建築士になる最短ルートは?合格率が高い大学や年収も解説
2023.01.16
最終更新日: 2025.05.02

「建築士になるには何年かかるの?最短ルートを知りたい」「建築士を目指せる大学は?」と疑問に思っていませんか?建築士の資格取得は複雑な制度と長期的な学習が必要で、進路選択を間違えると遠回りになる可能性もあります。
この記事では、建築士になるための最短ルートを一級建築士、二級建築士、木造建築士に分けて解説します。建築士試験の合格率が高い大学も紹介するので、進路選びの参考にしてください。
建築士になるには、大学・短期大学・専門学校で指定科目を修めて卒業し、建築士の試験に合格するのが一般的です。その後、数年の実務経験を積むことで、正式に建築士として仕事を始められます。
目次
建築士の種類と必要な資格
建築士の種類は、以下3つに分けられます。
- 一級建築士
- 二級建築士
- 木造建築士
それぞれ設計できる建物の規模や種類、主な就職先などを解説します。
一級建築士
一級建築士の強みは、設計できる建物に制限がないことです。住宅はもちろん、超高層ビルや大型ショッピングセンター、オリンピックスタジアムなど、幅広い建築物を扱えます。その分、取得する難易度も高いことが特徴です。
さまざまな建築物を扱えるため、活躍できる場所も多様です。住宅メーカーや設計事務所だけでなく、大手建設会社や行政機関でも活躍できます。
二級建築士
二級建築士は設計可能な建物の規模に制限があります。一般的な規模の住宅なら設計できるので、マイホームの建築に携わる仕事をしている人は、二級建築士の資格のみを取得しているケースもありますよ。
二級建築士は、主に住宅メーカーや工務店、不動産会社など、住宅に関連する企業で活躍しています。
木造建築士
木造建築士は、名前の通りに木造の建物を扱うことができます。鉄骨造や鉄筋などの建物は扱えません。ただ、よく見られる戸建て住宅の多くは木造です。二級建築士と同じくマイホームを作る会社で活躍している人も少なくありません。
主な就職先として、木造住宅に特化した工務店や木造建築を得意とする建設会社、住宅のリフォーム会社などが挙げられます。
また、就職先によっては、木造建築の専門知識を生かして、伝統的な神社やお寺などの建築にかかわる機会もあります。
建築士になるには?

建築士になるには、試験に合格し免許登録を行う必要があります。受験・免許登録ともに要件があるので、以下の表を参考にしてみてください。

建築士になるには、建築士の国家試験に合格する必要があります。受験資格は上記の図のとおり、さまざまですが、高校生がこれから目指すなら、大学・短期大学・専門学校で指定科目を修めて卒業し、建築士の国家試験に合格するルートがおすすめです。
合格後は、数年の実務経験を積むことで、建築士として登録でき、ようやく建築士として仕事を始められます。
以下では、建築士になる最短ルートを解説します。
二級建築士・木造建築士になるための最短ルート

高校を卒業してから二級建築士・木造建築士の資格を取得する最短ルートは、建築学科のある短大もしくは専門学校への進学です。最短2年で建築士を目指せます。
18歳で高校を卒業し、2年間短大か専門学校で必要な科目を学び、20歳で卒業します。卒業した年に二級建築士・木造建築士の試験を受験し、合格すれば20~21歳で資格取得が可能です。
大学・短大・専門学校を卒業した場合は、実務経験がなくても建築士として登録できます。つまり、高校卒業から最短2年で建築士になれるわけです。
一方、高校卒業後に就職する場合は、建築士事務所などで、実務経験を7年以上積む必要があります。この場合、最短でも25~26歳での資格取得となります。社会人や主婦の方でも、高校を卒業していれば、実務経験を7年積むことで、受験資格を得られます。
一級建築士になるための最短ルート

一級建築士の資格を取得するには、高校卒業から最短で6年間必要です。一級建築士になるルートは以下の4つです。
- 4年制大学を卒業後、2年以上の実務経験を積む
- 3年制短大を卒業後、3年以上の実務経験を積む
- 2年制短大もしくは専門学校を卒業後、4年以上の実務経験を積む
- 二級建築士の資格を取得後、一級建築士の資格を取得し、4年以上の実務経験を積む
18歳で高校を卒業後、建築学科のある学校に進学し、国家試験に合格します。卒業後は建築士事務所などで実務経験を積めば、最短24~25歳で一級建築士の資格取得が可能です。
建築士の合格率
建築士国家試験の合格率は、以下のとおりです。
建築士の種類 | 令和6年度の合格率 | 直近5年の合格率推移 |
一級建築士 | 8.8% | 約8~10% |
二級建築士 | 21.8% | 約21~26% |
木造建築士 | 39.9% | 約33~44% |
過去5年間の二級建築士試験結果データ|建築技術教育普及センター
過去5年間の木造建築士試験結果データ|建築技術教育普及センター
扱える建築物の範囲が広がるにつれて難易度も上がります。一級建築士の難易度が最も高く、二級建築士、木造建築士の順で合格のハードルが下がっています。
建築士になるには大学進学がおすすめ
建築士になるには、大学、短大、専門学校、高等専門学校のいずれかを卒業すればよいですが、迷っているなら大学進学がおすすめです。
短大や専門学校と比べてより深い理論や歴史を学べ、実践的な設計実習にも多くの時間を割けます。将来の選択肢をより広く持つために、大学院進学も考慮に入れるとよいでしょう。大手の設計事務所やゼネコンのなかには、「大学院卒」を採用条件としている会社も珍しくありません。
建築士を目指せる大学の学部

建築士を目指せる大学の学部は、以下のとおりです。
- 建築学部建築学科
- 工学部建築学科
- 美術学部建築科
建築を学ぶなら工学部の建築学科を選択するのが一般的ですが、文系出身でも学べる選択肢があります。たとえば、文理を問わず建築を学べる建築学部を設置している大学や、デザインを重視した美術学部で建築を学べる大学もあります。
建築士を目指せる学部・学科を設置している大学の一例は、以下のとおりです。
【国公立】
- 長岡造形大学 造形学部 建築・環境デザイン学科(新潟県)
- 信州大学 工学部 建築学科(長野県)
- 東京大学 工学部 建築学科(東京都)
- 横浜国立大学 都市科学部 建築学科(神奈川県)
- 名古屋大学 工学部 環境土木・建築学科(愛知県)
【私立】
- 星槎道都大学 美術学部 建築学科(北海道)
- 日本大学 工学部 建築学科(福島県)
- 日本工業大学 建築学部 建築学科 (埼玉県)
- 千葉工業大学 創造工学部 建築学科(千葉県)
- 日本大学 理工学部 建築学科(東京都)
【通信】
- 大阪芸術大学 芸術学部 建築学科(大阪府)
- 愛知産業大学 造形学部 建築学科(愛知県)
ほかにも、建築士を目指せる大学を知りたい人は、逆引き大学辞典で「建築」と名前の付いた学科をチェックしてみてください。建築を学べる大学がわかるため、進路選びの参考になります。
一級建築士の合格率が高い大学トップ5
令和6年度、一級建築士試験に合格した人の出身大学トップ5は以下のとおりです。進路選びの参考にしてみてください。
- 日本大学 理工学部 建築学科(東京都):142人
- 東京理科大学 工学部 建築学科(東京都):103人
- 近畿大学 建築学部 建築学科(大阪府):92人
- 芝浦工業大学 建築学部 建築学科(東京都):84人
- 早稲田大学 創造理工学部 建築学科(東京都):66人
建築学科の学びの内容
建築学科での4年間は、段階的に専門性を深めていくのが特徴です。1年生では、高校の数学や物理を応用しながら、建物に使う素材の特徴や、簡単な設計図の描き方を学びます。
2年生になると、建物の間取りの考え方や、建物が倒れないようにする計算方法など、より専門的な建築知識を習得します。
3年次では、計画・構造・環境・材料などの分野から自分の興味ある専門性を選択して深く学ぶのが特徴です。また、実験や実習も多く取り入れられ、実践的なスキルを身に付けることが可能です。
4年生では、研究室に入って、自分だけの研究テーマに取り組みます。たとえば、環境に優しい建物の研究や、新しいデザインの提案などに挑戦できます。
理工学部 建築学科 履修モデル(2021年度入学者用)|東京理科大学 工学部 建築学科
建築士の仕事の内容

建築士の仕事は「建物の設計」や「建築工事の監理」などです。お客様の依頼を受けたら、希望を聞きながらどんな建物を作るかを考えます。どんな暮らしがしたいか、どんな雰囲気の空間が好みかなど、様々な要望を理解することが大切です。イメージが決まったら設計図を描いたり、模型を作ったりして建物の具体的な姿を形にします。
どんなデザインにするのか、どんな設備を使うかといった細かい部分も、お客様の要望に合わせて決めていきます。また、どのくらいのお金が必要になるかも計算して、予算内に収まるように調整するのも建築士の仕事です。ほかにも、建築にかかわる法律を調査しておき、必要な申請を行うこともあります。
実際に工事が始まったら、現場で工事監理を行います。工事監理とは、工事が設計図通りに順調に進んでいるか確認することです。現場でつねに作業を監督するわけではなく、必要なタイミングで検査を実施して工事の状況をチェックします。ときには設計を修正することも。理想の建物を作り上げるため、さまざまな場面で建築士の知識やスキルが求められます!
建築士の仕事のやりがい
建築士の仕事では、ゼロから建築物を作る現場に携われます。自分のなかにある建物のイメージを形にできるので、ものづくりが好きな人にとってはワクワクする場面がたくさんあるはず!完成した建物を前にしたときは、大きな達成感を得られるでしょう。
建築士の想定年収
建築士の種類別に、想定年収をまとめたので、参考にしてください。
一級建築士 | 700~900万円 |
二級建築士 | 350~500万円 |
木造建築士 | 350万円前後 |
建築士の年収は、企業規模によって大きく変わります。政府の統計によると、一級建築士の場合、企業規模によって以下のように収入が変動します。
企業規模 | 年収 |
10~99人 | 702万8,800円 |
100~999人 | 747万1,400円 |
1,000人以上 | 900万3,500円 |
参照:政府統計の総合窓口「賃金構造基本統計 調査令和元年以前 職種DB第1表」|厚生労働省
建築士の将来性
建築士は将来性が高く、需要が増加している職業です。とくに建築業界の高齢化が深刻な課題となっており、若手の建築士が強く求められています。国土交通省の資料によると、一級建築士の年齢構成は、50代以上が全体の半数を超えており、若手人材は20代・30代合わせても50代以降の3分の1にも満たない状況です。(令和3年度時点)
さらに、お年寄りや体の不自由な方に配慮した建物の設計や、環境に優しい建築の需要が増加しています。また、古くなった建物の建て替えや改修工事の需要も高まっており、建築士の仕事は今後さらに増えていく見込みです。
深刻な人材不足と建築需要の高まりから、建築士の将来性は極めて高いといえます。
参照:一級建築士(所属建築士)の数・年齢構成 p50|国土交通省
建築士に求められる力

建築士になって仕事を続けていくためには、どんなスキルや資質が必要なのでしょうか。こちらでは、建築士に求められる力をご紹介します。
コミュニケーション能力
建物を作るためには、多くの人の力を合わせる必要があります。営業担当者や現場スタッフなど、さまざまな人と協力するためにコミュニケーションをとれる能力が不可欠です。お客様と何度も会話を重ねて、希望を取り入れながら設計することも重要な仕事の一つ。相手が求めることを的確に理解できる能力も求められます!
設計力
お客様によって、建物に求める要望はさまざま。すべての要望を盛り込んだ建物を作るのは難しいこともあります。建築士には、予算や期限などの現実的な問題を考えながら、できる限りお客様の理想を叶えるため、柔軟な発想で設計を行う力が必要とされます。
さまざまな要望を実現するためには、建築についての豊富な知識が欠かせないといえるでしょう。また、覚えた知識を活用するための技術も必要です。建築について学べる環境で、しっかりと知識や技術を習得していくことが大切です。
新しい知識や技術を身に付けられる力
建築に関する技術は、どんどん新しくなっていきます。建築士として就職できた後も、新しいシステムの使い方を覚えたり、流行のデザインを調べたりといった努力が必要になる場面もあります。たとえば、建築現場では測量や点検などでドローンを使うことが増えているため、使い方を覚える必要があることも。仕事への向上心があり、新しい知識や技術を身に付けられるように努力していけることも重要な能力といえるでしょう。
建築士の就職先
建築士の主な就職先は、以下のとおりです。
- 建築設計事務所
- 建設会社
- ハウスメーカー
- 地方自治体
建築設計事務所
建築設計事務所は、建築士の代表的な就職先です。お客様の「こんな家に住みたい」「こんな店舗を作りたい」という夢を、実際の建物として形にする仕事を行います。規模はさまざまで、大きな会社から小さな事務所まであり、それぞれ得意分野が異なるのが特徴です。
たとえば、住宅専門の事務所もあれば、商業施設や病院などを主に手がける事務所もあります。経験を積んで独立し、自分の設計事務所を開く人も珍しくありません。なお、大手の設計事務所では大学院卒が採用条件となることもあるため、就職を考える際は各事務所の募集要項をよく確認することが大切です。
【建築設計事務所の一例】
建設会社
建設会社は、建物を実際に建てる工事全体を任される会社です。お客様から依頼を受けて、計画から工事完了まで一貫して担当します。
大きな建設会社は「ゼネコン」と呼ばれ、マンションや学校、病院、駅ビルなど大規模な建物の建設を手がけるのが特徴です。建築士は、プロジェクトで設計や工事の監督を担当します。
設計事務所と比べると、給料や福利厚生などの待遇は良好です。ただし、大手ゼネコンの設計部門では大学院卒が採用条件となることもあるため、進路を考える際はしっかり確認が必要です。
【建設会社の一例】
ゼネコンについては、以下の記事で詳しく解説しています。
建築業界やゼネコンについて解説|就職する方法や大学と学部学科の選び方も紹介
ハウスメーカー
ハウスメーカーは、一般の家を建てる会社です。大手企業が多く、全国展開している会社も珍しくありません。建築士は、家の設計や企画、お客様との打ち合わせなどを担当します。
建設会社や設計事務所と異なる特徴として、会社によっては建築士が設計だけでなく営業も担当することがあります。大手ハウスメーカーでは基本的な家のデザインがすでに決まっているため、そのなかからお客様の希望に合わせて提案するのが一般的です。
勤務の特徴として、お客様が来店しやすい土日が忙しく、代わりに平日(火曜や水曜など)が休みになることが多いようです。
【ハウスメーカーの一例】
地方自治体
地方自治体(市役所や県庁など)で働く建築士もいます。公務員試験の技術職として採用され、都市計画や建築部門で仕事をします。
主な仕事は、公共施設の修繕計画や工事の監理、一般の人が建てる建物が法律に違反していないかの審査、違法建築物への指導などです。民間企業の建築士と異なり、一から建物を設計する機会は少なめですが、近年は街の再開発や活性化計画など、まちづくり全体にかかわる仕事も増えています。 勤務条件は公務員として安定しており、多くの自治体が建築士の採用を積極的に行っているため、安定志向の人には良い選択肢となっています。
建築士の就職先とキャリアプラン
建築士の主な就職先には、設計事務所・ハウスメーカー・工務店・ゼネコンなどがあります。就職先によって住宅・オフィスビル・店舗・学校など、扱える建築物は異なります。どんな建物を設計したいかによって、応募する職場は変わってくるでしょう。
建築士として就職した後は、さまざまな道が考えられます。スキルアップすることで、スカイツリーや瀬戸大橋といったランドマークとなる大規模な建築に携わることも可能です。世界文化賞の建築部門を受賞するような、芸術的な建築ができるようになることも。建築士の資格を生かして、建築系の業界で長く働いていくことができますよ。
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建築士になるには試験を受けて資格を取ることが必要です。大学で建築について学ぶことで受験資格を得られると同時に、専門的な知識も身に付けられます。建築士になりたい人は、建築学科への進学も検討するのがおすすめです。
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