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教育ローンとは?奨学金との違いやメリット、契約時の注意点を解説

2022.12.28

カテゴリー:
子供の進学資金のやりくりに悩む保護者

受験生の我が子のため、大学の入学金・授業料の資金として「教育ローン」の借入れを検討している保護者の方もいることでしょう。教育ローンには、家計の負担を軽減できるメリットがある一方で、奨学金に比べて借入金利が高く、返済金額が高くなるといったデメリットもあるので、慎重な検討が必要です。
この記事では、教育ローンの仕組みや奨学金との違い、メリット・デメリットのほか、契約時の注意点を解説します。

教育ローンとは子供の進学のために保護者が借りられるお金

教育ローンとは、大学や短期大学、専門学校の入学金・授業料を支払うため、保護者が借りられるローンのこと。入学金・授業料のほかにも、受験料など大学受験関連費用、入学後の一人暮らしのためのアパート・マンションの家賃など、子供に関する教育費全般に活用できます。
教育ローンの最大のメリットは、大学在学中は金利分のみの支払いとなること。入学金・授業料など、まとまったお金を用意することが難しい場合には、教育ローンの利用を検討してみてください。

国の教育ローンと金融機関の教育ローンの違い

教育ローンは、大きく分けて2つの種類があります。日本政策金融公庫(沖縄県の場合は沖縄振興開発金融公庫)が運営する「国の教育ローン」と、銀行や信用金庫などの民間金融機関が運営する「民間の教育ローン」です。これらには、どのような違いがあるのでしょうか。

国の教育ローンと民間の教育ローンの比較

 国の教育ローン民間の教育ローン
利用できる人保護者保護者
申請条件世帯年収790万円以内
子供が一人増えるごとに100万円増
前年度の年収が一定の金額以上
金利の種類固定金利固定金利/変動金利で選択可能
借入金利年1.80%年2~5%台
借入上限額子供一人につき350万円以内
※自宅外通学、修業年限5年以上の大学(昼間部)、
大学院、海外留学のいずれかの資金として
利用する場合は450万円以内
子供一人につき500万円~

※金融機関によって異なる
返済期間18年以内10~15年以内
担保・保証人担保不要、ただし融資保証は必要原則不要

国の教育ローンと民間の教育ローンの最大の違いは、年収の条件面にあります。
国の教育ローンは、学ぶ意欲がありながらも家庭の事情で経済的に厳しい状況にある学生にサポートをすることを主な目的としているため、世帯年収に上限が設けられています。一方で、保護者の返済能力を重視しているのが民間の教育ローン。そのため、一定以上の年収が求められるのです。
また、民間の教育ローンは、国の教育ローンに比べて借入金利が高めに設定されているのも特徴。ただし、国の教育ローンに比べて申請条件が厳しくないため、利用しやすいといえます。

教育ローンと奨学金の違い

受験生を抱える家庭の教育費負担を軽くする制度として、教育ローンのほかに「奨学金(貸与型)」があります。これらは、「お金を借りる」という意味では大きな違いはありません。最大の違いは返済者です。
教育ローンで教育資金を借りて、返済するのは保護者です。一方で、奨学金を借りて返済するのは学生本人。保護者に負担をかけず、学生本人が借りるのが奨学金なのです。

奨学金は教育ローンに比べて金利が低いという特徴も。しかし、学力基準が設けられていたり、申込み時期が決まっていたりします。教育ローンは、入学前はもちろん、一年を通していつでも申込み可能。その利用のしやすさがありがたいですよね。

■教育ローンと奨学金(貸与型)の違い

 教育ローン奨学金(貸与型)
申込み者保護者学生本人
返済者保護者学生本人
申込み時の学力基準なしあり
借入可能時期入学前から可能(入学金の借入可能)入学後
申込み時期一年中いつでも可能春と秋の2回

教育ローンのメリットとデメリット

国の教育ローンを運営する日本政策金融公庫

 
メリットが多い教育ローンですが、もちろんデメリットもあります。ここでは、教育ローンのメリット・デメリットについて解説します。

教育ローンのメリットは教育費負担が軽減できること

まずは教育ローンのメリットを確認していきましょう。

・在学中の教育費負担を軽減できる
大学在学中にかかる学生一人あたりの費用は、国公立大学で103.5万円、私立大学文系で152.0万円、私立大学理系で183.2万円です。教育ローンを利用すれば、在学中の教育費負担を軽減できるのは、大きなメリットといえるはず。

国公立大学・私立大学別の在学費用

出典:日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」(2021年12月)

教育ローンは、ローンの返済面でもメリットがあります。例えば、自動車ローンでは契約の翌月から毎月の返済がスタートします。しかし、教育ローンのほとんどは、子供の大学在学中は金利分の支払いのみ。借入額面の支払い自体は大学卒業後から始まるのです。
大学在学中は何かとお金がかかるもの。そのあいだ、金利分の支払いで済むのは保護者としては助かりますよね。

・国のローンは一人あたり350万円以内、一定要件の場合は450万円以内
教育ローンは、毎月口座に振り込まれる奨学金と違って、一度にまとまった金額を入手できるのがうれしいところ。つまり、入学金の支払いや子供の一人暮らしのアパート・マンションの敷金・礼金にも利用可能なのです。
国の教育ローンでは、一人あたり350万円以内、自宅外通学で、修業年限5年以上の大学(昼間部)、大学院、海外留学いずれかの資金として利用する場合は450万円以内の借入れが可能です。固定金利かつ長期返済であること、担保の必要がないことも大きなメリットといえます。

・子供の学力は不問
奨学金に採用されるには、「評定平均値(高校の学業成績平均値)が3.5以上」(独立行政法人日本学生支援機構給付型奨学金(返済不要)・第一種奨学金(無利子)の場合)など、学力基準が設けられることが一般的です。学修意欲が高くても、子供の学力によっては採用条件を満たせず、申込みできないことも。
一方で教育ローンの申込みには、子供の学力基準は設けられていません。間口を広く設けられた、うれしい制度なのです。

・使用用途の自由度が高い
教育ローンは、基本的に用途は自由です。入学金・授業料はもちろん、学生の一人暮らしのアパート・マンションの家賃や敷金・礼金、教科書代、留学費用など、幅広く利用できます。また教育ローンは、修業年限が6ヵ月以上で中学卒業以上の学生が通う教育施設を対象としています。高校や大学、専門学校はもちろん、大学に進学しなかった過年度生が、塾や予備校の授業料として利用することも可能なのです。

教育ローンのデメリットは高い金利や収入条件があること

教育ローンには、どのようなデメリットがあるのでしょうか。金利や条件面について確認しておきましょう。

・奨学金に比べて金利が高い
教育ローンの借入金利は、奨学金に比べて高いのが特徴です。借入金額によっては、高い金利が発生するというデメリットがあります。
仮に、教育ローンを大学1年生の4月から利用すると、翌月の5月から金利が発生します。一方、奨学金は、学生が大学を卒業して貸与が終わるまでは金利が発生しません。
奨学金と教育ローンで借入金額が同じだった場合、教育ローンのほうが最終的な返済総額は高くなる点には注意が必要です。

・収入制限がある
民間の教育ローンでは、審査時に年収や保護者の勤続年数、雇用形態などが確認されます。正社員であれば200万~300万円で、1~2年以上の勤続が条件になることが多いようです。保護者の雇用形態によっては、審査に通らないことも。
さらに、国の教育ローンは、世帯年収が下表の金額以内でなければ利用できません。

■国の教育ローンを利用できる人の世帯年収(所得)の上限

扶養する子供の人数世帯年収(給与所得)世帯年収(事業所得)
一人790万円以内600万円以内
二人890万円以内690万円以内
三人990万円以内790万円以内

出典:政府広報オンライン「お子さんの進学・在学資金を支援!国の教育ローンをご利用ください

国の教育ローンと民間の教育ローンは、いずれも年収次第で利用できないケースがあるので注意してください。

・多重債務の場合は審査が厳しい
教育ローンの審査では、基本的に返済能力が重視されます。保護者がお金を返す力は、1年あたりの住宅や車のローンなど、さまざまな返済残高の総額を保護者の年収で割った「返済比率」で判断する場合が多いようです。返済比率30~40%の基準を超えると、審査に通りにくくなるといわれています。
すでに住宅や車のローン、さらにカードローンなどを利用している保護者の方は、教育ローンの申込み前に、できるだけ返済残高を少なくしておくことをオススメします。

教育ローン契約時の注意点

教育ローン契約時に相談する保護者

 
教育ローンを契約するときには、3つの注意点があります。保護者の方は、教育ローンをスムーズに契約できるよう、しっかり確認してくださいね。

年収に見合った金額を借り入れる

借入上限額も高く、金額も自由に決められるのが教育ローンのうれしいところ。しかし、年収に見合った金額でないと、返済能力を疑われて審査に通りにくくなるおそれがあります。
また、教育ローンの返済額が大きくなると、家計が圧迫され、後々生活が苦しくなることも。教育ローンは返済期間が長い分、金利負担が大きくなるため、無理のない返済額にする必要があります。現実的に返済できる金額なのか、契約時にじっくり検討してから借入金額を決定しましょう。

教育ローンの返済能力を証明できるようにする

住宅や車など、すでにローンを利用している家庭もあるはず。ローンの借入件数や借入金額が少なければ問題ありませんが、年収に見合わない総借入金額の場合、返済能力に難ありとみなされる可能性があります。また、国の教育ローンにおいては、ガス・水道などの公共料金の支払いを延滞していると支払能力を疑問視され、ローンの審査に落ちる傾向も。
可能な限りほかのローンの返済を終え、料金延滞などがあればそれを解消した上で、教育ローンの借入れに備えるようにしてください。

虚偽情報とみなされないように申請時にチェックする

教育ローンを申し込むときには、必ず正しい情報を記入するようにしましょう。家賃や公共料金の延滞などを隠して申請しても、すぐに虚偽申告とわかってしまう仕組みになっているのです。
単に記入ミスだった場合でも、虚偽とみなされることがあるので注意が必要です。些細な記入ミスで審査に落ちることがないよう、提出前にしっかりチェックしてくださいね。

進学先をよく調べて、教育ローンの契約は計画的に

教育ローンは、子供の学力に関係なく申込みができるだけでなく、入学前からの借入れができるなど多くのメリットがあります。ただし、奨学金に比べて金利が高い、借入総額によっては審査に落ちる可能性があるといったデメリットも。

教育ローンの借入金額は、現実的に返済可能な金額を設定し、無理がない利用をするのがオススメです。返済負担を少なくしたい場合には、奨学金の併用を検討してください。
また、奨学金には返済不要な「給付型奨学金」もあります。下記の記事で詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。

給付型奨学金とは?制度の仕組みや支給条件、オススメ奨学金を紹介

大金がかかるからこそ、大学の学費についてもよく調べて、進学先を決めたいところです。下記の記事も参考にしてくださいね。

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