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陶芸家になるには?仕事内容や気になる年収、働き方や将来性を紹介

2023.07.18

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陶芸家と作品

陶芸家は、土や石を原料に陶磁器と呼ばれる焼き物をつくる仕事です。高校生の皆さんの中には、陶芸と聞くと土をこねてろくろを回すイメージを持つ人も多いかもしれませんね。しかし実際にどのような働き方をしてどのくらい収入が得られるのか、具体的な点を知っている人は少ないと思います。

この記事では、陶芸家の具体的な仕事内容や年収、陶芸家になるために必要なことについて解説します。ぜひ参考にしてみてください。

陶芸家とは?

陶芸家は、土や石を原料に使用して陶磁器をつくる仕事です。土や石でつくった粘土を形作り、窯の中で高温で焼きあげる仕事で、仕上がった陶磁器は日用品として使われたり芸術作品として評価されたりします。

陶芸は、縄文時代から続く日本最古の芸術形式といわれています。器に縄を巻きつけた縄文土器にはじまり、中国の文化を取り入れたり地方の性質を活かしたりして、現在に受け継がれてきました。今でも主要な産業のひとつとして続いています。

陶芸家と作陶家(陶工)の違い

陶芸家とよく似た言葉に、作陶家(さくとうか)・陶工(とうこう)があります。芸術性の高い作品を追求するのが陶芸家、伝統工芸を重んじ追求するのが作陶家・陶工と使い分けることもあるようですが、厳密な違いはありません。

陶芸家の仕事内容

ろくろを回す陶芸家

陶芸家の仕事は、粘土を使って陶磁器をつくることです。主に茶碗や食器、花瓶などを窯で焼き上げ、販売まで手がけることもあります。大抵の場合は「窯元」と呼ばれる工房で作業します。

働き方としては、窯元や陶芸教室に就職して依頼を受けて陶磁器を作成するのが一般的です。中には、陶芸教室の講師として生計を立てている人もいます。

窯元や陶芸教室で働く場合は、正社員や契約社員として雇用されるケースが多く、勤務時間や休日なども勤務先に合わせる形になります。

また、個人の作家として活動する人もいます。個人で活動する人は、個展を開いたり百貨店や雑貨店に出品したりして、自分の作品を販売するケースが多いようです。ときには依頼を受けて作品をつくることもあります。
フリーランスや業務委託となるため、基本的に勤務時間や休日は自分で決められます。

陶芸家の仕事のやりがい

陶芸家の仕事は、下記のようなやりがいを感じられる仕事です。

人々の生活に寄り添う喜びを感じられる
陶芸家の仕事は、自分のつくった作品が人々の生活に寄り添う喜びを感じられます。

陶芸家のつくる器や花瓶は、日常生活で使われるものです。陶磁器は割れやすい分、大事に使おうという気持ちが強くなるので、陶芸家のつくった器や花瓶は長く大切にされ続けるでしょう。自分のつくった作品が人々の生活に長く寄り添うことに喜びを感じ、やりがいに感じられる人は多いようです。

自分の作品が評価され努力が認められる
陶芸家は、自分がつくった作品が評価され、努力が認められることにやりがいを感じられます。

陶芸家のつくる陶磁器は、日常生活で使われるほかに個展や百貨店で出品されます。陶芸は形にするまで時間や労力を要する技術ですが、自分の作品が人の目に触れて褒めてもらえたり購入してもらえたりするなど評価されると、それまでの努力が報われた気持ちになるでしょう。

自分の作品の特徴が気に入られてファンがつく可能性もあります。努力が認められると、次の作品づくりのやりがいにもつながるでしょう。

伝統を受け継ぎ次世代に伝えていける
陶芸家の仕事は陶磁器をつくるだけでなく、その技術を後世に伝えていく仕事でもあります。

前述したように、陶芸は縄文時代から伝わる伝統技術です。とくに信楽焼や美濃焼など地方の特色を活かした陶芸技術は、日本独自の文化と言われています。その伝統を受け継ぎ、次世代に伝えて陶芸の歴史を紡いでいくことにやりがいを感じられるでしょう。

陶芸家の仕事の流れ

土をこねる陶芸家の手

陶芸家の仕事の流れは窯元や個人によっても異なりますが、下記のような流れになることが多いようです。

1.デザインする
どのようなものをつくるのか、全体的な構想を考えてデザインします。まずどのような用途に使うのかを決め、用途や機能に応じてどのような大きさや形、色にしていくのかを決めます。実際に出来上がったときをイメージして、細かなところまで意識してデザインしていくのがポイントです。

2.粘土を用意する
陶芸家は、自分で陶芸の原料となる粘土を用意します。つくりたいものにあわせて原料を選び、集めた原料を細かく砕いて水を加えると、陶芸に適した柔らかさの粘土をつくれます。

原料となる土や石の性質は、陶芸作品の仕上がりを大きく左右するからです。採取する産地によって、土や石の性質は異なるため、その性質に合わせた陶芸技術が受け継がれてきました。陶芸の種類の名称に地名が使われているのはそのためです。

3.造形する
粘土の用意ができたら、最初に考えたデザインになるよう形を整えます。

回転式の「ろくろ」を使うのは、お皿やつぼ、花瓶のような円形のデザインのときです。ほかにも紐の形に伸ばした粘土を重ねる「ひもづくり」、板のように薄く伸ばしてから立体をつくる「たたらづくり」などの技法があります。

4.素焼き
形を整えたら、窯で焼きます。何も塗らずに約600〜950度の温度で焼く工程で、「素焼き」と呼ばれます。素焼きをするとこの後の工程がやりやすくなります。

5.釉薬(うわぐすり)を塗る
素焼きを終えたら、釉薬を塗ります。釉薬は天然原料を精製・配合してつくられる液体で、塗ると粘土でできた陶器の表面にガラス層をつくることができ、陶磁器を美しく仕上げられます。釉薬の配合によって独特な風合いを出したり、色や絵柄の表現を変えたりできます。

6.本焼き
釉薬を塗ったら、仕上げの本焼きをおこないます。本焼きで焼く時間や温度は、原料の土や石、釉薬の種類や成分に合わせて細かく調整する必要があるため、技術と経験が試されます。

陶芸家の年収

陶芸家の平均年収は、200〜300万円程度といわれています。厳密には地域や年代、就職先や技術によっても異なるため、人によっては120万円程度になることもあります。

陶芸家は「土こね3年、ろくろ8年」といわれるほど、技術を獲得して1人前になるまでに時間のかかる仕事です。そのためか窯元や陶芸教室への就職だと初任給は10万円前後で、年齢が上がって技術が磨かれると収入が上がっていく傾向にあります。個人で経営すれば仕事次第でもう少し年収が上がる可能性もあるでしょう。

人間国宝と呼ばれるレベルになると1つの作品で数百万円の値がつくこともあります。その場合は年収3,000万円を超える 可能性もでてきます。

人間国宝は、陶芸に限らず歌舞伎や工芸など、芸術的な価値はあるものの形がない「重要無形文化財」に指定されている「わざ(技術)」を体得している人物のことです。重要無形文化財を指定する「文化審議会(ぶんかしんぎかい)」によって認定されます。

陶芸家に必要な資質と能力

陶芸家に必要な資質は、器用さと根気強さです。

陶芸は原料の土や石との相性、釉薬の配合と塗り方や窯で焼くときの温度など、細かな調整次第で仕上がりに違いが出る技術です。技術を学べる場はありますが、一朝一夕で身につく技術ではありません。1人前の陶芸家になるには、長年の修行を続ける根気強さが求められるでしょう。

また、陶磁器は一度にいくつも大量につくることができません。粘土の造形や釉薬の配合など、ひとつひとつ丁寧な作業の積み重ねで、ようやくひとつの作品をつくることができます。そのため、ひとつの作品を丁寧に仕上げる器用さも必要な資質といえるでしょう。

陶芸家になるための方法とは?

陶芸家に学ぶ人たち

陶芸家になるには、特別な資格は必要ありません。

陶芸家になる最もスタンダードな方法は、窯元に弟子入りすることです。弟子入りすれば実践を重ねながら学べるので、専門的な勉強をしなくても陶芸家になれる可能性はあります。

しかし前述したように、1人前の陶芸家になるには時間がかかるので、大学や専門学校、陶芸教室などで必要な技術を学んでから陶芸家への道を目指す人がほとんどです。陶芸家になるための方法や何を学ぶべきかについて見ていきましょう。

陶芸家の世界の現状

陶芸家は伝統的な技術である陶芸を守り、引き継いでいく役割があるため、末永く続いていくことが見込まれる仕事です。

伝統的な窯元では跡継ぎが見つからないことが問題となっているため、若いうちから陶芸家を目指す人は歓迎される傾向にあるでしょう。

近年は陶芸の新しい可能性を広げようと、信楽焼の釉薬の技術をロボットの装甲に使うユニークな取り組みもおこなわれました。陶磁器の制作以外にも、幅広い分野で陶芸の技術が広まっていくことに期待できそうです。

陶芸家になるための勉強ができる大学・学部

陶芸家になるための勉強ができるのは、芸術、美術、工芸の分野を扱う学部や学科です。たとえば、下記のような大学があります。

京都美術工芸大学(芸術学部/デザイン・工芸学科)
嵯峨美術大学(芸術学部/造形学科)
奈良芸術短期大学(美術科/陶芸コース)
大阪芸術大学(芸術学部/工芸学科)
京都精華大学(芸術学部/造形学科/陶芸専攻)
文星芸術大学(美術学部/美術学科/総合造形専攻)
多摩美術大学(美術学部/工芸学科)

陶芸家に必要な資格や受験すべき試験

陶芸家になるために必要な資格はありませんが、陶芸家の活動に役立つ資格や試験があります。陶芸家として活躍の幅を広げていきたいという人は、取得してみるといいでしょう。

伝統工芸士
伝統工芸士は、経済産業省が指定する伝統工芸を12年以上経験し、高度な技術を有すると証明する資格です。一般社団法人伝統的工芸品産業振興協会によって認定されます。2021年時点で認定資格を持つ人は全国に3,600名ほどで、今後も伝統文化を継承する人材として期待されています。

認定陶芸士・認定講師
陶芸の技術向上や知識向上のため、社団法人日本近代芸術協会が導入した認定試験です。陶芸に関する知識や技術の向上はもちろん、認定資格を持つ人が工房にいることで安全・安心なサービスを提供できるようになります。

陶芸療法士
陶芸療法士は、介護施設や幼稚園などの施設に出張して陶芸教室を開き、陶芸を通じて身体機能の向上と精神面でのケアをサポートする仕事です。陶芸を通じて社会に貢献できる人材を増やすことを目的としている一般社団法人日本陶芸療法士協会が、制度化と認定をおこなっています。

陶芸家になるために目指すべき就職先

陶芸家になるには、窯元に弟子入りか就職するのが一般的です。まったくの未経験であればアルバイト・パートからのスタートになりますが、それなりに知識や技術があれば契約社員や正社員として採用される可能性もあります。

陶芸家になった後のキャリアプラン

陶芸家のキャリアプランとしては、まず窯元で経験を積み、独立・起業や教育分野へキャリアアップしていくことが多いです。

独立・起業して個人で陶芸の仕事をしていく場合、自分で作品を売り込んだり個展を開催したりするようになるでしょう。 個人で陶芸教室を開き、陶芸教室の講師として幅広い世代に陶芸の技術を伝えていくという選択肢もあります。

また、職業訓練指導員や専門学校の教師として就職した場合は、現場で昇給したり企画を任されたりするなどキャリアアップに期待できます。職業訓練校は求職者が就職できるよう全面的にサポートする学校で、求職者を指導する人を職業訓練指導員といいます。職業訓練指導員になるには、別途「職業訓練指導員免許」が必要になります。

陶芸の道を極めた先には、人間国宝 として認められる可能性もありますよ。陶芸家として歴史に名を残すことになるでしょう。

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陶芸家は、日本の伝統技術である陶芸で陶磁器をつくる仕事です。陶芸は造形や焼くときの温度調節など器用さが求められ、1人前になるには時間がかかります。しかし自分のつくった作品が世の中で評価されたり人々の生活で役立ったりする喜びは、それまでの努力が報われやりがいにつながるでしょう。

陶芸家になるには資格は不要ですが、窯元へ弟子入り・就職してからより早く1人前になりたいと思うのであれば、学生のうちから陶芸の知識や経験を得ておくことが大切です。

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