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化学工業業界とはどんな業界?主な企業や職種、就職に有利な学部も紹介

2024.04.16

カテゴリー:
化学工業製品を製造しているプラント

化学工業製品は、私たちの生活に関わる自動車やラップ、化粧品などにも使われています。化学工業製品が使われる分野は幅広いため「具体的にはよく知らない」という方も多いでしょう。「化学に関わる仕事がしたいけれど、化学工業メーカーの業種がわからない」とお悩みの方も多いかもしれません。
この記事では、化学工業業界の特徴や「JOB-BIKI」で調べられる企業の例、主な職種、おすすめ学部などをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

化学工業業界の魅力や代表的な企業の例

化学工業業界には、どんな特徴があるのでしょうか。ここでは、化学工業業界の基礎知識や働く魅力、代表的な企業の例をご紹介します。

化学工業業界とは?

化学工業メーカーとは、化学反応を利用して作る製品を製造・販売している企業のことです。化学反応を利用して作る製品は多岐にわたるため、大きく以下の6つに分類されています。
・有機化学工業製品
・無機化学工業製品
・化学肥料製品
・医薬品、化粧品
・油脂製品
・その他の化学工業製品(農薬、香料など)
化学工業業界は、上記のような化学製品の製造・販売を担う業界です。これらは私たちがよく見かけるような、例えばペットボトルを作る企業などに販売され、私たちがよく知るペットボトルのような製品として完成します。それでは、具体的にどのような製品を作っているのか、詳しく見ていきましょう。

有機化学工業製品

有機化学工業製品とは、有機化合物(炭素が原子結合の中心となる物質の総称)のことです。私たちがイメージしやすい具体例としては、プラスチックや合成ゴムなどが挙げられます。これらは石油化学製品とも呼ばれ、石油や天然ガスを原料として生産されているものです。石油や天然ガスは炭素と水素のみで構成されている有機化合物のため、石油や天然ガスから生み出された製品は「有機化学工業製品」とされています。

無機化学工業製品

無機化学工業製品とは、無機化合物(有機化合物に属さない化合物)のことです。有機化合物ではない化合物は全て無機化合物となるため、無機化学工業製品と呼ばれるものも多岐にわたります。具体例としては、ガラスやセメント、リチウムイオン電池用の材料などです。

化学肥料製品

化学肥料とは、化学的に作った合成物や原料を化学的に加工したものを使った肥料です。そのため、化学工業メーカーが生み出す製品の中に含まれます。鶏糞や牛糞、魚粉のような生物由来の資源を原料とする有機肥料とは違い、即効性があるのが化学肥料の特徴です。すぐに水に溶けこんで植物に吸収されるよう、化学的な加工が施されています。

医薬品、化粧品

医薬品、化粧品の生産にも、化学的な技術は使われています。主に使われているのは、香水などの仕上げ用・皮膚用化粧品、歯磨き粉などの歯磨・化粧用調整品などです。

油脂製品

油脂製品とは、大きく食用加工油脂、油脂化成品、洗剤・せっけんに分けられるものです。食用加工油脂は、マーガリンやマヨネーズといった食用品の油脂を指します。油脂化成品は、例えば化粧品に保湿のための物質として入れられるグリセリンのようなものです。これらの油脂製品にも、製造や加工に化学的な技術が使われています。

その他の化学工業製品(農薬、香料など)

上記で紹介したもの以外に、火薬類、農薬、香料、ゼラチン・接着剤などの製造にも、化学的な技術が必要です。化学工業製品は種類が多いため、細かく分類すると膨大な量になります。そのため製造業では、上記5種類に含まれない場合の分類は「その他製造業」です。

化学工業業界で働く魅力

化学工業製品の工場

化学工業製品は、医薬品や農業、セメントなどの建築に関わる製品など、人々の生活に役立つさまざまなものに使われます。そのため、日常生活のあらゆる場面で「自分が携わった製品が、人々の生活に貢献している」と実感できることが魅力です。
また、化学工業製品の用途は多種多様で、化学工業製品を使う技術や製品も日々進化しています。そのため、今まで無理難題だと思われていたことが実現できる可能性も高いです。例えば、旭化成株式会社では、水で現像できる感光性樹脂を新規開発しています。感光性樹脂とは、紫外線などの光を当てることで物質の特性が変化する素材のことです。従来は紫外線などの光のみで物質を変化させていましたが、旭化成株式会社は水で物質を変化できるように開発しました。環境に害を及ぼす恐れのある紫外線を使わずに変化させられるため、環境に優しい感光性樹脂として注目を集めています。このように日々挑戦し、無理難題だと思われていたものを実現できた際には大きなやりがいを感じられるでしょう。化学工業製品の用途は幅広いため、挑戦できる領域はまだまだたくさん残されています。

化学工業業界の代表的な企業の例

旭化成株式会社
三菱ケミカル株式会社
住友化学株式会社
積水化学工業株式会社

一口に化学工業メーカーといっても、得意とする分野や製品によって、企業ごとの特色はさまざまです。


例えば「旭化成株式会社」は、化学工業製品の製造事業を基盤とし、住宅領域やヘルスケア領域にも展開しています。化学工業製品を住宅の建築材や医薬品に活用することで事業展開し、売上を伸ばすことに成功しました。旭化成株式会社が手がける化学工業製品を使った建築材としては、例えば「ネオマフォーム」という、プラスチックを使った断熱材が挙げられます。ネオマフォームの断熱性能は、他の断熱材と比較してもトップクラスです。このように、化学工業製品の可能性を住宅領域やヘルスケア領域に展開することを得意としています。


「三菱ケミカル株式会社」は化学工業製品の他に、機能商品やヘルスケア分野の商品についても事業展開している会社です。機能商品とは、すでにあるものに別の付加価値を加えた製品や特筆すべき機能がある商品のことを指します。三菱ケミカル株式会社が注力している機能商品として挙げられるのが、炭素繊維です。炭素繊維は、鉄の約10倍の強度を持ちつつも軽量で、腐食しないという性質を持ちます。そのため、自動車や航空機、人工衛星などにも採用されているのが特徴です。三菱ケミカル株式会社は、世界中の工場でこの炭素繊維を製造しています。


「住友化学株式会社」は、高度な有機合成技術をもとに、日本で初めて合成医薬品を製造した企業です。現在は医薬品部門の他に、ポリエチレンやポリプロピレンといった化学工業製品の製造を担うエッセンシャルケミカルズ部門や、タッチセンサーパネルなどの製造を担う情報電子化学部門など5つの事業を展開しています。特に注目されているのは、リサイクル性に優れたポリエチレンフィルムである「スミクル」です。スミクルは洗剤やシャンプーなどの包装材として使われることを想定しており、使用後の製品を原料にして同じ製品を新たに作るというリサイクルがしやすい素材として開発されました。熱で縮みにくく加工がしやすいため、リサイクルも容易です。住友化学株式会社では、このように環境に配慮するという観点からも化学工業製品の製造を行っています。


「積水化学工業株式会社」は、化学工業製品の中でも特にプラスチックの成形加工を得意として成長した企業です。現在も、高機能プラスチックスの製造を中心に事業を展開しています。積水化学工業株式会社の高機能プラスチックスは、住宅の建築材や自動車、モバイルデバイスの画面を保護するフォームなどに使われているのが特徴です。衝撃吸収性に優れた、最薄0.08mmでディスプレイを保護できる超薄型のフォームなども、積水化学工業株式会社が開発しています。

化学工業業界の職種

有機化学工業製品の研究開発

化学工業業界の仕事には、具体的にどのような職種があるのでしょうか。ここでは、化学工業業界のおもな職種についてご紹介します。

企画

企画職は、大きく分けて事業企画と生産企画の2種類があります。事業企画は、自社や関連会社の資金繰り状況や業績を見つつ、売上収益を上げるための事業展開などを企画する仕事です。化学工業品を作るためにはさまざまな部品が必要となる事も多く、世界中に数多くの工場や関連会社を持つメーカーもあります。そのため、事業企画担当によるサポートが必要です。また、生産企画は、製品の製造方法や生産機械の企画、生産ラインの改善業務などを行っています。化学工業製品を安定的に供給するためには、効率よく生産するための技術や機械、環境が重要です。例えば「新製品の製造拠点を自社工場へ移す」というプロジェクトであれば「新製品がどれだけ売れるのか?」や「自社工場がその売上に対し、どれだけ効率よく生産できるのか?」という点を分析・調査しなくてはいけません。そのため、生産企画は見込んだ売上に対し、より効率よく生産可能な生産方法や生産機械について検討しています。

研究開発

研究開発は、新事業や新商品に繋がるような、新たな化学技術や素材について研究する仕事です。化学工業メーカーの研究開発職には、技術や素材について研究するだけでなく「どういった手順で化学反応を起こせばいいか?」を考えるプロセスを研究・開発する部門もあります。例えば、二酸化炭素を原料としてアルコールなどの有価物を生成しようとした際に「どのような手順で化学反応を起こせばよいのか?」を考えることが、プロセス研究・開発の仕事です。

研究開発

研究開発は、新事業や新商品に繋がるような、新たな化学技術や素材について研究する仕事です。化学工業メーカーの研究開発職には、技術や素材について研究するだけでなく「どういった手順で化学反応を起こせばいいか?」を考えるプロセスを研究・開発する部門もあります。

設計

研究開発で得られた結果をもとに、製品化できるよう製造方法や商品仕様などを細かく組み立てていく仕事です。製品を安定的に供給するためには、誰がどの工場で作っても同じように作れるような仕組みが欠かせません。そのため、設計担当は同じ基準で生産できるような設計図の作成を担います。また、プラスチックのように製造方法が何種類もある製品については、費用を抑えつつ、より高品質なものを生産できるよう設計することも設計担当の業務です。企業の売上を考えた際、売上を最大限に伸ばすためには、材料の費用を抑えなくてはいけません。そのため、設計は売上などのバランスも考えつつ、製品化に適した製造方法や商品仕様の検討を行います。

製造

製造は、工場などで実際に製品を作る仕事です。しかし、実際には人の手のみで行う工程は多くありません。ほとんどが生産機械を使って行われています。とはいえ、機械が常に不具合なく動くとは限らないため、生産現場で管理する人材が必要です。また、一定の品質を満たすための製造方法などの開発にも製造職は関わります。例えば、さまざまな形態で使われるポリエチレンの製造現場では、お客様に求められる品質や形にあわせて製造方法を変えなければいけません。ポリエチレンは、製造段階で密度や液体状にした時の流動性などを調整できるからです。その際、製造担当は、現場の生産状況やすでにある生産機械から「どのような製造方法であれば、お客様の要望に応えられる製品を作れるか?」について、開発担当などの各部門と連携しつつ検討を行います。

生産技術

生産技術は、製品を生産する工場のシステムや設備の管理、安全対策の検討などを担う仕事です。化学工業製品を生産する現場では、アルコールなどの燃えやすい薬物を取り扱ったり、高温・高圧になる機械を扱ったりすることもあります。そのため、安全管理を徹底することは重要です。生産技術は、実際の現場にて、危険物を取り扱う際の安全対策や機械が安全に動くための点検・メンテナンスを行っています。また、古くなった製造設備を更新するために、県や市などの官庁へ申請を行うことも生産技術の仕事です。化学工業製品を生産する現場では取り扱いに十分注意する必要がある設備が多いため、更新をする際にも、消防署や自治体へ申請をしなくてはいけません。危険物設備のことは消防法に基づき消防署へ、公害防止関連の法規制を受ける機器については県や市へ、それぞれ書類を作成して申請が必要です。生産技術担当は、このような生産設備に関する事務的な業務も担います。

品質管理

品質管理は、出荷する前の製品を検査する業務です。化学工業製品の品質管理での検査項目は、数も多く多岐にわたります。それでは、液晶ディスプレイなどに使われる偏光板の品質検査を例に挙げ、解説しましょう。偏光板とは、振動方向がバラバラな自然光を一定の方向へ揃えるために使用する光学部品です。偏光板は、粉状の原料に熱を加えて溶かし、温度を下げて固めるという方法で製造します。そのため「どのくらいの温度で粉状に戻るのか」という項目も検査しなければいけません。他に「原料の種類に過不足はないか」や「不純物が含まれていないか」などについても、専用の機械を使って細かく検査します。さまざまな状況、環境での使用を想定し、あらゆる検査や分析が必要です。

化学工業業界で求められる人とおすすめの学部

化学工業業界に向いている子ども

化学工業業界に就職するためには、どのような経験や資格が求められるのでしょうか。ここでは、化学工業業界に向いている人の特徴、おすすめの学部などもご紹介します。

求められる経験や資格

化学工業業界に就職するために、必須の資格はありません。専門的な知識や資格が必要な場合は、入社してから取得可能な体制が整えられている企業がほとんどです。しかし、研究開発や設計などの技術系職種については、卒業する学科・専攻が限られている場合があるため、注意しましょう。

化学工業業界に向いている人

化学工業業界に向いている人の特徴は、以下の2つです。
・粘り強く物事に取り組める
・さまざまな分野の知識に柔軟に対応できる

粘り強く物事に取り組める

化学工業業界では、さまざまな職種に粘り強さが求められます。例えば研究開発では、新たな技術や素材の発見に長時間かかる可能性も高いです。一定の成果が出るまで、何度も同じ実験を繰り返すこともあります。また、品質管理でも、同じ製品に対して何度も検査を行うことは必要です。安全な製品を出荷するために、粘り強く検査を続けなくてはいけません。以上の理由から、粘り強く物事に取り組める人は向いているでしょう。

さまざまな分野の知識に柔軟に対応できる

化学工業製品は、住宅建材や医薬品、自動車など、さまざまな分野で使われています。そのため、化学工業製品が使われる製品や業界の知識なども学ばなければいけません。例えば、住宅建材へ使うための化学工業製品を求めているお客様の要望に応える製品を作る場合、住宅建材に求められる機能や耐久性、住宅建材の使われ方などの理解も必要です。製品を作っても、機能や耐久性が不十分だったり扱いにくかったりすれば、製品として販売できません。このように、化学工業製品の生産には、さまざまな分野の知識が必要です。そのため、化学以外の知識にも柔軟に取り組み、学ぶことができる人には向いているといえます。

化学工業業界で働くためにおすすめの学部・学科(コース、専攻)

大学の化学専攻の研究室

化学工業業界で技術系の職種に就きたい場合は、理学部の化学系の学科に進むのがおすすめです。理学では、自然科学の法則や理論、仕組みを学べます。化学工業メーカーの仕事では化学の知識が基盤となるため、特に化学分野について学んでおくとよいでしょう。
事務系職種については、文系や理系の他の分野に進んでいても目指せます。学部・学科は不問としている企業も多いです。化学工業製品の製造に、他の学部・学科の知識を活かすことも可能でしょう。しかし、社内の技術職と関わる機会も多く、化学の知識を学んでおいても損はありません。
理学、特に化学分野について学べる大学、学部には、以下のようなものがあります。


東北大学理学部化学科
東京工業大学理学院化学系
東海大学理学部化学科
京都大学理学部理学科化学専攻
福岡大学理学部化学科

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