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書店員になるには?仕事内容や求められる資質・能力などを紹介

2022.10.11

カテゴリー:
書棚を案内する書店員

書店を訪れて、話題の新刊に熱のこもった手書きPOPが設置されていたり、おすすめの本で構成されたフェアが開催されていたりするのを見たことがあるのでは?あの書店店頭の飾りつけは、書店員の仕事です。本が好きな人や書店本に関わる仕事がで働いてしみたい人にとって、夢のような職業かもしれませんね。
この記事では、書店員の仕事内容や求められる資質・能力のほか、書店員を目指すための進路についてご紹介します。

書店員とは?

書店員とは、書店で本の販売や店舗の運営を担当する職業です。本は形や大きさだけで見れば大きな違いがないため、ただ並べるだけでは、手に取ってくれる人は限られてしまいます。一冊でも多くの本を手に取ってほしい書店員は、さまざまな工夫を凝らして本をおすすめするのです。

皆さんの中にも、ふと立ち寄った書店で本の紹介文が書かれたPOPを見かけて、手に取ってみた経験がある人は多いでしょう。このように、書店を訪れた人と本との出合いをサポートするのが書店員の仕事です。
書店員が書いた紹介文POPや、注目の本を集めて陳列したフェアがなければ 、一生手に取るチャンスがなかった本もあるかもしれません。書店員は本の魅力を伝え、本との出合いをサポートする素敵な仕事ですね!

書店員と出版社営業の違い

本を売る仕事には、書店員のほかに出版社の営業があります。本を一人でも多くの人に届けるという目的は、どちらの仕事にも共通していますが、そのための手段が大きく異なります。

出版社の営業は、自社の本を書店店頭に並べてもらえるよう、書店に働きかけます。多くの人が求めている魅力的な本だと知ってもらって、書店の売上に貢献できることをアピールするのが仕事です。その交渉次第では、書店の中でも目立つ場所に本を並べてもらえたり、特設コーナーを設置してもらえたりするかもしれません。ただ、実際に書店で本を買う人と、直接接することは決して多くありません。

一方、書店員は書店店頭でより多くの人に本を手に取ってもらえるよう、売場づくりをしたり本の紹介POPを書いたりする役割を担っています。日々接するお客のため、たくさんの出版社が送り出す本を手渡すのが書店員なのです。

書店員の仕事内容

書店を利用する客

 
書店の仕事の中でお客の目に直接ふれるのは、レジカウンターでの接客と、本や雑誌の陳列です。接客や陳列は書店員として重要な仕事ですが、書店員が担う業務はこれだけではありません。

書店に並べられた本や雑誌は、日々入れ替わっています。一定期間、売れ行きの良くない本や雑誌を棚から撤去し、新しい本や雑誌を並べる場所を空けなくてはなりません。撤去した本は廃棄するのではなく、出版取次会社と呼ばれる本や雑誌の流通会社に返品します。出版取次会社に本や雑誌を返品するのも、書店員にとって重要な仕事なのです。

POPを作成して設置したり、話題の本を集めたフェアを企画・陳列したりするのも書店員の役割です。
書店には非常に幅広いジャンルの本や雑誌が並んでいるので、書店員はさまざまなジャンルに精通している必要があります。書店員のPOPやフェア展開によって、本の売れ行きが大きく変わることも珍しくありません。一人でも多くの人に本の魅力を知ってもらうために手を尽くすのが、書店員の仕事といえます。

書店員の仕事のやりがい

書店員の仕事には基本的なマニュアルはありますが、それぞれの本をどのように案内すれば買ってもらえるのか、どうすればお客に本の魅力が伝えられるのかを解説したマニュアルはありません。お客の反応や実際の店頭の売れ行きを確認しながら、書店員自身が工夫を凝らして陳列や見せ方を考え、本の魅力を伝えているのです。

昨今は「カリスマ書店員」「名物書店員」などといわれる書店員もいます。日々、多くの本を見ている書店員がおすすめする一冊なら、「きっとおもしろいに違いない」「役立つ本に違いない」と感じるお客も少なくありません。
このように、書店員は「本を扱うプロフェッショナル」「本の目利き」として認知されています。書店員が作成したPOPや、接客の中で交わした会話がきっかけで新たな本との出合いを提供できるのは、書店員としての大きなやりがいとなるでしょう。

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書店員の仕事の流れ

書店員の仕事は、新刊の入荷状況や担当する売場などに応じて優先順位が変わります。ここでは、書店員が日々携わっている主な仕事の、一日の流れを見ていきましょう。

1. 陳列・撤去・返品

書店を訪れるお客に、本を探しやすく選びやすい空間を提供することは、書店員の大切な仕事です。開店前に新刊の陳列や売れ行きの良くない本の撤去、書棚の整理、POPの作成、追加発注といった仕事を行い、鮮度の高い売場づくりをしていきます。
ちなみに、書棚のスペースには限りがありますよね。ですから、日々送られてくる新刊を並べるため、棚から本を撤去し、出版取次会社へ返品する必要があるのです。

2. 接客対応

書店が開店してからは、来店したお客への接客対応を行います。接客は、書店のイメージを大きく左右しかねない重要な業務です。レジカウンターでは要望に応じて本にカバーをかけたり、問い合わせに応じて本を探して取り置いて、次回の来店につなげたりします。
また、店頭で本を探しているお客から声をかけられたときには、お目当ての本が置かれている棚へと案内したり、タイトルがわからない本をいっしょに探したりすることもあります。

3. 出版社や出版取次営業への対応

開店中に出版社や出版取次の営業が書店を訪れた際には、本の売れ行きを報告したり新刊案内を聞いたり、追加注文を依頼したりすることもあります。テーマが類似した本が売れていれば、さらに注文することもありますが、売れそうにないと感じた本の追加注文は見合わせることも。そうした目利きが、書店員には必要です。
主にこうした判断を下すのは店長の仕事ですが。しかし、店の規模にもよりますが、店長が不在の際の場合には、あるいは店の規模によっては、その棚やジャンルを担当する書店員が代わりに判断します。

書店員の年収

書店員の平均年収は300万~350万円とされています。
書店員の給与は勤務先の規模や業績によって変わり、勤続年数や実務経験によっても差が開きます。小規模〜個人経営の書店ではボーナスが支給されないケースもあるため、年収300万円を下回ることも。

一方、複数店舗をチェーン展開している大型書店に勤務したり、経験豊富なベテラン書店員だったりすると、年収400万円以上になるケースもあるようです。

書店員に必要な資質と能力

男女の書店員

 
書店員として働くには、具体的にどのような資質や能力が求められるのでしょうか。書店員として特に重要な資質と能力をご紹介します。

本や雑誌に対する愛情と知識

書店員は本を扱う仕事である以上、自身も本が好きで、愛着や愛情を感じられる人でなければ務まらないでしょう。本を大切に扱えること、本が好きな人の気持ちが理解できることは、書店員として非常に重要な資質といえます。普段から本をよく読む人や、書店を頻繁に訪れている人なら、書店員としての資質ありです。

ただし、本が好きといっても「歴史小説だけしか読まない」「コミック以外は興味がない」と、特定ジャンルに興味・関心が偏っている人もいるかもしれませんね。ビジネスとしてさまざまな本を扱う書店では、幅広いジャンルの本に関して知識を持っている人、あるいは興味が持てる人が向いています。

体力

意外かもしれませんが、書店員はかなりの体力を必要とします。まず、勤務時間中は立ったまま仕事を進めることになるので、長時間の立ち仕事が可能な体力が必要です。
また、書店では書棚に並ぶ本も日々入れ替わっています。新刊を搬入し、書棚から撤去・返品する本をバックヤードへ戻す際には、かなりの冊数の本を持ち運ばなくてはなりません。まとまった冊数の本は、見た目以上に重量があります。本が入った重いダンボールを頻繁に持ち運びするため、書店業界では腰痛を抱える人がかなり多いといわれているほどです。

企画提案力

書店員は、お客と本の出合いをサポートする仕事。世の中の人が関心を寄せているテーマについて関連する本を集め、フェアを企画提案することも書店員として大切な能力です。

書店で開催されているフェアの多くは書店員が企画し、お客の目にとまるように工夫して陳列しているのです。書店を訪れる人に興味を持ってもらい、本を手に取ってもらうためには、いかに平面的な商品である本を訴求するかという企画提案力が求められます。
そのため、書店員は世の中の動きや店頭の本の売れ行き、さらにSNSで話題になっているテーマに対して、日頃から高くアンテナを張っておく必要があるのです。

コミュニケーション力

書店員は、書店の“顔”といってさしつかえないでしょう。来店するお客にとって、書店員の対応で、書店に対する印象も変わります。おぼろげな記憶で探している本の内容を説明し、在庫の有無や陳列場所を尋ねたとき、書店員が親身になって一生懸命に探してくれれば、「またこの書店に来よう」と感じる人も多いはず。
書店は小売店の一種。そのような手厚いコミュニケーションがとても重視されるのです。

書店員になるための方法とは?

書店員になるには、どのような進路を選択すれば良いのでしょうか。書店員の世界の現状と併せて、書店員を目指すための進学先や就職先についてご紹介します。

書店員の世界の現状

 
書店を取り巻く現状は非常に厳しいのが実情です。高校生の皆さんも、本を書店ではなくECサイトで購入した経験がある人は多いのではないでしょうか?本を購入するのに書店を利用する以外に方法がなかった時代とは大きく異なり、今はインターネット経由で本を手軽に購入できるようになっています。消費者としては便利ですが、書店は苦しさを増すばかりなのです。

電子書籍の普及も、書店にとって大きな痛手。スマートフォンや電子書籍リーダーで本を読む人が増えていることから、紙の本の売れ行きはずっと右肩下がりとなっています。不要不急の外出自粛要請、ステイホームも大きな影響を与えました。

しかし、書店員の活躍の場が消えてしまうようなことはないでしょう。本の点数が増えたことで、どれを選んだら良いのかわからなくなった人もたくさんいます。そこで、「本に詳しい人がおすすめする一冊を知りたい」というニーズも高まっているのです。
カリスマ書店員や名物書店員が登場していることからもわかるとおり、書店員は「本のコンシェルジュ」として、今後も必要とされていく仕事といえそうです。

書店員になるための勉強ができる大学・学部

書店員になるために必須の学問分野や専攻はありません。世の中には幅広い分野の本があるので、あらゆる知識や教養が、書店員として働いていく上で活かせます。学歴よりも、本に対する興味・関心の高さや接客スキルなどの資質を備えているほうが大切でしょう。
参考までに、カリスマ書店員といわれる有名書店員の出身校をご紹介します。

<有名な書店員の出身校>
・新井見枝香(東邦音楽大学 音楽学部)
・笈入建志(早稲田大学 商学部)
・久禮亮太(早稲田大学 法学部)
・田口久美子(東京外国語大学 言語文化学部ドイツ語科)
・花田菜々子(日本大学 芸術学部)
・福嶋聡(京都大学 文学部哲学科)
・堀部篤史(立命館大学 文学部)
※50音順・敬称略

書店員は文学を学んだ人が多いように思われがちですが、書店では理系の本や雑誌もたくさん取り扱っているので、文学部だから有利というわけではないことに注意してくださいねさまざまな人に向いている仕事といえるでしょう。

書店員に必要な資格や受験すべき試験

書店員になるために必須の資格や免許はありません。本や雑誌についての知識はあったほうが良いですが、特に資格を持っていない人でも書店員として働くことは可能です。

ただし、 小売店の接客・販売で求められる基本的な知識を学ぶには、リテールマーケティング(販売士)検定という試験を受験しておくといいでしょう。接客の基本から売場の管理方法、店舗運営に必要なマーケティングの基礎知識など、物を売る仕事の基本が習得可能です。1~3級の難度別になっており、どの級も受験資格はないので誰でも挑戦できます。プロの接客を体得したい人は、挑戦してみてはいかがでしょう?

書店員になるために目指すべき就職先

書店員になりたい人は、まず学生時代に書店でアルバイトを経験しておくことをおすすめします。アルバイトを採用している書店は多いため、書店での仕事が自分に合っているかどうかを見極めるためにも有効です。
また、就職の際にはアルバイトでの実務経験が評価される可能性があるほか、アルバイト先でそのまま正社員に登用されることもあります。

書店員として働くための就職先は、もちろん書店です。ただし、書店の規模や経営方針によって、仕事内容や待遇が大きく変わることもあります。
書店は、下記の4つのタイプに大別されることを押さえておくといいでしょう。

・個人経営の書店
個人経営の書店は、長年にわたってその地域住民に親しまれてきた町の小さな書店です。店主を中心に家族で経営されていることが多く、大型書店と比べれば裁量は少ないかもしれません。まずは、学生時代にアルバイトとして働いてみることをおすすめします。

・中規模書店
中規模書店は、駅前や主要街道沿いにある比較的規模の大きな書店で、地域に根付いた店舗をいくつもチェーン展開しています。雑誌からコミック、専門書まで幅広いジャンルの本や、DVD・ゲームソフトなどを扱っている店舗も多く、書店員には幅広い商品知識が求められます。
チェーン展開とはいえ店舗数が限られていることから、一人の書店員の活躍が書店全体の売上に大きく影響することも少なくありません。

・大型書店
大型書店は、全国規模、あるいは近隣都道府県をまたいで多数の店舗をチェーン展開しており、ターミナル駅や都心部、ショッピングモールなどに出店しています。本だけでも非常に在庫点数が多く、ジャンルや棚ごとに担当することになり、深い商品知識が求められるでしょう。
店舗運営のマニュアルが整備されているため、一書店員の自由度は小さいかもしれませんが、店長やエリアマネージャーなどになれば、自分のこだわりを店舗運営に反映できることも。

・独立系書店
最近では、従来の書店という枠にとらわれない、個人経営の独立系書店も登場しています。特徴は店のコンセプトを重視していることで、おしゃれなカフェが併設されている書店や、アート・サブカルチャーに特化した書店など、セレクトショップのような書店が各地で誕生しているのです。書店のコンセプトに深く共感し、いつか個性的な書店を自分も開きたいと考えている人にはおすすめの勤務先です。

書店員になった後のキャリアプラン

書店員になった後は、魅力的な売場づくりやフェアの企画を通じて、店舗の売上に貢献することを目指します。書店員としての経験を積み、実績を上げていくと、下記のように新たなキャリアも視野に入ってくるでしょう。

店長

企画立案能力や店舗運営のスキル、それによる売上実績が評価されると、書店の店長へと昇進し、店を任されます。店舗に勤務する社員やアルバイトをまとめていく立場となるのです。仕事に対する責任はいっそう重くなりますが、自分の裁量で店舗づくりができる場面も増えていくので、やりがいはさらに増えそうです。

エリアマネージャー

書店の店長としての実績が認められると、チェーン展開をしている書店であれば、複数店舗を統括するエリアマネージャーへと昇進できます。自分の担当エリアの店舗を巡回し、売上の確認やPOSデータ分析、売場づくりのアドバイスをするのが主な役割です。マネジメント能力を活かして書店を盛り上げていきたい人に適したキャリアといえます。

著書の出版

書店員の中には、カリスマ書店員や名物書店員として有名になっていく人もいます。普段、活字にふれていることもあって、文章の執筆が得意な人もいるのです。書店員として日々感じていることをエッセイとしてまとめたり、これまでの経験を踏まえておすすめの本について書く書評家として活躍したりする可能性もあります。
書店員という枠を超えて、さらなる「本のプロフェッショナル」として活躍の場を広げていけるかも!

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本に囲まれる女性

 
書店員は、人が最適な一冊と出合うためのサポートをする素敵な仕事です。本が好きな人、本に囲まれて働くことに憧れている人にとっては天職といえるかもしれません。
書店を取り巻く環境は厳しくなっているものの、さまざまな本を熟知した書店員は「本のコンシェルジュ」として、今後も必要とされていく仕事です。この記事を参考に、ぜひ書店員になるための進路を考えてみてください。

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