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大学院とは?種類や修士・博士課程の違い、入試の仕組みを解説

2023.07.28

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教授を囲む研究室の大学院生

大学卒業後には、就職するほかに、大学院に進学する道もあります。しかし「大学院って大学と何が違うの?」「大学院に進学するとどんなメリットがあるの?」と疑問に思っている人も多いでしょう。
そこで本記事では、大学院の特徴や進学するメリット・デメリットのほか、入試の仕組みなどについてご紹介します。

大学院とは専門的な研究を行う教育機関のこと

大学院とは、大学の学部で学んだ分野について、さらに専門的に研究を行う教育機関のことです。大学の学部を卒業してから、より専門的な知識を身につけたいとき、またはさらに研究したいときに進学する学校です。大学卒業後すぐに進学するだけでなく、社会人が「学び直し」として大学院に進学するケースもあるんですよ!

大学院に進学すると高い専門性を身につけられることがメリットですが、それは積極的に学ぶ姿勢があってこそ。受け身の姿勢では、なかなか思うような成果は上がらないものです。大学院ではみずから仮説を立て、リサーチや研究によって立証していく姿勢が求められるでしょう。
2022年度の文部科学省「学校基本調査」によると、大学院への進学率は1割程。しかし、理系と文系では大学院への進学率は下記のように大きく異なっています。

■分野別・大学院進学率

理系/文系分野大学院進学率
理系理学43.4%
 工学38.2%
文系人文科学4.5%
 社会科学2.7%

出典:文部科学省「令和4年度 学校基本調査

理系の理学部や工学部などは、大学院へ進学し専門分野を深く研究することで、就職が有利になる場合があります。
しかし、文系の場合は、大学院で学んだことが必ずしも仕事と直結するとは限らないため、大学院へ進まずに就活を行う学生が多い傾向があるのです。

大学院の種類

社会人向けの大学院キャンパス


大学院には、基礎になる学部を持つ大学院や学部組織を持たず独立している機関など、4つの種類があります。それぞれの特徴を確認しましょう。

学部を持つ大学院

最も多いのが学部を持ち、上位機関として「研究科」を持つ大学院です。例えば、早稲田大学は、大学に「文学部」、大学院に「文学研究科」があるので学部を持つ大学院になります。学部で身につけた知識をもとに、大学院でさらに専門的な教育や研究を行えるのが特徴です。

大学院大学

大学院大学は、学部を持たない大学院のみの機関です。学部がないため、大学院大学の入学生はすべて他大学からの進学で、全学の学生数が少ないのが特徴です。国公立と私立の大学院大学があります。

独立研究科

独立研究科は、大学院大学と同じく学部組織を持ちません。「エネルギー科学研究科」や「ビジネスデザイン研究科」など、学部によらない研究科のため、さまざまな学部の卒業生が入学するのが特徴です。
そのため、学部で培ったそれぞれの専門性を融合させて、研究分野を深めることができます。

専門職大学院

専門職大学院は、裁判官や教員などの人材育成を目的とした大学院です。一般的な大学院は専門分野の研究を行う機関のため、目的が大きく異なります。また基本的に、専門職大学院では修了時に論文を提出する必要がありません。
専門職大学院には、裁判官や弁護士などを目指す「法科大学院」や、教員を養成する「教職大学院」のほか、MBA(経営学修士)を取得する「経営大学院」などがあります。

修士課程と博士課程の違い

研究に取り組む大学院生(博士課程)

大学院には「博士課程」があり、修業年限は5年です。博士課程には2年と3年に分ける「区分制博士課程」と、区分しない「一貫制博士課程」があります。
ここでは、区分制博士課程の「修士課程(博士前期課程)」と「博士課程(博士後期課程)」についてご紹介します。

修士課程(博士前期課程)

大学院に進学すると、まず2年間の修士課程が始まります。修士課程では、学部(学士課程)で学んだ専門知識をゼミ形式の講義でさらに深く学び、研究者となるために基礎を身につけます。
修士課程の2年間で研究テーマに取り組み、修士論文を提出。修士論文が学内の審査に通ると、修士(マスター)という学位を取得できます。修士課程を修了したら、博士課程(博士後期課程)への進学または就職が可能です。
なお、専門職大学院の学位は大学院の修士とは異なり、専門職学位となります。

博士課程(博士後期課程)

大学院で修士を取得すると、博士課程に進学できます。博士課程は研究者を目指すことがほとんどで、修業年限は3年です。
博士課程は修士課程と異なり、ゼミ形式の講義はほとんどなく、自身で取り組む研究活動がメインです。博士課程の3年間でさらに研究に取り組み、博士論文を提出し、審査に通ると「博士(ドクター)」という学位を取得することになります。

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大学院に進学するメリット

大学院へ進学すると、大学卒業後に少なくとも2年は勉強に励むこととなりますが、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。まずは、大学院進学のメリットをご紹介します。

整った環境で専門的な研究ができる

大学院では、最先端の研究施設や個人学習のスペース、ディスカッションルームといった研究をしやすい環境が整っています。そのため、自身のテーマを集中して研究できることがメリットです。
また、授業はゼミ形式で、講義を学生が主体で進めることも多く、自分の意見をプレゼンする場もあります。学会に参加する機会もあり、専門分野を深めるには最適な環境といえるでしょう。

就職先の選択肢が広がる

大学院で修士以上の学位を取得できると、就職先の選択肢がグッと広がります。というのも、大学院では専門的な研究をすることから、その知識やスキルが企業に高く評価されるからです。
特に理系の場合には、より選択肢が広がりやすく、研究職や技術職を目指す場合には有利になるでしょう。文系の場合も、経営学修士号(MBA)という学位を取得すると、コンサルティング会社やシンクタンクなどへの就職が期待できます。

初任給が高くなる

大学院で修士号を取得すると、大学卒に比べて初任給が高くなります。厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」によると、下記のように大学院修士課程修了の初任給のほうが大学卒に比べて、約3万円高くなっています。

<卒業課程における初任給の違い>
・大学院修士課程修了:23万8,900円
・大学卒:21万200円

これは、大学院に進学すると、高い専門性が身につくことが理由です。

大学院に進学するデメリット

書籍を読みながら研究する大学院生

 
大学院への進学は、メリットだけでなく費用面や時間の面で負担が増えることが考えられます。具体的にデメリットついても確認していきましょう。

追加の学費がかかる

大学院に進学すると、入学金や授業料などの学費が追加でかかります。国公立・私立、もしくは文系・理系によって必要な学費は異なりますが、相応の費用が必要になります。また、自宅から通えない場合には、アパートやマンションなどの賃料や生活費も必要です。

必要な費用のことを知って、「負担が大きくて大学院に行けないかも…」と不安になった人もいるかもしれません。そのような人には、国による奨学金制度を利用するのがオススメ。大幅に費用を軽減できる可能性があります。
大学院への進学を希望する場合には、保護者といっしょに必要な費用をしっかり確認してから計画を立てましょう。

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研究や論文などが忙しい

大学院生は、研究や論文など取り組むことが多く、忙しい学生生活を送ることがほとんど。というのも、授業のほかに、実験のレポートや勉強会、プレゼン準備、研究に関する多くの論文のチェックなど、やるべきことがたくさんあるからです。さらに、指導教授の手伝いや就職活動も加わると、忙しさに拍車がかかるでしょう。
「大学院は時間に余裕がありそう」と思うかもしれませんが、学部以上にスケジュール管理をすることが重要です。

大学院の内部進学と外部進学

卒業の大学と同じ大学院へ進むことを内部進学、別の大学院へ進むことを外部進学といいます。内部進学は慣れ親しんだ環境で学部時代の研究を続けることができ、同じ大学内の学生や教授とのやりとりによる情報を得られるメリットがあります。
一方、外部進学は、より良い環境を得ることや興味のある研究を突き詰めることができますが、人間関係を一から構築する必要や、内部生に比べて情報が少ないことなどのデメリットがあります。

内部進学・外部進学の割合は大学院や学科によってまったく異なるため、どちらの場合も事前に情報を集め、自分に合った選択をすることが大切です。

大学院の入試の仕組み

論文を書く大学院生

 
大学院の入試は、いったいどのような仕組みなのでしょうか。ここでは、必須条件や入試の時期などについてご紹介します。

大学卒業などが必須要件(学士の取得)

大学院(修士課程・博士前期課程)に入学する際は、入学資格のいずれか1つにあてはまる必要があります。入学資格の代表的なものは、下記のとおりです。

<修士課程・博士前期課程の入学資格>
・大学を卒業していること
・大学改革支援・学位授与機構により「学士」の学位を授与されていること
・文部科学省が指定した専修学校の専門課程の修了者
・外国において学校教育における16年の課程を修了している
参考:文部科学省「修士課程・博士課程(前期)の入学資格について

一般入試の実施は年に2回(春入学と秋入学)

大学院の一般入試は、8~11月頃の「秋季試験」と、1~3月頃の「春季試験」の年2回行われることが一般的です。大学によっては秋季試験のみの場合もあります。いずれの場合でも、入試の準備期間を考慮すると、大学3年生の夏には大学院への進学を決定したほうがいいでしょう。

また、一般試験のほかにも、「推薦入試・特別選考入試」「社会人入試」など、さまざまな受験方式があります。複数の大学院を受験する場合には、早めにウェブサイトなどで試験日程を確認しておくと安心です。

試験では研究計画書が最重視される

大学院入試の出願時には、「研究計画書」や「志望理由書」などの書類の提出が必要です。研究計画書とは、大学院での研究テーマや内容、意義をまとめる書類のこと。研究計画書はどの受験方式でも最重視されるため、しっかり準備して書きましょう。

入試では、「筆答試験(筆記試験)」と「口述試験(面接)」が課されます。筆答試験では、英語などの外国語科目と専門科目が出題されることが多く、過去問題などでの対策が可能です。
口述試験では、研究計画書や志望理由書をもとに質問されるため、直前に内容を再確認してから面接に臨むといいでしょう。

大学院の学費

国立・私立大学どちらにするかで大学院の学費は大きく異なります。国立大学の大学院は、入学金や初年度の授業料などを合わせると、研究科にかかわらず一律で約82万円です(法科大学院のみ授業料80万4,000円)。
一方、私立大学の大学院は、修士課程で約100万円、博士課程で約85万円、専門職学位課程で約130万円程度と、国立大学の大学院に比べて費用が高くなっています。

参考:文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について

参考:文部科学省「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令

大学院に進学して将来の選択肢を広げよう

大学院に進学すると、より高度な専門性が身に付き、専門分野の研究者や専門的な知識を必要とする職業に就けることがメリットです。興味のある分野を極めたいとき、またはなりたい職業があるときは、大学院に進学することで夢に近づきやすくなるでしょう。
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