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弁護士の年収と月収は?年齢や勤務形態での違い、就職率が高い大学を紹介

2023.08.02

カテゴリー:
相談に乗る弁護士

弁護士に憧れのある高校生の皆さんの中には、弁護士の年収を知りたい人もいるのではないでしょうか。高収入というイメージがあるものの、正確な金額が気になるところです。
そこで本記事では、弁護士の年収や月収をはじめ、年齢別の年収、勤務形態別の年収などについて紹介します。弁護士を多く輩出する大学についても紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。

弁護士の平均年収・月収は?

弁護士バッジとお金

 
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、弁護士の平均年収は約971万円、月給は約57万円、ボーナスは約293万円となっています。また、国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、民間の平均給与が443万円であることから、弁護士は高収入な職業といえます。

弁護士のボーナス

弁護士のボーナスは、所属する法律事務所によって異なります。
「完全歩合制」の法律事務所では、ボーナスがないことがほとんどです。一方、年俸制の法律事務所では、従来ボーナスが支給されないことがほとんどでしたが、最近は年俸+成果に応じた業績連動賞与のケースも増えています。
多くの案件の獲得や、処理を引き受けた案件の和解や勝訴による成功の程度に応じ、得られる報酬も増えていくシステムです。

弁護士の年収は減少傾向

弁護士の年収は高いものの、年数を経るごとに少しずつ減少しています。日本弁護士連合会の「近年の弁護士の実勢について」によると、平均所得は2006年に1,748万円ですが、2018年には959万円に減少しています(所得とは、収入から必要経費を引いた額のこと)。

出典:日本弁護士連合会「近年の弁護士の実勢について

年収が減少している理由は、「弁護士数の増加」と「訴訟件数の減少」です。弁護士の数が増えている一方で、訴訟の件数が減少することで、ライバルが増えて仕事が減ってしまうケースが出てきています。
つまり、人気のある弁護士は高い年収を期待できますが、場合によっては平均年収よりも下回ってしまうこともあるのです。そのため、十分な経験を積んで、依頼者に寄り添う姿勢が重要になるでしょう。

弁護士の経験年数別の平均年収

弁護士は、経験年数によっても年収に大きな違いがあります。
日本弁護士連合会の「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査2020」によると、経験年数ごとの平均収入は下記のとおりです。

■経験年数別・弁護士の年収

経験年数平均値中央値
1~3年目519万円461万円
4~8年目860万円550万円
9~13年目955万円799万円
14~18年目1,514万円1,000万円
19~23年目1,622万円1,101万円
24~28年目1,519万円1,043万円
29~33年目1,863万円910万円
34~38年目2,122万円950万円
39~43年目1,299万円1,000万円

参考:日本弁護士連合会「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査2020

中央値とは、データを大きい順に並べたときに中央に来る値のことです。上記の表の中央値を見ると、19~23年目までは年収が増え続けていますが、それ以降は下降していく傾向があります。

弁護士の勤務形態別の平均年収

オンライン法律相談を受ける若い弁護士

弁護士として働く場合には、「法律事務所に勤務する(勤務弁護士)」「独立して事務所を設立する(開業弁護士)」「企業で弁護士として働く(企業内弁護士)」の3パターンがあります。それぞれの平均年収を確認しましょう。

勤務弁護士

法律事務所に勤務する勤務弁護士の年収は、「アソシエイト弁護士」か「パートナー弁護士」かによって大きく異なります。

アソシエイト弁護士とは、弁護士事務所に入所して10年以内の弁護士のこと。基本的には、事務所の代表や先輩弁護士の部下として働きます。弁護士としての経験が少ないうちは先輩といっしょに案件の対応をしますが、少しずつ自分の案件を任せてもらえるでしょう。経験や裁量が少ないところからスタートのため、年収は約500万~1,000万円と開きがあります。
一方、パートナー弁護士は、代表弁護士のパートナーとなる弁護士のことで、事務所の経営や採用活動などにも関わります。事務所の重要な業務を担当することから、年収は約800万~5,000万円と高額です。

なお、事務所の規模によっても年収は異なります。大手事務所の場合には、アソシエイト弁護士でも初年度から年収1,000万円を超えることも!そのため、年収を重視する場合には、事務所の規模も重要です。

開業弁護士

開業弁護士の平均年収は1,000万円以上となります。開業弁護士は、どれだけ案件を受注し、成果を上げたかによって年収が大きく左右されます。そのため、年収は独立したばかりだと300万円程度になることもありますが、数千万円~1億円まで上げていくことも不可能ではありません。経営を安定させることへのプレッシャーはありますが、成果を上げて年収を増やせたときには、大きなやりがいを感じられるでしょう。

ただし年収を増やそうと案件を受注しすぎると、深夜や土日まで無制限に仕事をすることにつながりかねないので、仕事量と健康管理のバランスには気をつけたいところです。

企業内弁護士

企業内弁護士(インハウスローヤー)の年収は、約750万円~1,250万円です。企業内弁護士とは、企業に就職し、社内の法務やコンプライアンス強化を担当する弁護士のことです。企業の社員として働くことから、収入は安定しています。
また、就業規則によって勤務時間が決まっているので、ワークライフバランスがとりやすくなるでしょう。

弁護士の男女別の平均年収

続いては、弁護士の男性・女性の平均年収をそれぞれ紹介します。厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、男性弁護士の平均年収は約970万円で、女性弁護士は約879万円です。いずれも高収入ではありますが、女性弁護士の平均年収のほうが低くなっています。

弁護士の仕事に就く方法

法廷に立つ弁護士

 
弁護士になるためには、法科大学院の修了(もしくは予備試験の合格)、司法試験の合格、司法修習での学習の、3つのステップが必要です。ここでは、各ステップについて詳しく見ていきましょう。

1. 法科⼤学院を修了するか、予備試験に合格する

司法試験を受けるためには、法科大学院を卒業する必要があります。法科大学院はロースクールとも呼ばれ、法曹(弁護士、裁判官、検察官)に必要な知識を培うことが目的の専門職大学院です。少人数制での教育で、実務研修や体験学習などで知識を身に付けます。
法科大学院には下記の2つのコースがあり、修了年数や入試科目に違いがあります。

■法科大学院のコース

コース修了年数特徴入試科目
法学未修者コース3年法律学を基礎から学習できる。入学前に法律を学んでいたかは問わない。小論文、面接(法律の知識は問われない)
法学既修者コース2年法律の基本科目を修得済みの人が対象だが、法学部を卒業していなくても試験に受かれば選択可能。法律基本7科目(憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法)

法科大学院の修了とは別に、「予備試験」に合格することでも司法試験の受験が可能です。予備試験は、最終学歴や年齢に関係なく受験できます。また、受験回数に制限がないため、何度でも挑戦できます。しかし、合格率は3~4%と狭き門となるため、相当の勉強をする必要があるでしょう。

2. 司法試験に合格する

弁護士になるには、司法試験の合格が必須です。司法試験は、国家試験の中でも難関といわれる試験のひとつです。2022年の合格率は、45.5%でした。
数字で見ると合格率が高そうに思えるかもしれませんね。しかし、司法試験を受験するには、法科大学院を修了した人または予備試験に合格した人のみ。つまり、司法試験に向けて、時間とコストをかけて勉強してきた人のうち合格できるのが約半数なのです。そのため、非常にハードルが高く、難度が高いことがわかるでしょう。

司法試験は、最初に受験した年から5年間で5回までと、受験回数に制限があります。もし、5回とも不合格になった場合には、もう一度法科大学院に入り直すか、予備試験に合格することで、再度、司法試験の受験資格を得られます。

3. 1年間の研修(司法修習)を受ける

司法試験に合格したら、すぐに弁護士の仕事に就けるというわけではありません。合格後は1年間、司法修習という研修を受ける必要があります。司法修習では、下記のように「集合修習」と「実務修習」を実施します。

<司法修習の内容>
・集合修習:クラスごとに民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の5科目を学ぶ
・実務演習:司法修習生が各地の地方裁判所で、法曹実務家から実務を学び体験する

司法修習の最後には試験が実施され、これに合格することで、弁護士や裁判官、検察官になる資格を得られるのです。

「弁護士になる方法をもっと知りたい」という人は、下記のコラムをぜひ読んでみてください。
弁護士になるには?司法試験を受けるまでの道のりやキャリアプラン

弁護士の就職実績が高い大学

弁護士輩出率が高い中央大学

 
卒業生が弁護士として就職した実績が多い大学を確認しましょう。ここでは、東京大学、早稲田大学、京都大学、慶應義塾大学、中央大学の5大学を紹介します。

東京大学(東京都文京区)

東京大学は1877年の創設時に法学部を設置し、以来、法学部は日本の法学・政治学研究の中心として機能しています。法学部の卒業生は6万人を超え、司法・行政・立法といった各界で活躍しています。
東京大学では、すべての学生が最初の2年間「教養学部」に所属し、それから各学部に分かれることになっています。法学部には3つのコースがあり、学生の希望に応じて第1類「法学総合コース」、第2類「法律プロフェッション・コース」、第3類「政治コース」のいずれかに所属します。

慶應義塾大学(東京都港区)

慶應義塾大学の法学部法律学科では、1年次から法律学の専門科目が学べます。入学後は初期導入科目から学び、段階的に専門性の高い科目までを学習していく仕組みです。必修科目はあるものの、興味のある科目を自由に履修できるのが特徴です。
また、法律の専門家として「スペシャリスト」になるだけでなく、広い視野を持つ「ジェネラリスト」としての素養を身に付けることも目指しています。

京都大学(京都府京都市)

京都大学法学部は、法律学と政治学を網羅的に学べる学部です。一番の特徴は、「法律学科」「政治学科」といった学科がないこと。これは、学生が関心のある科目を自由に履修し、自分の進む方向性をみずから決めていくという方針によるものです。
1年次は語学や一般教養科目が中心ですが、法学の科目も受講可能。2年次からは本格的に専門科目の勉強がスタートします。また、3年次からのゼミは必修ではありませんが、ほとんどの学生が受講。少人数で教員と学生同士の議論やプレゼンテーションなどが行えるため、充実した学習が可能です。

中央大学(東京都文京区)

中央大学法学部は、前身の「英吉利(イギリス)法律学校」から130年以上の歴史と伝統を持つ学部です。2023年春に東京都文京区に法学部の新キャンパスができたことでも、注目を集めています。
法学部では教授による授業のほかに、現役で活躍する弁護士や裁判官、検察官が登壇する授業も展開。現場の経験から指導を受けられるため、さまざまな気づきを得られるでしょう。
学内には「炎の塔」と呼ばれる、司法試験などの各試験合格を目指す学習施設があります。炎の塔に入るには入室試験がありますが、合格すると自習室にある専用の机が使えるように!司法試験に関する講座もあり、弁護士育成の手厚いサポートが受けられます。

早稲田大学(東京都新宿区)

早稲田大学法学部では、国際社会でも活躍するリーガル・マインドを持った人材育成を目標にしています。そのため、法律科目だけでなく、語学教育にもチカラを入れていることが特徴のひとつです。
入学後の学生がスムーズに法律の分野に取り組めるよう、1年次に「導入教育」を実施。法の基礎理念などを学ぶ「導入講義」と、演習を行う「導入演習」があり、法を学ぶための基礎を身に付けます。また、少人数教育も充実しており、1年次の「導入演習」、2年次以降の「法学演習(ゼミ)」などを実施しています。

弁護士のキャリアアップの方法

独立して事務所を経営する弁護士

 
比較的高年収の弁護士ですが、さらに年収を増やすにはキャリアアップが必要です。では、どのようなキャリアアップの方法があるのでしょうか。ここでは、弁護士のキャリアアップの方法を4つ紹介します。

パートナー弁護士になる

法律事務所に所属する勤務弁護士の場合には、アソシエイト弁護士からパートナー弁護士になることでキャリアアップが可能です。しかし、パートナー弁護士になるまでの期間は、法律事務所の規模によって大きく異なります。
大手法律事務所の場合には、少なくとも10年程かかることがほとんどです。アソシエイトからシニアアソシエイト、ジュニアパートナーなど少しずつ昇格し、最後にパートナーに昇格できます。一方、中小法律事務所の場合には、5年が目安です。

独立開業

法律事務所で経験を積んでから、独立開業を目指す人も多くいます。独立するタイミングは、弁護士となってから5~10年以上のケースが多いようです。
しかし、開業したいと思ってもすぐにできるものではありません。事務所を経営していくことになるため、下記のような準備が必要です。

<開業のために必要な準備>
・開業資金の準備
・事務所の賃貸契約
・事務所の経営方針の決定
・取り扱う分野の決定
・独立後の集客方法の検討

所属する法律事務所によっては、独立を支援してくれる場合もあります。開業を目指している人は、法律事務所の就職時に独立支援があるかを確認するといいでしょう。開業した場合は平均年収1,000万円以上、場合によっては数億円になることもあります。

他弁護士事務所への転職

一般企業と同じように、大手法律事務所などに転職することでキャリアアップにつながることがあります。特に、大手法律事務所に転職し、大きい案件を担当できれば、年収アップが期待できます。しかし、弁護士は実力主義のため、必ずしも担当案件が成功するとは限りません。そのため、転職前に多くの経験をして、知識やスキルを身に付けることが重要です。

法律事務所は一般企業と違い、転職に年齢制限が設けられることはほとんどありません。「30歳までに転職しなければ!」ということがないので、転職するときは焦らずじっくり転職先を検討できるでしょう。

企業内弁護士への転職

企業内弁護士への転職もステップアップのひとつです。実は、企業内弁護士の数は、年々増え続けており、日本組織内弁護士協会の調査によると2022年には約3,000人となっています。
これは「コンプライアンス(法令遵守)に対する重要度の増加」「グローバル化の進展」などの理由から、企業が積極的に企業内弁護士を採用しているためです。

企業内弁護士は、特に総合商社やIT・インターネット、銀行・証券、保険、メーカーといった業界で多く採用されています。
企業内弁護士の求人は都市部に集中しているため、地方で企業内弁護士を目指す場合は就職先を探すことが難しくなるかもしれません。
平均年収は企業の給与体系に沿うため、パートナー弁護士などよりは下がるものの、平均年収1,000万円以上を安定的に得られるのは大きなメリットといえます。

法律学を学べる大学で弁護士への一歩を踏み出そう

仕事をする弁護士

 
弁護士の年収はほかに比べて非常に高く、ステップアップの方法もさまざまあります。弁護士になるまでには乗り越えるべきことはたくさんありますが、まずは法律学を学べる大学への進学で最初の一歩を踏み出すことが大切です。

そこで、弁護士を目指す場合には、「JOB-BIKI」で法学部がある大学を検索してみましょう。また、著名な弁護士や弁護士事務所から、出身大学を確認することもできます。ぜひ参考にしてみてくださいね。

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