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土地家屋調査士になるには?仕事内容や求められる資質と能力を紹介

2023.09.08

カテゴリー:
測量をする土地家屋調査士

家を新築・増築したときや、土地を売るときなどは、法務局に所有権や権利を登録する手続きが必要です。これを「登記」と言います。登記は建物の所有者が行うこともできますが、専門的な知識やスキルが必要なため「土地家屋調査士」が代理で行うことがほとんどです。
この記事では、土地家屋調査士の仕事内容や現実的な働き方、なるための方法を紹介します。土地家屋調査士に求められる資質や能力についても解説するので、参考にしてくださいね。

土地家屋調査士とは?

家の境界線を表す模型

土地家屋調査士は、建物の所有者に代わって不動産登記を行う不動産の専門家です。具体的には、土地や建物の境界の測量や確定、不動産の評価、不動産の法的権利や所有権の調査などを行います。

土地の正確な境界や不動産の市場価格を確定させることで、隣接する土地の所有者との争いを避けられたり、不動産の購買や売却がスムーズに行えたりします。土地家屋調査士の存在は、不動産取引や土地利用に関わるさまざまな分野で重要です。その専門的な知識や技術は、不動産市場の安定性や法的な信頼性を確保する上で欠かせない要素となっています。

土地家屋調査士と測量士の違い

土地家屋調査士と測量士は、どちらも土地や不動産に関連する専門家ですが、それぞれの役割や業務内容にはいくつかの違いがあります。一番大きな違いは「登記ができるかどうか」です。土地家屋調査士は登記ができますが、測量士はできません。

また、土地家屋調査士も測量士も仕事内容に測量がありますが、その目的は異なります。土地家屋調査士の測量は登記を目的としており、土地の境界や用途をはっきりさせるために行います。測量士の測量は、正確な測量データを収集し、これをもとに地域の計画や開発、安全な環境を実現するために行います。

登記のための測量は土地家屋調査士の仕事、登記以外の技術的な測量は測量士の仕事と覚えておきましょう。

土地家屋調査士の仕事内容

土地家屋調査士の仕事は、以下の流れで進みます。


1:現場の調査
建物の登記申請をするためには、土地や建物の正確な情報が必要です。そのためにまずは、土地の形や建物の調査を行います。地盤の状態、周囲の環境などを調査し、土地の特性を把握したり、建物の構造や外観、設備などを詳細に調査したりします。

2:測量
次に測量を行います。登記する図面に必要な土地や建物の正確な位置・境界・面積などを測定します。測量には、建物の位置や距離を測るトータルステーションや柔軟な帯状のメジャーである測定テープ、水平面を正確に測定する水準器などさまざまな機器を使用します。

3:境界の確定
測量機器を使用して土地の境界を正確に決めます。境界確定の際には、境界線の位置や所有権の取り決めに関して、隣接する土地の所有者に合意を得る必要があります。境界に納得してもらえるようデータをもとに説明を行い、合意を得たら確定杭を地面に埋めて境界の目印とします。

4:登記書類の作成
登記申請に必要な登記申請書や調査報告書、測量図面などを作成します。測量図面はCAD(キャド)と呼ばれる専用の図面作成ソフトを使って作成します。

5:登記申請
書類を管轄の法務局へ提出し、登記申請を行います。近年では、オンラインでの申請もできるようになりました。

6:登記書類の引き渡し
登記申請が無事に済めば、登記書類を受け取り依頼者へ渡します。これによって、法的な手続きが行われ、所有権や権利の移転が確定します。

土地家屋調査士の仕事のやりがい

被災した建物

土地家屋調査士の仕事のやりがいには、以下のようなものが挙げられます。

・人の財産を守れる
土地家屋調査士の仕事のやりがいは、人々の大事な財産を守れる手伝いができることです。境界や所有権を調べて、不動産取引が正確でトラブルのないものになるよう助けたり、家や土地の価値を正しく評価したりします。

・土地に関するトラブルを解決できる
土地トラブルに悩む人々を支援できることも土地家屋調査士のやりがいの1つです。境界や所有権の問題で困っている人に正確な情報や調査結果を提供し、トラブルの解決に貢献します。

・災害や復興時に被災者を支援できる
土地家屋調査士は、災害や復興時にも求められる仕事です。たとえば、被災した建物が修復可能かどうかを判断したり、被災地の再建策や修復方法を提案したりします。ほかにも、地震や洪水などによる地盤の変化を調査し、建物の基礎や構造への影響を判断します。被災者の希望と安心を取り戻し、新たな未来への道を開く手伝いは、大きなやりがいを感じられるでしょう。

土地家屋調査士の仕事の流れ

土地家屋調査士の仕事はフィールドワークとデスクワークのどちらもあります。今回は、新築の測量・調査に出向く場合の1日のスケジュール例を紹介します。

時間業務詳しい業務内容
8:30出勤  ・当日の予定やスケジュールを確認する ・予定されている現場調査やミーティングなどを把握する 現場調査に向けて、必要な測量機器や道具を用意する
9:00現場へ移動現場へ移動する
10:00測量・立ち合い・新築する土地や建物の実地調査・測量を行う ・隣接する土地の住民に境界線を説明、納得いただく ・オフィスへ帰る ・
12:00昼食休憩 
13:00デスクワーク・調査結果を基に図面や申請書を作成
16:00外回り・市役所や法務局で資料調査や申請作業を行う  
18:00退勤・明日のスケジュールを確認し、必要な準備を整えて退勤する

現場調査にかかる時間は規模によって異なります。小さな土地であれば今回紹介したように半日程度で終わりますが、都市計画や大規模な開発プロジェクトの調査は、数週間から数ヶ月にわたることもあります。

土地家屋調査士の年収

厚生労働省の「土地家屋調査士の年齢別の年収データ」によると、土地家屋調査士の年齢別の平均年収は以下のとおりです。

引用:土地家屋調査士の年齢別の年収データ(厚生労働省職業情報提供サイト)

年齢平均年収
20代300~400万円
30~40代600~800万円
40~50代800~1,000万円

上記はあくまで目安であり、収入は個人のスキルや経験、事務所の規模などによって大きく変動する可能性があります。業界内での評価や専門性、地域的な需要なども影響を与える要素です。

土地家屋調査士に必要な資質と能力

図面を作成する土地家屋調査士

土地家屋調査士にはどのような資質や能力が求められるのでしょうか。ここでは、土地家屋調査士にとくに重要な資質・能力を押さえておきましょう。

・細部まで気を配れる人
土地家屋調査士の仕事は、正確な測量と図面作成を通じて不動産の登記手続きを行うことです。不動産登記法に基づき、細かい部分も見逃さずに図面や申請書を作成することが求められます。緻密な作業が必要なので、正確さと注意力のある人が向いています。

・新しい知識を得るのが好きな人
近年では技術が発展し、ドローンやGPSなどを使った測量システムが開発・利用されています。近い将来、さらに新しい測量技術が出てくる可能性が高いです。こういった新しい知識や技術を学ぶのが好きな人は、土地家屋調査士に向いているでしょう。

・数字に強い人
土地家屋調査士の仕事では、不動産の測量に数学の知識が欠かせません。三平方の定理や正弦定理、余弦定理などの数学が必要です。これらの知識がないと現場ではもちろん、試験に合格することも難しいです。

・外での仕事に抵抗がない人
土地家屋調査士は、土地や建物の調査のために現場に出て測量を行い、その後、オフィスで得たデータを活用して図面や書類を作成します。室内での作業だけでなく、フィールドワークの比率も高いため、体力があり、外で働くことに抵抗がない人に向いていると言えるでしょう。

土地家屋調査士になるための方法とは?

現場調査をする土地家屋調査士

土地家屋調査士になるには、具体的にどのようなルートがあるのでしょうか?土地家屋調査士になるための方法について解説します。

土地家屋調査士の世界の現状

土地家屋調査士の中には、事業を広げるために行政書士や司法書士との兼業を選ぶ人もいます。不動産分野では、土地家屋調査士が「表示に関する登記」を担当し、売買時の「権利に関する登記」は司法書士の役割です。両方の資格を持つことで、クライアントに幅広いサービスを提供できます。

おもな就業地域は、東京や大阪などの都心部です。建物や人口が多いため、不動産の取引件数も多くなるためです。

土地家屋調査士になるための勉強ができる大学・学部

土地家屋調査士になるためには「土地家屋調査士試験」に合格する必要があります。受験資格に制限はなく誰でも受験可能ですが、難易度が高いため、大学で学ぶことをおすすめします。

土地家屋調査士になるためのコースや学科のある大学をまとめました。

  • 東北工業大学建築学部建築学科(宮城県)
  • 関東学院大学理工学部理工学科土木・都市防災コース(神奈川県)
  • 国士舘大学理工学部理工学科まちづくり学系(東京都)
  • 大阪産業大学工学部都市創造工学科(大阪府)
  • 広島工業大学工学部建築工学科(広島県)
  • 中部大学工学部建築学科(愛知県)
  • 西日本工業大学工学部総合システム工学科(福岡県)

土地家屋調査士に必要な資格や受験すべき試験

土地家屋調査士になるためには、国家試験である「土地家屋調査士試験」に合格する必要があります。受験資格に年齢や学歴などの制限はないため誰でも受験可能です。

試験は年に1回行われ、一次試験は筆記科目、二次試験は口述試験となっています。なお、測量士、測量士補、建築士資格保有者は、一部試験が免除されるため、効率的に資格取得が可能です。

土地家屋調査士試験の合格率は例年8~10%と非常に低く、難易度の高い試験と言えます。令和4年度は、受験者数4,404人に対して合格者数424人と合格率は9.63%となっています。

参考:土地家屋調査士を目指す方へ | 土地家屋調査士とは | 日本土地家屋調査士会連合会 (chosashi.or.jp)

土地家屋調査士になるために目指すべき就職先

土地家屋調査士の就職先は、主に以下の4つになります。

  • 土地家屋調査士事務所
  • 測量会社
  • 建設会社
  • 独立開業

厚生労働省の「職業情報提供サイト」によると、土地家屋調査の61.2%は都道府県の土地家屋調査会へ所属して独立開業しています。
また、事務所や会社で働く正社員の割合は30.6%です。

土地家屋調査士になった後のキャリアプラン

土地家屋調査士になったあとは、すぐに独立・開業する人、事務所や会社に就職する人、事務所や会社で経験を積んでから独立・開業する人などの選択肢があります。

事務所には個人事務所と法人事務所があり、それぞれの特徴は以下の通りです。

 個人事務所法人事務所
所属する土地家屋調査士の人数1人~数人複数人
職務範囲広い狭い
収入事務所による安定している
福利厚生事務所による充実している
向いている人・自分の裁量で仕事をしたい人
・幅広く業務をこなしたい人
・チームで仕事をしたい人
・人に教えてもらいながら経験を積みたい人

(まとめ)土地家屋調査士を「JOB-BIKI」で検索しよう

土地家屋調査士は、人々の大事な財産である土地を守る仕事です。建物の増改築や、道路・公園などの基盤整備事業、都市の再開発など、土地家屋調査士が活躍できるシーンは幅広く、安定した仕事と言えるでしょう。

土地家屋調査士になるためにどのような大学を選べばいいのか迷っている方は「JOB-BIKI」を活用してみてください。「JOB-BIKI」の就職先検索で「設計事務所」と検索すると、土地家屋調査士として活躍している人たちの出身大学がわかります。ぜひ、進路選びの参考にしてくださいね。

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