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獣医師になるには?仕事内容や必要な免許、学部・学科の選び方を解説

2023.04.27

カテゴリー:
診療中の獣医

獣医師は、犬や猫など人間以外の動物を専門的に診る医師です。高校生の皆さんのなかには獣医師になりたいと考えている人もいるでしょう。本記事では、獣医師の仕事内容や必要な免許、学部・学科の選び方などについて解説しています。獣医師のやりがいや必要な資質・能力についても紹介しているので、獣医になりたいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

獣医師とは?

獣医師のメインの仕事は、人間以外の動物に対する病気やケガの診断、治療や健康管理です。

獣医師は動物病院に勤務するというイメージが強いかもしれませんが、診療場所は多岐にわたります。人間以外の動物全般が診療の対象なので、動物園や保健所、畜産のいる農協に勤務することもあります。また、食品衛生検査所や検疫所、製薬・食品会社で衛生面の検査をするのも、獣医師の仕事です。

獣医師と医師の違い

人間以外の動物の診療をおこなうのが獣医師、人間の診療をおこなうのが医師です。

前述したように、獣医師は人間以外の動物がかかわる様々な機関で勤務することがありますが、医師は基本的に人間を診療するための病院・クリニックなどが勤務先となります。

医師についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。
医師(医者)になるためにはどのような学部を選ぶ?向いている人ややりがい

獣医師と愛玩動物看護師の違い

獣医師は動物の診療をするのが仕事で、愛玩動物看護師は獣医のサポートが仕事です。

獣医師が診療しやすいように動物を押さえたり、手術の助手や薬の注文管理、飼い主への説明などをおこないます。人間の看護師と似たような役割です。

愛玩動物看護師についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。
愛玩動物看護師になるために必要な資格と学べる大学|キャリアプランも

獣医師の仕事内容

聴診器をあてている獣医

獣医の仕事は、主に以下の5つに分けられます。

  • 小動物臨床獣医師
  • 産業動物臨床獣医師
  • 公務員(行政)獣医師
  • 研究・開発
  • 獣医学生の教育

それぞれ解説します。

小動物臨床獣医師
家庭で飼育されているペットの診療を専門におこなう獣医師です。健康診断やワクチンの接種などもおこないます。

とくに「伴侶動物」と呼ばれる小動物が診療対象で、犬や猫のほかウサギやハムスターなどの小動物、鳥類や爬虫類、両生類など幅広い動物が対象です。獣医師のなかでもメジャーな仕事といえますが、幅広い知識が求められる仕事です。

産業動物臨床獣医師
牛や鶏などの家畜を専門に診療する仕事です。主に大型の動物が対象で、牛や鶏、豚、馬などの健康管理や伝染病の予防接種、品種改良をおこなったり、出産の立会いをおこなったりすることもあります。動物園や水族館にいる動物や、乗馬用の馬や競走馬の健康管理をおこなうのも、産業動物臨床獣医師です。

公務員(行政)獣医師
地方公務員として働く獣医師です。農林水産省や厚生労働省、地方自治体での衛生検査をおこなう仕事で、小動物臨床獣医師に次いで多い就職先といわれています。海外から入ってくる食品や動物の検疫や、鳥インフルエンザなどの家畜伝染病の防疫対策などをおこない、国民の安全を守る仕事です。

研究・開発
動物用医薬品の研究・開発にも獣医師が携わっています。動物用医薬品の開発企業に所属し、獣医系大学と連携して臨床研究をおこなったり、動物病院に対して薬を紹介したり販売したりします。大学や研究所で獣医学を研究する獣医もいます。

獣医学生の教育
獣医師や動物看護師を育てる大学や短大に所属し、学生を指導する講師を担当する獣医もいます。

ほかにも、野生動物専門の獣医や介助犬・盲導犬などの検査を担当する獣医、海外から入って来たワクチンなどを日本に導入できるか調べたり、ペット保険に携わったりするなど、獣医の活躍の幅は広がっています。

獣医師の仕事のやりがい

獣医師の仕事は、下記のようなやりがいが感じられる仕事といえます。

自分の治療で動物を助けられる
獣医師の仕事のメインは動物の治療です。自分の治療によって動物の命を救えることにやりがいを感じられるでしょう。

特に動物は人間と異なり、言葉が通じません。言葉が通じないながらも動物の苦しみや痛みをくみ取り、自分の考え得るベストを尽くす必要があります。その結果命を救えたときの喜びは、獣医師ならではの経験といえるでしょう。

飼い主から感謝される
獣医師が診療する動物には飼い主がいるので、治療すれば飼い主に感謝されるでしょう。

飼い主にとって、動物は家族同然です。特に言葉が通じない動物の不調は、飼い主も不安でいっぱいになるでしょう。飼い主の大切な家族である動物の痛みや苦しみに寄り添い、治療が終わって「ありがとう」と言われた瞬間、獣医師になってよかったと感じられます。

命の尊さに触れあえる
獣医師の仕事は、幅広い動物の命に触れる仕事です。命を救えず悔しい思いをすることもあるかもしれませんが、一方で出産に立ち会うなど新しい命に出会える経験もあります。小さな命が一生懸命生きる姿に触れながら仕事できるので、日々やりがいを感じられるでしょう。

社会に貢献できる
獣医師は、動物の治療を通じて社会に貢献できる仕事です。

畜産の健康管理や食品の衛生検査を通じて、人々の食の安全を守ることができます。また動物用医薬品の開発は多くの動物を救うことができるので、動物はもちろん動物にかかわる人々の生活を救うことにもつながります。

獣医師の仕事の流れ

獣医師の仕事の流れは、勤務先によって異なります。公務員獣医師や製薬会社に所属して働く獣医は、基本的に勤務先と同じ勤務時間・休日になります。動物園や水族館は土日も営業しているので休日はシフト制になりますが、夜間は営業していないので日中の勤務になることが大半です。

検疫所や保健所はシフト制になっていることが多く、動物病院は朝早くから夜遅くまで勤務することもあります。人間の医師と同様に、急患があれば休日出勤が発生する可能性もあるでしょう。

例として、動物病院の一日のスケジュールは下記のようになっています。

8:30・出勤
・病気で入院している動物やホテルで預かっている動物の様子を確認(食欲や排泄の有無)
8:45院内の清掃や診察準備
9:00・ミーティング(予約内容の確認や預かっている動物の状態を共有する)
・預かっている動物のお世話 (検査・投薬・注射・朝ごはん)
・診察
・トリミング
12:00・昼食
・手術や検査
・獣医師と看護師のミーティング、会議、セミナー
16:00・午後の診察開始(診察やトリミング)
・預かっている動物のお世話
19:00・診察終了
・清掃
・カルテの整理、翌日の手術準備
・退勤

獣医師の年収

厚生労働省の職業情報提供サイトによると、獣医師の平均年収は約687万円です。初任給は27万円前後ですが、勤務先によって違いがあります。小動物臨床獣医師の場合は23万円前後、公務員(行政)獣医師は18万円前後、競走馬の獣医師となると26万円前後です。

獣医師の年収は、年齢を重ね経歴も長くなるほど上がっていく傾向にあります。勤務先にもよりますが、ボーナスも年数に応じて上がっていくことが大半です。

もっとも、勤務先によっても収入は変わります。動物病院に勤めている場合は年齢や勤続年数によって収入が変化しますが、自営業として独立した場合は努力次第で年収1000万円になる可能性もあります。公務員の場合は自治体の定める給与体系によって決まり、会社勤務の場合は専門職として一般社員より少し高めに設定されていることもあるようです。

獣医師に必要な資質と能力

獣医師になるには、下記のような資質や能力が必要とされます。

獣医師になるのに必要な資質と能力として、以下の6つを紹介します。

  • 動物を好きな気持ち
  • 洞察力・判断力
  • コミュニケーション力
  • 勤勉さ
  • 緻密さ
  • 体力

動物を好きな気持ち

動物の命にかかわる仕事なので、動物が好きであることが第一条件です。動物の命を守るためには、体の仕組みや行動の理解に務める必要があります。動物に興味がある人であれば続けられるでしょう。

洞察力・判断力

動物は言葉が通じないので、人間に比べてどこが痛いのかがわかりにくいです。動物の些細な表情や鳴き声の違いなど、自力で情報を集める洞察力が求められるでしょう。そこから的確に判断し、治療にあたる判断力も必要です。

コミュニケーション力

獣医は飼い主や家畜農家など、動物を飼育している人たちとコミュニケーションをとる機会も多い仕事です。動物の命を守るためには症状や適切な処置の仕方を正しく伝える必要があり、場合によっては動物を家族のように大切に思っている飼い主や家畜農家がショックを受けないよう、繊細に伝える必要もあります。

勤勉さ

医療現場は常に発展し続けているので、獣医も動物の治療のために常に勉強し続けなければなりません。休日を使って学会やセミナーに参加し、スキルアップに励むことが大切です。

緻密さ

動物の命を守る現場でも衛生検査でも、ほんの少しのミスが感染症を国内に持ち込むことに繋がるなど命取りになることもあります。獣医になるにはすべての現場において少しのミスも許されない、緻密さが必要になります。

体力

動物の治療や健康管理は、常に体力勝負です。動物病院ではすべての動物が人間のようにおとなしく治療を受けてくれるわけではありませんし、容態が急変したり急患が入ったりすれば休日出勤も余儀なくされます。大型動物を相手にする仕事では、深夜早朝の難産に立ち会うこともあります。しかしそれでも的確な判断ができるよう、ハードな勤務に耐える体力が必要です。

獣医師になるための方法と必要な免許

獣医師になるためのルートは、以下のとおりです。

獣医師になるまでのステップ

参考:獣医師 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)) (mhlw.go.jp)

獣医師になるには、獣医学科のある大学で獣医学教育を6年受け、獣医師国家試験に合格する必要があります。試験に合格後は、各機関で研修を受けます。犬や猫などの小動物を扱う獣医師は動物病院、牛や馬、豚などの産業動物を扱う獣医師は農業共済団体などの家畜診療所で研修を受けるのが一般的です。

獣医学科のある大学や獣医になるために必要な資格について詳しく解説します。

獣医師の世界の現状

ペットブームの影響で、動物病院に勤務する獣医師への需要は高まってきました。今後ペットを飼う人は減少すると予想されてはいますが、既にペットを飼っている人はより高度な医療を求める傾向にあり、獣医のスキルアップが期待されています。

食の安全性も注目されている今、より厳密な衛生検査が求められ、農林水産省や地方自治体で働く公務員獣医師の需要も高まっています。ペットへの高度医療が求められることに伴い、動物用医薬品の開発やバイオテクノロジーの開発も進められ、獣医師の活躍の幅は今後も広がっていくでしょう。

獣医師になるための勉強ができる大学・学部

獣医師になるためには、獣医学科のある大学に進学する必要があります。

日本で獣医学科のある大学は下記の16大学のみです。動物病院の獣医師になりたい場合は獣医学部、家畜や競走馬の獣医師になりたい場合は農学部など、獣医としてどんな仕事に携わりたいか、将来をイメージしたうえで進学する大学や学部を選ぶと良いでしょう。

都道府県大学名学部・学科
北海道帯広畜産大学(国立)畜産学部 共同獣医学課程
青森県北里大学(私立)獣医学部 獣医学科
岩手県岩手大学(国立)農学部 共同獣医学科
東京都東京大学(国立)農学部 獣医学科
神奈川県日本大学(私立)生物資源科学部 獣医学科
大阪府大阪府立大学(公立)生命環境科学域 獣医学類
岐阜県岐阜大学(国立)応用生物科学部 共同獣医学科
山口県山口大学(国立)共同獣医学部 獣医学科
鳥取県鳥取大学(国立)農学部 共同獣医学科
宮崎県宮崎大学(国立)農学部 獣医学科
鹿児島県鹿児島大学(国立)共同獣医学部 獣医学科

獣医師を目指せる大学にかかる費用

獣医師を目指せる大学にかかる費用の目安は、以下のとおりです。

 初年度納入額6年間の総額
国公立大学¥817,800¥3,496,800
私立大学¥2,500,000¥14,000,000

上記費用はあくまで目安です。志望する大学にかかる費用は、各大学のホームページにて確認してください。

獣医師に必要な資格や受験すべき試験

獣医師になるには、獣医師国家試験に合格し、国家資格である「獣医師免許」を取得する必要があります。獣医師国家試験は農林水産省が実施している試験で、年に1回のみおこなわれており、合格率は80%程度といわれています。

獣医師国家試験の受験資格は、獣医学科のある大学で6年間獣医学を学んだ人に与えられます。獣医学科のある大学への入学は狭き門ですが、6年間大学のカリキュラムを経験すれば合格できる可能性は高いでしょう。

獣医師に必要な資格や受験すべき試験

獣医師になるには、獣医師国家試験に合格する必要があります。獣医師国家試験は農林水産省が実施している試験で、年に1回のみおこなわれます。

獣医師国家試験の合格率は80%程度といわれています。獣医学科のある大学への入学は狭き門ですが、6年間大学のカリキュラムを経験すれば合格できる可能性は高いでしょう。

獣医師になるために目指すべき就職先

獣医として勤務できる就職先は、前述したように専門分野によって異なります。

小動物を扱う小動物臨床獣医師は動物病院、大型動物を扱う産業動物臨床獣医師は動物園や水族館、畜産農家などへの就職することになるでしょう。製薬会社や食品会社に入社して、専門職として研究や開発にあたることもできます。

獣医師は国家資格なので、公務員として農林水産省や地方自治体に就職し、衛生管理をおこなうことも可能です。ほかにもペットショップや地域の家畜診療所など、就職の選択肢は豊富といえるでしょう。

獣医師になった後のキャリアプラン

動物病院に勤務した獣医は、長く勤務して経験を積めば所属する動物病院の院長になれる可能性があります。

公務員として海外からの食品に対する防疫対策に携わった経験をもとに、日本の輸出入に関連する業務や海外での国際機関で活躍していく獣医もいます。

また、厚生労働省の調査によると獣医の働き方として「自営・フリーランス」がもっとも多い傾向にあり、現場での経験を経て開業したりフリーランスで活動するという道もあります。

獣医師を「JOB-BIKI」で検索しよう

獣医師の仕事は動物の命を預かる仕事で、ペットの診療だけでなく人々の生活を守ることにもつながる幅広い仕事です。動物の命に触れる感動や、社会に貢献できるやりがいを感じられ、特に動物が好きという人に向いている仕事といえるでしょう。

獣医になるためには獣医学科のある大学に進学する必要があるので、今回の記事で紹介した大学を「JOB-BIKI」で検索してみてください。学科の詳細や大学の特徴などを知ることができますよ。また「人物検索」で「獣医」と検索すると、役職に就いた獣医師の実績や出身大学がわかります。ぜひ大学を選ぶときに活用してみてくださいね。

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