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薬学部とは?6年制と4年制の違いや学びの内容、主な就職先を解説

2025.06.04

カテゴリー:
薬学部の学生たち

「薬学部を卒業したら何になれるの?」「6年制と4年制では何が違うの?」と疑問に思っている人もいるでしょう。

薬学部の選択は将来のキャリアを考えるうえで重要なポイントになります。とくに知っておきたいのは、6年制と4年制の違いです。6年制は薬剤師の国家試験受験資格が得られますが、4年制では得られません。4年制は主に医薬品などの研究者養成を目的としています。

この記事では、薬学部で学ぶ内容や主な就職先、向いている人の特徴などを解説します。記事を読めば、自分に合った進路を納得して選べるでしょう。

薬学部は単に「薬剤師になるための学部」ではなく、製薬企業の研究開発、公的機関での研究、医薬情報担当者(MR)など、さまざまな道が広がっています。

薬学部とは?

薬学部では、医薬品に関する幅広い知識を学習します。初めに化学や生物学といった基礎科学を学び、それをもとに「基礎薬学」を学ぶのが特徴です。基礎薬学では、新しい薬を作るために必要な研究を行います。

基礎薬学を学んだあとは、進路によって学ぶ内容が異なります。4年制では、研究室に所属して独自のテーマに取り組むのが特徴です。

一方、6年制では「医療薬学」を学び、薬の製造過程や薬が病気にどう効くかなど、医療現場で役立つ実践的な知識を深めます。薬の開発から臨床応用まで、薬に関する総合的な専門家を目指します。

薬学科(6年制)と薬科学科(4年制)の違い

同じ大学の薬学部でも6年制の学科と4年制の学科があります。それぞれの特長を比較したので、進路選びの参考にしてください。

 6年制4年制
主な学科名・医療薬学科 ・臨床薬学科・創薬科学科 ・生命薬科学科
学びの目的薬剤師の養成医薬品などの研究者養成
薬剤師資格の取得×

薬剤師を目指す場合は、6年制の学科に進学しましょう。卒業時には、薬剤師国家試験の受験資格を取得できます。6年制では、医薬品の開発・生産から、医療現場での管理や投薬などを総合的に研究するのが特徴です。

「薬を作りたい」「研究したい」という人は、4年制の薬学部がおすすめです。病気のメカニズムと薬の作用の関連性を学び、新しい医薬品の開発に取り組みます。卒業後は、多くの学生が大学院へ進学するのが一般的です。

重要なポイントとして、4年制では薬剤師国家試験の受験資格は得られないため、進路選択の際はよく理解しておきましょう。

参照:薬学科と薬科学科の違いは何ですか?|広島大学薬学部FAQ

薬学部の主な就職先

ドラッグストアにいる薬剤師

薬学部の主な就職先は、以下のとおりです。

  • 病院や薬局、ドラッグストア
  • 製薬会社
  • 化粧品メーカー
  • 食品メーカー・飲料メーカー
  • 公務員

薬学部の卒業後の進路は、6年制と4年制のどちらを修了したかによって異なります。6年制を卒業した人の多くは、薬剤師となり、病院や薬局、ドラッグストアに勤務します。4年制を卒業した人の多くは、製薬会社やメーカーに入って研究・開発職に就くのが一般的です。
詳しく解説します。

病院や薬局、ドラッグストア

6年制の薬学部を卒業した人の多くは、薬剤師として病院や薬局、ドラッグストアに就職します。

病院の薬剤師は、入院・外来患者への調剤や服薬指導、医師への薬の情報提供を行います。また、チーム医療の一員として他の医療スタッフと連携するのが特徴です。調剤薬局では、医師の処方せんにもとづく調剤や服薬指導が中心です。患者さんの服用歴を管理し、副作用や飲み合わせについてもアドバイスします。

ドラッグストアでは、市販薬の販売や相談対応も行い、お客様の健康をサポートします。

薬剤師については、以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。
薬剤師の気になる年収や月収は?就職実績があるおすすめの大学

ドラッグストアの一例は、以下のとおりです。リンク先では、各企業の特徴や就職した人の出身大学も確認できるので、進路選びの参考にしてみてください。

【ドラッグストアの一例】

製薬会社

製薬会社では主に三つの職種で薬学部卒業生が活躍しています。MR(医薬情報担当者)は、医師や医療従事者に対して医薬品の情報提供や営業活動を行う職種です。最新の薬の効果や使用法、副作用などの専門知識を伝え、医療現場と製薬会社をつなぐ仕事です。

「研究職」は病気の原因や治療法を研究し、新しい医薬品の有効成分の開発に取り組みます。「開発職」は開発中の医薬品の治験や臨床試験を計画・実施し、安全性と有効性を検証する役割を担います。

MRや製薬業界に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

MR(医薬情報担当者)とは?仕事内容や年収、目指せる大学の学部を紹介

製薬業界の魅力はどのようなところ?主な職種とおすすめの学部

製薬業界の一例は、以下のとおりです。リンク先では、各企業の特徴や就職した人の出身大学も確認できるので、進路選びの参考にしてみてください。

【製薬会社の一例】

化粧品メーカー

化粧品メーカーでは、薬学部で学んだ専門知識を活かして研究・開発職として活躍できます。新商品の開発や既存製品の改良、肌や皮膚に効果的な成分の研究、製品の安全性検証などが主な業務です。

生物学や物理学、化学などの知識を応用し、皮膚への浸透性や有効成分の安定性など科学的な視点から製品開発に取り組みます。化粧品業界については、以下の記事でも詳しく解説しています。

化粧品業界の魅力はどんなところ?主な職種とおすすめの学部

化粧品メーカーの一例は、以下のとおりです。リンク先では、各企業の特徴や就職した人の出身大学も確認できるので、進路選びの参考にしてみてください。

【化粧品メーカーの一例】

食品メーカー・飲料メーカー

食品メーカーや飲料メーカーは、薬学部で学んだ原材料や添加物についての専門知識、食の安全に関する知見を活かせる職場です。

製品の品質管理部門で、食品の安全性を確保するための検査業務や、研究開発部門で健康に配慮した新製品の企画開発に携われます。

食品・飲料メーカーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
食品メーカー業界の魅力は?主な職種とおすすめの学部

飲料業界とは?業務内容や就活生に人気の理由、大学と学部学科の選び方

【食品・飲料メーカーの一例】

公務員

公務員薬剤師は国家公務員と地方公務員に分けられます。国家公務員の薬剤師は主に厚生労働省などの省庁で総合職として働き、医薬品審査や薬事行政の企画立案、食品安全対策など幅広い業務に携わります。

実は、覚醒剤や大麻などの違法薬物の取締りを行う麻薬取締官も国家公務員で、薬学部卒業者の就職先の一つです。薬学の専門知識を活かして違法薬物の鑑定や捜査にあたり、社会の安全を守る重要な役割を担っています。

国家公務員は、全国への異動の可能性があるのが特徴です。一方、地方公務員としての薬剤師は、都道府県や市区町村に所属します。公立病院での調剤業務や保健所での衛生監視、研究所での試験検査など、配属先によって業務内容が大きく異なります。

行政部門と医療機関の間で異動することもあり、多様なキャリアを築くことが可能です。転勤は基本的に県内に限られるため、地域に根ざした活動を望む人に適しています。

薬学部に向いている人

化学実験をする高校生たち

薬学部に向いている人の特徴は、以下のとおりです。

  • 医学・健康分野に興味がある人
  • 理系科目(とくに化学や物理)が得意な人
  • 人にやさしくできる人

それぞれ解説します。

医学・健康分野に興味がある人

「人の体の仕組みが知りたい」「なぜこの薬が効くんだろう」と思ったことがある人は、薬学部に向いています。薬学部では薬が人体に及ぼす影響や仕組みを深く学ぶため、化学や生物に興味がある人の好奇心を満たせます。

将来、医療チームの一員として患者さんの治療をサポートしたい、新薬開発を通じて病気で苦しむ人を救いたいといった、人の健康に貢献する意欲がある人に最適な学部です。

理系科目(とくに化学)が得意な人

薬学部では医薬品の構造や性質を理解するために、理系科目を深く学びます。実験データを分析したり、化学反応のメカニズムを考えたりすることに喜びを感じられる人に向いています。

薬学部の入試では、化学はほぼ必須科目です。加えて生物や物理、数学から選択するパターンが一般的です。薬学部への入試において、化学はとくに重視される科目となっています。入学後の専門課程で必要となる知識の土台として、とくに有機化学と無機化学の分野からの出題比率が高い傾向にあります。

人にやさしくできる人

「人の話をじっくり聞ける」「相手の立場に立って考えられる」という人は、薬学部、とくに薬剤師を目指す場合に大きな強みとなります。薬学の知識は人の健康や命に直結するため、単に薬の知識があるだけでなく、その知識を患者さんの状況に合わせて活かせる思いやりが重要です。

たとえば、高齢者には飲み忘れ防止の工夫を考えたり、子どもには苦い薬を飲みやすくする方法を提案したり、粉薬が苦手な人にはカプセルや錠剤という別の選択肢を案内するなど、患者さんそれぞれの状況に合わせたきめ細やかな対応が求められます。

治療は薬を処方して終わりではなく、確実に服用され、効果を発揮してこそ意味があります。患者さんの生活習慣や悩みを理解し、適切な助言ができる温かい心を持った人に向いている分野です。

薬剤師の仕事に興味がある人は、以下の記事も参考にしてみてください。
医療系学部・大学セミナー&進学ガイダンス講演会レポート 明治薬科大学による薬剤師の仕事についての講演

薬学部のある大学

会話をする薬学部の学生たち

薬学部のある大学を国公立と私立に分けて紹介します。

【国公立】

【私立】

ほかにも薬学部を設置している大学を知りたい人は、逆引き大学辞典の「系統別学問内容リサーチ」を活用してみてください。

薬学科や薬科学科を設置している大学がわかるので、進路選びの参考になるでしょう。
>>薬学部のある大学を見てみる

薬学部の学費

薬学部の学費は、6年制と4年制で大きく異なります。4年制薬学部の学費は、他の理系学部とほぼ同等の水準となっています。6年制の薬学部の学費目安は、以下のとおりです。

 6年制薬学部4年制大学(理系)4年制大学(文系)
国立大学約350万円約240万円約240万円
公立大学340~400万円約250万円約250万円
私立大学1,000万円前後550万円400万円

参照:国公私立大学の授業料等の推移|文部科学省
※2025年3月時点
最新の情報は各大学のホームページでご確認ください

私立大学の6年制の薬学部は、国公立と比べ3~4倍の学費がかかります。経済的な負担を考慮して、各種奨学金制度が設けられているので、検討するのもよいでしょう。

日本学生支援機構の奨学金や大学独自の支援制度を利用することで、学費負担を軽減しながら薬学の専門知識を身に付けられます。

奨学金については、以下の記事で詳しく解説しています。
奨学金の正しい使い道は?奨学金の利用目的や大学生活でかかるお金

薬学部の学びのながれ

薬学部の学びのながれについて、明治薬科大学の2025年のパンフレットを参考にまとめました。

【薬学科(6年制)の学びのながれ】

 薬学科(6年制)
1~2年次【病気のしくみと薬の作用を理解する】 ・薬学基礎(化学、生物学、物理学など) ・病院、薬局、研究所などを見学 ・教養科目
3~4年次【医療と薬の科学を学ぶ】 ・免疫学、薬理学、衛生化学、臨床生化学など ・薬剤学、調剤学、製剤学、薬物治療学など
4年次後期【薬学教養試験(CBT、OSCE)を実施】 5年次の実務実習に向けて、両試験に合格する必要がある
5年次【病院・薬局で22週間の実習】 病院や薬局で薬剤師の仕事を実践的に学ぶ ・薬の調剤や服薬指導など、薬剤師に必要な基本的な技術を身に付ける
6年次・5年次までの実習経験を活かして、科学的知識と医療現場の実践をつなげる学習 ・薬剤師国家試験に向けた総合的な復習と対策 ・卒業研究の完成により研究能力を高める

参照:学びのながれ|明治薬科大学

4年次に行われるCBTとOSCEは、薬剤師養成課程である6年制薬学科のみの試験です。両方に合格することで5年次の実務実習に進めます。

明治薬科大学の特徴として、5年次には学生の進路希望に合わせたより実践的な実習や研修プログラムが用意されています。他の薬科大学のプログラムについては、各大学のホームページでご確認ください。

【生命創薬科学科(4年制)の学びのながれ】

 生命創薬科学科(4年制)
1~2年次【生命科学と薬学の基礎を学ぶ】 ・物理化学、有機化学、生化学などの基礎科目 ・教養科目
3年次前期【研究志向のローテーション実習・演習】 ・創薬科学や医薬品開発に関する専門科目を学ぶ ・生命科学系研究室と創薬科学系研究室それぞれから2つずつ、合計4つの研究室で実習し、興味のある研究分野を探す
3年次後期【プレ卒業研究を通じて自分の専門研究領域を決める】 ・前期のローテーション実習をもとに一つの研究室を選び、プレ卒業研究に従事する ・将来自分が専門にしたい研究領域を定める
4年次【選択した研究室で本格的な卒業研究を遂行】 ・卒業研究を通じて、高度な知識や技術、探求心、発表力を養う

参照:学びのながれ|明治薬科大学

薬科学科(4年制)は研究者や技術者の育成を目指しており、早くから研究活動に専念できるのが特徴です。卒業後は、より専門性を高めるために大学院へ進学するのが一般的です。

薬学部で行われている研究

薬学部での研究中の様子

薬学部では、どのような研究が行われているのでしょうか。例として、日本大学で行われた研究「抗原・アジュバント複合化ナノ粒子を用いた経皮ワクチンシステムの開発」の研究について紹介します。

従来のワクチンは注射による接種が一般的ですが、針を使わずに皮膚から吸収できるワクチン(経皮ワクチン)の開発が求められています。この研究では、ワクチンの成分である抗原タンパク質を皮膚から効率よく吸収させる新しい方法を開発しました。

研究チームは、油と水をうまく混ぜ合わせる特殊な技術を使って、通常は油に溶けにくいワクチン成分を安定して含む新しい薬の形を開発。この製剤は皮膚の微細な隙間に入り込みやすい特性を持ち、実験では蛍光で標識した抗原の皮膚内への浸透が確認できました。

マウスでの実験では、皮膚に塗って密封することで抗体の生成が確認できましたが、注射に比べるとまだ効果は小さいことがわかっています。

今後は、この技術をさらに改良し、より効果的で痛みのないワクチン接種方法の実現が期待されます。

ほかにも薬学部で行われている研究を知りたい方は「スタビキ」を活用してみてください。各大学の外国語学部で行われている研究が分かるので、進路選びの参考になります。
>>スタビキで薬学部の研究を見てみる

薬学部についてもっと知りたい人は「JOB-BIKI」で進路検索!

薬剤師になった薬学部の学生

薬学部では、医薬品に関する幅広い知識を学びます。6年制は薬剤師の養成を目的とし、基礎科目から始まり、4年次に薬学共用試験(CBT・OSCE)を受け、5年次には病院・薬局での実務実習を行うのが特徴です。

卒業後は薬剤師国家試験の受験資格が得られます。卒業生は主に調剤薬局や病院薬剤部で薬剤師として働くほか、製薬企業のMR職、ドラッグストア、公務員など幅広い医療関連分野で活躍しています。

一方、4年制は創薬研究者や開発技術者の育成が目的です。「薬を作りたい」「研究したい」という人に向いており、卒業後は多くが大学院に進学します。就職先としては、製薬企業の研究開発部門やバイオテクノロジー企業、化学・食品メーカーの研究職などで、新薬開発や基礎研究に携わるキャリアを歩むことが一般的です。

薬学部を設置している大学を知りたい人は、逆引き大学辞典の「系統別学問内容リサーチ」を活用してみてください。

薬学科や薬科学科を設置している大学がわかるので、進路選びの参考になるでしょう。
>>薬学部のある大学を見てみる

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