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環境計量士(環境測量士)になるには?必要な資格などを紹介!

2023.09.22

カテゴリー:
水質調査を行う環境測量士

環境計量士の仕事は、大気中などの有害物質の濃度を計量・分析する「濃度系」と、工事現場や道路などの騒音や振動がどの程度なのかを計量・分析する「騒音・振動系」に分けられます。

環境計量士になるには国家資格が必要で、環境を守ることに貢献していることからも社会的意義が大きい仕事といえます。

環境計量士の仕事内容ややりがい、収入やキャリアプラン、国家資格の取得方法についてみていきましょう。

環境計量士(環境測量士)とは?

環境計量士(環境測量士)の主なお仕事は、大気や土壌に含まれる有害物質の濃度や振動・騒音などの大きさについて分析することです。

環境計量士は主に「計量証明事業所」というところで働きます。

計量証明事業所とは、大気や水質、土壌の有害物質の濃度、騒音や振動の計量と分析を実施し、データを収集したり提供したりするところです。

環境計量士(環境測量士)の仕事内容

環境計量士は、大気や水質を調べる「濃度関係」と、建設現場や道路などでの騒音と振動を調べる「騒音・振動関係」の2つに分かれます。

また環境計量士は環境を計量するだけではなく、調査が終了すると「計量証明書」の作成が必要です。
この書類は環境計量士だけに発行が許されていて、調査結果を公的に証明できます。

環境計量士(濃度関係)の仕事内容

濃度関係の環境計量士は、大気や土壌、川などの汚染状況や有害物質の濃度を計量します。
大気の場合は、有害物質としては二酸化硫黄やダイオキシンがあり、工場から出る排ガスなどに含まれる物質です。
排ガスにどれくらいの濃度で有害物質が含まれるかを計量し、環境基準を超えていないかを調査。
水質の計量では、工場からの排水や生活排水で、川や湖の水が汚染されていないかなどの調査を行います。

環境計量士(騒音・振動関係)の仕事内容

騒音・振動関係の環境計量士は、工場や工事現場、道路や鉄道などで騒音や振動の大きさを計量します。
交通量の多い道路や鉄道、工事現場などが住宅地の近くにある場合は、騒音や振動が人々の健康に悪影響をおよぼすことも。
そのため、騒音や振動が発生する場所で計量を行い、環境基準より下回っているかを調べます。

環境計量士(環境測量士)のやりがい

環境計量士は大気や土壌、生活環境での騒音や振動を調べることで、人間や動植物が暮らしやすい環境を守ります。
また有害物質や騒音、振動が法律で定められた通りに維持されているかを調査・分析することで、人間の健康や暮らしやすさに貢献できるでしょう。

そのため以下のようなやりがいを感じられるはずです。

・社会貢献に携わっていると実感できたとき
・重要な仕事に携わっているという使命感を得たとき
・計画通りに計量ができたときの達成感を得たとき
・環境への知識が深められたとき

人間の健康を守り、安心して暮らせる環境に関わるためやりがいも大きいといえます。

環境計量士(環境測量士)の仕事の流れ

汚染していないか分析する環境測量士

環境計量士の仕事は計量するだけではなく、お客様との打ち合わせや事前の準備、計量結果の報告や書類の作成も必要です。
ここでは、機械を動かすために石油を燃料として使用している製造工場を例に、環境計量士の仕事の流れをご紹介します。

お客様との打ち合わせ

石油を燃料としている工場の場合は、排ガスに二酸化硫黄が発生しますが、二酸化硫黄はぜんそくや気管支炎の原因にもなります。
そのためお客様に、二酸化硫黄の量が環境基準より上回っていないか、お知らせする必要があるでしょう。
打ち合わせでは、排ガスを測定する場所の使用許可や調査日時などについて話し合います。

計量方法と計量機器を決める

お客様からの依頼内容に合わせて、計量方法と使用する機器を選びます。
使用する機器は、現場で故障しないように動作の確認やメンテナンスをしておくことが大切です。

現場で計量を行う

現場で計量を実施します。
排ガスの計量は自動測定器を使って行い、時間を決めて数回測定し、現場で計量を行い分析に必要なデータを記録できたら持ち帰って分析を行います。

計量結果を分析

依頼を受けた製造工場では、機械を動かすのに石油を使用しています。
そのため工場から出る排ガスに、有害物質である二酸化硫黄がどれくらい含まれるのか?の結果を出します。

排気ガス内の二酸化硫黄がどれくらい含まれるか?を計量したデータを測定時間ごとに分析し、時間ごとに排気ガスに含まれる二酸化硫黄の濃度の変化を見ることが大切です。

「大気汚染常時監視測定局」の観測データと比較することもあり、依頼の内容に合わせて結果を報告書にまとめます。

報告書の作成

分析したデータを環境基準と比較して問題ないかを確認し、結果を報告書にまとめます。

報告書を作成するときは、専門用語ばかりでなくわかりやすい言葉で文章にし、専門用語を使うときは注釈を付けるなど、お客様が理解しやすいように工夫する必要があるでしょう。
またお客様が報告書を読んだときに質問や不明点などがあれば、納得してもらえるようにしっかりと説明します。

お客様に計量結果を報告する

報告書ができあがったら、お客様である工場を訪問し、排ガスに含まれる二酸化硫黄の計量結果について報告します。
計量結果が環境基準を超えていたといった問題があれば、改善策を提案することも。
お客様へ報告を済ませたら終了です。

環境計量士(環境測量士)の収入

総務省統計局の調査によれば、環境計量士の年収は、勤務先の規模や経験年数などによって240~470万円と様々なことが分かります。
環境計量士を含む技術サービス職の平均年収は382.5万円とのこと。

環境計量士(環境測量士)に必要な資質と能力

コツコツとデータを集める環境測量士

環境計量士は人間や動植物が住む環境を調査分析することで、人々の健康と生活環境を守っていく仕事です。
そのため仕事内容には現場でのデータ取集や分析などの地道な作業が求められます。
それでは環境計量士に必要な資質や能力とは何なのでしょうか。

細かい作業が得意

環境計量士は、仕事の依頼目的に合わせて、データを集めて分析することが仕事です。
集めたデータをコツコツと分析するといった細かい作業が大半を占めるため、細かいことにも注意を払うことできることは資質として大切になります。

計測や分析に使用する機器のメンテナンスも環境計量士の大事な仕事ですので、機械いじりが好きであるとなお良いでしょう。
地道に根気よく取り組める人には適している仕事といえます。

理数系科目が得意

環境計量士は、計量や分析を行うため物理や数学などの理数系科目が得意な人に向いています。
また計量したデータや分析結果に間違いがあってはいけないので、細かな数字と向き合えることも必要な資質です。

常に学び続けることができる

環境に関する法律は、専門家や有識者の見解によって変わることがあります。
そのため環境計量士は、法律が変わったらそれに合わせて新しい知識や技術を身に付ける必要があるでしょう。

また計測機器や分析に使用する機器なども、日々進歩するため使い方を学ぶなど、変化に柔軟に対応することも大切です。
常に学び続けることが環境計量士に求められます。

環境への関心がある

環境計量士は、有害物質や騒音などを計量することで人々の健康や生活環境を守っていくことに関わっています。
そのため、環境に対して関心があることも重要です。

環境問題は世界全体で取り組むべき問題となっていますし、日本においても年々環境に対する意識が高まっています。

体力がある

環境計量士が計量を行う現場は野外になることが多く、悪天候のこともあれば夜間の間に調査することがあります。
体力的に負担を強いられることも多いため、体力が必要な仕事です。

環境計量士(環境測量士)になるための方法とは?

化学分析概論を学ぶ大学生たち

環境計量士になるには、国家資格を取得するか、指定機関で教育を受けて計量行政審議会に認定されるかの2つの方法があります。

国家試験に合格する

国家試験は毎年12月に行われます。
環境計量士の資格には「濃度関係」と「騒音・振動関係」がありますが、受験にあたって学歴や年齢制限はありません。

受験科目は、「化学分析概論」や「音響・振動概論」といった専門科目と共通科目となっています。
令和4年度の合格率は濃度関係が16.8%、騒音・振動関係が19.1%でした。

また国家試験に合格しても、資格取得にあたっては以下の条件のうちのどれかが必要となります。

■濃度関係
・実務経験1年以上
・環境計量講習の修了(濃度関係)
・薬剤師免許の取得
・職業訓練指導員免許の取得(化学系化学分析科)
・職業能力開発校の修了(化学系化学分析科)
・技術士の登録(衛生工学部門)
・技能検定に合格
※検定職種は、化学分析(1級・2級)または産業洗浄(実技試験科目:科学洗浄作業)。

■騒音・振動関係
・実務経験1年以上
・環境計量実習の修了(騒音・振動関係)
・職業訓練指導員免許の取得(公害検査科)
・職業能力開発校の修了(化学系公害検査科)
・技術士の登録(物理および化学を選択科目とする応用物理学部門に係る本試験に合格した者)

資格認定に合格する

資格認定コースの場合は、3つの条件を満たす必要があります。

1:国立研究開発法人「産業技術総合研究所計量研修センター」(以下、計量研修センター)が実施する教習課程を修了していること
2:実務経験2年と指定の資格などの条件を満たしていること
3:計量行政審議会に認めてもらう必要があること

2については、濃度関係と騒音・振動関係とで異なり以下のようになっています。

■濃度関係
計量研修センターでの一般計量教習終了と2年以上の実務経験は必須です。
この2つ以外に下記5つのうちのいずれかの条件を満たす必要があります。

・環境計量特別実習の修了
・薬剤師免許の取得
・職業訓練指導員面鏡取得(化学分析科)
・職業訓練開発校の修了(化学系化学分析科)
・技能検定に合格
※検定職種は、化学分析(1級・2級)または産業洗浄(実技試験科目:科学洗浄作業)。

■騒音・振動関係
計量研修センターでの一般計量教習修了と2年以上の実務経験は必須です。
この2つ以外に下記3つのうちのいずれかの条件を満たす必要があります。

・環境計量特別実習の修了
・職業訓練指導員免許の取得(公害検査科)
・職業能力開発校の修了(化学系公害検査科)

また計量研修センターに入所するには、数学・物理・一般常識の3科目で実施される入試に合格する必要があります。
入試は毎年6月の実施となっており、教習期間は、濃度関係でおよそ4カ月半、騒音・振動関係でおよそ3カ月半です。

環境計量士になるための勉強ができる大学

国家試験に合格して環境計量士を目指す場合は、理学部や環境系の学部といった理系の学部がオススメです。
以下に環境計量士の国家試験に役立つ勉強ができる大学をピックアップします。

神奈川大学(神奈川)/理学部
麻布大学(神奈川)/生命・環境科学部
長浜バイオ大学(滋賀)/バイオサイエンス学部
東邦大学(千葉)/理学部
東京薬科大学(東京)/生命科学部

環境計量士(環境測量士)になった後のキャリアプラン

公園を調査する環境コンサルタント

環境計量士として経験を積んだ後のキャリアプランにはどのようなものがあるのでしょうか。
環境に関する知識と経験が活かせるキャリアプランを紹介します。

環境コンサルタント

「環境コンサルタント」は企業や官公庁、各種団体に対して環境保全に関する提案やアドバイスを行う専門家のことです。
問題の分析に加えて、企画立案や制度設計に関して提案やアドバイスを行う際には、環境計量士としての経験があることで信頼性が高まります。

公害防止管理者

「公害防止管理者」は、製造業や電気供給業などの工場に置くことが義務付けられており、公害を防止する役割を担っています。

使用する原料や燃料の検査、排出された煙や汚水の濃度測定・記録、ほかにも測定機器の管理などを行うことから、環境計量士の経験を活かせる仕事といえます。

ビオトープ管理士

ビオトープ管理士は、地域の野生生物が生息する空間である「ビオトープ」の保護や再生していく専門家のことです。

ビオトープは、森林や河川、湖沼や湿地など自然界で生き物が暮らす場所を指し、ビオトープ管理士は人間と自然が共存しながら安定的に暮らせる環境を作ります。

ビオトープ管理士になるには国土交通省登録資格である「ビオトープ管理士資格試験」に合格する必要がありますが、環境保全の意識が高まるとともにニーズが高まっている仕事といえます。

環境計量士(環境測量士)への進路を「JOB-BIKI」で検索してみよう

環境計量士になるための方法を知りたくなったら「JOB-BIKI」で調べてみましょう。
計量証明事業者の企業名で「就職先検索」をすることができます。実際に環境計量士のいる会社に入社している大学がわかるので、進路選択に役立つはずです!

「環境」と名のつく会社名で「就職先検索」する

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