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移植コーディネーターになるには?必要な資格・能力などを紹介

2023.08.22

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「移植コーディネーター」という仕事を知っていますか。臓器移植をする際、臓器を提供したい人と、臓器を移植してほしい人とをつなぐことが仕事です。臓器移植は、臓器提供者や家族に寄り添い、しっかりと意思確認をしたうえでおこなわれます。医療機関の人との連携も必要とされるため、協調性やコミュニケーション能力も欠かせません。

この記事では、移植コーディネーターについて、仕事内容やなり方について解説していきます。選ぶべき大学の学部や、資格などもご紹介しているので、移植コーディネーターに興味がある人はぜひ参考にしてみてください。

移植コーディネーターとは?

移植コーディネーターとは、臓器移植を必要とする人と臓器を提供する人をつなぐ役割の人です。
臓器提供者の家族への説明や、適切に臓器が取り扱われるように病院と連携をします。
また、臓器提供後のドナー家族へのアフターフォローも仕事のひとつです。

なお、移植コーディネーターの多くが所属する日本臓器移植ネットワークは、日本で唯一臓器提供のあっせんをおこなっている団体。
日本臓器移植ネットワークの場合は、社内で業務するメンバーと、病院など現地に赴いて業務をするメンバーのチーム体制でおこないます。

なお、移植コーディネーターのなかでも、臓器提供者やその家族側のサポートをし、説明や意思確認をおこなう人をドナーコーディネーターといいます。
移植コーディネーターといわれる場合の多くは、このドナーコーディネーターのことです。

移植コーディネーターと治験コーディネーターの違い

臓器提供者に説明をおこなう移植コーディネーター

移植コーディネーターと似た職業に、治験コーディネーターというものがあります。
それぞれの違いを解説するので、参考にしてみてください。

【移植コーディネーター】
臓器移植に関するコーディネーターのことです。
臓器提供者と、臓器を必要とする人の橋渡し役を担います。
移植コーディネーターになるには、日本臓器移植ネットワークの採用試験に合格することが必要です。

【治験コーディネーター】
治験とは、開発された医薬品などが人の体に害なく、効果が得られるかを確認するために、人に使用して試験すること。
治験コーディネーターとは、治験がスムーズに進むようサポートするコーディネーターで、移植コーディネーターの治験版のような仕事です。

治験コーディネーターは、スケジュール調整をしたり、治験参加者をサポートしたりし、治験参加者と医療機関・製薬会社の橋渡し役を担います。
治験は正しい服薬が必要なので、治験参加者へのわかりやすい説明をすることなども重要です。

治験コーディネーターになるには、治験施設の支援機関に所属するか、医療機関に専門職として就職し、院内コーディネーターを兼務することが必要となります。

治験コーディネーターについて、詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
治験コーディネーター(CRC)になるにはどうすればいい?仕事内容や求められるもの

移植コーディネーターとレシピエンドコーディネーターの違い

移植コーディネーターとよく似た仕事には、レシピエントコーディネーターというものもあります。
それぞれの違いは、臓器を提供する人を主に担当するか、臓器移植を受ける人を主に担当するかです。
詳しい違いを説明していきます。

【移植コーディネーター】
移植するための臓器を提供する人やその家族に寄り添い、臓器移植までのサポートや、移植を受ける人との橋渡し役をします。

【レシピエントコーディネーター】
臓器移植を受ける人のことをレシピエントといい、レシピエントやその家族に寄り添い、臓器を移植してもらうことの意思決定や、臓器を受け取る際の連絡調整などをおこないます。
臓器移植に際して、レシピエントだけでなく、家族も納得・理解したうえでおこなえるように説明・支援することも重要な仕事です。
臓器移植後には、レシピエントや家族のアフターケアもおこないます。

移植コーディネーターの仕事内容

移植コーディネーターは、移植希望者が現れると、まず10名ほどでチームを組んで役割分担します。
役割は臓器提供者と臓器を受ける人との橋渡しや、病院との連携などです。

臓器移植ネットワークによると、社内担当チームは、ルールに則って臓器提供をおこなう相手を選定。
社外担当チームは、臓器を提供することについて説明を受けたい家族のところへ向かい、提供の意思が確認できたら病院スタッフと連携して、臓器提供者に適切な対応がなされるようにします。

また、臓器移植が終わったあとに臓器提供者の家族の気持ちのケアをするのも、移植コーディネーターの役目です。
手術後の臓器提供者の体を清めたり、見送りまで立ち会ったりすることも。
臓器提供者の家族から依頼があった場合は、臓器提供者の通夜や告別式に参列することもあります。

移植コーディネーターの仕事のやりがい

移植コーディネーターのやりがいは、人の命と命をつなぐ役割であることです。
その移植をおこなったことで、助かる命があります。
また、臓器提供者の家族にとって、臓器提供した相手が元気になることが心の支えになることもあり、重要な仕事です。

また、臓器移植を進めるにあたって、多様な人と関わります。
多くの人と連携し、チームで最後まで成し遂げたときの達成感も、やりがいのひとつです。

移植コーディネーターの仕事の流れ

連絡を受けて医師に会う移植コーディネーター

臓器提供希望者の連絡がきたら、チームで連携して移植までの準備を進めていきます。
ここでは、移植コーディネーターの具体的な仕事の流れを見ていきましょう。
臓器移植後のアフターフォローや、臓器移植がないときの仕事についても説明していきます。

臓器提供希望の連絡を受ける

病院などの医療機関から、臓器提供をしたい人がいる旨の連絡がくると、臓器を提供したいと考えている人の家族から話を伺いに行きます。
臓器は生きているときだけでなく、死後提供の場合も。
患者が亡くなっている場合は、医師から連絡を受け容態を確認し、移植可能であれば病院に向かい家族へ説明します。
心臓の提供希望の場合、心停止後すぐに移植準備を始める必要があるため、心停止より前に提供の承諾を得て、準備を始めることが必要です。

いずれの場合も、必ず家族に説明をしに行き、本当に臓器移植をしたいかの意思確認をしたうえで承諾をもらいます。
臓器移植をするとなった際に、途中でためらう家族もいるためです。
承諾をもらうと、臓器提供の承諾書を作成し、今後の臓器移植の計画を立案、臓器の検査手配などをします。

医療機関などと連携し移植手術の準備をする

臓器移植を受ける人の選定や、手術室の手配なども大切な仕事のひとつです。
臓器を摘出する医師チームと連携しておこないます。

心臓などは、死後すぐに移植しないと、臓器の状態が悪化して移植できなくなる可能性があるため、臓器提供者の入院する病院に数日滞在することも。
その場合は、心停止の前の、血圧が下がってきている段階で準備に入ることが必要です。

摘出手術が終わると、手術室の掃除をしたり、臓器提供者の身を清めたりし、臓器提供者の体が家族のもとへ戻るのを見送ります。
臓器を摘出したあと、移植するため臓器が運ばれていくのを、家族と共に見送る場合もあり、家族の心情に寄り添った動きが必要です。

臓器提供者家族のアフターフォローをする

臓器移植手術が終わると、臓器提供者の家族のメンタルケアをおこないます。
家族に寄り添うことが大切です。

また、移植手術の経過を家族に報告し、状況に応じて、臓器提供者の通夜や告別式に参列することもあります。
臓器提供者の家族に感謝状や、移植に関する報告書を送付する場合もあります。

臓器移植についての啓発活動をおこなう

臓器移植の業務がない場合は、医療機関の勉強会用の資料や、会議資料を作成します。
ドナーカードの配布や、講演会などをとおしての啓発活動も重要な仕事です。
また、夜中に緊急連絡がくる可能性もあるため、常に動けるよう準備も欠かせません。

移植コーディネーターの年収

採用が不定期なことや、あまり人数自体もいないため、平均年収は定かではありません。
ただし、日本臓器移植ネットワークの採用ページによると、正社員採用で年収400万~560万円が目安です。
採用時は一般職として採用され、研修に合格したら移植コーディネーターになれます。

移植コーディネーターに必要な資質と能力

病院に向かう移植コーディネーター

移植コーディネーターには、さまざまな資質や能力が必要です。
とくに、移植をする人やその家族に寄り添うことが求められます。
また、体力がないと、さまざまなシチュエーションに対応するのが大変です。

人の気持ちに寄り添い支える力

家族によって、臓器移植前後の心境は多種多様です。
複雑な心境の人もいるので、寄り添い、支えることが何よりも大切。
最後に見送るときに笑顔で見送る人もいれば、その場で泣き崩れる人もいます。

家族の心情の機微を察し、臓器提供者や家族が何を欲しているのかを考えることが必要です。

さまざまな人と協力するためのコミュニケーション能力

臓器移植コーディネーターは、基本的にチームで動きます。
医療機関とスケジュール調整をしたり、臓器提供者の家族にわかりやすく説明をしたりする必要もあるため、コミュニケーション能力は必須です。

コミュニケーションを重ねることで、信頼へとつながっていきます。
そのため、コミュニケーション能力が高ければ、スムーズな仕事がしやすいといえるでしょう。

体力がある人

昼夜問わず連絡がくる可能性があるため、健康管理も大切です。
状況によっては、病院に泊まり込みになることも。

さまざまなシチュエーションに対応できるタフさがあれば、泊まり込みの仕事にも対応しやすくなります。
いつ連絡がきてもいいように、心身ともに準備しておくことも重要です。

移植コーディネーターになるための方法とは?

レントゲン写真を見て学ぶ女性

移植コーディネーターは、日本では珍しい仕事です。
常時募集しているわけではないことは、把握しておきましょう。

また、移植コーディネーターになるには、条件によって医療系の資格が必須の場合があります。
ただし、必須でない場合でも、医療にかかわることなので、医療系の学問は学んでおいたほうがよいでしょう。

移植コーディネーターの世界の現状

日本では、移植コーディネーターの募集自体がかなり不定期です。
採用数も年に数人と、多くはありません。

また、県によっては県の職員が移植コーディネーターをしている場合もあります。
さらに、県が人を指定し、通常は医療機関で勤務して、必要なときに移植コーディネーターとして働くケースも。

日本と比べると、世界は移植が一般的な医療のひとつとして多くおこなわれています。
日本の移植件数が少ないのは、日本の移植はガイドラインが厳しく、脳死も移植をするとき以外は人の死と判定されないためです。
世界のように一般的な医療のひとつになっているとはあまりいえません。

移植コーディネーターに必要な資格や受験すべき試験

<移植コーディネーターを目指すうえで有効な資格>
・看護師
・臨床検査技師
・臨床工学技士
・診療放射線技師
・救急救命士
・薬剤師
・理学療法士
・作業療法士
・社会福祉士
・公認心理師

学生のうちから移植コーディネーターを目指す場合は、大学で学ぶのがオススメです。
移植コーディネーターの採用条件は、医療従事者の国家資格保有者か、同等の知識を有すると認められる人となっています。

大学では、国家資格の取得を目指しながら専門知識を学べます。

また、看護師などから移植コーディネーターに転職した人も。
国家資格を取得しておけば、先に医療従事者としての経験を積むという選択肢も得られ、進路の幅が広がります。

移植コーディネーターになるための勉強ができる大学・学部

移植コーディネーターは、大学を卒業しているか、看護師、臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師、救急救命士、薬剤師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、公認心理師などの医療や福祉従事者の国家資格を保有していることが採用条件です。
そのため、看護学や医療技術学など、国家資格を取得出来て医療福祉系のことを学べる大学を選ぶのがオススメ。
ここでは、医療福祉系の資格取得を目指せる大学の学部・学科をご紹介します。

<看護師を目指せる学部・学科>
・山形大学(医学部・看護学科)/山形
・同志社女子大学(看護学部・看護学科)/京都
・広島国際大学(看護学部・看護学科)/広島

<臨床検査技師・臨床工学技士を目指せる学部・学科>
・新潟医療福祉大学(医療技術学部・臨床技術学科)/新潟
・東京工科大学(医療保健学部・臨床工学科・臨床検査学科)/東京
・広島国際大学(保健医療学部・医療技術学科)/広島

<診療放射線技師を目指せる学部・学科>
・北海道大学(医学部・保健学科・放射線技術科学専攻)/北海道
・杏林大学(保健学部・診療放射線技術学科)/東京
・森ノ宮医療大学(医療技術学部・診療放射線学科)/大阪

<救急救命士を目指せる学部・学科>
・新潟医療福祉大学(医療技術学部・救急救命学科)/新潟
・国士舘大学(体育学部・スポーツ医科学科)/東京
・倉敷芸術科学大学(生命科学部・健康科学科・救急救命士コース)/岡山

<薬剤師を目指せる学部・学科>
・東京薬科大学(薬学部・医療薬学科)/東京
・城西大学(薬学部・薬学科)/埼玉
・岡山大学(薬学部・薬学科)/岡山

<理学療法士・作業療法士を目指せる学部・学科>
・東京家政大学(健康科学部・リハビリテーション学科・作業療法学専攻)/東京
・城西国際大学(福祉総合学部・理学療法学科)/千葉
・県立広島大学(保健福祉学部・保健福祉学科・理学療法学コース)/広島

<社会福祉士を目指せる学部・学科>
・立正大学(社会福祉学部・社会福祉学科)/埼玉
・茨城キリスト教大学(生活科学部・心理福祉学科)/茨城
・中京大学(現代社会学部・現代社会学科・社会福祉学専攻)/愛知

<公認心理士を目指せる学部・学科>
・神奈川大学(人間科学部人間科学科)/神奈川

移植コーディネーターになるために目指すべき就職先

移植コーディネーターを目指せる就職先に「日本臓器移植ネットワーク」があります。

日本臓器移植ネットワークは、現在日本で唯一臓器提供の橋渡しをおこなう機関です。
臓器提供したい家族がいた場合の連絡は、日本臓器移植ネットワークにくることが少なくありません。

ただし、県によっては、県の職員が移植コーディネーターをしている場合もあります。

移植コーディネーターになった後のキャリアプラン

移植コーディネーターは、経験を積むにつれてC級コーディネーター、B級コーディネーター、A級コーディネーター、S級コーディネーターの順に昇格していきます。
S級コーディネーターになるには、7~10年が目安です。
また、A級コーディネーターのあと、副グループ長に昇進する道もあります。

移植コーディネーターへの道を「逆引き大学辞典」で検索しよう

移植コーディネーターは日本で珍しい仕事ですが、人の命と命をつなぐ大切な役割を持っています。
臓器提供者や家族に寄り添うことや、医療チームなどとの連携も必要とされる仕事です。

移植コーディネーターを目指すには、まず4年制大学を目指しましょう。
とくに、臓器移植に関わる医療系の学部がオススメです。
興味がある人は、まず医療系学部がある大学を検索してみてください。

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