看護学部とは?目指せる資格やカリキュラム、向いている人を解説
2025.07.31

「看護学部って、どんなことを勉強するの?」
「私は看護学部に向いているのかな?」
と不安や疑問を感じていませんか?
人の役に立ちたい気持ちはあるけれど、看護学部で学ぶ内容や目指せる資格、卒業後の働き方がよくわからないと、本当に進学していいのか迷ってしまいます。事前に調べずに進路選択した場合、入学後にイメージしていた大学生活とのギャップに戸惑うかもしれません。
この記事では、看護学部の座学・実習のカリキュラムや取得できる資格、看護学部を設置する大学、さらにどんな人が向いているかまでわかりやすく解説します。看護学部に対する疑問を一つひとつ解消しながら、ご自身の興味・適正と合っているかの判断にお役立てください。
目次
看護学部とは

看護学部とは簡単にいうと「人の健康や命を守るために、看護の視点から必要な知識や技術を学ぶ学部」です。病気やケガをした人に寄り添い、体や心の回復を支える「最も身近な医療者」として活躍するための土台を築きます。
カリキュラムでは、生体の仕組みや薬物療法などの座学に加えて、病院などの現場で実践力を磨く実習も行います。看護が実践的なケアの活動を指すのに対し、看護学はその理論や技術を体系的に学ぶという違いがあり、看護学部ではこの両面から学びを深めていきます。
卒業後は、看護師・保健師・助産師といった国家試験の受験資格を得られる場合が多く、医療現場で人の命を支える仕事に就けるでしょう。看護学部に進んだ学生の約8割が看護師、ほかの2割は保健師や助産師、資格を活かせる企業などで活躍しています。
参考:看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査|厚生労働省
看護学部で学べること
看護学部での学びを「座学」「演習・実習」「国家試験対策」に分けて解説します。
看護学部の座学で学べること
看護学部では、人体の構造や病気の基礎知識をはじめ、在宅医療や小児・精神の分野など、多角的な視点で看護学を学びます。看護は「人」に関わる仕事であるため、人間そのものや生活環境、社会の仕組みについての理解も欠かせません。
看護学部の主な学習内容は以下のとおりです。
看護の基礎 | 看護の歴史・理論・哲学・倫理を学び、看護観や思考力を養う |
老年看護学 | 超高齢社会を背景に、高齢者の生活や健康を多面的に学ぶ |
小児看護学 | 障がいのある子どもや、医療的ケアが必要な子どもと家族への支援方法を学ぶ |
母性看護学 | 妊娠・出産・育児に関わる母子のケアや支援の知識を深める |
これらの学びをとおして、幅広い看護の視野と基礎力を身につけていきます。
看護学部の演習・実習で学べること
看護学部では演習や実習を通じて、座学で得た知識を「医療現場で活かせるスキル」として定着させます。まずは学内で注射や点滴といった基本的な医療技術を練習し、確かなスキルを身につけます。その後、病院や診療所、福祉施設などの医療機関で学ぶ臨地実習に進み、実際の医療・福祉現場で学びを深めていきます。
実習先の一例は以下のとおりです。
● 大学付属病院
● 訪問看護ステーション
● 保健センターなどの地域医療機関
看護学部の実習時期と実習内容は、以下のとおりです。
実習時期 | 内容 |
1年次 | ・大学に入学してすぐの段階から、地域や病院での見学実習が始まる ・看護職の役割や医療現場の雰囲気に触れ、看護とは何かという基礎的な視点を養う |
2年次 | ・「地域の健康と生活」に焦点を当てた実習 ・地域における保健・医療・福祉のつながりや、生活者としての人々の健康を学ぶ |
3年次 | ・本格的な領域別実習が始まる ・母性、小児、成人、老年、精神、在宅などの施設で、各分野に応じた看護を学ぶ ・専門的な知識と技術を身につける |
4年次 | ・地域包括ケアの視点を踏まえた統合的な実習で、学びの集大成として、実習先で看護を実践する ・自分で考えて行動する力を養い、将来のさまざまな看護の現場に備える |
看護学部の実習では、以下のような力を身につけます。
● 相手の気持ちに寄り添って行動する力
● 正しい知識にもとづき自分で考えてケアする力
● チーム医療に必要なコミュニケーション力
これらをとおして、現場で必要な「考えて動ける看護職」としての力を養います。
国家試験に向けた勉強
大学卒業後すぐに看護師として働くためには、大学4年生の2月に行われる「看護師国家試験」に合格し、看護師資格を取得する必要があります。試験を受けるには、看護師として必要な学科をすべて修め、卒業見込みであることが条件です。
多くの大学では、国家試験対策として特別講座や模擬試験などを実施しています。試験に向けた丁寧なサポートがあるため、安心して学びを深められるでしょう。
看護学部で目指せる資格

看護学部で取得を目指せる資格は以下のとおりです。
【看護学部で取得を目指せる資格】
資格 | 内容 | 備考 |
看護師(国家試験受験資格) | 病気や怪我で療養している人を支援・看護する | ほぼすべての看護学部のカリキュラムが対応している |
保健師(国家試験受験資格) | 行政機関や企業で生活指導、生活環境の調整・指導を行う | 対応カリキュラムのある大学のみ |
助産師(国家試験受験資格) | 妊娠時の保健指導、出産時の介助などを行う | 看護師課程と助産師課程の両方を修了する必要がある |
養護教諭(教員免許) | 学校内で生徒の健康管理や保健指導、心のケアなどを担当する | 大学の養護教諭養成課程を修了すれば、卒業とともに一種養護教諭免許状が取得できる |
助産師の資格を取得するためには、まず看護師国家試験に合格し、そのうえで助産師国家試験にも合格する必要があります。
助産師になるには、看護師としての基礎知識と実践力に加え、出産や母子のケアに関する専門的な学びが求められます。そのため、大学の助産師課程に進む際には、3年次に行われる定員の少ない選抜試験に合格しなければなりません。限られた人数しか進めないため、早い段階からの準備が大切です。なお、女性の身体と心理に寄り添う特性から、助産師になれるのは女性に限られています。
看護学部の主な就職先

看護学部生のほとんどが卒業後、取得した資格を活かせる場所に就職しています。資格別の主な就職先は以下のとおりです。
【看護学部の主な就職先】
資格 | 就職先 |
看護師 | ・病院や診療所 ・看護系大学教員 ・企業の健康管理室 ・介護保険施設 ・事業所、福祉施設 ・訪問看護ステーション ・看護サービス提供事務所 ・企業・団体の研究や開発部門 ・海外での看護活動など |
保健師 | ・保健所 ・市区町村役場 ・保健センター ・企業 ・病院 ・学校の保健室 |
助産師 | ・病院 ・医院 |
およそ8割の看護学部生は、卒業後に外来や病棟、ICUなどの病院に勤務し、看護師としての道を歩みます。看護師以外でも、保健師や助産師の資格を活かして、地域の保健センターや母子保健の現場で働く人もいます。さらに、保育園や幼稚園、医療機器メーカーなど、医療や福祉に関わる幅広い分野への就職も可能です。
災害支援や国際医療協力といった分野で活躍する卒業生もおり、多様な進路が広がっています。
看護師については、こちらでも詳しく解説しています。
看護師の年収と月収は?年齢や都道府県別での違い、就職率が高い大学を紹介
看護学部に向いている人の特徴

看護学部に向いている人の特徴は、以下のとおりです。
● 責任感・使命感が強い人
● 体力と忍耐力がある人
● 協調性やコミュニケーション能力が高い人
● 人の気持ちに寄り添える人
それぞれ解説します。
責任感・使命感が強い人
看護学部では、将来患者の命を預かる看護師になるための専門知識や技術を学びます。そのため、学ぶ内容は多岐にわたり、常に高い責任感を持って行動することが求められます。
また、将来の医療現場で役立つ力を身につけようとする使命感が、学びを深める原動力となります。###体力と忍耐力がある人
看護学部では、講義や実習、国家試験の勉強など、ハードなスケジュールが続きます。さらに、病棟での実習は長時間立ちっぱなしで活動することも多く、精神的なタフさも不可欠です。そのため、体力に自信があり、根気強く学び続けられる人が向いています。
協調性やコミュニケーション能力が高い人
看護はチーム医療の一環として、医師や他職種との連携が不可欠です。患者やその家族との信頼関係を築くことも大切であり、協調性や相手に応じた柔軟なコミュニケーション力が求められます。チーム全体の協力が患者のケアを支える基盤となるため、これらのスキルは非常に重要です。
人の気持ちに寄り添える人
看護学部では、単なる医療技術だけでなく「人を看る力」を育てていきます。病気やけがで不安を抱える人の気持ちを理解し、思いやりをもって対応する力が求められます。看護学は、そのような人間的なケアを深く学べるのがおもしろいところでもあります。人の立場に立って物事を考えられる優しさや共感力を大切にしたい人にとって、看護学は非常に魅力的な学びになるでしょう。
看護学部を設置している大学

看護学部を設置している大学を国公立と私立に分けて紹介します。
【国公立】
- 国立 千葉大学 看護学部 看護学科(千葉県)
- 公立 大阪公立大学 看護学部 看護学科(大阪府)
【私立】
- 西武文理大学 看護学部 看護学科(埼玉県)
- 駒沢女子大学 看護学部 看護学科(東京都)
- 日本福祉大学 看護学部 看護学科(愛知県)
- 新潟医療福祉大学 看護学部 看護学科(新潟県)
- 同志社女子大学 看護学部 看護学科(京都府)
ほかにも看護学部を設置している大学を知りたい人は、逆引き大学辞典の「系統別学問内容リサーチ」を活用してみてください。
看護学部を設置している大学がわかるので、進路選びの参考にしてください。
>>看護学部のある大学を見てみる
看護学部に属している主な学科
看護学部に属している主な学科と特徴は、以下のとおりです。
学科名 | 特徴 |
看護学科 | ・最も一般的 ・看護師の国家資格を目指す |
保健学科 | ・保健師や養護教諭を目指す人向け |
助産学専攻 | ・助産師を目指す ・大学4年+1年の専攻科が必要なことも |
上記の学科以外にも、大学によってさまざまな特色ある学科が設置されています。また、医学部の中に看護学を学べる学科を設置している大学も多数あります。
自分の関心に合った学科を見つけるために、複数の大学情報を比較検討するとよいでしょう。
看護学部で行われている研究
看護学部では、どのような研究が行われているのでしょうか。例として、北里大学で行われた「開発途上国の母子保健人材育成プログラムの客観的評価指標に関する検討」について紹介します。
開発途上国では、予防可能な原因によって妊産婦、新生児、乳幼児が死亡しています。その背景には、財源不足や通信・道路インフラの未整備、保健人材の不足、継続教育機会の不足、継続教育機会の不足により医療サービスの質の担保が困難なことにあります。
そこで看護師免許更新に必要な継続教育単位修得の機会が乏しい発展途上国で、保健省や看護協会、世界保健機関(WHO)、世界銀行が協力し、遠隔教育プログラムを実施したところ、看護職の約4割が参加しました。
本研究ではこの取り組みの効果や、他国への汎用性を調べました。その結果、科学的根拠にもとづく最新知識・技術習得は、臨床実践力の向上や仕事への満足度、自己効力感の向上、院内や基礎教育のカリキュラム改善に役立つことがわかりました。
看護学部に関するよくある質問

看護学部に関するよくある質問として、以下の3つを解説します。
● 医学部・リハビリテーションの職種との違いは?
● 大学で看護を学ぶメリットは?
● 看護学部の面接試験でよく聞かれる質問は?
医学部・リハビリテーションの職種との違いは?
医学部は医師、看護学部は看護師や助産師、保健師を育成する学部です。看護学と医学は、どちらも医療分野に関連していますが、医学は主に病気の診断と治療を中心に学びます。一方、看護学は患者の治療や回復をサポートし、患者の生活全体の支援に重点を置いています。
また、理学療法士や作業療法士は看護学部ではなく、それぞれの専門の養成校で学ぶ必要があります。役割は以下のとおりです。
● 理学療法士(PT):歩く・立つなどの運動機能の回復をサポートする
● 作業療法士(OT):食事や入浴、排泄といった日常生活機能をサポートする
いずれもリハビリのプロですが、看護師は治療のサポートや日常・心のケアも含めより広い範囲で患者を支えます。
医師と作業療法士については、以下の記事でも詳しく解説しています。
医師(医者)になるためにはどのような学部を選ぶ?向いている人ややりがい
大学で看護を学ぶメリットは?
看護学部では、看護師になるための専門知識や技術を学ぶだけでなく、保健師や助産師など、他の資格を目指せる場合もあります。
また大学は資格取得のための学びだけではありません。研究の中で「これからの看護はどうあるべきか」「今の医療や地域の課題に、看護としてどう向き合うか」といった問いに向き合いながら学びます。知識を覚えるだけでなく、自分で調べ、考え、意見を持つ力が求められるのが特徴です。
こうした経験を積むことで、患者への看護はもちろん、チームの中心として活躍したり、将来は教育や研究の道に進んだりと、多様な選択肢が広がります。これからの看護に求められる視点や力を、学びの中で身につけていけるのも大学で看護を学ぶ魅力です。
看護学部の面接試験でよく聞かれる質問は?
看護学部の面接では「なぜ看護学部を目指したのか」「看護師に必要な資質とは何か」など、志望動機や職業観に関する質問が多く見られます。「看護学部で何を学びたいか」というテーマに沿って、自分が看護をとおしてどのような知識や力を身につけたいのかを、具体的に伝えることが求められます。
また、人間性やコミュニケーション力を探る質問も頻出するため、自分らしさを出しながら誠実に答えることが重要です。志望理由を明確にし、看護職への熱意と人間性をしっかりアピールしましょう。
看護学部について「JOB-BIKI」で詳しくリサーチしよう!

看護学部は、看護に関する専門的な知識や技術を学び、将来、看護師をはじめとする看護専門職を目指せる学部です。人の心に寄り添う力や、状況に応じて自ら考え行動する力も養われます。大学によっては保健師や助産師の資格取得も目指せるため、医療や福祉の現場における選択肢が広がるのも魅力のひとつです。
看護学部は責任感・使命感が強い人や協調性やコミュニケーション能力が高い人などに向いています。将来、人の命や健康を支える仕事がしたいと考えている人にとって、看護学部はその夢への第一歩となるでしょう。
看護学部を設置している大学を知りたい人は、ぜひ逆引き大学辞典の「系統別学問内容リサーチ」を活用し、進路選びの参考にしてください。