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通訳案内士になるには?仕事内容や資格試験の難易度、将来性について解説

2023.09.08

カテゴリー:
外国からのお客様を案内する通訳案内士

街中で外国人旅行客に日本を案内している人を見たことはありませんか?通訳案内士は、海外からのお客様にお客様の言語で日本を案内する仕事です。言語を学ぶことや人を楽しませることが好きな人にとっては、とても魅力的な職業です。
ただし、通訳案内士の年収は高くなく、資格試験も非常に難易度が高いため、しっかりとキャリアプランを明確にしてから目指すことをおすすめします。
この記事では、通訳案内士の仕事内容や現実的な働き方、なるための方法を紹介します。通訳案内士に求められる資質や能力についても解説するので、参考にしてくださいね。


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通訳案内士とは?

海外からの団体客を案内する通訳案内士

通訳案内士とは訪日した外国人に同行し、外国語を使って日本を案内する職業です。お客様の「日本について知りたい」という知的好奇心に応えるため、ガイドをしながら日本の文化や伝統について自分の言葉で伝えます。

通訳案内士はガイドだけでなく、ホテルの予約やスケジュール管理、滞在中のトラブル対応なども行います。お客様が安心・安全に旅ができるよう、幅広くサポートするのが仕事です。

通訳案内士と通訳者の違い

通訳案内士と聞くと「通訳者」と勘違いする人も多いのですが、これらの仕事はまったく別物です。通訳者の仕事は、異なる言語を話す人の間に入り、互いの言語を正しく訳して伝えることです。おもに商談や会議、交渉などの場で活躍します。

対して通訳案内士は、自分の言葉で外国人に日本を案内します。バスツアーでたとえると、バスガイドの話を訳すのが通訳者、自分がマイクをもって外国語で説明するのが通訳案内士とイメージするとわかりやすいでしょう。

通訳案内士の仕事内容

通訳案内士の仕事内容は、大きくわけると以下の3つです。

  • ガイディング
  • 添乗業務
  • 旅の演出

それぞれ詳しく解説します。

ガイディング

通訳案内士のメインの仕事は、外国人の観光ガイドです。お客様が集合したら、旅の工程や、これから訪れる場所についての地理や歴史について説明します。移動中も外の風景や建物について説明を加えます。目的地に着いたら、案内板の翻訳や自分の知識に基づくガイドを行う流れです。

ガイド中にお客様から質問があれば、その都度答えます。外国のお客様は、日本の歴史や文化はもちろん、現代の日本人の生活にも興味があるため、幅広い知識でもって対応する必要があります。

添乗業務

通訳案内士の仕事は、ガイドだけではありません。交通機関やホテルとの調整を行い、旅程を管理する「添乗業務」も仕事のひとつです。たとえば、空港に到着するフライトの確認や出迎えのバスドライバーとの打ち合わせ、ホテルのチェックイン方法の確認などがあります。
また、お客様が泊まるホテルにも同行し、入浴方法や食事のマナーなどを説明します。とくに食事はアレルギーや宗教上の制限などがあるため、気を遣う必要があります。事前確認やホテルとの連携により、不具合が無いよう調整するのも大事な仕事です。

旅の演出

通訳案内士の醍醐味は、お客様が満足するようなツアーコースを考えることです。たとえば「都内のおすすめスポットを4時間でまわりたい」などの要望に対して、オリジナルのツアー内容を考えます。

お客様は、観光ガイドに載っている以上の情報や体験を求めています。お客様の要望に合った魅力的なツアーを提供することが大事です。

通訳案内士の仕事のやりがい

茶道を体験する外国人観光客

通訳案内士の仕事のやりがいには、以下のようなものが挙げられます。

  • お客様から感謝される
  • さまざまな国の人と交流できる
  • 語学力を活かせる

通訳案内士は、お客様の要望に合わせて日本をガイドする仕事です。満足いただけたお客様からは「あなたのおかげで、素晴らしい旅になったわ」「友だちにも、あなたのツアーを紹介したい」などの嬉しい言葉をもらえます。また、帰国後もメールをもらったり、プレゼントが送られてきたりと、親交が続くこともあるようです。

日本に来るお客様は、英語圏以外にも東南アジアや北欧などさまざまです。異なる国籍のお客様と接する中で、習慣や文化の違い、お国柄などに触れられます。ガイドをしながらこちらも海外旅行をしているような気分を味わえるでしょう。

通訳案内士は、語学力を活かせるのも魅力です。英語を母国語としないお客様とのやりとりでは、どのように端的にわかりやすく伝えるか考える必要があります。最初はお互いの英語が聞き取りにくいこともありますが、通じ合ったときの喜びは格別でしょう。

通訳案内士の仕事の流れ

通訳案内士の仕事の流れはツアー内容によって異なりますが、ここでは1日ツアーの一般的なスケジュール例を紹介します。

時間業務詳しい業務内容
9:00出勤宿泊先のホテルや空港、駅などにお客様を迎えに行く
10:00観光地案内ガイド業務を行う (神社・仏閣などの観光スポットやショッピング)
12:00昼食お客様が昼食をとる間に、自分も簡単に昼食をすませつつ、午後の観光ルートのチェックを行う
14:00美術館案内入館にあたってのチケット購入、館内でのマナーや集合時間などの説明、引率を行う
16:00お土産購入お土産スポットへ案内し、お客様の言語で商品を説明する
18:00お客様を宿泊先へ送る宿泊施設へお客様を送り、チェックイン方法や館内でのマナーや入浴方法、食事について説明する
19:00下調べや予定の確認別のガイドの下調べや、明日のガイドの確認を行う
20:00終業 

喜ばれるガイドをするためには、ツアー前の下調べや下見が欠かせません。上記の勤務時間以外も準備や勉強が必要です。

また、ツアーは半日や1日、数日間などさまざまです。数日に渡るツアーの場合は24時間体制となります。病人やけが人が出た場合は、夜中であろうと近くの病院まで同行する必要があります。

通訳案内士の年収

厚生労働省の「職業情報提供サイトO-NET」によると、通訳案内士の平均年収は約382万円で、月給にすると約31万円程度です。日本人の平均年収は約460万円なので、平均よりも低い傾向にあります。

通訳案内士として1日ガイドをしたときの平均日給は3万円なので、20日間働けば月給60万円になります。日給だけ見ると給料は良いのに年収が低い理由は、安定的に仕事がもらえるわけではないためです。

通訳案内士の約74%はフリーランスなので、自分で仕事を獲得する必要があります。毎日8時間働くサラリーマンとは違い、仕事がないときもあるのです。
ちなみに、フリーランスの次に多いのはパートタイマーで全体の13%、正社員や派遣・契約社員は8.7%ほどです。

通訳案内士で高収入を得ている人は、兼業で通訳や翻訳をしている場合が多いです。

参考:通訳ガイド – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)) (mhlw.go.jp)

通訳案内士の将来性

通訳案内士は、将来性のある仕事です。「通訳案内士の仕事は、なくなる」という噂を聞いたことがある人もいるかもしれません。パンデミックとなった感染症が蔓延した2020年~2022年ごろまでは、来日外客数が激減し、廃業した通訳案内士も多くいたようです。しかし、日本政府観光局(JNTO)によると、2022年の秋ごろから訪日外客数は回復し、2023年の冬にはコロナ前と同程度になっていることがわかります。

訪日外国人の推移

引用:データ一覧 | 日本の観光統計データ (jnto.go.jp)

来日外客数は順調に回復しているため、通訳案内士の需要も増加することが見込まれます。

通訳案内士に必要な資質と能力

お城の説明をする通訳案内士
  • 言語力
  • 体力
  • 気配り・心配り
  • 的確な判断と柔軟性

通訳案内士にはどのような資質や能力が求められるのでしょうか。ここでは、通訳案内士にとくに重要な資質・能力を押さえておきましょう。

言語力

通訳案内士はお客様の言語で日本を案内する職業なので、言語力は必須です。英語で言うと英検1級レベルの言語力が必要です。通訳案内士になるには「全国通訳案内士試験」を受験する必要があり、受験できる言語は以下のとおりです。(2023年現在)

  • 英語
  • フランス語
  • スペイン語
  • ドイツ語
  • 中国語
  • イタリア語
  • ポルトガル語
  • ロシア語
  • 韓国語
  • タイ語

公用語の英語は必須で学んでおきたいですが、訪日外国人の約8割は東アジアからのお客様なので、中国語や韓国語ができると重宝されます。これから新しい語学を勉強するみなさんは、参考にしてくださいね。

体力

通訳案内士の仕事は何日もツアーに同行することもあるため、体力が必要です。体調が悪いと満足なガイドはできません。とくに、ガイドは声を使うので喉がやられないよう気を遣う必要があり、日常から徹底した健康管理が求められます。

気配り・心配り

通訳案内士は、お客様が望むことや知りたいことを先回りして調べ、ツアーに反映したり、お客様が困らないよう日本でのマナーやエチケットを教えたりします。
海外のお客様に日本での旅を楽しんでもらえるよう、サービス精神をもって接することが求められます。

的確な判断と柔軟性

ガイド中に、思わぬトラブルや事故が起こることもあるため、通訳案内士は的確な判断力や柔軟性が求められます。

たとえば、観光地が混雑していて当初のルートではまわれそうもない場合、お客様に満足いただけるようルートを変更するほうが良いこともあるでしょう。状況を見極めて柔軟に対処する能力が必要です。

通訳案内士になるには?

通訳案内士に必要な勉強

通訳案内士になるには、具体的にどのようなルートがあるのでしょうか?通訳案内士になるための方法について解説します。

通訳案内士の世界の現状

通訳案内士として働くには「全国通訳案内士試験」に合格する必要がありました。しかし、2018年の法改正にともない現在では無資格でもお金をもらってガイドができます。なぜ、誰でもガイドができるようになったかと言うと、訪日外国人数に対してガイドの人数が不足しているためです。

通訳案内士といえば英語をイメージする人が多いかもしれませんが、実は訪日外国人の約8割は、香港・中国・韓国などの東アジア圏の人たちなのです。資格の有無にかかわらずガイドできるようにしたのは、これらの言語を話せる人を確保するためなのです。

こう聞くと「わざわざ資格を取る必要もないのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし「全国通訳案内士」を名乗れるのは、資格試験に合格した人のみです。通訳案内士を依頼するクライアントは、ガイドの質が低くてクレームがくると困るため、質の高いガイドを求めます。つまり、資格があったほうが活躍の場が広がることは間違いありません。

通訳案内士になるための勉強ができる大学・学部

通訳案内士は誰でもなれると言いましたが、活躍するためには高い語学力や観光についての知識が必要なため、大学で学ぶのが現実的でしょう。

複数の外国語や外国の文化や歴史が学べる外国語大学や、外国語学部・国際学部のほか、観光学部に進学すると良いでしょう。外国語や観光学が学べる大学をまとめたので、参考にしてみてください。

大学によっては国際理解の過程で日本の歴史についても学ぶ機会があるため、試験はもちろん、通訳案内士として現場に立ったときに役立ちますよ。

通訳案内士に必要な資格や受験すべき試験

通訳案内士は資格をとらなくてもできる仕事なので「資格をとっても意味ない」と思っている人もいるかもしれません。しかし、前述のとおり「全国通訳案内士試験」に合格し「全国通訳案内士」の資格を取得したほうが仕事獲得に有利ですし、待遇もよい傾向にあります。

通訳案内士になるために目指すべき就職先

通訳案内士はフリーランスとして働く人が多いです。その場合は、試験合格後に「一般社団法人日本観光通訳協会」に登録し、仕事を紹介してもらうのが一般的です。
また、旅行会社で正社員を募集していることもありますよ。

通訳案内士になった後のキャリアプラン

やりがいを感じる通訳案内士

通訳案内士になった後のキャリアプランには、おもに以下の3パターンがあります。

・旅行会社に就職する
通訳案内士として働く方法に、旅行会社に就職するという方法があります。ただし、社員として募集している企業は少ないため、難しいかもしれません。

・フリーランスとして活動する
通訳案内士のほとんどが、フリーランスとして活動しています。試験に合格後は「一般社団法人日本観光通訳協会」に登録し、仕事を紹介してもらいます。

ほかにも、以下のような方法で仕事を獲得します。

  • 旅行会社と業務委託契約を結ぶ
  • インターネットで求人情報を検索する
  • 「ガイド検索システム」に自分の名前を掲載する
  • ブログやSNSなどで実績をアピールし依頼を待つ

フリーランスとして活躍するためには、さまざまな方法で仕事を獲得する必要があります。

・副業で行う
前述のとおり、通訳案内士の年収は高くなく、フリーランスとして活動している人がほとんどであることから、決して安定している職業とは言えません。そのため、ふだんは通訳や翻訳業などを行い、繁忙期に副業として通訳案内を行う人もいます。

通訳案内士に関するよくある質問

通訳案内士に関するよくある質問をまとめたので、参考にしてみてください。

  • 通訳案内士の試験は高校生でも受験できる?
  • 通訳案内士になるにはTOEICで何点必要?
  • 通訳案内士の資格取得には何年かかる?

通訳案内士の試験は高校生でも受験できる?

高校生でも受験可能です。

通訳案内士は誰でも受験できます。年齢や学歴などの制限はありません。

通訳案内士になるにはTOEICで何点必要?

通訳案内士はTOEICのスコアがなくてもなれます。しかし、実務で活かすためには、以下のTOEICスコアと同等の英語力が必要になるでしょう。

【TOEICの種類と通訳案内士に必要なスコア】

TOEICの種類必要なスコア
TOEIC Listening & Reading Test900点以上(990点満点)
TOEIC Speaking Test160点以上(200点満点)
TOEIC Writing Test170点以上(200点満点)

参考:国家試験 「全国通訳案内士試験」|【公式】TOEIC Program|IIBC (iibc-global.org)

どのテストにおいても、非常に高いスコアが必要であることがわかります。

通訳案内士の試験には、外国語筆記試験(英語)があるのですが、上記のスコアを取得している人※は、免除になります。

※通訳案内士の試験を受ける年度もしくは前年度に取得した場合に限る

通訳案内士の資格取得には何年かかる?

通訳案内士に必要な勉強時間は、筆記試験で150時間、口述試験で100時間と言われています。150時間といえば、毎日2時間勉強して、2ヶ月半かかる計算です。ただし、前提知識があったり、先ほど紹介したTOEICのスコアをもっている場合は、勉強時間を短縮できるでしょう。

通訳案内士の合格率は、毎年10%程度と非常に難易度が高いため、取得は簡単ではありません。上記の必要勉強時間はあくまで目安ととらえて勉強にはげみましょう。

(まとめ)通訳案内士を「JOB-BIKI」で検索しよう

通訳案内士は、海外からのお客様に日本を案内する仕事です。語学力を活かしたい人や、人を喜ばせることが好きな人には、魅力的な職業でしょう。お客様から感謝されることも多いので、やりがいも感じやすい仕事です。

今や通訳案内士は無資格でもできる仕事になりましたが、仕事を獲得するためには「全国通訳案内士試験」に合格し、実力をアピールすることが必須です。合格率10%の難関試験に合格するためには、高い語学力や日本についての豊富な知識が必要です。

通訳案内士になるためにどのような大学を選べばいいのか迷っている方は「JOB-BIKI」を活用してみてください。「JOB-BIKI」の人物検索で「通訳」と検索すると、通訳として活躍している人たちの出身大学がわかります。通訳案内士を目指す場合の参考になるでしょう。ぜひ、進路選びに活用してくださいね。

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