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ガソリン・石油業界の具体的な仕事内容は?関連企業や就職する方法を解説

2024.04.25

カテゴリー:
ガソリンスタンドで働く女性スタッフ

ガソリン・石油は車を動かしたり石油ストーブなどの暖房機器を動かしたりするなど、人々の生活を支える重要なエネルギーのひとつです。ガソリン・石油を扱う業界の仕事というと、ガソリンスタンドのスタッフを思い浮かべるかもしれませんが、他にどのような仕事があるのか詳しく知らないという人は多いでしょう。

この記事では、ガソリン・石油業界の仕組みや仕事内容、就職するために必要な情報などをまとめました。ガソリン・石油業界のことを知りたいという人や就職を視野にいれている人は、参考にしてみてください。

ガソリン・石油業界の仕事内容と職種

ガソリン・石油業界の仕事内容について知るために、そもそもガソリン・石油とは何なのか、どのような流れで消費者の手元に届いているのかを簡単にご紹介します。

ガソリン・石油業界とは

石油とは地中から採取された原油と原油から精製された石油製品の総称で、ガソリンは石油を精製したものです。石油は原油のままでは燃料としてつかえないため、ガソリン・灯油・潤滑油・軽油・重油といった石油製品に精製されます。石油製品には燃料以外に、プラスチックやペットボトル、ゴムやタイヤなどの原料も含まれます。

石油は災害時や緊急時にも安定して供給できるよう、基本的に需要を供給が上回るように生産されます。加えて、石油からガソリン・灯油など特定の石油製品をつくることができないため、石油製品は必要な量だけつくって販売するという体制がとれません。

そのため、ガソリン・石油業界は大きく3つの分野に分かれています。

石油開発会社
石油を生産する国の地質調査や、原油の探鉱・開発をおこないます。日本にも石油が採れる油田はありますが生産量が少なく、ほとんどが海外からの輸入に頼っています。

石油元売り会社
石油の輸入・精製・販売までを一貫しておこないます。ENEOSや出光興産など、系列のガソリンスタンドにそのまま販売している企業もあります。

燃料商社
石油元売り会社から石油製品を買い取り、ガソリンスタンドに販売します。前述したように石油は必要な量だけ生産できないため、余った石油を燃料商社が買い取り、石油元売り会社の系列に属さないガソリンスタンドに販売しています。

ガソリン・石油業界の具体的な仕事内容

プラントの図面を見る技術系社員

ガソリン・石油業界の仕事内容は、大きく技術系と事務系に分けられます。

技術系
主に石油製品や関連機器の研究・開発などを担当します。石油製品の製造に関わる研究や開発に限らず、石油製品を精製するためのプラントの開発や施設管理、ガソリンスタンドで使われるようなガソリンを供給する専用機器の開発やメンテナンスなど、活躍できる分野は多岐にわたります。

事務系
ガソリン・石油業界特有の仕事としては、原油のような一次エネルギーを調達・販売する仕事があります。前述したように日本の石油はほとんどが海外からの輸入に頼っているため、原油の調達には語学力が求められるでしょう。一般事務でも海外とやりとりする機会が比較的多い業界といえます。

ガソリン・石油業界の職種

ガソリン・石油業界の職種で代表的なものは、下記の6つ です。他にもほとんどの業界で共通となる総務や経理の仕事もあります。

1.インフラ開発
油田の調査や採掘、施設の設計や建設を担当します。主に資源開発をおこなう石油開発会社での仕事です。

2.プラント管理
石油製品を製造するプラントの新設や補修をおこないます。プラントとは、素材や製品を生産する工場や装置、設備の総称です。石油精製や石油化学製品製造のためのプロセス・システム設計をおこなうのも、プラント管理に含まれます。

3.プロセス管理
石油精製・石油化学プラントの運転・管理を担当します。石油の需要予測や生産計画の作成、進捗管理などが主な仕事です。

4.研究開発
石油の精製プロセスや機能材料について研究し、製品の開発をおこないます。コストを抑えた精製方法の検討や新機器の開発など、課題解決・収益化につながる内容もあります。

5.販売
石油製品や専用機器の販売・メンテナンスをおこなう仕事です。卸売先へ製品の販売をおこないつつメンテナンスも請け負うセールスエンジニアや、ガソリンスタンドやインフラ企業に製品を販売する法人販売などがあります。

6.プロジェクト管理・サポート
関連子会社や特約販売店の経営サポートをメインにおこないます。石油資源は国際的な資源のため政府機関との連携も必要であり、石油製品をつくる工場や関連子会社、製品を直接消費者に届けるガソリンスタンドのような特約販売店との連携も必要になります。新しいエネルギーの開発事業においても、プロジェクトをスムーズに進めるために各組織と連携をとって管理する人材が必要です。そうした関係各所との連携や円滑な経営に踏み込む仕事も、業界ならではの職種といえるでしょう。

ガソリン・石油業界の関連企業

INPEXの基地

ガソリン・石油業界の代表的な企業をご紹介します。前述したようにガソリン・石油業界は3つの分野に分けられるため、分野ごとにまとめました。

石油開発会社
株式会社INPEX
国内トップの企業規模を誇る石油開発会社です。石油埋蔵量65.1億バレル(東京ドーム約845個分)、1日の生産量は約57.3万バレル (東京ドーム約7個分)と生産量も国内随一で、世界各地で事業展開しています。もともと国策会社(政府の強い統制下にある半官半民企業)である帝国石油と国際石油開発の2社が合併して設立された会社で、現在も日本政府が筆頭株主です。

石油資源開発株式会社(JAPEX)
国内に10か所の油ガス田を持ち、石油や天然ガスを生産しています。800㎞を超えるガスパイプライン網で国内各地に天然ガスを供給しており、海外での超重質油生産にも取り組んでいます。JAPEXも日本政府が筆頭株主です。

JX石油開発株式会社(NEX)
ENEOSホールディングスの子会社で、グループの石油・天然ガス開発を担当する企業です。マレーシアやベトナムでオペレーター(現地で機器を操作する仕事)として操業しています。

石油元売り会社
ENEOS株式会社
国内の石油供給50%を担う、国内最大手の石油元売り会社です。全国1万3000箇所にガソリンスタンドを所有しており、石油製品の精製、販売の他、ガス・石炭の輸入や電気・水素の供給もおこなっています。後述するコスモ石油とは業務資本提携関係にあり、原油調達や石油精製、物流などの分野で提携しています。

コスモ石油株式会社
原油・石油製品の輸出入・精製・貯蔵・販売等を担う石油元売り会社です。コスモエネルギーホールディングス株式会社のグループ企業のひとつで、1986年に設立されました。国内3か所に製油所を持ち、グループ内の供給部門を担当しています。

出光興産
創業100年を超える石油元売り会社です。国内に4か所の製油所と3か所の工場、2か所の研究所を保有しており、ガソリンスタンドの数は国内で5,000店舗を超えます。石油運送や製油、再生可能エネルギーの供給をおこなう他、日本の石油元売り会社で唯一ウラン資源の開発をおこなっています。

燃料商社
丸紅エネルギー株式会社
仕入れた石油製品を全国のガソリンスタンドを運営する系列特約店や、石油製品を必要とする企業へ供給しています。LNG(液化天然ガス)の販売や新電力への切り替え提案、カーライフ事業等、幅広く事業を展開しています。

兼松ペトロ株式会社
総合商社兼松のグループ会社です。エネルギーと素材の専門商社で、石油とLPガス、潤滑剤を主力事業としています。創立は1995年ですが、前身の会社は1960年代から石油・ガスの供給を続けてきた歴史のある企業です。

株式会社大野石油店
広島を中心に燃料油・潤滑油の直販 をおこなう会社です。具体的には、燃料油や潤滑油を設備に利用している企業や一般ユーザーに販売しています。国内28か所にガソリンスタンドを展開し、うち25か所はフルサービス型で接客に重点を置いています。石油の販売だけでなく自動車整備、中古車販売など幅広い事業展開で地域の活性化に貢献します。

ガソリン・石油業界の現状と今後の動向

減りつつある灯油ストーブ

ガソリン・石油業界の現状と今後の課題についてご紹介します。

ガソリン・石油業界の現状

原油の生産国の大半は海外ですが、もともとは「石油メジャー」と呼ばれる大手の国際企業が原油の生産をおこなっていました。現在はサウジアラビアやロシアなど、産油国の国営企業が原油の生産を担うことが増えていますが、政治的に不安定な国が多く、原油の供給や価格に大きな影響を与えることが危ぶまれています。
原油の大半を海外の輸入に頼っている日本は、海外企業と比べて原油の生産量は多くありません。海外からの供給が不安定になれば、日本の石油も比例して供給が不安定になってしまいます。

一方、石油などの化石燃料は地球温暖化を加速させるといわれており、環境に配慮した天然ガスの使用も増えていることから、日本国内での石油の需要は減少傾向にあります。
輸入に頼らない原油、あるいは原油に代わるエネルギー資源を自給自足できるようになることが、日本のガソリン・石油業界の課題といえるでしょう。

ガソリン・石油業界の今後の動向

前述したように石油は地球環境に悪影響を及ぼすと考えられ、使用は抑制されつつあります。そのためガソリン・石油業界の日本企業は、石油に代わるエネルギーの生産も迫られています。

一方、海外ではまだ石油を必要としている国もあるため、海外にマーケットを広げればガソリン・石油業界の日本企業も成長できる可能性があります。既にガソリン・石油業界の大手企業の多くは、海外の製油所や給油所の新設・共同運営や、現地の燃料販売会社の買収など海外事業展開 を進めています。

ガソリン・石油業界に向いている人の特徴とおすすめの学部

ガソリン・石油業界は前述したように長い歴史を持つ一方で課題も多く、大きな変革を迎える業界です。他のエネルギー業界と同様に、主体的に物事に取り組める人や変化に柔軟に対応できる人材が求められるでしょう。

そのうえでガソリン・石油業界に向いている人の特徴や、業界で活躍しやすくなるおすすめの学部について解説します。

ガソリン・石油業界に向いている人の特徴

海外の石油エンジニア

ガソリン・石油業界に向いている人の特徴は、主に下記の3つです。

1.環境・エネルギー事業に関心がある人
地球環境の改善やエネルギー事業に関心がある人は、ガソリン・石油業界で働くのに向いているでしょう。ガソリン・石油業界の主な課題は、環境に優しい再生可能エネルギーの開発や石油の安定供給です。環境問題やエネルギー事業に興味があり、業界の発展に貢献したいという想いがある人は、働くモチベーションを保ちやすいです。

2.海外で活躍したい人
前述したようにガソリン・石油業界は海外との連携が必要不可欠な業界です。日本国内での事務仕事であっても英語に触れる可能性はあり、仕事によっては直接現地に赴く可能性もあります。海外への事業展開を進めている企業も多いので、海外で活躍したい、語学力を活かして仕事がしたい、という人は活躍の幅が広がるでしょう。

3.人々の生活を支える重要で大きな仕事がしたい人
ガソリン・石油は暮らしを支える大切なエネルギーです。 ガソリン・石油業界に携わることで、縁の下の力持ちとなって人々の生活を支えることができるでしょう。特に原油は世界中で必要とされるエネルギー資源であり、原油に関わる仕事は世界経済にも影響を与えます。身近な人々の生活だけでなく世界の経済を支える、重要で大きな仕事に携わりたいという人に向いているといえるでしょう。

ガソリン・石油業界に就職するための勉強ができる大学・学部

ガソリン・石油業界の仕事は、事務職や販売職は文系でも理系でも目指せますが、研究職や開発職に携わりたい場合は理系の学部で学ぶのがおすすめです。

理系の学部でも特にかかわりが深いのは、資源・エネルギー工学です。資源工学は地球内部の地下資源を中心に研究する学問で、地質の調査やエネルギー資源の開発について学べます。エネルギー工学はエネルギーを取り出す技術の研究・開発を学べる学問で、石油や石炭などを効率的に活用する技術などの安全性・コスト面での改良を目指します。資源・エネルギー工学を学べば、ガソリン・石油業界での研究・開発に役立つでしょう。

資源・エネルギー工学が学べる大学の一例をご紹介します。

東京薬科大学(生命科学部/応用生命科学科)
福井工業大学(環境学部/環境食品応用化学科)
日本大学(理工学部/物質応用化学科)
東邦大学(理学部/生命圏環境科学科)
埼玉工業大学(工学部/生命環境化学科/バイオ・環境科学専攻)
北九州市立大学(国際環境工学部/環境化学工学科)

ガソリン・石油業界で役立つおすすめの資格

学生のうちからでも取得できる、ガソリン・石油業界で役立つおすすめの資格をご紹介します。学部・学科での勉強に加えて資格も取得しておくと、就職後も活躍の幅が広がるでしょう。

危険物取扱者
危険物取扱者資格は、消防法で規定された危険物の取り扱い、監督に必要とされる資格です。化学工場やガソリンスタンド、石油貯蔵タンクなどの施設では危険物取扱者の有資格者を置く必要があるため、資格を取得しておくと重宝されるでしょう。特にエンジニア系の職種では資格取得が必要です。

甲種・乙種・丙種の三種があり、全ての危険物を取り扱える甲種以外の二種は誰でも受験資格があるので、就職活動前に取得できます。

高圧ガス製造保安責任者
高圧ガス製造保安責任者は、高圧ガスを取り扱うための国家資格です。全部で9つの資格がありますが、誰でも受験できます。中でも高圧ガス製造事業所で保安の実務をおこなえる「甲種化学責任者」や「甲種機械責任者」「乙種化学責任者」、ガソリン・石油業界にかかわりの深い「丙種化学(液化石油ガス)責任者」などの資格取得がおすすめです。

TOEIC
特に海外で活躍したいと考えている人は、TOEICの受験がおすすめです。一般的に800点以上とれるとビジネスレベルの英語力があるとみなされるため、受験しておくと良いでしょう。

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ガソリン・石油業界の仕組みや仕事内容、おすすめの学部についてまとめました。

ガソリン・石油業界は変革のときに差し掛かっており課題は多いですが、人々の暮らしを支える大切なエネルギー資源を扱う業界です。長く必要とされ続ける仕事であり、ガソリンスタンドのような身近な仕事から海外展開など、幅広い活躍の場がある仕事でもあります。環境・エネルギーに関わる仕事で成長したい、人々の生活を支える仕事がしたい、という人におすすめの業界といえるでしょう。

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