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中学校教師になるには?仕事内容や求められる資質・能力などを紹介

2022.09.01

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笑顔の中学校教師

人に教えたり何かを伝えたりする仕事をしたい、子供の人生に関わる仕事をしたい――そう考えている人にとって、「中学校教師」という仕事はきっと魅力的な選択肢です。高校生の皆さんの中には、自分たちが数年前まで教わっていた中学校教師のような大人になりたいと思った人もいるのではないでしょうか?
この記事では、中学校教師の仕事内容や求められる資質・能力について詳しくご紹介します。中学校教師を目指すための進学先、取得すべき資格についても解説しますので、進路選択の参考にしてください!

中学校教師とは?

中学校教師とは、公立・私立中学校で「教諭」として働く人のこと。教師は、法律上では「教諭」「教員」などと呼ばれます。いわゆる皆さんが、「先生」と呼んでいる人のことです。

中学校教師は、担任として学級経営に携わったり、担当教科の授業を行ったりするのが主な仕事です。これ以外にも、学校全体の事務仕事である「校務(学校事務)」を担当したり、学年全体の仕事や部活動顧問を担ったりするなど、中学校の中のさまざまな仕事に従事しています。
皆さんが中学校時代にお世話になった先生は、担任や教科指導、部活顧問としての一面を見ていたと思いますが、実際にはもっと幅広い仕事をこなしているんですね。皆さんはイメージできたでしょうか?

中学校教師と小学校教師の違い

小学校教師は、中学校教師と同じように先生と呼ばれる仕事ですが、仕事の内容が異なります。
小学校では国語や算数など、複数教科を担任の教師が教えます。音楽や英語など一部教科は教科専任の教師が担当したり、2022年からは教科担任制が導入されたりもしていますが、まだメインは学級担当制だと考えてください。
中学校教師にも担任の仕事はありますが、教科担任制のため、担当教科は基本的に1教科のみです。

中学校教師と高校教師の違い

高校(高等学校)教師と中学校教師の最も大きな違いは、「高校は義務教育ではない」という点でしょう。
義務教育である中学校は、公立の場合、地域ごとに学区が決められているため小学校から自動的に進学しますが、高校は生徒が主体的に選び、入試を経て進学している点も大きな違いです。高校は生徒の主体性を重視しているため、問題行動があれば停学・退学といった厳しい対応をすることも。

中学校と同じく教科担任制ですが、文理選択や、進学や就職に向けた進路指導などがあるのも高校の特徴です。入学偏差値などで同レベルの生徒が集まる高校に比べ、中学校のほうがさまざまな学力の生徒が在籍しているケースが多いはず。同じ先生といっても、中学校と小学校・高校では大きな違いがあることは、皆さんも実感しているのでは?

中学校教師の仕事内容

中学校教師と生徒

中学校教師は授業などを含め、非常に幅広い仕事をしています。主な仕事内容は下記のとおりです。

・教科指導
中学校教師は教科担任制です。国語や数学といった教科を担当し、複数の学級で授業を行います。担当する生徒の成績をつけることや、定期テストの問題作成・採点・成績管理を行うことも重要な仕事です。年間を通じた指導計画の作成や授業前準備、より良い授業をするための教材研究も欠かせません。

・学級経営
中学校教師には、受け持つ学級が割り振られます。経験年数などによっては副担任というケースもありますが、多くの場合は学級担任として学級目標の設定や良好な人間関係の集団づくり、教室環境の整備などの学級経営に取り組むのです。学級に在籍する生徒の悩み相談やトラブル対応などを行いながら、生徒との信頼関係を築いていくことが求められます。

・生徒指導
思春期を迎えて多感な時期である生徒は、学校内外で問題行動を起こしたり、反対にトラブルに巻き込まれたりすることもあります。生徒一人ひとりがより良い方向に成長できるよう、個々の性格や事情に応じた生徒指導を行うことも中学校教師の大切な仕事。先生に、親身になって話を聞いてもらった人もいるのではないでしょうか?

・進路指導
主に中学3年生の担任であれば、進路指導も重要な仕事のひとつです。面談で生徒・保護者の希望を聞きつつ、それぞれの生徒に適した進路選択をアドバイスします。中学校ではキャリア教育の一環として、職場体験などを行うため、その手配も教師が行うのです。

・部活動の顧問
担任や授業とは別に、部活動の顧問を担当します。部活動は授業前後に行われるため、校務などの時間を割いて監督・指導にあたります。試合やコンクールの際には、生徒を引率するのも顧問の教師が担うことが多いようです。近年は、教師が多忙なことから、外部のコーチや指導者と連携して行うことも。

・校務(学校事務)
中学校には、学校全体の事務仕事が数多くあります。成績・通知表の作成や出欠管理のほか、文化祭や修学旅行といった行事準備、教育委員会など行政に提出する書類・報告書作成などをこなさなくてはなりません。校務をおろそかにすると、学校全体に迷惑がかかってしまうので注意が必要です。

中学校教師の仕事のやりがい

中学校教師は、子供から大人への階段を上ろうとし、多感な時期にさしかかっている中学生たちと向き合う仕事です。教師の一言が、生徒の人生を大きく変えることもあります。
その責任は重大ですが、生徒が紆余曲折を経て人間的に成長していく姿や、同窓会でたくましく人生を切り拓いている卒業生の顔を見るとき、あなたはきっと、中学校教師としての仕事のやりがいを実感できるでしょう。

中学校教師の仕事の流れ

職員室で微笑む中学校教師

 
中学校教師の仕事はどのように行っているのか、ここでは一日の仕事の流れを見ていきます。あなたが中学生の頃に見ていた先生の、違った一面に気づくかも?

1. 朝の打ち合わせ

午前8時頃から、職員室で打ち合わせが行われる中学校が多いようです。部活動の朝の練習や登校指導など、実際には朝の打ち合わせよりも前に仕事が入ることも少なくありません。つまり、一般的な民間企業と比べて、中学校教師の朝は早い傾向があります。

2. 朝のホームルーム

担任の学級で出欠確認を行い、その日の連絡事項を伝えます。連絡なく欠席している生徒や欠席が続いている生徒がいれば、自宅へ連絡して生徒や家庭の状況を確認することも大切です。

3. 午前中の授業

多くの中学校が、1コマ(1単位時間)あたり50分です。複数のクラスを回り、担当する教科を教えます。空き時間ができることもありますが、基本的には授業が詰まっていることのほうが多いでしょう。つまり、授業準備は前日までに行う必要があるので、時間管理のスキルを要します。

4. 昼食

多くの中学校では生徒といっしょに昼食として給食やお弁当を食べますが、教師にとって昼食時間は休憩タイムではありません。配膳や食事中の生徒の様子にも気を配り、必要に応じて指導します。昼食を食べ終えたら宿題のチェックや学級通信の原稿づくりなど、仕事を進めていくことも。

5. 午後の授業

一般的に午後は、6時間目まで授業があります。1学年の教科を複数教師が担当している場合は、授業進度のずれが広がらないよう連絡をとり合いながら調整することもあります。

6. 下校前のホームルーム

授業後は下校前のホームルームを行い、宿題返却や翌日の連絡を行います。学級全体の振り返りや生徒に共有しておくべき情報の伝達を行って、学級担任としての仕事は終了です。

7. 部活動の監督・指導

担任学級の仕事を終えたら、部活動の顧問として監督・指導にあたります。夏場や試合・大会前などは、遅い時刻まで練習が続くことも。生徒の健康状態や安全管理に気をつけつつ、外部指導者などといっしょに取り組むのです。

8. 校務(学校事務)作業

授業がない時間や授業後の時間は、学校事務作業にあたります。学校と地域や行政、家庭などのあいだでは、大量の書類がやりとりされています。必要に応じて生徒の家庭に連絡を入れたり、職員間での打ち合わせや情報共有を行ったりすることもあるのです。

中学校教師の年収

中学校教師の平均年収は「令和3年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)によると、約699万円です。公立中学校の場合、都道府県に採用されますが、身分としては市町村所属の教育公務員です。教育公務員は地方公務員ではありますが、その専門性から、一般の地方公務員よりもやや給与が高いのが特徴。定年間際で校長になれば、年収1,000万円近くになることも。地方公務員のためリストラなどがなく、比較的安定性の高い職業でもあります。
私立中学校の教師は学校によって差があり、年収帯としては300万~700万円。また私立中学校の場合は、学校法人の経営上の都合でリストラされることもあるので注意してくださいね。

中学校教師に必要な資質と能力

バスケットボールの指導をする中学校教師

 
中学校教師には、どのような資質や能力が求められるのでしょうか。特に重要な資質・能力について見ていきましょう。あなた自身が中学校教師に向いているかどうか、チェックしてみてくださいね。

指導力

中学校教師は専門の教科担任制のため、担当教科の知識は欠かせないものです。しかし、単に知識量が多いだけでは、中学校教師は務まりません。さまざまな学力、勉強に対するモチベーションもバラバラな中学生を相手に、寄り添いながらわかりやすく教える力が求められます。
教科内容を教える能力のほかにも、生徒の興味や関心を惹くような話ができたり、生徒の話に積極的に耳を傾けたりできることも、重要な資質でしょう。

生徒に対する愛情

中学校に在籍する12〜15歳の生徒は、思春期の真っ只中。皆さんも経験があるでしょうが、とても多感な時期を迎えています。それは、教師側から見れば、意図するとおりに動いてくれないこともあるし、反抗的な態度をとられてしまうことも。

それでも、生徒の心を理解しようとするには、生徒に対する愛情が欠かせません。人間が好きであることはもちろんのこと、成長途中の生徒を長い目で見守っていく心構えが求められます。信頼される教師になるには、教師自身が生徒を信頼していることが大切なのです!

バイタリティ

中学校教師は朝から晩まで、生徒のために駆け回る仕事。授業は基本的には立って行いますし、教室中の生徒に聞こえるような声の大きさも必要です。どんな仕事でも体力や健康は大切ですが、中学校教師として働くには、それなりのバイタリティが求められます。中学校教師が生徒に対するさまざまな指導に取り組むためには、不可欠なものなのです。

責任感と倫理観

さまざまな生徒たちと接する中学校教師は、彼らの将来にインパクトを与える大人です。なにしろ生徒にとっては、一日で見れば家族よりも長い時間を共に過ごすことになる存在なのですから。
進路指導はもちろんのこと、授業や学校生活の中で教師からかけられた何気ない一言で、生徒の人生が大きく変わることも珍しくありません。法のもとで仕事に就いている以上、公務員や年長者としての立場を考えながら、生徒の気持ちに寄り添いつつ、責任ある行動をとる必要があります。
生徒たちを正しく導くためにも、中学校教師には強い責任感や倫理観が求められているのです。

中学校教師になるための方法とは?

中学校教師になるには、具体的にどのような進路を選択すれば良いのでしょうか?中学校教師の世界の現状と併せて、進学先や就職先について理解を深めておきましょう!

中学校教師の世界の現状

近年、教師は不足傾向が続いています。文部科学省が2022年に行った教師不足に関する実態調査によると、全国の教育委員会による人員配置計画で必要な教員数に対して、中学校教師はおよそ700人足りていないことがわかりました。教師不足の原因として、主に下記の5点が挙げられます。

<教師不足の原因>
・団塊世代のベテラン教師大量定年退職
・民間企業への人材流出
・産休・育休の取得
・病気などによる休職
・臨時的任用教員の不足

教師になるにしても、約20年前には超高倍率の教員採用試験を突破しなくてはなりませんでしたが、現在は試験も低倍率化。それは、裏を返せば、中学校教師になりやすい環境ともいえます。
中学校教師としての資質・能力を備え、熱意を持って仕事ができる人材は、全国で強く求められているのです。これから中学校教師を目指すあなたにとって、チャンスの多い状況といえるのではないでしょうか?

中学校教師になるための勉強ができる大学・学部

中学校教師になるには、4年制大学または短期大学で学ぶ進路が一般的です。誤解されがちですが、中学校教師になるには、必ずしも教育学部である必要はありません。「教職課程」という教師になるためのカリキュラムが設置されている学部なら、中学校教師を目指すことが可能なのです。
一般的には、自分が選んだ学部の専攻に関わりの深い教科・科目の教員免許状を取得します。文学部国文学科なら、国語科、社会学部や経済学部なら社会科、工学部や理学部なら理科などです。

中学校教師に必要な資格や受験すべき試験

中学校教師になるには、「中学校教諭免許状」が必要です。教員免許状には次の3種類があり、下記それぞれの教育機関で取得します。

<教員免許状の種類>
・専修免許状:大学院修了者が対象
・一種免許状:4年制大学卒業者が対象
・二種免許状:短期大学卒業者が対象

取得免許状の種類によって仕事内容に差があるわけではありませんが、大学院修了者は初任給が高くなるケースがあります。
中学校教諭免許状を取得するには、教職課程の単位取得が必要。教員免許状を取得する見込みが立ったところで、教員採用試験の受験資格が得られるのです。
各自治体(主に都道府県)が実施する教員採用試験を受験して合格すれば、採用された市町村に中学校教師として配属されます。中学校教師になるには中学校教諭免許状取得と教員採用試験合格が必須であることは憶えておいてくださいね!

中学校教師になるために目指すべき就職先

中学校教師になるための就職先としては、大きく分けて「公立中学校」と「私立中学校」があります。

・公立中学校
公立中学校の教師は市町村の教育委員会によって、地域の中学校へと配属されます。数年ごとに地域内の中学校を異動するのが一般的ですが、ある程度は希望を聞いてもらえることも。ただ、異動の判断は教育委員会なので、必ずしも希望が叶うとは限りません。

・私立中学校
私立中学校教師は、学校法人単位で採用されます。公立中学校の教師は地方公務員という身分ですが、私立中学校の教師は民間企業に勤務する会社員と同じです。系列校がなければ基本的に転勤はなく、退職しない限り、同じ中学校で勤務することになります。
公立中学校よりも私立中学校のほうが給与水準は高いことも多いですが、近年の少子化により生徒の取り合いになっているため、人気次第では経営難により閉校するリスクがあることに注意してください。

中学校教師になった後のキャリアプラン

授業をする中学校教師

 
中学校教師になった後のキャリアプランとして、どのような道があるのでしょうか。下記に示す3つの道も、ぜひ参考にしてみてくださいね。

教師として専門性を究める

生徒指導や教科指導のチカラといった、教師の専門性を極めていく道があります。教育は正解のない仕事なので、常に学び続ける必要があります。教師としてのキャリアが長くても、生徒指導や学級経営に悩む人はたくさんいます。教師としての職務をより高いレベルで行えるように、知識や技術を磨いていけば、例えば出版社から声がかかって、教科書や生徒指導関連書の執筆の仕事を任されるようになるかもしれません。

管理職を目指す

主任教諭や主幹教諭といった中間管理職を経て、管理職選考試験に合格すると、教頭(副校長)や校長といった役職に就くことができます。管理職選考試験の受験資格に年齢制限を設けている自治体も多いので、やる気や実力があってもすぐに管理職になれるとは限りませんが、私立学校では、若くて優秀な教師が校長として抜擢されるケースも。
たくさんの同僚の教師が働く学校を経営していく仕事は大変な面もありますが、生徒のために、学級ではなく学校から変えたいという想いがある人にとっては、目指す価値は十分にあります!

学校以外で教育の仕事をする

中学校教師として働き続けていく以外に、元教師という経歴を活かして民間の教育系企業で活躍したり、NPO法人を立ち上げて学校教育ではできない教育活動に取り組んだりする道もあるでしょう。
地方公務員としての安定したポジションは失ってしまいますが、教師としての知識・経験を活かして、教育業界をもっと良くしたいと考えている人には魅力的な選択肢となりそうです。

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中学生の生き方に大きな関わりを持つ中学校教師は、とても責任重大な仕事です。でも、そんな教師に影響を受けて、今の高校生活を送っている人もきっと多いはず。中学校の先生にお世話になったと感じていて、自分も誰かのために役立ちたいと思っている人にとっては、実に魅力的な仕事といえます。

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