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エッセイストになるには?仕事内容や求められる資質・能力などを紹介

2022.09.05

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エッセイを書くエッセイスト

自身の思いや考えを文章として表現するエッセイスト。文章を書くのが好きな人は、いったいどうすればそんな仕事に就けるのか、そんな仕事ができたらいいなと想像したことがあるのでは?
この記事では、エッセイストの仕事内容や求められる資質・能力について解説します。エッセイストになるための進路についてご紹介しますので、文章を書くのが好きな高校生の皆さんは、ぜひ読んでみてください。

エッセイストとは?

エッセイストとは、著者の人生経験を通じて得た価値観や日々思うことを、文章として発表する人を指します。「随筆家」と呼ばれることもありますが、現代ではエッセイストと呼ばれるのが一般的でしょう。

エッセイストは文筆家のひとつのカタチです。つまり、原稿を執筆することが主な仕事です。裏を返せば、エッセイを書いて発表している人は、すべて「エッセイスト」と名乗れることになります。タレントや経営者などの著名人が本業のかたわら、みずからの体験や思想を執筆しエッセイストとしても活動しているケースもあるのです。
エッセイは、決まった形式があるわけではなく、感じたことや考えたことなどを自由に書くことができるもの。専業エッセイストに限定しなければ、幅がとても広いのがエッセイストといえるでしょう。

エッセイストとコラムニストの違い

エッセイストのほかにも、文章を書く文筆家の仕事にコラムニストがあります。エッセイストとの主な違いは、発表作品のジャンルです。
コラムニストとは、世の中の出来事や時事ネタをテーマとしてメディアに指定され、それについて意見を交えつつ文章を書く仕事です。自身の主観も交えているものの、メインとなるのは新聞や雑誌などのメディアが指定したテーマに対する論評です。一方で、エッセイはテーマがあったとしても、エッセイストが主観的に書いた文章のため、コラムと比べて圧倒的に個人的なエピソードが中心となります。

エッセイストと小説家の違い

エッセイストと同じ文章を書く仕事に、小説家があります。小説家は「物語」を創作する仕事です。小説にはフィクション・ノンフィクションのジャンルがありますが、基本的には小説家自身の想像力や取材をベースに書かれた物語。必ずしも、小説家自身が体験したことではありません。
小説の中には作者自身の体験をベースに書かれた「私小説」なるジャンルもあるものの、物語をよりおもしろくドラマチックにするための創作が加えられることが多いでしょう。自身の想像力を中心に物語を書く小説家に対し、自身の意見や想うことを中心に書くのがエッセイストと捉えるとわかりやすいのではないでしょうか。

エッセイストの仕事内容

エッセイを書くエッセイスト

 
エッセイストの仕事内容は、もちろん文章を執筆すること。エッセイストがエッセイを発表する場合、メディア側から提示された企画やテーマに沿って、新たに原稿を書き下ろすことが多いようです。文章を書くこと自体は、ペンと原稿用紙、またはPCやタブレットがあればできる仕事。時間や場所を選ぶことなく進められるのです。

エッセイストの仕事のやりがい

エッセイストの書く仕事は、自分とひたすら向き合う意外に孤独でつらい仕事。でも、エッセイを読んだ人の人生に影響を与えたり、その後も自分の文章のファンになってくれたり、あるいはそんなファンから応援されたりすると、きっと「書いて良かった」とやりがいを感じられるでしょう。

平安時代に清少納言によって書かれた「枕草子」は、日本におけるエッセイ(随筆)の起源だとされています。その後も、「方丈記」や「徒然草」などの優れた随筆は、現代を生きる私たちにも響くもの。人の心に残る名文は、時代を越えて親しまれます。歴史に名を残せるなんて、すごいことだと思いませんか?

エッセイストの仕事の流れ

文章を書くのが仕事のエッセイストは、どのように仕事を進めていくのでしょう?ここでは、総合週刊誌で「話題のワード」をテーマとしたエッセイの執筆を出版社から依頼され、連載原稿を書くケースを取り上げてみます。

1. 原稿依頼

雑誌が売れるかどうかは、出版社にとって非常に重要です。出版社は企画を出して、適任と思われるエッセイストに執筆依頼します。担当編集者と企画趣旨や「話題のワード」というメインテーマについて打ち合わせをして、原稿の方向性を確認することがエッセイストの仕事のスタートです。

2. 執筆

打ち合わせで決まったテーマにもとづいて、エッセイストは自身の体験や想い、過去の出来事を振り返っていきます。エッセイは自由に執筆できますが、雑誌の場合は連載企画によってページ数・文字数が決められている場合がほとんど。なおかつ、原稿の締め切りに間に合うように、エッセイストは執筆を進めるのです。

3. 入稿

新規で書き下ろした原稿を編集者へ送ります。編集者は企画趣旨と照らし合わせて原稿をチェックし、読後感や修正を要する点などをエッセイストにフィードバック。やりとりの末、すべての原稿を入稿し終えたら、エッセイストの仕事は一段落です。

4. 校正

入稿した原稿はデザイナーによって整えられて、ゲラ(校正用の印刷物)が刷り出されます。編集者や校正者が校正したゲラはエッセイスト自身も校正を行い、必要に応じて加筆修正するのです。すべての校正が完了すると雑誌は校了(校正終了)して印刷・製本工程へと移り、やがて雑誌として書店店頭に並びます。

エッセイストの年収

エッセイを書くエッセイスト

 
エッセイストの収入には、「原稿料」と「印税」の2種類があります。雑誌などに寄稿する際には、400字詰め原稿用紙1枚換算で4,000~6,000円、仮に2,000字の原稿1本だと2万~3万円という原稿料が支払われます。それを本として出版する場合に、エッセイストの収入となるのが印税。印税とはいっても税金ではなく、本の売上のうちの一定の割合を、出版社がエッセイストに支払います。

<エッセイストの報酬例>
・雑誌連載の原稿料:400字詰め原稿用紙1枚あたり4,000円~6,000円
・単行本の印税:定価1,000円の単行本が1万部売れた場合、1,000円×1万部×10%=100万円

注意したいのは、エッセイが話題を呼び、ベストセラーになるのはまれだということ。タレントやお笑い芸人など、著者自身の知名度によって売れることも少なくありません。
出版不況における書籍の初版発行部数は2,000〜3,000部といわれているので、印税にしてみれば20万~30万円。つまり、エッセイ1冊の印税だけで生計を立てられる人はごくわずか。エッセイスト全体の平均年収や年収目安は算出不可能なのです。
「本の売れ行き次第」という厳しい世界ですが、それでもエッセイを書く仕事に対する夢は尽きませんよね。エッセイストを目指す皆さんはどう思いますか?

エッセイストに必要な資質と能力

エッセイストにはどのような資質や能力が求められるのか、高校生の皆さんはおわかりでしょうか。文章力は言うまでもないですが、それを含めた3つの資質・能力について見ていきましょう。

文章力と文章そのものが好きなこと

エッセイストは文章を書く仕事なので、文章力は必須です。言葉や文法の誤用がない、正確な日本語の文章が書けるだけでなく、読む人が共感を覚え「おもしろい!」と思ってもらえるような独自の視点やセンスが求められます。

何よりエッセイストは、専業として執筆活動を続ける限り、毎日のように文章を書き続けなければなりません。文章そのものが好きな人に向いている仕事といえるでしょう。高校生でも日頃から文章を書いている人にこそ向いています!

語彙力・表現力

多くの人に感銘を与えるエッセイを書くには、豊かな語彙力や表現力が必要です。語彙力といっても、難解な言葉や専門用語をたくさん知っていることが重要なわけではありません。むしろ、すっと人の心に染み込むような洗練された表現や、世の中の人が常日頃から感じていたことにマッチした名称をつけるようなチカラが求められるでしょう。

また、読者の心に刺さる表現を選んで文章をつづることも重要な能力です。エッセイの多くは長編ではなく、短い文章の中にさまざまな思いが凝縮されています。短時間で読める文章の中にも、印象に残る表現を盛り込むチカラが欠かせないのですね。

感受性と共感力

誰もがなんとなく気にしていた現象や物、また言語化しづらい時代の空気を、エッセイストは敏感に感じ取り、独自の切り口で言葉にします。優れたエッセイは、そんなエッセイストならではの感性や文体で構成されています。つまり、鋭い感受性が求められる仕事なのです。もちろんそのためには、日頃から社会情勢や流行に対してアンテナを高く立てておくことも必要となるでしょう。

もちろん、鋭い感受性が必要といっても、ちょっと共感できないぐらい独特すぎる感性では、マニア以外の多くの読者には受け入れられないかも。「それ、あるある!」と多くの人に思ってもらえる絶妙な感覚がエッセイスト自身に備わっていれば、著作はヒットする可能性が高いでしょう。
共感を呼ぶ文章を書くため、人の気持ちに寄り添える共感力もエッセイストに必要なのです。

エッセイストになるための方法とは?

エッセイを読む女性

 
エッセイストになるには、どのような進路を選択すれば良いのでしょうか。エッセイストの世界の現状と併せて、進学先や就職先について考えていきます。

エッセイストの世界の現状

エッセイストの世界の現状を一言で表すとしたら、「ニーズはあるものの、それだけで生計を立てるのは難しい」です。
エッセイ本は、マンガで表現されたコミックエッセイを含めると、書店に数多く並べられています。しかし、飛ぶように売れている話題のエッセイ本は、実は著名人によるエッセイがほとんど。実際に皆さんが書店に立ち寄った際、目にとまるのは「すでに聞いたことや見たことがある人が書いた本」ではないでしょうか?
つまり、無名の新人が突然エッセイを出版しても、なかなか目にとまらないのが実情です。

ただし、現代ではインターネットを使って、多くの人がブログやSNSなどで日頃から文章にふれています。そこでブログやSNSで良い文章を書き続ければ、やがてSNSなどで話題になって、出版社などから声がかかる可能性も。わざわざ書籍を購入してでも、「この人の文章を読みたい」と思ってもらえるエッセイストになれるかもしれませんよ。
出版不況はエッセイストには厳しい一面もありますが、インターネットによってデビューの可能性が広がっているともいえるのです。

エッセイストになるための勉強ができる大学・学部

エッセイストは文章を書く仕事ですから、文学部などで学んでスキルを身につけるイメージがあるかもしれませんね。しかし、実際にエッセイストとして求められるのは、文学の専門的な研究素養より、独自の感受性や表現力です。
専門的な学問を修めれば、おもしろい文章が書けるとは限りません。エッセイストとして成功することと、出身校や学部・学科はあまり関連性がないといえるかもしれませんね。

それよりも、大学時代にエッセイの題材となる、さまざまな経験を積んでおくことのほうが大切です。それは学問に関しても同じで、どの分野の勉強でも、エッセイストとして活躍するためネタにすることができるでしょう。
著名なエッセイストの出身校は、下記のようなところがあります。

<有名なエッセイストの出身校>
・上原隆(立命館大学 文学部 哲学科)
・角田光代(早稲田大学 第一文学部)
・岸本葉子(東京大学 教養学部 教養学科)
・酒井順子(立教大学 社会学部 観光学科)
・椎名誠(現:東京工芸大学)
・中島らも(大阪芸術大学 放送学科)
・夏目房之助(青山学院大学 文学部 史学科)
・西加奈子(関西大学 法学部)
・林真理子(日本大学 藝術学部 文芸学科)
・三浦しをん(早稲田大学 第一文学部)
・向田邦子(現:実践女子大学)
・群ようこ(日本大学 藝術学部 文芸学科)
・森まゆみ(早稲田大学 政治経済学部)
※50音順・敬称略

エッセイストに必要な資格や受験すべき試験

エッセイストを目指す上で、必要な資格はありません。資格を持っていれば人の心に残る文章を書けるわけではないのは、皆さんもきっとおわかりのはず。

資格よりも、エッセイ界の権威ある賞を受賞することで、エッセイストとして活躍していくきっかけをつかめるかもしれません。代表的なエッセイの賞としては「日本エッセイスト・クラブ賞」「講談社エッセイ賞」などが挙げられます。
大学やJICA(国際協力機構)などが主催する高校生対象のエッセイコンテストもあるので、エッセイストを目指すなら、腕試しに応募してみてはいかがでしょうか?

エッセイストになるために目指すべき就職先

エッセイストになるための特定の進路はなく、出版社の編集者や広告代理店のコピーライター、新聞社の記者など、文章に携わる仕事に就くのが正攻法でしょう。そこで、文章力向上はもちろん、さまざまな社会経験を積み、エッセイコンクールで受賞を目指すことになります。

文章に関連する仕事に就かなくとも、本業のかたわら、ブログやSNSで文章を書き、地道に発信し続ける手も。ただこの場合、文章について指摘を受ける機会が少ないため、文章力向上は自己研鑽するしかなくなるので、独りよがりにならないよう注意してくださいね。

エッセイストを直接目指すよりも、「エッセイにできるほどの人生経験」を積んだほうが近道という考え方もあります。特定の分野で有名になれば、エッセイを執筆できるチャンスがめぐってくるかもしれません。

エッセイストになった後のキャリアプラン

続いては、エッセイストになった後にどんなキャリアプランがあるのか、その一例をご紹介します。文筆家としての可能性を広げたり、その着眼点を活かして別の分野で活躍したりとさまざまなので、ぜひご参考に!

コラムニストとして活躍する

エッセイストの中には、コラムニストを兼ねている人もいます。独自の視点を武器に、時事問題などを掘り下げた文章は、多くの人を惹きつけることができるでしょう。反対に、コラムニストが自身の体験をもとにエッセイを書くなど、エッセイストとコラムニストは並行してできる仕事といえます。

小説家として作品を執筆する

小説家が創作のかたわらで日々思うことを書きつづるのは、決して珍しいケースではありません。実際、著名な小説家の多くが、小説以外にエッセイも執筆しています。エッセイストとしてキャリアをスタートしてから、文筆活動の一環として小説にチャレンジしてみるのもアリなのでは?

コメンテーターとして活躍する

タレントがエッセイを執筆するケースは多いですが、逆のパターンとして、エッセイストがテレビのワイドショー番組などに出演するケースもあります。エッセイストとして磨き上げた感性や独自の視点から紡ぎ出されるコメントが、視聴者に人気を博すことも。

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エッセイを読む高校生

 
エッセイストは、自身の体験や思いを文章にしていく仕事。資格や試験は必要なく、誰でも目指すことができます。
ただし、エッセイストを職業にして生計を立てていくのは、並大抵のことではありません。それには、独自の視点や文章力が不可欠なので、高校生のうちからコンクールに応募したり、SNSで発信してみたりと、どんどん力試しをしてみてくださいね。賞をとったりSNSでバズったりするようになれば、大学生エッセイストとしてデビューできるかも…?

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