複合機・プリンター業界とは?仕事内容や職種、目指せる大学をチェック
2024.07.26
複合機・プリンターは、学校や会社のオフィスなどにある大型なものから家庭で使う小型のものまで、幅広くさまざまな種類があります。日常生活で目にする機会やCMを見かける機会も多く「複合機・プリンターのメーカーに興味がある」という方も多いでしょう。
この記事では、複合機・プリンター業界について、詳しい業界の説明や具体的な企業の例、職種について解説します。複合機・プリンター業界への就職を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
複合機・プリンター業界の魅力や代表的な企業の例
複合機・プリンター業界には、どんな特徴があるのでしょうか。ここでは、複合機・プリンター業界の基礎知識や働く魅力、代表的な企業の例をご紹介します。
複合機・プリンター業界とは?
複合機・プリンター業界とは、主にオフィスで使用されている、コピー機やプリンター、複合機(複写機、プリンター、ファクシミリ、スキャナーの機能をあわせ持った機器)などの製造販売を担う業界です。オフィスで使用されるこれらの機器は、家庭用と比較すると大型で多機能なものになっています。オフィス用の複合機やプリンターは、家庭用よりも使用頻度が高くなる傾向があるため、製造販売だけでなく、定期的なメンテナンスなどもメーカーが行うケースが多いです。一方、家庭用のプリンターは小型化が進んでおり、持ち運びしやすいモバイルプリンターも登場しています。スマートフォンなどで撮影した写真を、いつでもどこでもすぐプリントできることが主な特徴です。こうしたスマートフォンの普及などの状況にあわせ、複合機・プリンター業界でも新たな商品開発に励んでいます。
複合機・プリンター業界で働く魅力
大型複合機やプリンターは、オフィスだけでなく、学校や店など私たちの生活に身近なところでも使われています。そのため、自分が関わった製品が実際に使われているところを目にしやすい点が魅力です。例えば、撮影した写真を出先でプリントできるモバイルプリンターは、スマートフォンやタブレットの普及にともなって持ち歩いている人が増えています。また、手軽にプリントできるよう、コンビニやカフェなどに設置してあるケースも多いです。接続のためのケーブルが不要なプリンターも登場しており、ますます便利になっています。こうしたプリンターが実際に街中で使われているのを目にした時は、大きなやりがいを感じられるでしょう。
複合機・プリンター業界の代表的な企業の例
・セイコーエプソン株式会社
・富士フイルム株式会社
・キヤノン株式会社
複合機・プリンター業界の中でも、主力とする製品や得意とする技術などの違いにより、企業ごとの特徴は異なります。
例えば「セイコーエプソン株式会社」は、オフィス用だけでなく家庭用プリンターの製造販売にも力を入れている企業です。皆さんも、家電量販店などで「EPSON」と書かれた家庭用のプリンターが売られているのを目にしたことがあるでしょう。特に「より高性能かつ省エネルギーで動き、サイズもより小さくなった製品を生み出す」という技術を得意とし、製品にも活用しています。
「富士フイルム株式会社」は、カメラや写真のイメージが強い人もいると思いますが、複合機・コピー機のメーカーとしても有名です。特にインクジェット(印刷用紙にインクを吹きかけることで、色や文字を印刷する技術)の開発に力を入れており、新たなインクジェット技術を生み出しています。2022年に開発された「構造色インクジェット技術」もその1つです。構造色インクジェット技術とは、光の反射によって色を表現する「構造色」を、人為的にプリンターなどで印刷可能にした技術です。従来のプリンターでは色素を使った色の表現しかできませんでしたが、構造色インクジェット技術によって、色素を用いない色の表現が可能になりました。このような技術開発も、積極的に行っているのが特徴です。
「キヤノン株式会社」は、家庭向けやオフィス向け、業務用大型プリンターなど、複合機・プリンターについて幅広く製品展開しています。2023年度の実績では、オフィス向け複合機とレーザープリンターで世界シェア1位、インクジェットプリンターで世界シェア3位を獲得しました。現在もさらなる印刷技術の開発を進めており、2024年4月には、200年の耐光性を実現した新開発の顔料インクでの印刷が可能な大型プリンターを発売しています。このインクを使用して印刷することで、印刷物が色あせしにくく、長期保存が可能です。また、キヤノン株式会社も、グループ会社のキヤノンメディカルシステムズ株式会社にて、医療機器の製造販売事業を展開しています。複合機・プリンターと医療機器は技術的に近い部分もあるため、共通点も少なくありません。従って、医療機器の記事もぜひチェックしてください。
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複合機・プリンター業界の職種
複合機・プリンター業界の仕事には、具体的にどのような職種があるのでしょうか。ここでは、複合機・プリンター業界のおもな職種についてご紹介します。
研究開発
複合機・プリンターに新たな技術や機能を取り入れたり、新規事業へ繋げたりするため、新技術の研究を行う職種です。複合機やプリンターの技術・機能については、特に機械工学のような機械に関する知識が重視される傾向にありますが、研究開発職においては化学系の知識も必要とされる場面が多くあります。例えば、インクジェットプリンターにも化学系の知識を活かして改良されている「インクジェットヘッド」という部品があります。インクジェットヘッドとは、インクジェットプリンター内にある、インクを吹きつけるための部品です。インクを吹きつける速度はプリンターが印刷完了するまでの時間にも影響するため、素早く正確に印刷できるプリンターを作るためには、速度が速く精度の高いインクジェットヘッドが必要となります。また、あらゆるインクに耐えられる耐久性も必要です。そのため、インクに含まれる成分による化学変化なども考慮して、高性能かつ耐久性も高くなるような加工をインクジェットヘッドへ施しておくことが求められます。研究開発は、以上のようなインクジェットヘッドの加工を実現できるよう、新技術を見つけることが仕事です。
開発設計
研究開発で得た新技術や、お客様から求められる機能を実際に製品へ反映するため、製品の設計や評価・検証を行う職種です。例えば、素早い印刷を実現するためのインクジェットヘッドを開発しなければならない場合、開発設計では「定められた速さで、基準の品質を保ったまま印刷できるようにするには、インクジェットヘッドの設計をどうすればよいか」を考えます。「インクジェットヘッドの設計」とは、吹きつけられるインクが流れる場所の寸法や、インクを均一に安定して吹きつけられる量や動き方などの項目を設定することです。以上のような設計には、実際に製品を動かして製品を評価することが必要となります。そのため、研究開発よりも製品に触れる機会が多く、具体的な製品を作り上げていく実感が得られやすい職種だといえるでしょう。
生産技術
研究開発、開発設計を経て具体化した製品を、実際に売るために安定的に量産できるよう設計していく仕事です。開発設計の段階では「製品を量産する」という部分については考えられていないため、生産技術部門が設計を確認しています。例えば、プリンターの新製品を作る場合、開発設計からまず「このような部品を作りたい」という3Dモデルや案が提出されます。生産技術は、それを「量産可能か?」という観点からチェックすることが業務です。安定した品質・コスト・納期を満たすために「どのような設計にすれば、工場の既存の機械を使って量産していけるのか」を立案し、どの工場でも同様の品質・コスト・納期で量産できるよう図面を作成します。また、実際に工場へ出向いて打合せをする場合もあります。実際に生産を担う工場現場と連携し、製品の大量生産を支えることが重要な業務です。
生産管理
実際に生産するにあたり、素材の仕入れから物流までの全ての工程について計画を立案する職種です。複合機やプリンターの生産には、多くの部品が必要となります。また、それらの部品は国内外の複数の工場で生産されているため、生産数や納期の管理も必要です。さらに、完成した製品を国内外の販売会社へ届けるためのスケジュール管理も行わなくてはいけません。生産管理部門では、以上のような業務を全て担っています。製品を過不足なく生産し、国内外へスムーズに届けるために、必須の業種です。
調達
生産に必要な素材や部品を仕入れる仕事です。複合機・プリンターの生産には、国内外のさまざまな取引先からモーターや本体の素材である金属やプラスチックなどを調達しなければいけません。また、なるべく低コストで生産するためには、より安く仕入れることが可能な取引先を見つける必要もあります。調達部門は以上のように、より安く、より高品質な素材や部品を手に入れられるよう、調達計画を立てたり取引先を見つけたりすることが仕事です。さらに、完成した製品を国内外へ輸出入する際の管理も行います。例えば、海外の展示会で展示されていた製品を国内に返送するといった場合も、管理を行うのは調達部門です。製品が痛まないよう「輸出時と同様に、サビを防ぐための真空梱包がされているか」などもチェックし、管理しています。
品質保証
製品をお客様へ届ける前に、品質や安全性などに問題がないか、細かくチェックを行う仕事です。製品が完成後に最終チェックを行うのはもちろん、製品が完成する前にも、数多くの開発工程ごとにチェックを行うこともあります。例えば、新製品の複合機やプリンターを開発する際には、開発途中の製品に対して品質保証として留意すべきポイントを研究開発部門や開発設計部門へ伝えることが業務です。また「ボタンを押してから○秒以内にアクションが起こるべき」といったパフォーマンスの決定にも関わり、基準としている品質や安全性などが保たれるようサポートを行います。
複合機は使用頻度が多く、稼働できない状態が続くと企業の仕事に大きな支障を来す製品です。このような特徴から複合機はメンテナンスの必要性が高く、サポートを前提としています。
営業
完成した製品を購入してもらうため、国内外の販売会社と調整・交渉したり、お客様の要望にあわせて製品を提案したりする仕事です。完成した製品だけでなく、技術を提案することもあります。なぜなら、複合機・プリンターがお客様から求められる機能は「印刷やスキャンができる」という基本的なものだけではないからです。例えば光沢のある紙などの通常の紙とは違う素材に綺麗に印刷する機能や、より色が鮮やかに印刷できる機能が求められることもあります。そのようなお客様の要望に耳を傾け「私たちの技術であれば、このような機能を製品に組み込んで要望に応えることが可能です」と、技術の提案を行うことも営業の重要な仕事です。
複合機・プリンター業界で求められる人とおすすめの学部
複合機・プリンター業界を目指す場合、応募段階で特別な経験や資格を持っている必要はありません。必要な知識や資格については、入社後に習得できるよう研修制度が整えられているケースがほとんどです。
それでは具体的に、複合機・プリンター業界に向いている人の特徴、おすすめの学部なども見ていきましょう。
複合機・プリンター業界に向いている人
複合機・プリンター業界に向いている人の特徴は、以下の2つです。
・長い時間をかけて地道にものづくりすることが好き
・責任を持って真面目にものづくりに向き合える
長い時間をかけて地道にものづくりすることが好き
複合機・プリンター業界は、製造・販売する製品について、「高速印刷が可能なのか」「耐久性が高いのか」「大量生産が可能なのか」など改善すべきことが明確で狭いことが特徴です。つまり、短い期間でまったく新しい技術や機能が発見されることは、ほとんどありません。そのため、既存の技術や機能について、長い時間をかけて地道に改善点を探したり、新たな機能の検討をしたりする必要があります。1つの製品に腰を据えて向き合わなくてはいけないため、長い時間をかけてよりよいものを作っていくことが好きな方には向いているでしょう。
責任を持って真面目にものづくりに向き合える
複合機・プリンターは、販売した後もメンテナンスが必要なケースが多いです。特に、オフィスで使用される大型なものは使用頻度が高くなるため、定期的なメンテナンスが必須となります。複合機・プリンターのメーカーは、定期的なメンテナンスまで請け負うケースが多いため、製造・販売だけでなくメンテナンスまで、責任を持って長期間取り組むことが大切です。
また、販売を行う営業部門やメンテナンスを行う部門、お客様など、完成した製品を実際に使っている人たちの声を吸い上げ、製品を改良していくことも必要です。製品のメンテナンスや改良まで、責任を持って向き合える人には適しているといえます。
複合機・プリンター業界で働くためにおすすめの学部
複合機・プリンター業界で、研究開発や開発設計などの技術系職種への就職を目指す場合は、工学部や理学部がおすすめです。
市場のニーズに適した複合機・プリンターを設計・生産するためには、数学や物理の力学などの知識を必要とするため、特に機械工学について学んでおくと活かせる場面が多いでしょう。また、インクへの耐久性向上・カラーの再現性・高速でのスムーズな印刷などについて考える場合には、化学系の知識も必要です。そのため、理学部系への進学も適しているでしょう。
一方、生産管理や調達、営業などの職種の場合は、文系の学部を卒業していても目指せます。しかし、社内の技術系職種部門とのやり取りも多いため、機械工学の知識があるとよいでしょう。
機械工学や化学について学べる大学、学部には、以下のようなものがあります。
*東邦大学理学部物理学科
*関西学院大学理学部化学科
*大阪工業大学工学部応用化学科
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複合機・プリンターは、オフィスでの仕事やプライベートでの写真印刷など、さまざまな場面で私たちの生活に関わっている機械です。機械やものづくりが好きな方や、普段使っている複合機やプリンターに強い興味がある方は、複合機・プリンター業界でやりがいを感じながら活躍できるでしょう。
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