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貸与型奨学金とは?給付型との違いや無利子タイプの採用基準を解説

2023.01.31

カテゴリー:
JASSOの奨学生証と返還誓約書

入学金や授業料など、多額の費用がかかる大学進学。我が子の門出を祝いながらも、経済的な不安を抱えている保護者もいることでしょう。そこで活用したいのが、進学をお金の面でサポートしてくれる奨学金制度です。

奨学金には「給付型」と「貸与型」の2種類があります。給付型はお金を返す必要がない奨学金ですが、多くの人が利用しているのは、返済する必要がある貸与型です。

この記事では、貸与型奨学金の種類や給付型奨学金との違い、貸与型のメリット・デメリットのほか、採用基準や利用時の注意点などについて解説します。

なお「給付型奨学金のことがわからない」という人は、下記のコラムをぜひ読んでみてください。

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貸与型奨学金とは大学在学中に借りられて卒業後に働いて返すお金

貸与型奨学金(たいよがたしょうがくきん)とは、大学在学中にお金を借り、卒業後に働きながら返すタイプの奨学金。貸与型奨学金を運営する団体は、自治体や大学、民間団体などさまざまです。最もポピュラーなのは、実質的に国の貸与型奨学金である独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)のものでしょう。

貸与型奨学金を利用するには、「学力基準」や「家計基準」といった基準が設けられており、誰でも利用できる制度というわけではありません。ただし、これらの基準をクリアすれば利用可能に。それは大学入学前の高校生だけでなく、高校卒業後2年以内の過年度生でも申込み可能なのです。

貸与型奨学金の種類

JASSOの貸与型奨学金には、無利子の「第一種奨学金」と有利子の「第二種奨学金」、そして「入学時特別増額貸与奨学金」の3種類があります。

入学時特別増額貸与奨学金とは、入学月の1回のみ借りられる、有利子の奨学金です。第一種または第二種いずれかの奨学金を利用していることが前提となっていて、なおかつ日本政策金融公庫の「国の教育ローン」に申し込んだものの、世帯収入が低いことなどを理由に利用できなかった家庭の生徒に貸与されます。

■JASSOの貸与型奨学金の種類

奨学金の種類利子貸与方法と振込日貸与期間
第一種奨学金なし原則、毎月1回振込(毎月11日)卒業(修業年限)まで
第二種奨学金あり原則、毎月1回振込(毎月11日)卒業(修業年限)まで
入学時特別増額貸与奨学金あり1回のみ(上記の初回振込時)1回のみ

出典:独立行政法人日本学生支援機構「貸与奨学金案内

※入学時特別増額貸与奨学金の給付型奨学金との併用、または単独利用は不可

貸与型奨学金は給付型奨学金との併用ができますし、第一種奨学金と第二種奨学金も同時に利用できます。ただし、これらの併用貸与は返すお金の総額が大きくなり、同時に返済時の負担も大きくなることに注意してくださいね。

給付型奨学金との違い

給付型奨学金は、お金を返す必要がない奨学金制度で、入学金や授業料が免除・減額されます。免除か減額かは、世帯収入によって決まります。審査に通れば、定められた金額の奨学金を受け取ることができるのです。

一方、貸与型奨学金は月ごとに決められた金額を受け取り、入学金や授業料のほか、教科書代や通学費などに利用できます。また、月々の金額は、受け取る側が選択できるのも大きな違いです。

給付型奨学金は、返済の必要がないのはうれしいですが、採用基準は貸与型奨学金に比べてかなり厳しいのが難点。2021年度の大学進学者の給付人数は約23万人で、貸与型奨学金(第一種・第二種計)の約86万人に比べるとその少なさが際立ちますよね。

貸与型奨学金の内容

貸与型奨学金とは、具体的にどのような制度なのでしょうか。続いては、貸与型奨学金の制度の内容について解説します。

貸与型奨学金の種類と申込み時期

貸与型奨学金の申込みには、大学入学前に申し込む「予約採用」のほか、在学中に申し込む「在学採用」の2つの方式があります。

このほか、在学中に保護者(生計維持者)の失業や破産、あるいは災害などで家計が急変したときに申込み可能な「緊急採用(第一種奨学金)」「応急採用(第二種奨学金)」も用意されています。

予約採用は進学前の春、在学採用は春と秋といったように申込み時期が決められていますが、緊急採用・応急採用は緊急対応用のため、いつでも申込みが可能なのです。

■奨学金の種類別の申込み時期

種類申込み時期
予約採用(第一種・第二種奨学金)進学前/春
在学採用(第一種・第二種奨学金)在学中/年2回(春、秋)
緊急採用(第一種奨学金)在学中/随時
応急採用(第二種奨学金)在学中/随時

出典:独立行政法人日本学生支援機構「2022年度在学者用貸与奨学金案内(大学等)

※緊急採用・応急採用は、家計急変事由が発生した月の翌月を起点にして12ヵ月以内に申込みをする必要あり

貸与型奨学金の貸与月額

貸与型奨学金では、大学在学中に毎月決められた金額が振り込まれます。月々の貸与金額は、受け取る学生が下記の中から金額を自由に決めることができます。

■第一種奨学金の貸与月額

区分自宅から通学する場合自宅外から通学する場合
国公立大学2万円、3万円、4万5,000円2万円、3万円、4万円、5万1,000円
私立大学2万円、3万円、4万円、5万4,000円2万円、3万円、4万円、5万円、6万4,000円

出典:独立行政法人日本学生支援機構「第一種奨学金の貸与月額(平成30年度以降入学者)

■第二種奨学金の貸与月額

区分貸与月額
国公立大学・私立大学2万〜12万円(1万円刻みで選択可能)

出典:独立行政法人日本学生支援機構「第二種奨学金の貸与月額

※私立大学の医・歯学課程の場合は上限16万円、私立大学の薬・獣医学課程の場合は上限14万円

第二種奨学金の金利

第二種奨学金は、返済額に金利がつく有利子の奨学金です。

金利については「利率固定方式」と、市場金利に合わせて概ね5年ごとに見直す「利率見直し方式」の、いずれかを選択できます。利率固定方式、利率見直し方式ともに、金利は年3.0%を上限としています。

貸与型奨学金のメリット・デメリット

奨学金を口座からおろす学生

貸与型奨学金を受給するとさまざまなメリットが得られますが、同時にいくつかのデメリットもあります。ここでは、貸与型奨学金のメリット・デメリットについて解説します。

貸与型奨学金のメリット

貸与型給付金は、お金を返さなくてもいい給付型奨学金に比べて、採用のハードルが低いのが特徴です。そのため、大学進学に際して借りる人も多く、その借りやすさは大きな魅力です。

第一種奨学金は無利子ですが、一方で、第二種奨学金も金利は上限3.0%に設定されており、返済が必要な民間の「教育ローン」より低いのがポイント。安心して利用できるのはうれしいですよね。

また、第一種奨学金の対象学生が卒業後に、一定の収入を得るまで返済猶予を認めてくれる「猶予年限特例」があるのもメリットです。

貸与型奨学金のデメリット

貸与型奨学金は「お金を借りる」制度のため、基本的に卒業後、毎月のJASSOへの返済が必要です。在学中の貸与金額にもよりますが、場合によっては30〜40代まで返済する可能性も。結婚や育児、住宅の購入などでまとまったお金がいるときに、奨学金の返済が重荷になることもあるので、借りすぎには注意したいところ。

有利子の第二種奨学金は金利がプラスされるため、借りた金額よりも返す金額が多くなってしまうのもデメリットといえます。貸与型奨学金を利用するときには、借りたお金を返すために安定収入が得られる職業探しを考えたほうがいいかもしれませんね。

貸与型奨学金の採用基準

貸与型奨学金には、「学力基準」と「家計基準」の採用基準があります。ここでは、第一種奨学金と第二種奨学金それぞれの採用基準を見ていきましょう。

第一種奨学金を進学前(予約採用)に申し込む場合の採用基準

第一種奨学金を進学前(予約採用)に申し込む際には、学力基準と家計基準は次のようになっています。

・学力基準

第一種奨学金の予約採用における学力基準は、「高校在学時の全履修科目の評定平均値が5段階評価で3.5以上」あるいは「高等学校卒業程度認定試験合格者」と定められています。

ただし、保護者(生計維持者)の住民税が非課税であったり、生活保護受給世帯であったりと社会的養護を必要としている世帯で、「特定の分野で特に優れた資質能力があり、特に優れた学習成績を修める見込みがある」「学修意欲があり、特に優れた学習成績を修める見込みがある」のいずれかの条件を満たすと、評定平均値3.5以上といった学力基準を満たしているものと見なされます。

出典:独立行政法人日本学生支援機構「進学前(予約採用)の第一種奨学金の学力基準

・家計基準

世帯収入(所得)を主に見られる家計基準は、「世帯人数」「給与所得・給与所得以外のいずれか」などによって異なります。

給与取得とは会社員や公務員など勤め人の収入金額や、年金、生活扶助、手当など。一方の給与所得以外は、自営業などの人の所得金額を指します。収入・所得の上限金額の目安は下記のとおりです。

■第一種奨学金の世帯収入・所得の上限額の目安

世帯人数給与所得
(所得証明書等における控除前の収入金額)
給与所得以外
(所得証明書等における所得金額)
3人657万円286万円
4人747万円349万円
5人922万円514万円

出典:独立行政法人日本学生支援機構「進学前(予約採用)の第一種奨学金の家計基準

JASSOのウェブサイトでは、収入や所得などからどの奨学金に該当するかを確認できる「進学資金シミュレーター」が用意されています。ぜひチェックしてみてください。

進学資金シミュレーター

第一種・第二種奨学金の予約採用の申込み方法

貸与型奨学金の予約採用は、高校でもらう必要書類に記入し、高校に書類を提出して申し込みます。このとき、インターネットで申込み情報の入力が必要です。

インターネットでの申込み後1週間以内に、奨学金を受け取る生徒自身(受給者)と生計維持者(保護者)のマイナンバー提出書類をJASSOに郵送します。

秋から冬には採用候補者が決定し、高校から「採用候補者決定通知」が交付されます。

貸与型奨学金申請・利用時の注意点

奨学金の返済を行う社会人

貸与型奨学金を申請する際や奨学金利用時には、いくつか気をつけたいポイントがあります。貸与型奨学金申請・利用時の注意点についても確認しておきましょう。

借りすぎると卒業後に返済が苦しくなるおそれがある

貸与型奨学金の返済は、社会人1年目の10月から毎月、口座引き落としによって行われます。返済方法は、大学卒業後、社会人になってからの年収に応じて返済金額が決定する「所得連動返還方式」と、毎月定額で返済していく「定額返還方式」の2種類があります。

ただ、いずれも毎月、数万円の返済が必要になる場合があり、さらに40代まで返済が続く可能性もあります。借入額は慎重に検討してください。

在学中の経済的な負担を軽くして、学業に専念することは大切です。でも、将来の自分が困らないように計画的に利用したいですね。

留年・休学すると在学中に奨学金貸与が終了する

JASSOの貸与型奨学金は、成績不振で留年しても貸与が止まることはありません。しかし、当初の卒業予定日を超えてしまうため、大学在学中に貸与が終了することになります。さらに、卒業予定日を超えると奨学金の返済請求が発生するので、「在学猶予願」を提出して返済自体を延期する手続きが必要になるのです。これは休学した場合も同様です。

留年・休学によって奨学金が支給されなくなると、学費や生活費の工面が必要になります。留年してしまうとこのような事態に陥るため、学業に力を注ぎましょう!

ちなみに、給付型奨学金は、大学在学中に留年すると奨学金の支給が停止されます。

大学進学時にオススメの貸与型奨学金5選

貸与型奨学金は、JASSOの第一種奨学金のほかにも、いくつかあります。ここでは、無利子で利用可能な貸与型奨学金をご紹介します。運営団体によって条件が異なりますので、それぞれの特徴を押さえておいてください。

独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「貸与奨学金」

独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)は、国の直轄組織として、信頼性の高い奨学金事業の運営団体です。第一種奨学金は、学力基準や家計基準をクリアできれば、広く利用できます。

独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)

都道府県・指定都市社会福祉協議会「各種貸付制度」

介護福祉士、保育士を養成する学部に進学する場合、都道府県・指定都市社会福祉協議会(社協)の「各種貸付制度」の利用ができます。この制度を使うと、介護福祉士や保育士などの資格を取得して職に就き、一定期間が経つことで借入金の返済が免除される仕組みです。

都道府県・指定都市社会福祉協議会(リンク集)

あしなが育英会「大学・短期大学奨学金」

あしなが育英会は、病気や災害などで保護者を亡くした子供や、保護者が障害により働けない家庭の子供を対象にした奨学金制度を実施しています。大学進学の場合には無利子で月額4万円、もしくは私立大学入学一時金40万円の貸与型奨学金が用意されています。返済期間も20年と長くとられていることが特徴です。

あしなが育英会

厚生労働省「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」

厚生労働省が所管し、各地方自治体の福祉担当窓口が運営する「母子父子寡婦福祉資金貸付金」は、母子家庭・父子家庭など、ひとり親家庭に対する支援制度です。例えば、東京都では、東京都に6ヵ月以上住んでいて、かつ20歳未満の子供がいる母子家庭・父子家庭を対象に、大学進学時だと「修学資金」「修学支度資金」を設けています。貸付限度額は、校種や自宅か自宅外かによって異なります。

東京都福祉保健局

公益財団法人交通遺児育英会「貸与型奨学金(一部給付あり)」

公益財団法人交通遺児育英会は、保護者が道路上の交通事故によって亡くなった家庭の子供、または重度の後遺障害になった保護者を持つ子供を対象に、無利子の貸与型奨学金制度を設けています。

貸与金額の一部は返済が不要なので、経済的負担を軽減できるでしょう。

公益財団法人交通遺児育英会

貸与型奨学金によって、大学で学びたいことを学ぼう!

奨学金の案内

「経済的な負担は不安だけれど、大学に進学して学びたいことがある!」という高校生の皆さんにとって、貸与型奨学金によるサポートはたいへん心強いものです。保護者の皆さんも金銭的なサポートを得られれば、子供を安心して大学で学ばせられますよね。貸与型奨学金は、比較的利用しやすい奨学金です。ぜひJASSOの奨学金を中心にチェックしてみましょう!

大金がかかる大学進学だからこそ、奨学金以外の教育費の入手手段についてもよく知っておきたいところ。下記の記事も参考にして、進学先と教育費を検討してくださいね。

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