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大学無償化制度の利用条件は?支援内容や申請方法、2025年開始のこども未来戦略についても解説

2022.12.28

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更新日:2023年12月26日

通帳とPCを見ながら教育費に悩む主婦

大学に進学するときには、入学金や授業料などの少なくない費用がかかります。国公立大学、私立大学とともに年々学費が上がっているのも事実。「そんなに払えるだろうか…」と経済的な不安を感じる人も増えているのではないでしょうか?
そこで経済的な不安を解消するために、2020年4月にスタートしたのが大学無償化制度です。

また、従来の大学無償化制度のほかに、2025年からは、扶養する子どもが3人以上の世帯が大学無償化される案が検討されています。
この記事では、従来の大学無償化制度と支援内容、支援対象、申請方法などのほか、2025年から開始が検討されている大学無償化制度について紹介します。

2025年から開始が検討されている大学無償化制度とは?

2023年11月、政府は扶養する子どもが3人以上いる世帯に対して、大学の授業料と入学金を無償化する方針を示しました。

たとえば、3人兄弟のうち、うえ2人が大学に在籍していれば2人とも無償化の対象となります。ただし、第一子が卒業後に扶養を外れると、した2人は対象外になります。

従来の大学無償化制度との大きな違いは、所得制限の有無です。従来の制度では所得制限がありますが、多子世帯に対する新しい無償化制度には所得制限がありません。ただし、免除額には、以下のように上限があります。

〈授業料の免除上限額〉

国公立大学私立大学
54万円70万円

〈入学金の免除上限額〉

国公立大学私立大学
28万円26万円

医学部や薬学部など6年制の場合は、最大6年間補助されます。今後も新たな条件等が加わるかもしれないので、対象になる可能性のある人は、よく確認しておきましょう。

ここからは、従来の大学無償化制度について解説します。

大学無償化制度とは?

大学無償化制度とは、2020年4月にスタートした「高等教育の修学支援新制度」のことです。
成績優秀で学ぶ意欲が強いにもかかわらず、ひとり親家庭などで経済的な理由で大学や短期大学などへの進学を躊躇している人も多いのではないでしょうか?そのような人が進学できるようにサポートするのが、「大学無償化制度」と呼ばれる当制度の目的です。

誤解なきように言うと、大学に関する費用が誰しもすべて「無料」になるわけではありません。この制度の柱は、条件に合う人に対する「授業料・入学金の免除または減額」と、お金を返す必要がない「給付型奨学金の支給」の2つです。大学進学に向けて経済的な不安がある人は、ぜひ利用条件をチェックして活用を検討してくださいね。

大学無償化制度の支援内容

大学無償化制度で受けられる支援内容は、「授業料等減免制度」と「給付型奨学金」です。ここでは、支援金額の具体例などを詳しく見ていきましょう。

授業料等減免制度

入学金・授業料が減額または免除されるのが、授業料等減免制度です。大学や学部によって学費は大きく変わるので、具体的にいくら減るのかが気になっている人も多いのではないでしょうか?

支援金額は進学先が国公立大学か私立大学か、あるいは大学か短期大学か、通学は自宅から・ひとり暮らしのかなどによって変わってきます。また、世帯収入(いっしょに暮らす家族全員が一年で稼ぐお金)によっても変わるのでご注意を。
生活保護を受けていたり、前年合計所得金額が135万円以下のひとり親家庭だったりといったいわゆる「住民税非課税世帯」の学生は、下記の金額サポートが受けられます。

■授業料等減免制度の支援金額の例(昼間制)

 入学金授業料
国公立大学約28万円約54万円
私立大学約26万円約70万円

出典:文部科学省「高等教育の修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金)

※住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生は3分の1または3分の2の金額

給付型奨学金

大学無償化制度には、生活費として毎月、学生の口座に日本学生支援機構(JASSO)から振り込まれる給付型奨学金もあります。給付型なので、なんとJASSOにお金を返す必要はありません!学費だけでなく生活費まで、サポートしてくれるというのは驚きですよね。

月額の上限金額は下記のとおり。
自宅や児童養護施設などから通学するか、ひとり暮らしのアパートなどから通学するかによって金額が変わります。これも授業料等減免制度と同じく、住民税非課税世帯の学生が下記の金額の対象です。

■給付型奨学金の月額上限(昼間制・夜間制、月額)

〈国公立大学〉

自宅29,200円(33,300円)
自宅外66,700円

〈私立大学〉

自宅38,300円(42,500円)
自宅外75,800円

出典:文部科学省「高等教育の修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金)

※生活保護世帯で自宅通学者、児童養護施設などからの通学者は( )の金額

※住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生は3分の1または3分の2の金額

大学無償化制度の申請手続は2種類ある

大学無償化制度の申請手続には、入学前に届け出る「予約採用」と、大学在学中に申請する「在学採用」の2種類があります。それぞれどのような手続をすれば、大学無償化制度の適用を受けられるのか?
流れを確認していきましょう!

予約採用

入学したときから経済的なサポートを受けるには、高校3年生の4月下旬に申し込む必要があります。これが予約採用です。サポートを受けるなら早くからのほうがありがたいですよね。この予約採用で申請していきたいところです。

まず大事なのは、「自分が対象となっているのか」を確認することから!大学無償化制度が利用できない大学もありますので、自分の志望校が対象となっているのかのチェックもお忘れなく。
対象の大学なら、日本学生支援機構(JASSO)へのインターネット申請と、JASSOへのマイナンバー関係書類の郵送、高校への申込書類の提出をしましょう。秋頃には結果の通知があります。

あなたの申請が無事に認定されたら、進学先に「採用候補者決定通知」の提出と授業料等減免の申請を行って、手続は完了!支援のスタートは、給付型奨学金は4月分から。4月または5月から毎月学生本人の銀行口座にお金が振り込まれます。

在学採用

在学採用は、入学してから大学無償化制度のサポートを受けること。大学無償化制度が入学後でも受けられるなんて、ちょっと意外ですよね。
しかも嬉しいことがもうひとつ。予約採用で条件にマッチせず不採用になっても、在学採用でのチャレンジが可能なのです。予約採用がダメでも諦めずに、積極的に在学採用を狙っていきましょう!

在学採用では毎年、前期(4月)と後期(9月)の年2回、申込みのチャンスがあります。
採用決定通知は前期が7月頃、後期が12月頃。採用されれば前期は4月分から、後期は10月分からそれぞれ振り込まれます。

ただし、ひとつ注意したいポイントが。過去に大学無償化制度の適用を受け、それを取り消されたことがある人は、新たに大学無償化制度に申請できないのです。例えば、もし留年すると取り消されてしまいます。

また、予約採用・在学採用はいずれも、採用後に継続手続が必要。給付型奨学金は年1回、授業料等減免は年2回となっており、手続をしないと支援は止まってしまいます。忘れないようにしてくださいね。

大学無償化制度の利用条件

無償化の申請をする男性

 
大学無償化制度を利用するには、どうしたらいいのでしょうか?
まずは「世帯収入」「資産」「学業」に関する条件をクリアする必要があります。さらに、入学前か入学後の適切なタイミングで手続する必要も。
制度を使うためにも、正しい知識を事前に持って、しっかり確認していきたいところ。ひとつずつ解説します。

世帯収入条件

大学無償化制度の支援対象は、「住民税非課税世帯」と「住民税非課税世帯に準ずる世帯」の学生です。住民税非課税世帯の学生は満額のサポートを受けられ、住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生はその3分の1または3分の2になります。

といっても、わかりづらいですよね。
住民税非課税世帯とは、文字どおり住民税(市町村民税)を課されていない家庭のこと。一定の年収を下回ると、住民税は課されなくなるのです。そして住民税非課税世帯に準ずる世帯とは、住民税の課税レベルが低い家庭のことで、さらに課税金額によって2段階に分けられています。

■住民税の税額と支援割合

支援対象者住民税の税額に準ずる額支援割合
住民税非課税世帯100円未満満額
住民税非課税世帯に準ずる世帯100円以上 2万5,600円未満満額の3分の2
住民税非課税世帯に準ずる世帯2万5,600円以上 5万1,300円未満満額の3分の1

具体的に家庭の年収がどれぐらいならばどれだけの額の支援を受けられるのかは、家族構成や家族の年齢などによって変わってきます。
具体例を挙げましょう。両親2人と本人(18歳)と中学生という家族4人世帯の場合と、両親2人と本人(19〜22歳)と高校生という家族4人世帯の2パターンを確認してみます。

■支援対象となる年収の目安と支援額の例

支援対象者両親2人と本人 (18歳)と中学生両親2人と本人 (19〜22歳)と高校生支援額
住民税非課税世帯~270万円~300万円満額
住民税非課税世帯に準ずる世帯~300万円~400万円満額の3分の2
住民税非課税世帯に準ずる世帯~380万円~460万円満額の3分の1

出典:文部科学省「高等教育の修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金)


家族構成などはさまざまなので、「自分がこの条件を満たしているのだろうか?」というのは簡単には判断できません。日本学生支援機構の下記のウェブサイトが参考になるので、一度試してみてくださいね。
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資産条件

大学無償化制度の支援対象になるには、「資産」に関する条件も。ここでいう資産は、「現金およびこれに準ずるもの」のことなのですが、高校生の皆さんにはちょっとイメージが浮かばないですよね。
具体例を出すと、家庭にある現金や預貯金などです。土地などの不動産は含まれません。
資産の基準額は、下記のように生計維持者(家計を担う人)の人数によって変わってきます。

<基準額>
・生計維持者が2人の場合:2,000万円未満
・生計維持者が1人の場合:1,250万円未満

学業条件

高校生の皆さん自身に最も関係があるのは、学業条件ではないでしょうか。学業成績や学修意欲に関する条件は、5段階評価の評定平均値や大学での成績によって判断されます。具体的には、申請時期が「高校3年生」「大学1年生」「大学2~4年生」のいつなのかによって基準が変わります。
下記の例で見てみましょう。

<高校3年生の4月に申請>
高校3年生の4月に申し込むときは、高校2年生までの成績を参考にします。学修意欲があれば基本的には誰でも申し込めますが、評定平均値が5段階評価で3.5未満だと、レポートもしくは面談によって学修意欲の確認が必要になります。

<大学1年生の4月に申請>
大学入学時の場合は、高校3年間の成績などを参考にします。具体的には、下記のいずれかの条件を満たせば良いとされています。すべてをクリアする必要はありませんので、安心してくださいね。

・高校3年間の評定平均が5段階評価で3.5以上
・入学試験の成績が入学者の上位2分の1以上
・高卒認定試験の合格者
・学修計画書の提出により学修の意欲や目的、将来の人生設計等が確認できる

<大学2〜4年生に申請>
大学在学中の場合は高校での成績は参考にせず、大学在学中の成績が条件になります。具体的には、下記のいずれかを満たさなくてはいけません。これも「いずれか」なので、できれば1つ目の基準をクリアできれば、学修計画書の提出もいらなくなるのは嬉しいところ。

・GPA(大学の授業の成績を数値化して、1単位あたりの平均値を出したもの)が上位2分の1以上
・修得単位数が標準単位数(※)以上であって、かつ学修計画書の提出により学修の意欲や目的、将来の人生設計等が確認できる
※標準単位数=卒業必要単位数/修業年限×申請者の在学年数

大学無償化制度の注意点

大学無償化制度は、経済的負担を軽減できるという素敵なメリットがあります。しかし、場合によっては制度の利用ができないことも…。ここで大学無償化制度の注意点を確認していきましょう。

大学無償化制度利用ができない大学もある

大学無償化制度は、すべての大学で利用できるわけではありません。「行きたい大学では使えない!」とならないように、事前のチェックは必ず行いましょう。
とはいえ、2022年度の対象校は、全大学の803校のうち772大学(国立82校、公立98校、私立592校)で、その割合は約96%(文部科学省「令和3年度学校基本調査」より)。つまりほとんどの大学が対象なのです安心してほしいのですが、対象外の大学もあることは心に留めておいてくださいね。念のため確認するなら、下記のウェブサイトが参考になります。
支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧

世帯収入には本人(受験生)の所得も含まれる

支援条件のひとつである世帯収入には、あなた本人の収入も含まれます。「それもカウントに入れる」というのを意外に思う人は多いのでは?高校生のみなさんならアルバイトなどそれほど多くない収入ですが、大学は社会人の方も受験します。

実は「世帯収入」とは、同一の生計を立てる世帯全員の収入。高校生であっても、働いていれば収入を得るわけですから、その収入は世帯所得に含まれるのです。あなたの収入はいくらか、家族全員の収入額を確認してくださいね。

入学金はいったん前払いする必要がある

晴れて大学に合格すると、たくさんのお金がかかります。具体的には入学手続として1~2週間後までに入学金と前期分の授業料、施設設備費を支払うことになるのです。
ここでひとつ落とし穴が。入学金と授業料は支援対象ではあるものの、振り込まれるのは入学後の4月。なんと、前払いをしなければならないスケジュールになってしまっているのです。
では、入学手続での支払金額は、およそいくらなのでしょうか。文部科学省「令和3年度 私立大学入学者に係る初年度納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」によると、私立では文系で約79万円(入学金約23万円、授業料前期分約41万円、施設設備費約15万円)、理系で約100万円(入学金約25万円、授業料前期分約57万円、施設設備費約18万円)と、結構な額です。

大きな負担ですが、入学金と授業料、施設設備費を期日までに納付しないと入学資格が取り消されてしまいます。家族でよく話し合い、事前に準備する必要があります。そこで、入学前の準備が難しい場合に、ほかの支援制度が用意されています。下記の文部科学省のウェブサイトを参考にしてください。
大学・専門学校等への入学前に学生又は保護者が利用可能な支援制度

毎年の更新時期の学業成績によっては打ち切られる

大学無償化制度の支援期間は、最大で72ヵ月(6年)。しかし、在学中の成績が良くなかったり授業の出席数が少なかったりすると、サポートが打ち切られてしまいます。

卒業まで支援を継続的に受けるには、退学・留年にならないことはもちろん、修得単位も一定数必要です。単位を取得していても、平均成績や出席率が悪い状態が継続したらサポートは終わり。成績が基準を大きく下回るなどの最悪の場合は、過去に受けた金額を返還しなければならなくなるケースもあるのです。
支援の継続には条件があることを知って、入学後も気を引き締めて学業に注力していきましょうね。

なりたい職業に就くために大学無償化制度を活用することも考えよう

大学無償化制度活用を考える家庭

 
大学進学での経済的な不安解消に役立つ大学無償化制度。しかし、入学後も支援を受けるには、一定の成績を取らなければなりません。まだ入ってもいない大学で良い成績をキープできるのか、不安な気持ちなのではないでしょうか?
良い成績をキープするのには秘訣があります。それはあなたが興味を持って、進んで学びたい学問か。その観点で大学を選ぶことがとても大切です。これは成績のためだけではなく、充実した大学生活を送るためにも言えますね!

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