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栄養学部とは?入試科目・学ぶ内容・資格・就職先を徹底解説!

2025.07.28

カテゴリー:
さまざまな食材から献立作成をしている学生

「栄養学部では4年間で何を学ぶの?」
「卒業後にはどのような仕事に就けるの?」

このように、栄養学部についてよく分からない人もいるのではないでしょうか。

栄養学部で取得できる資格や実習内容を知らずに進学してしまうと「希望する職種に就けない」「学ぶ内容に興味が持てない」というミスマッチが生じかねません。
しかし、卒業後のキャリアパスが明確であれば、大学生活はより充実し、将来の理想の自分に近づきやすくなります。
この記事では、4年制大学の栄養学部で学べる内容、取得できる資格、卒業後の進路、さらには入試情報まで、栄養学部を目指す上で知っておきたい情報を詳しく解説します。記事を読めば、栄養学部の特色や学習内容を理解し、ご自身の興味や適性と合っているか判断できるでしょう。ぜひ栄養学部への進学を検討するときの手がかりとしてご活用ください。

栄養学部とは

さまざまな食材

栄養学の基礎知識や栄養学部で学ぶ内容、4年間のカリキュラムなどについて紹介します。

栄養学の基礎知識

栄養学とは食品に含まれる栄養素について研究する学問です。栄養学を学ぶ理由として、健康維持や病気予防、パフォーマンス向上などが挙げられます。

人が健康な身体でいるためには、食べ物から炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルという「五大栄養素」を適切に取り入れなくてはなりません。栄養学では五大栄養素を非常に小さな単位(分子レベル)まで分解し、病気の悪化、体調の変化にどう影響するかを学びます。

近年、食生活の多様化や高齢化に伴う健康志向の高まりから、栄養学を学びたい社会人や面白さを感じる人が多いようです。私たちの生命を支える栄養学は、あらゆる世代から注目されています。

栄養学部で学ぶこと

栄養学部では、食と健康に関する専門的な知識とスキルを身につけ、人々の健康に貢献できる仕事に就くための土台をつくります。具体的に学ぶ内容は次のとおりです。

  1. 生物学や医学を基礎として「人間の身体と栄養」の関係を理解する
  2. 保健・衛生学や社会福祉学の立場で「社会や環境と栄養」の関係を学ぶ
  3. 化学や生物学の手法で「食品の栄養成分」を解明する

このように、食と健康がどのように関連しているか、さまざまな視点から学びます。

カリキュラム

多くの栄養学部では「管理栄養士」の国家試験を見据えた授業を行っています。4年制大学で栄養学が学べる学部・学科の一般的なカリキュラムは次のとおりです。

【1~3年生】栄養学を理解するための基礎を習得する
栄養素が生物にどのように働くかを分子レベルで研究するため、生物、化学の分野は欠かせません。基礎分野として主に生化学、食品化学、生理学、病理学、食品学、調理学などを学びます。

1〜2年生で、栄養学部の専門基礎分野と合わせて、一般教養科目を履修する大学もあります。

【2~4年生】基礎知識を活かしてより専門性の高い分野を学ぶ
基礎栄養学や応用栄養学、公衆栄養学といった、より専門的な知識を深めます。

【3年生~】校外実習により実践力を高める
病院や給食施設、保健所などでの実習をします。これまでの知識を現場で実践し、実践力とコミュニケーション能力を高めることが目的です。

講義で学んだ加工技術を、実践をとおして理解を深めたり、給食の献立作成、発注、調理のサイクルを体験したりします。

【4年生~】課題研究、資格取得のための勉強に取り組む
ゼミに所属し、担当教授や研究室の仲間とともに課題研究に取り組みます。また管理栄養士国家試験に向けての勉強も進めます。

管理栄養士については、以下の記事をご覧ください。

実習

栄養学部における学びの大きな特徴の一つが、講義で習得した専門知識を具体的なスキルとして発展させるための校外実習です。学生は、給食施設や病院、福祉施設、官公庁施設など、さまざまな現場で貴重な経験を積みます。

給食施設での実習は、献立の作成から食材の発注、大量調理、衛生管理、原価管理など、給食提供における一連の業務を深く理解し、実践的なスキルを高めるのが目的です。

病院や福祉施設などで行われる実習では、病気や加齢などによって栄養状態が異なる施設利用者一人ひとりの状態を丁寧に把握し、栄養状態に合わせた食事計画や栄養指導をします。

また、食事や栄養に関する適切な情報提供や指導をするためにはコミュニケーション能力が不可欠です。実習をとおして、専門知識の確実な習得、社会で求められる実践的な能力や課題解決能力を養えるでしょう。

栄養学部で行われている研究

栄養学部ではどのような研究をしているのでしょうか。例として、神戸学院大学で行われた「渋味飲料の口腔内リセット作用の分子化学的検証と食事における相性診断技術の開発」について紹介します。

これは、相性のよい料理と飲み物がもたらす「口内リセット効果」を、分子レベルで科学的に明らかにすることを目的とした研究です。

お茶やワインのような渋味のある飲み物は、口の中を「さっぱり」させる効果があると言われています。また、強すぎると不快に感じる渋味も、料理との組み合わせ次第でその刺激が和らぎ、心地よい感覚へと変化することも知られています。

研究を進めた結果、渋味の主な原因であるポリフェノールは、会合性(分子が分子間力などで結びつく性質)と界面活性(水の表面張力を著しく低下させる性質)を持つことが判明しました。さらに、タンパク質が渋味を和らげるメカニズムを評価する独自の方法を開発し、いくつかの食品タンパク質において、特に高い渋味を和らげる効果を持つことも突き止めました。

本研究の成果は、より美味しく、より快適な食事を実現するための新たな知見となると期待されます。

ほかにも栄養学部の研究を知りたい人は、スタビキをチェックしてください。
>>スタビキで栄養学部の研究を見てみる

栄養学部で目指せる資格と卒業後の進路

キャンパス内で研究をしている女子学生たち

栄養学部は国家資格の受験資格や、教員免許などの取得を目指せる学部です。取得を目指せる資格と、それらを活かせる卒業後の進路を紹介します。

目指せる資格

大学のカリキュラムなどによって異なりますが、多くの栄養学部で目指せる資格は以下のとおりです。

▼栄養学部で一般的に目指せる資格

内容資格
受験資格が得られる管理栄養士 フードスペシャリスト など
取得できる栄養士 中学校・高等学校教諭1種免許状(家庭) 栄養教諭1種免許状
任用資格が得られる食品衛生管理者 食品衛生監視員

管理栄養士は、受験資格を満たしていなければ国家試験を受験できません。ほとんどの4年制大学の栄養学部は管理栄養士養成施設に指定されており、管理栄養士の取得を目指せるカリキュラムとなっています。

中学校・高等学校教諭1種免許状(家庭)と栄養教諭一種免許状は、必要な単位を修得した人のみ取得が可能です。

卒業後の進路

栄養学部を卒業した人は、取得した資格を活かせる職業に就くことが多いようです。主な就職先は以下のとおりです。

ジャンル施設の例仕事内容
医療病院 クリニック・通院、入院患者の症状に合わせて栄養面の管理や、食事提供をする
学校健康教育小・中学校 保育園 特別支援学校 学校給食センター・子どもの成長に合った献立の作成や食材の選定をする
・教員として働く
勤労者支援社員食堂 大学食堂 自衛隊 スポーツ関連施設・利用者の栄養面を考えたメニューづくり、食事の提供をする
福祉児童福祉施設 障害者福祉施設・各施設に入所、通所している人に合わせた献立づくり、食事の提供をする
行政地方自治体・住民の栄養面での健康促進のための調査やイベントの対応をする
研究大学・研究所 食品メーカー・栄養に関する研究を行う
・商品開発に栄養の側面から携わる

多くの卒業生が特定の施設を利用する人の健康を、栄養面からサポートするという職に就いています。また、学校での食育や、自治体での健康促進活動など、病気を防ぐために栄養の知識を活かすという仕事もあります。

農学部との違い

農学部でも食に関する研究をする学科がありますが、栄養学部と卒業後の職種や役割が大きく異なるようです。たとえば、食品メーカー業界において、両者の役割や職種には次のような傾向が見られます。

農学部出身者は加工技術や品質管理など、食品そのものの研究や開発に携わることが多いようです。一方、栄養学部出身者は、栄養バランスを考慮した付加価値の高い商品の開発や栄養指導など、栄養学の専門知識を活かした研究活動に携わる傾向があります。

このように、同じ「食」を扱う学部でも、農学部は食品の素材や製造プロセスといった根源的な部分にアプローチします。また、栄養学部は食品が健康に与える影響という応用的な側面に、専門性を活かせるでしょう。

農学部では具体的にどのようなことを学ぶかは、以下の記事で解説しています。

また、食品メーカー業界への就職を希望する人は、ぜひこちらの記事をご覧ください。

栄養学部に向いている人の特徴

管理栄養士の実習

栄養学部に向いている人の特徴は、以下のとおりです。

  • 食への強い関心がある人
  • 健康な人を増やしたい人
  • さまざまな条件を考えられる人

それぞれ解説します。

食への強い関心がある人

栄養学とは「食」について深く探求する学問です。そのため、食べること自体が好き、食材の栄養価や調理法、食文化など、食に関する幅広い知識に興味を持てる人は向いているといえます。

また、献立作成や調理指導など、実践的な業務もあるため、料理が好きで食を追求できる人は栄養学の学びを楽しめるでしょう。

健康な人を増やしたい人

健康な人を増やしたい人は、栄養学部の学びに興味を持てるでしょう。栄養学部では、食品の栄養成分が身体にどう影響するのかを科学的に学び、健康維持・増進のための食生活を提案できる専門性を身につけるからです。

栄養学を深く学ぶことで、病気の予防やアスリートのパフォーマンス向上、高齢者の健康サポートなど、食をとおしてあらゆる世代の健康に貢献できる道が開けます。人々の健康を食の面で支えたい人にも、栄養学部は最適な学びの場です。

さまざまな条件を考えられる人

さまざまな条件を考えられる人は栄養学部に向いています。献立作成は食品が持つ栄養素だけでなく、味のバランス、旬の食材、予算、調理の簡便さ、提供時の温度といった、さまざまな条件を組み合わせる必要があります。さらに世代や病気なども踏まえた最適な栄養バランスの食事を考慮しなくてはなりません。

このような多くの条件のなかから一つのものをつくり出すことが得意な人は、栄養学部での学びやその後のキャリアパスにおいても能力を発揮できるでしょう。

栄養学部を設置している大学

研究室で食品の成分の研究をしている大学生

【国公立】

【私立】


ほかにも栄養学部を設置している大学を知りたい人は、逆引き大学辞典の「系統別学問内容リサーチ」を活用してみてください。

栄養学部を設置している大学がわかるので、進路選びの参考になります。
>>栄養学部のある大学を見てみる

栄養学部に属している主な学科

栄養学部に属している主な学科と特徴は、以下のとおりです。

学科名特徴
健康栄養学科栄養学、健康科学の観点から、食と健康の関係を理解する
栄養学科栄養士資格の取得を軸として、幅広い教養と複数の分野を総合的に学ぶ
食マネジメント学科食を科学、文化、ビジネスの側面などから学び、実践力と専門性を高める

上記の学科以外にも、大学によってさまざまな特色ある学科が設置されています。自分の関心に合った学科を見つけるために、複数の大学情報を比較検討することをおすすめします。

栄養学部の入試科目

4年制大学における栄養学部の個別学力試験の科目は「国語・英語・数学・理科(生物または化学)」のなかから2〜3科目を求められることが多いようです。

文系でも栄養学部を目指せますが、理系を選んだほうが有利と言えます。栄養学を学ぶ上で生物と化学の知識は欠かせず、多くの大学が入試科目にしているからです。数学が苦手で文系を選んだ人でも生物と化学を履修しておくと、入試だけではなく、進学後も大いに役立つでしょう。

栄養学部についてもっと知りたい人は「JOB-BIKI」をチェック!

調理をする高校生たち

栄養学部では、食べ物と健康の専門家を目指して、4年間で必要な知識と技術を身につけます。管理栄養士などの資格取得も目指せるので、資格を活かして病院や学校、食品メーカーなどさまざまな施設・企業で活躍できるでしょう。

栄養学部は実習が豊富で、給食運営や栄養指導など社会で役立つ実践的なスキルを着実に習得できる学部です。現場を体験することで、自身の適性や興味関心に合った進路を見極めやすく、卒業後の進路を主体的に選べます。

栄養学部を設置している大学を知りたい人は、逆引き大学辞典の「系統別学問内容リサーチ」を活用してみてください。栄養学部を設置している大学が分かるので、進路選びの参考になるでしょう。

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