自衛官(自衛隊隊員)になるには?必要な条件や大学の選び方、気になる年収をチェック
2023.08.18
自衛官は、日本の領土と国民を守る仕事です。自衛隊に所属する人全員を自衛隊隊員、その中でも何かしらの階級を持ち、国際法において正規軍の兵士として扱われる人を自衛官と呼びます。
この記事では、自衛官になる方法やなるために必要な条件、実際の年収や働き方についてもまとめています。進路先として自衛官を検討している人や、自衛官について詳しく知りたいという人は読んでみてください。
目次
自衛官とは?
自衛隊は日本の領土と国民を守る日本独自の組織で、特別職の国家公務員です。日本国内の安全を守ることを目的につくられた組織で、災害時の事態の対処や国際貢献といった任務もあります。
日本国憲法によって海外への攻撃は認められていませんが、万が一海外から攻撃された場合は応戦することができます。
階級を持ち、国際法によって国の正規軍の兵士として扱われる自衛官は、有事の際には武器を持って戦うことになります。自衛隊の中でも特に階級がなく武器を持たない事務職や技官は、戦闘に出ることはありません。
自衛隊は大きく下記の3つに分けられ、業務範囲が明確に分かれています。
・陸上自衛隊:陸上での戦闘や情報収集、補給を担当する
・海上自衛隊:日本の領海を守り、海上からの侵略を阻止する
・航空自衛隊:空から侵略してくる敵に対して、防衛を行う
自衛隊に入隊すると、いずれかの隊に所属することになります。
自衛隊と軍隊の違い
自衛隊はあくまでも日本を守るための組織であり、他国への攻撃は許されていません。一方軍隊は有事の際には他国への攻撃も辞さない組織です。
自衛隊も海外から攻撃を受けた場合は応戦が許されるため、国際社会においては自衛隊を軍隊とみなされることもあるようです。
自衛官と警察官の違い
自衛官も警察官も国と国民を守る公務員ですが、自衛隊は国家公務員、警察官は所属先によって国家公務員か地方公務員になる、という違いがあります。
自衛官は主に海外から国と国民を守るのが役割で、有事の際に備えて日々訓練や勉学に励んでいます。一方警察官は、犯罪や事故などの日常に潜む脅威から個人を守るのが役割で、犯罪防止のためにパトロールをおこなったり交通指導をおこなったりします。
警察官についてもっと詳しく知りたい人は、こちらの記事も読んでみてください。
警察官になるための道のりは?向いている人の特徴や採用試験の種類
自衛官(自衛隊隊員)の仕事内容
自衛官の仕事は、大きく分けて下記の3つです。
国の防衛
外部からの侵略を警戒し、阻止することです。場合によっては自衛力を行使します。陸上自衛隊は陸を、海上自衛隊は海上を、航空自衛隊は空をそれぞれ防衛します。
災害時の現地への派遣
地震や台風のような自然災害や火災などが発生した際、現地に赴いて救援救助するなどして国民の命を守ります。捜索救助や医療、炊き出しや給水などの生命活動を維持するためのサポートをおこないます。
国際貢献活動
国際機関からの要請に基づき、紛争地域の監視や災害時の救援などをおこないます。日本の代表としておこなう国際平和協力活動です。
自衛隊は日本全国にあるので、数年単位で転勤を繰り返すケースも多いです。
自衛官の仕事のやりがい
自衛官の仕事は、下記の3つのようなやりがいを感じられます。
1.国と国民を守る使命感を持って仕事できる
自衛官の仕事は国と国民を守ることです。自分の生まれ育った国を守るという自負を持って仕事できることや、日本の平和に貢献できることをやりがいに感じている人は多いようです。
2.人々に感謝される
通常、自衛官の仕事や日々の訓練は目立つものではありません。しかし災害時に被災者の支援に駆けつけたり海外で平和協力活動をおこなったりする場面では、自衛官の命をかけた行動は人々に感謝され、勇気と希望を与えます。実際にひとりの命を守る行動ができたときや直接感謝の言葉をもらったときには、日々の訓練が報われやりがいを感じられるでしょう。
3.仲間や自分の限界に挑戦できる
自衛官は有事の際にはいつでも対応できるよう、肉体的にも精神的にも厳しい訓練が課される仕事です。鍛錬を通じて自分を成長させたい、仲間と共に切磋琢磨しながら成長したいという思いを抱える人も多く、やりがいに感じることもあるようです。
自衛官の仕事の流れ
自衛官の一日の仕事の流れは、基本的には下記の通りです。ここでは陸上自衛隊隊員の例をご紹介します。
6:00 | 起床 |
6:05~6:50 | 朝食、身辺整理等 |
6:50~7:00 | 清掃 |
7:00~7:30 | 稽古 朝食までのわずかな時間も無駄にしないよう、格闘の稽古や声出し錬成などに励みます。 |
7:30~7:50 | 課業準備 |
8:00 | 朝礼 |
午前中 | 課業 銃剣道の訓練、砲撃演習等 |
12:00~13:00 | 昼食休憩 |
午後 | 課業 射撃演習、体力錬成等 |
17:00 | 終礼 |
17:00~17:45 | 夕食 |
17:45~18:45 | 体力錬成、試験勉強等 |
18:45~21:30 | 入浴、身辺整理、自習等 |
21:30~22:00 | 就寝準備 |
22:10 | 消灯 |
ただし所属によっては24時間体制で勤務する隊員もいます。レーダー監視、航空管制、気象観測、無線通信などの業務につく場合は上記のような規則正しいスケジュールではなく、交代制でスケジュールを組んでいます。
自衛官の年収
自衛官は特別職の国家公務員にあたるため、自衛官俸給表によって給料が定められています。平均年収は30代前半で約516万円、40代前半で598万円、50代以降で736万円といわれています。
自衛官の収入は学歴ではなく、入隊時の採用種目によって左右されます。高卒で入隊する場合は「自衛官候補生」「一般曹候補生」などの試験を受けることができ、大卒の場合は「幹部候補生」になる道も選べます。
一般曹候補生の場合、初任給は高卒で約18.5万円、大卒で約19.4万円です。幹部候補生の場合は、大卒で約23万円、院卒で約25.1万円となるので、平均的なサラリーマンとほとんど変わらないといえるでしょう。
自衛官は16の階級があり、階級に応じた収入が得られるようになっていますが、基本的に年々収入が上がっていくようになっています。
自衛官に必要な資質と能力
自衛官には、下記の5つの資質と能力が求められます。
1.使命感
自衛官は国と国民を守る仕事です。そのために時には過酷な現場に立つこともありますが、国や国民を守るという使命感を持った人であれば乗り越えられるでしょう。
2.規範意識
自衛官は、非常時には一刻を争う仕事です。そのため普段の生活や訓練から時間やルールは守るように厳しく指導されます。またいざという時には上官命令に従う必要もあるため、上下関係も厳しいです。厳しいルールを守り関係性を保つことは、いざという時組織として迷うことなく動くために必要なので、高い規範意識を持てる人は自衛官に向いているでしょう。
3.協調性
自衛官は組織で行動するため、協調性が求められます。単独行動は有事の際に組織の足を引っ張る可能性もあるため、日常生活においても訓練時においても周囲に気配りのできる人材が必要とされています。
4.体力
自衛官に体力試験はありませんが、過酷な訓練に耐えうる体力が必要となります。入隊後は定期的に体力試験があるので、常日頃から健康管理をして体力をつけておきましょう。
5.判断力
とっさのときに冷静に判断できる人は、自衛官に向いているでしょう。非常時になると人間の脳は混乱しがちで、しばしば誤った判断を下しがちです。判断ミスが現場を窮地に陥れる可能性もあるため、有事の際でも冷静に判断できる能力のある人は自衛隊で重宝されるでしょう。
自衛官になるための方法とは?
自衛官になるための方法をまとめました。自衛隊の採用種目は複数ありますが、自衛隊になるための方法はシンプルで、必要な試験を受験するだけです。そのために必要な大学の選び方についてもご紹介します。
自衛官の世界の現状
自衛官の仕事は、時代を問わず必要とされています。特に近年はロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射など、日本の安全保障をとりまく環境は大きく変化しており、予算の見直しなど防衛力を強化する動きも出てきています。
一方で自衛官の採用数は年々減っており、定員割れを起こすことも珍しくありません。根本的な原因は少子高齢化による採用対象人口の減少です。自衛隊側でもプロモーション活動を工夫していることや、災害時に実際に自衛隊の活動を見る機会があるなど、自衛隊をこれまでより身近に感じている人は増えているでしょう。
自衛官は精神的にも体力的にもタフさが求められるため、応募すれば誰でもなれるというわけではありません。しかし国と国民を支える仕事がしたい、という強い思いを持つ人であれば、事前に十分な準備をして臨めば自衛隊になれる可能性は高いです。
自衛官になるための勉強ができる大学・学部
自衛官になるための勉強ができる大学・学部の一部をご紹介します。
自衛官になるために必要なことが学べる学部や学科はスポーツ系から法律系まで幅広くあるため、特に大学側が公務員の輩出に力を入れているなど特徴のある学校を選ぶと良いでしょう。
駿河台大学(法学部 法律学科/警察・消防コース)
日本文化大學(法学部 法学科)
新潟医療福祉大学(医療技術学部 救急救命学科)
朝日大学(保健医療学部 健康スポーツ科学科)
羽衣国際大学(現代社会学部 現代社会学科/スポーツコース)
また、幹部自衛官を目指す人は「防衛大学校」への入学も検討してみましょう。
防衛大学校は、各自衛隊の幹部自衛官となる人材を4年間養成する学校です。教育課程は大学設置基準に準拠しているため、一般的な大学と同じように教養科目や外国語、体育科目に専門科目などがあります。
訓練課程があることと、卒業後の進路が自衛隊に絞られる点、学生手当が毎月支給され、入学金や授業料の納金が免除されるという点がほかの大学とは異なる点といえるでしょう。
防衛大学校の受験資格は下記の通りです。
推薦
高卒(見込含)21歳未満かつ高等学校長の推薦必要
総合選抜・一般
高卒(見込含)21歳未満
試験は筆記試験と口述試験、身体検査がおこなわれます。
自衛官(自衛隊隊員)に必要な資格や受験すべき試験
自衛隊に入るために必要な資格は特にありません。18歳以上27歳未満という年齢制限があることだけ覚えておきましょう。
自衛隊に入ってからも様々な資格が取得できます。それらの資格を先に持っておくと、試験にも受かりやすく入隊後も活躍の幅が広がるでしょう。
自衛隊に入ってから取得できる資格の一例は下記のとおりです。学生のうちに取得できるのは大型運転免許くらいですが、ワープロ検定などを取得しておくと自衛官以外の事務職である経理科など進路の選択肢が増えます。
陸上自衛隊 | パイロット免許、大型運転免許、看護師、歯科技工士、税理士など |
海上自衛隊 | 乙種危険物取扱責任者、気象予報士、ワープロ検定、2・3級筆記検定など |
航空自衛隊 | アマチュア無線技師、マイクロコンピュータ利用者設定、日商ワープロ技能検定など |
国家公務員のため、当然ですが入隊するには採用試験を受ける必要があります。
一般曹候補生採用試験
応募資格:日本国籍を有すること。採用予定月の1日時点で18歳以上27歳未満であること。
自衛官候補生採用試験
応募資格:日本国籍を有すること。採用予定月の1日時点で18歳以上27歳未満であること。
男性自衛官候補生は通年募集していますが、女性の募集は毎年8~9月にかけてのみです。
自衛官になるために目指すべき就職先
自衛官になるために目指すべき就職先は、防衛省所属の自衛隊となります。
採用試験に受かると、陸上・海上・航空のいずれかの部隊に配属されます。
自衛官の職務内容は多岐にわたり、陸上自衛隊だけでも16の職種があります。自衛官になるためのルートは様々なルートがあるので、自衛隊としてどんな仕事がしたいのかをはっきりさせて、大学や学ぶ学科を選ぶと良いでしょう。
自衛官になった後のキャリアプラン
自衛官のキャリアプランのひとつに、幕僚長(ばくりょうちょう)を目指す道があります。幕僚長は陸・海・空各隊のトップで、隊の教育や人事、管理などを担います。
幕僚長になるには幹部自衛官として任官し、訓練や任務、幹部試験を経ていく必要があります。全ての部隊を統括する最高位である統合幕僚長になれる可能性もあるでしょう。
自衛官は全国転勤が多い仕事ではありますが、2022年度から人事管理を見直し、転勤や単身赴任の負担を削減するようにしています。
そのため、現場で経験を積んだあとは人事の調整を担う人事専門官や、各地と業務調整等をおこなう地方の防衛局次長といったキャリアパスが実現されるようになっています。
自衛隊の中には経理を担当する経理科もあり、その道のプロフェッショナルとして役職につくことや、防衛大学校の運営に携わる役職に就く、といったキャリアもあります。
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自衛隊になるための方法や必要な資格についてまとめました。
自衛隊の仕事は国と国民を守る使命感を得られる仕事で、多くの人に感謝されるやりがいのある仕事です。過酷な訓練もあり危険は伴いますが、自身の成長にもつながる仕事といえるでしょう。
自衛隊は時代を問わず必要とされているのにもかかわらず募集は減っているので、しっかりと準備して臨めば自衛隊員として活躍できる道が拓ける可能性が高いです。
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