逆引き大学辞典逆引き大学辞典

化学とは?応用化学との違いや化学が学べる大学・学部、主な就職先についても紹介

2023.10.24

カテゴリー:

高校生のみなさんの中には「自分は理系だけど、どんな進路に進もうかな」と迷っている人もいるでしょう。「数学や理科が得意」「実験が好き」という人は、化学科系に進むのも選択肢のひとつです。本記事では、化学とは何か、学ぶメリット、大学で学べる化学の種類について解説します。化学を学べる学部や、化学の知識を活用できる職業なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

化学とは物質の構造・性質・変化を学ぶ学問のこと

化学とはあらゆる物質の構造や性質、変化について学ぶ学問です。私たちの身の回りにも化学の研究の成果は多く活用されています。たとえば、時計や携帯電話のデジタル表示や水分に反応する紙オムツの吸水性ポリマーなどが挙げられます。

ほかにも、化粧品や殺虫剤、合成洗剤や農薬など、身の回りの製品ほとんどに化学が使われています。生活の不便を解消したり、生活を豊かにしたりする「あったらいいな」を実現できるのが化学なのです。

化学が活用されている事例

私たちの身の回りの多くの物に化学は使われています。ここでは、みなさんがイメージしやすい化学が活用されている事例3つを紹介します。

・カイロ
冬に活躍するカイロは、化学反応によって温まります。ヘアピンなどの鉄が水に濡れると、徐々に錆びて赤茶色の跡がつくことがありますよね。これは鉄の「酸化」によるものです。鉄は酸化と同時に熱が発生するのですが、カイロはこの熱を有効活用した製品です。

熱を発するために必要な鉄粉のほか、鉄が錆びる速度を上げる水や塩、鉄粉に酸素を与えやすくする活性炭などが配合されています。

・入浴剤
お風呂の中に入浴剤を入れると、シュワシュワと泡が出るのも化学変化によるものです。入浴剤に含まれる炭酸水素ナトリウム(重そう)と有機酸(フマル酸やコハク酸など)は、お湯に溶かすと化学変化により、二酸化炭素(炭酸ガス)が発生します。

・化粧品
化粧水や乳液などの化粧品はさまざまな物質が配合されていますが、元となるのは水と油です。みなさんもご存じの通り水と油は混ざり合わないので、化粧品を作る第一歩として化学物質である界面活性剤を使います。

このように、いつも使っている身近で便利な製品の多くが化学の研究によるものなのです。「こんなものがあったらいいな」と思ったとき、化学の知識や技術があれば実現可能かもしれません。

化学と科学の違い

科学とは、実験や観察を通して証明された法則や知識を指します。科学の「科」は、分類されたものという意味があり、さまざまな事柄を実験や観察を通して細かく分類したものというわけです。たとえば、スポーツが対称であれば「スポーツ科学」、自然が対称であれば「自然科学」になります。化学は自然科学の中のひとつの分野で、物質の性質や物質間で起こる変化や反応について学ぶ学問です。

化学と応用化学の違い

化学科への進路を考えている人は、応用化学という言葉を聞いたことがあるかもしれません。化学と応用化学は重なる部分も多く、基礎理論を学び多くの実験を通して技術を習得することは共通しています。両者の違いは、研究テーマです。

簡単に言うと、化学は化学物質そのものの研究をし、応用化学は化学の知識を活かして新しい物質を作り出すところまで研究します。ものづくりが好きな人は、応用化学を学ぶのが良いかもしれません。

ちなみに化学科は理学部、応用化学は工学部に設置されていることが多いので、進路選びの際は参考にしてみてください。

理学物について詳しく知りたい人は以下の記事も参考にしてみてください。

理学部ではなにを学べる?主な学科の種類と卒業後の進路について – 逆引き大学辞典 (gyakubiki.net)

工学物について詳しく知りたい人は以下の記事も参考にしてみてください。

工学部とは?学部・学科の特徴や進学のメリット・デメリットを解説 – 逆引き大学辞典 (gyakubiki.net)

大学で化学を学ぶのに向いている人の特徴

化学の教師と生徒

高校の化学が比較的好きで、化学科系の学部に進もうか悩んでいる人の中には「大学の化学って難しそう…ついていけるか不安」と思う人もいるでしょう。大学の化学は高校の化学をさらに細分化して学ぶため、確かに勉強の難易度は上がります。

ただし、最初から専門的な研究を行うわけではなく、基礎的な講義から始まり段階を踏んで研究を行うため、しっかり勉強すればそれほど心配する必要はありません。「化学が好き」「もっと知りたい」という思いがあるのなら、ぜひ挑戦してみてください。

とはいえ、化学科系の学部は「こんな人に向いている」という適性はあると思います。ここでは、大学で化学を学ぶのに向いている人の特徴3つを紹介します。

実験が好き

大学の化学では化学の基礎を体系的に学びながら、化学実験の基礎技術や知識を習得していきます。頻繁に実験を行うため、実験が嫌いという人は途中でイヤになって挫折してしまう可能性が高いです。

大学のホームページで実験の様子を見られるところもあるので、確認してみて自分には合わないと思ったら、ほかの学部・学科を検討しても良いかもしれないですね。

知的好奇心が強い

知的好奇心が強い人も、化学を楽しく学べるでしょう。化学には「なぜこうなるのだろう?」と疑問を持ち、仮説を立てて検証する力が必要です。実験を繰り返し、その結果から新しいことを発見することに喜びを見いだせる人に向いているでしょう。

根気強い

化学に向いている人は、根気強さを持っている人です。化学で行う実験は失敗も多く挫折しそうになることもあります。新しい発見の多くは偶然であり、予測することは難しいものです。失敗しても無駄だと思わず「失敗の例をひとつ知れた」くらいに思える前向きな気持ちと、あきらめない根気強さが求められます。

大学で学べる化学の種類

分子のイメージ

みなさんが高校で学ぶ化学の種類と内容は、以下の通りです。

理論化学原子の構造や化学反応など
無機化学元素や無機化合物など
有機化学有機化合物の構造や分析

高校化学で扱う内容は化学の基礎の基礎で、大学では高校で学んだ内容をさらに細分化して学びます。

大学で学ぶ化学には、以下のようなものがあります。

  • 分析化学
  • 合成化学
  • 高分子化学
  • 生物化学

順番に解説します。

分析化学

分析化学は、物質の量や特性をはかるためのさまざまな方法を研究する学問です。新しい分析手法を開発し、その方法を身の回りの水、土壌、植物、食品などで応用します。簡単に言えば、物質をよく観察して、中身を知るための方法を学ぶ化学です。

分析化学では、食品の成分や薬の純度、環境中の汚染物質などを調べます。たとえば、大気中にPM2.5をはじめとする大気汚染物質がどのくらい含まれているか、水がどれだけきれいなのか、といったことです。分析化学を学ぶことで、安全な薬品や食品の製造などに役立ちます。

合成化学

合成化学では、元々存在しない物質を設計し、それを実際に作り出す方法を研究します。

たとえば、新しい薬品やプラスチック、香りのする化粧品など、私たちの生活に多くの製品が合成化学によって生み出されています。

合成化学の最終目標は、微量しかとれない天然有機化合物を早く大量に合成することです。身の回りの有機化合物としては、プラスチックや合成繊維、合成ゴム、各種薬品が挙げられます。

物理化学

物理化学は、化学現象を物理によって解明する学問です。高校の理論化学をより深く研究する分野で、物質や現象を原子・分子レベルで解明します。

物理化学の分野は大きく2つに分けられ、分子の動きやエネルギーに着目した「熱力学」と原子の出す波に着目した「量子化学」があります。熱力学が使われている身近な例としては、ガソリン車が挙げられます。エンジン(熱機関)が熱を仕事に変換し、車を動かす仕組みです。

量子力学が使われている身近な例としては、スマホやパソコン、太陽光パネルを動かす半導体が挙げられます。「量子」には謎な部分が多く、ノーベル物理学賞を受賞した人でも「誰も量子力学は理解できない」と言っているほど難解な理論です。ただ、量子力学を使った先端技術は私たちの暮らしに大きな変化をもたらすでしょう。

物理化学は化学の中でもっとも難しい分野と言われており、物理や化学が得意な人でも、理解するのはかなり難しいとされています。

生物化学

生物化学は、たんぱく質やDNAなどといった生体物質を研究する分野です。また、さまざまな微生物、植物、ヒトなどの生命現象を分析します。高校の生物ではイラストだったものを化学式や結合を使って解明する学問です。

生物化学の分野は大きく以下4つに分けられます。

分野内容
分子生物学生物の体の中を分子レベルで学ぶ
細胞生物学生物の体の中を細胞レベルで学ぶ
構造生物学生物の構造について学び、その働きを知る
システム生物学生物の現象や仕組みを数学的・工学的な視点で学ぶ

化学を学べる学部

化学は理学部の化学科で学ぶのが一般的ですが、理工学部や工学部の化学科や応用化学科、理学科などでも学べます。化学が学べる代表的な大学・学部をまとめたので、参考にしてみてください。

化学を活かせる職業

研究をする人

化学の知識は、さまざまな職業で活かせます。ここでは一例として、下記4つの職業をピックアップして紹介します。

  • 化学メーカーの研究・開発職
  • 化粧品会社の研究・開発職
  • 化学や理科の教師
  • 研究者

順番に解説します。

化学メーカーの研究・開発職

化学を学んだ人の就職先として多いのが、化学メーカーの研究・開発職です。化学メーカーは原料から素材を作る会社で、有名な企業は以下の通りです。

  • 三菱ケミカルHD
  • 富士フイルムHD
  • 住友化学
  • 旭化成
  • 花王

たとえば花王であれば、アタックやハミングといった洗濯洗剤やおむつのメリーズ、洗顔料のビオレなどが有名ですよね。旭化成は、みなさんもご存じのサランラップやジップロックで有名な会社です。

化学メーカーの研究職の仕事内容は、新製品の開発や既存製品の改良に生かせる技術や知識の研究です。開発職は、研究結果をもとに新製品を生み出す役割を担います。

化粧品会社の研究・開発職

化粧品会社の研究・開発職は、とくに理系女子に人気の職業です。化粧品メーカーの有名企業の一例は、以下の通りです。

  • 資生堂
  • 花王
  • コーセー
  • ポーラ・オルビスホールディングス
  • マンダム
  • ファンケル(FANCL)
  • ノエビアホールディングス

化粧品会社の研究職のおもな仕事は、化粧品に配合する有効成分の研究や、皮膚への安全性を調べる研究を行います。開発職は、研究結果をもとに新商品の開発を行います。

化学や理科の教師

大学で化学を学んだ人の中には「化学の面白さを伝えたい」という思いから、化学や理科の教師になる人もいます。教師になるには教員免許が必要なので、大学で必要単位を取得し、免許状を申請・発行してもらう必要があります。その後、教員採用試験を受けて合格すれば、中高の教員として働けますよ。

研究者

研究好きの人は、研究所で働く研究者になるのもひとつの道です。日本の有名な研究所の一例は、以下の通りです。

  • 理科学研究所
  • 産業技術総合研究所(産総研)
  • 物質・材料研究機構(物材研)

日本で唯一の自然科学系総合研究所である「理化学研究所」は、物理学、化学、工学、生物学、医科学などの基礎研究から応用研究まで、最先端の研究に取り組めます。

研究者の仕事内容について詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてみてください。
研究者になるには?仕事内容や就職先・求められる能力について解説 – 逆引き大学辞典 (gyakubiki.net)

「スタビキ」で化学についてもっと知ろう

スタビキは大学でどんな研究をしているか調べられるサービスです。

「化学」で検索すると「有機化学」や「天然物化学」などより詳細な研究テーマが表示されます。じぶんがどんな化学に興味があるのか、それをどの大学で学べるのかわかります。ぜひ使ってみてください。

スタビキのバナー

化学を学べる大学を「JOB-BIKI」で検索しよう

化学はあらゆる物質の構造や性質、変化について学ぶ学問です。「研究が好き」「化学の知識で世に貢献したい」という人は、化学科系の学部に進むのも良いでしょう。化学が学べる大学を調べるなら「JOB-BIKI」で検索してみてください。なりたい職業からも大学を検索できるので、ぜひ試してみましょう。

「JOB-BIKI」 で化学メーカーで働く人の出身大学を見てみる

「JOB-BIKI」で化粧品メーカーで働く人の出身大学を見てみる

「逆引き大学辞典」で「化学」について知る

「JOB-BIKI」で「化学」について学べる大学を調べる

よく読まれている記事

タグで記事を絞り込む