるため、マーケティングやブランド戦略の理解も必要になります。
プレス
プレスはいわゆる広告・宣伝の仕事を指しますが、特にファッション業界の広告・宣伝をプレスと呼ぶことが多いです。ブランドのイメージを外部に発信する役割を担っており、新作のリリースに合わせてプレスリリースを作成したり、メディア向けの展示会を企画運営したりします。ブランドの商品を雑誌やテレビに取り上げてもらうための交渉は勿論、近年ではSNSを活用したマーケティングなどを任されることも増えています。
販売員
顧客とブランドを直接結びつける仕事です。商品販売、商品の陳列、在庫管理、接客を通じたスタイリングの提案など、主に実店舗で直接顧客と触れ合う機会が多い仕事です。高いコミュニケーション能力やファッションセンス、トレンドを把握する洞察力などが求められるでしょう。
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スタイリスト
服飾商品を用いて人や商品を魅力的に見せる仕事です。ファッション商品の調査や手配、撮影現場での衣装セッティングなどが具体的な仕事内容です。活動範囲は雑誌や広告の撮影、テレビや映画の衣装コーディネート、著名人のスタイリングなど、幅広い場面で活躍できます。
服を選ぶだけの仕事ではなく、ファッションを通じて顧客のビジョンを具現化する仕事です。人やモノが持つ個性や魅力を最大限に引き出す能力が求められるでしょう。
スタイリストについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。
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被服学を学べる大学や学科

被服学を実際に学べる学科や大学の一例を紹介します。進路を探すときの参考にしてみてください。
文化学園大学(東京都/服装学部/ファッションクリエイション学科・ファッション社会学科)
被服業界全般に対応できる人材の育成を目指す学部です。ファッションクリエイション学科では1人ひとりの目標に合わせた3つのフィールドを設置し、自身の将来に必要な科目を選択して視野を広げるサポートをします。ファッション社会学科はファッションの視点から社会科学の7つの領域にアプローチし、現代に必要な論理的思考や発想力を養います。
和洋女子大学(千葉県/家政学部/服飾造形学科)
講義課目と連動した実験・実習科目を履修することで、総合的な衣生活の基本を学びます。1級衣料管理士、家庭科教諭、デザイナー、パタンナー、ファッションコーディネーターなどを目指せるカリキュラムが用意されており、服飾・ファッション関連の様々な資格取得が可能です。
京都女子大学(京都府/家政学部/生活造形学科)
衣食住の衣と住を中心に、快適な生活環境を創造するためのデザインについて実践的な理論と技術を学べます。学内ファッションショーや作品展、自治体や企業と連携したプロジェクトなど、実践力を鍛えるカリキュラムが用意されています。
国際ファッション専門職大学(東京都・大阪府・愛知県/国際ファッション学部/ファッションクリエイション学科・ファッションビジネス学科)
国際社会で通用する教養とファッションの基礎力を身につけるためのカリキュラムが用意されています。1年次からファッションをつくる演習科目が配置されており、理論と技術を学びながら問題解決能力と主体性を養います。
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被服の基本的な意味や被服業界、被服学を学べる大学についてまとめました。
被服は衣服を含む人の体を覆う装飾の総称で、人の生活に欠かせない分野です。デザイナーやアパレル店員など被服業界の仕事に就くには、被服学を学べる大学で被服に関する知識や経験を得るのが近道といえるでしょう。
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