大学と専門学校の違いは?それぞれの特徴や選び方のポイントを紹介
2024.12.17
「大学と専門学校、どっちを選ぶべき?」
「大学と専門学校の違いって?」
高校生の皆さんの中には、そのように考えている人もいるでしょう。
大学と専門学校どちらを選ぶかで、その先の仕事の選択やキャリアにも影響する可能性があります。
この記事では、大学と専門学校の仕組みや目的の違い、初任給の平均や進学率の割合の違いなどをまとめました。
タイプ別の選び方についても触れているので、大学と専門学校どちらを選ぶべきか迷ったときの参考にしてみてください。
目次
大学と専門学校の違い
大学と専門学校の違いについて知るために、大学と専門学校の概要を簡単にご紹介します。
大学
大学はあらゆる「知」の集まった「学術の中心」です。学術的・理論的な学問を学び、幅広い教養を身につけるための教育機関で、自分の興味関心のあることを研究することができます。
2024年5月時点で国内には813の大学があります。大学は国立大学法人が設置する国立大学と、地方自治体が運営する公立大学、企業や学校法人などの個人が運営する私立大学とに分類されます。
国公立大学は学校設立や学習環境などの基準が定められていますが、私立大学は比較的自由度が高いのが特徴です。
参考:文部科学省
大学は「高等教育機関」に属します。「高等教育機関」は初等中等教育の次段階である高等教育を提供する教育機関の総称です。初等中等教育でも最低限の学びは得られますが、自己実現や社会発展のためにより深く学術を追求したい人には高等教育機関への進学が推奨されています。
大学は、高校よりさらに専門的に深く学術を追求できる場所といえるでしょう。
専門学校
専門学校は、主に実践的な職業教育をおこなっているのが特徴です。各分野の理論に加え、企業等と連携した授業や実習、演習などがおこなわれるところもあり、卒業後の進路も各専門分野に直結していることがほとんどです。これは、専門学校が学校教育法で「専門課程を置く専修学校」と位置づけられているためです。大学のように「高等教育機関」に属します。
専門学校は、工業、農業、医療、衛生、教育・社会福祉、商業実務、服飾・家政、文化・教養、の8つの分野に渡り、専門的な知識、技術、国家資格を含む多様な資格が取得可能です。大学卒業でも取得できる資格はありますが、大学は4年~6年で卒業するのに対し、専門学校は2年で卒業できる場合もあるため、大学より早く資格を取得できます。
専門学校も大学と同じく、国立・公立・私立があります。国公立は医療看護関連か農業関連に集中しており、全体の約90%が私立の専門学校です。
短期大学
短期大学(短大)は、大学と専門学校の利点を併せ持つ大学です。専門学校と同様に二年で専門領域を学べますが、大学と同様に単位制であることがほとんどです。専門学校に比べて学べる範囲は広く、クラブやサークル活動は充実していますが、大学と比べると卒業後の選択肢は絞られる傾向にあります。
大学と専門学校の比較表
大学と専門学校の違いを、項目に分けて一覧表にしました。比較して見てみましょう。
大学 | 専門学校 | |
目的 | 学術の中心として広く知識を授け、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする | 実践的な職業教育でプロフェッショナルを育成する |
教育内容 | 専門分野に関する学術的な理論や知識を体系的に学び、一般教養についても幅広く学ぶ | 特定の職業に直結する実践的な技術や知識を学ぶ |
修業年限 | 4年 (医学部・歯学部などは6年) | 2年 (3年、4年の課程もある) |
学費(初年度納付金) | 国立:約81万円(標準額) 私立:約134万円(平均) | 約125万円(平均) |
卒業に必要な単位(授業時間) | 124単位 | 年間800時間以上 ※一部単位制の学校もある |
1コマの授業時間 | 90分授業が多い | 50分、90分の授業が多い ※学校や授業によって異なる |
履修科目・時間割 | 選択科目が多く、時間割も含めて自分で自由に決められる余地が大きい | 大学と比べると選択科目は少なく、時間割も決められている |
部活・サークル | 専門学校と比べると充実していることが多い ※大学の規模によって異なる | 大学と比べると種類は少ない ※学校の規模によって異なる |
入試方法 | 一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜など | 一般入試(一般選抜)、AO入試(学校によっては総合型選抜)、推薦入試(学校推薦制/自己推薦制 ) |
入試の難易度 | 大学により難易度の差が大きい | 学校や分野による違いはあるが、一般的に大学と比べると入りやすいことが多い |
入試日程(出願開始~試験) | 一般選抜:1~3月 (共通テストは1月、大学の個別入試が2、3月) 総合型選抜:9月~11月 学校推薦型選抜:11月~12月 | 一般入試:11月頃から AO入試:9月頃から 推薦入試:10月頃から |
卒業後の進路 | 就職のほか、大学院進学という選択肢もある | 就職のほか、大学への編入学という選択肢もある |
卒業で得られる学位・称号 | 学士 | 専門士 (4年制以上の場合は高度専門士) |
初任給の平均 | 約22万円※1 | 約20万円※1 |
高校卒業者の進学割合 | 約57.7%※2 | 約21.9%※2 |
※2:令和5年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値|文部科学省
大学と専門学校のメリット、デメリット
大学と専門学校、それぞれ目的やカリキュラムは異なります。自分の学習の目的に合わせて選ぶのが大切ですが、それぞれを選ぶうえでメリット、デメリットはあるのでしょうか。
大学のメリット、デメリット
大学は基本的に、専門学校と比べて自由度が高いのがメリットです。
大学の修業年限は4年~6年と専門学校より長いのが大きな特徴です。そのため、自分が学びたいことや将来の職業について考えながら学ぶことができ、入学当初とは目標が変わってしまっても方向転換することができます。時間割によっては自由時間も多く、サークル活動やアルバイトをする余裕が生まれることもあります。他学部の学生や教員、先輩との交流する機会が増え、人間関係の輪を広げることもできるでしょう。一般教養科目も充実しており幅広い分野の知識を得ることができるという点もメリットのひとつです。
一方、自由度が高い点は人によってはデメリットとなることもあります。自主性がないと何も決められないままだらだらと四年間を過ごしてしまったり、うっかり単位を取り損ねて卒業を逃してしまう可能性もあるでしょう。
また、私立大学だと学費も高く、就職後も奨学金の返済に追われてしまうという学生も少なくありません。
専門学校のメリット、デメリット
専門学校の最大のメリットは、専門性が高く大学や短大では学べないような内容が学べる点です。
実習や演習など実務に直結する内容が多く、現場のプロが教員を務めることもあるため、自分の興味がある分野を徹底的に学べる点は魅力的です。医療・看護系や工業系など、専門分野の業界・職種の就職に強い点は、メリットのひとつといえるでしょう。
また、多種多様なことが学べる大学と異なり、特定の分野を目指す学生が集まっているため、同じ目標を持った仲間を見つけやすいです。二年間という短い期間で効率的に資格を取得できる、という点も大きなメリットでしょう。
一方、大学と異なり在学中に軌道修正をしにくいのがデメリットといえます。就職先も限られてしまうため、入学する際には相応の覚悟が必要となるでしょう。
また、二年間で卒業できるのはメリットですが、その分授業が詰め込まれていて自由な時間をとりにくいです。サークル活動をおこなっている専門学校もありますが、大学に比べると充実度は低いといえるでしょう。アルバイトやサークル活動なども充実させたい、と考える人には、専門学校の自由度の低さはデメリットとなるかもしれません。
大学と専門学校で目指せる仕事
大学と専門学校で目指せる仕事をそれぞれご紹介します。自分がなりたい職業や興味がある分野があれば、職業や取得できる資格から大学か専門学校かを選んでみましょう。
大学卒業で目指せる職業
下記は、大学卒業で取得できる資格と、資格を必要とする職業の一例です。各職業について紹介する記事のリンクがあるので、詳しく知りたい人はそちらの記事も読んでみてください。
取得できる資格 | 資格が必要な職業 |
司法試験合格、司法修習考試合格 | 弁護士 裁判官 検事 |
国家公務員総合職(大卒程度) | 国家公務員 総合職 |
自衛隊幹部候補生(陸・海・空) | 自衛隊 幹部候補生(陸・海・空) |
学芸員資格 | 学芸員 |
教員資格 | 教員 |
裁判所職員採用総合職試験 (家庭裁判所調査官補,大卒程度区分) | 裁判所職員採用総合職 家庭裁判所調査官 |
医師資格 歯科医師資格 獣医師資格 | 医師 歯科医師 獣医師 |
薬剤師資格 | 薬剤師 |
臨床心理士資格 | 臨床心理士 |
また、大卒の資格を必要としなくても、商社など学歴を重視する職業もあります。
商社の仕事についてもっと詳しく知りたいという人は、こちらの記事も読んでみてください。
専門学校卒業で目指せる職業
下記は、専門学校卒業で取れる資格と資格を活かせる職業の一例です。各職業について紹介する記事のリンクがあるので、詳しく知りたい人はそちらの記事も読んでみてください。
専門学校の8分野 | 取得できる資格 | 資格を活かせる職業 |
工業 | 建築士 自動車整備士 危険物取扱者 | システムエンジニア 建築士 自動車整備士 インテリアプランナー など |
農業 | 食品衛生監視員資格 造園技能士 | 食品衛生監視員 ガーデンデザイナー など |
医療 | 看護師 歯科衛生士 臨床検査技師 診療放射線技師 理学療法士 作業療法士 | 看護師 歯科衛生士 臨床検査技師 診療放射線技師 理学療法士 作業療法士 など |
衛生 | 栄養士 調理師 製菓衛生師 管理栄養士 | 栄養士 パティシエ メイクアップアーティスト など |
教育・社会福祉 | 保育士 精神保健福祉士 介護福祉士 | 保育士 精神保健福祉士 介護福祉士 など |
商業実務 | 旅行業務取扱管理者 税理士 公認会計士 | 税理士 公認会計士 秘書 旅行業 など |
服飾・家政 | ファッション販売能力検定 ファッションビジネス能力検定 貴金属装身具製作技能士 | スタイリスト アパレル店員 マーチャンダイザー ジュエリーデザイナー など |
文化・教養 | 全国通訳案内士 司法書士 行政書士 公務員 NSCA認定パーソナルトレーナー | プロダクトデザイナー 通訳 トリマー 公務員 司法書士 行政書士 スポーツインストラクター など |
職業別!大学と専門学校のメリット・デメリット
大学と専門学校、どちらでも目指せる仕事もあります。以下は一例ですが、職業別に大学と専門学校のメリットとデメリットを見てみましょう。
看護師
大学で看護師を目指す場合、看護師についての知識をじっくりと学べるというメリットがあります。看護師以外の将来の可能性を考えられる点や、初任給や昇給の条件が専門学校卒より良い点もメリットといえるでしょう。
しかし学費など経済面で苦労する可能性がある点や、専門学校に比べて入試が難しい可能性がある点はデメリットになるかもしれません。
看護師資格が得られる専門学校は、基本的に三年制です。そのため四年制の大学より早く看護師として働けるというメリットがあります。看護師としての実習が多い点や、大学に比べて学費を抑えられる点もメリットでしょう。しかし三年制で授業が過密になりやすい点は、デメリットに感じるかもしれません。
システムエンジニア
大学でも専門学校でも、ITに関する専門的な知識を学べばシステムエンジニアになれる可能性があります。大学進学の場合はじっくりIT知識を学べる他、就職や昇給の際に大卒だと有利に働くこともあるでしょう。
専門学校に進学した場合は、大学より短期間でエンジニアスキルを学べて学費を抑えられるというメリットがある一方、卒業後の就職先の幅が狭まる可能性があります。
公務員
公務員の技術系総合職を目指す場合、公務員試験では分野に応じて試験区分があります。大学に進学した場合、興味を持って学んだ分野がそのまま公務員試験の対策になる可能性がある、というメリットがあります。一般教養も身につき、大学に通いながら公務員の予備校に通うなど、試験対策にじっくり取り組むことができるでしょう。しかし大学によっては公務員試験への対策をおこなっていないため、自分で対策する必要がある点はデメリットといえるかもしれません。
専門学校に進学した場合は大学よりカリキュラムが忙しく、公務員以外の進路への変更が厳しいというデメリットがありますが、大学より効率的に公務員試験対策ができ、1~2年で早く公務員になれるというメリットもあります。
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大学と専門学校の違いについてご紹介しました。
大学は比較的自由度が高く幅広い進路の選択肢を持てるので、将来についてじっくり考えたり、総合的な人間力を高めたりするのにおすすめです。
専門学校は専門性が高く修業年数が短い傾向にあるため、最短で仕事で役立つ技術を効率的に身につけたい人や、学費を抑えたいという人におすすめです。
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